Masa's Kitchen・1(野球部前編) (Pixiv Fanbox)
Published:
2024-03-01 09:00:00
Imported:
2024-05
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制服の白いシャツの下にアンダーシャツを着た青年が、紺色のエプロンを纏って腰の後ろで紐をキュッと締めた。
スポーツマンらしく短く刈った髪に、精悍な瞳。ぴたっとした黒のアンダーシャツから覗く日焼けした腕は逞しい。
彼の名前はマサ。巨仁高校に通う高校3年生である。
巨仁高校野球部寮の一室で、マサはキッチンに立っていた。
レギュラー部員であるマサには、一人部屋を与えられている。その一人部屋には、小さいながらキッチンも備え付けてあるのだった。
マサは、キッチンのカウンタートップに乗せたガラスボウルの中をニヤリと見下ろした。
ボウルの中では――おびただしい数の小さな何かが、折り重なって蠢いていた。
その小さな何かは皆、揃いの白と赤の野球ユニフォームを着た、野球部員のようだ。マサと同年代の高校生である彼ら。しかし、その大きさはマサの小指の先程度でしかない。それもそのはず、彼らは平均身長が170cm程度の人間であるのに対し、マサは身長87メートル、体重8000トンの巨人なのである。
巨人と人間。彼らはその50倍ほどもあるサイズ差から、交流は不可能であると判断し、互いに不干渉であることを選んで、それぞれの社会を形成している。
しかし、マサはそんな常識など打ち破るかのように、人間の領域へと無遠慮に足を踏み入れ、蹂躙を繰り返していた。
高校では生徒会長であり、野球部エースでありかつ主将と、様々な顔を持つマサ。その重圧や周囲からの期待から来るストレスは並大抵のものではなかった。
そんな日々を過ごしていたある日、マサはストレスが最高潮に溜まったタイミングで、ふとしたきっかけで人間の街へと通じるルートを見つけてしまう。
あまりにもちっぽけで弱弱しい人間と、それらの住処の街。それを見ていたマサの胸の中で何かがムラムラと溢れ出し、気が付くと何もかもを滅茶苦茶にして破壊の限りを尽くしてしまったのだ。衝動的にやってしまったことだったが、その蹂躙によってマサはなんともいえない爽快感と快楽に満たされたのだった。
それ以来マサは破壊神として裏の顔を持って生きるようになった。普段は優等生を演じる一方で、ひとたび人間の街へやって来るとその残虐な本性をさらけ出して破壊の限りを尽くすのだった。破壊と蹂躙の快感に魅了されてしまって以来、マサは数週間に一度の部活の休養日の日には、決まって人間の街へと足を運ぶのだった。
人間の街の襲撃には、ストレス解消以外にも、思いもよらない効果をもたらしていた。
元々ストイックで熱心に筋トレに打ち込んでいただけあって、がっしりとした体つきのマサだったが、人間の街で暴れるようになって以来、その筋肉には更に磨きがかかり、高校球児としては最高に理想的な肉体を手にしていた。
これにも、人間の街へ行っていることに秘密があった。
人間の街を蹂躙するようになってしばらくして、マサはあることに気付いてしまったのだ。
それは、人間は食べると非常に美味いうえに、プロテインのように筋肉の増強に効果があるということ。
最初は、摘まみ上げた人間をちょっと脅かすつもりで、喰っちまうぞと脅し文句を言ってみたに過ぎなかった。しかし、泣き喚いて必死に指先でもがく人間を見ていると、だんだんと本当に喰ってみたいという感情がこみ上げてきて、口の中に放り込みたい衝動を抑えられなくなったのだった。
その欲望には抗いきれず、指先の人間を自らの口に恐る恐る入れるマサ。口の中に少ししょっぱい味が広がる。マサは舌の上の人間を弄ぶように転がす。やがて動きが鈍くなってきたところで、口の奥へと追いやり、奥歯でガリッと噛み砕いてやった。途端に口いっぱいに満ちる、肉の味、そして、血の香りにマサは深い恍惚感を覚えたのだった。
こうして人間の味を知ってしまったマサは、人間の街を蹂躙し破壊することでストレスを発散するのに加え、逃げ惑う人間を摘み上げては喰い散らかすようになっていった。
蹂躙の度に人間を食しているうちに、マサには様々なと気付きや発見があり、捕食はより洗練されていくようになる。
例えば、マサと同年代のような、若い男の人間ほどより美味く感じるようだ。そして、ラグビー、陸上、柔道、水泳、そして野球など、どんなスポーツをしてるかによって、微妙に味の差があるらしい。
これらの事実に気付いている巨人は、世界で恐らくマサただ一人であろう。
それらの独自研究に基づいて、捕食する対象を絞って狙うマサ。
こうしてマサは、人間の街を襲撃するたびに、若くて活きがよく新鮮な人間を積極的に捕食するようになり、いつしかその筋肉はコーチが驚き他のレギュラー部員が羨むほどのものとなっていた。
そのうえ最近は、その場で食すだけでは飽き足らず、捕獲した人間を自身の寮部屋へと連れ去り、調理して喰らうということにまでエスカレートしていた。
この日も、人間の街で見つけた人間を、寮のキッチンで料理して喰らうために連れ帰って来たのだった。
普段は数十人程度の野球部の一団を連れ去って帰ることがほとんどだが、今日はいつもよりも遥かに大漁だった。
今回襲った高校は、野球部員を200人も抱える大所帯の強豪校だったからだ。
マサは、ボウルの中の人間をギロリと見下ろす。
「ひっ……!」「あ、あああぁ……!」
巨人の視線に恐れ身を縮みあがらせる人間達。
1匹1匹が小さいが、これだけの量があれば、以前からの念願だったレシピを実行に移せるだろう。マサは思わず舌なめずりをした。思わず笑みを浮かべながら、さっそく料理に取りかかることにした。
まずは食材の「下ごしらえ」からだ。
マサはカウンタートップの上でガラスボウルをひっくり返した。バラバラと、200人の野球部員が落ちていく。
「うわぁっ!」「ぐえっ!」「いってえ……」
突然硬い作業台に叩きつけられて動揺している野球部員たちに向かって、マサは冷たく言い放った。
「おい。お前ら全員、ユニ脱いで全裸になれ」
「えっ……」「はっ……!?」
あっけにとられて、硬直している野球部員達。
マサは何も行動を起こさない人間たちを見下ろし、手近にいた1人の人間に目をつけると、その人間の身体を左手の親指と人差し指でひょいとつまみ上げる。
「うわああああああ!!」
絶叫しながら、目の前まで持ち上げられる人間。そして、マサは低い声で宣言した。
「できないってのか?だったら……コイツみたいに、お前ら全員捻り潰してやるだけだけどな」
グチャリ。
指先に力をこめ、人間を捻り潰す。グチョリと赤い体液が飛び散った。
「……!!!!」「ひ、ひいいいいっ!」「ぬ、脱ぎます脱ぎます脱ぎます!!」
1人の不幸な仲間の凄惨な光景を目の当たりにして、尻に火が付いたように他の野球部員達は次々にユニフォームを脱ぎ始め、大慌てで全裸になっていった。
カチャカチャとベルトを外したり、ピタッとしたアンダーシャツを引きちぎるかのような勢いで脱いでいく野球部員たちを見下ろしながら、マサは「ははっ、最初っからやれっつーの」と呟く。そしてマサは次の命令を発する。
「じゃあ、脱いだヤツはユニはそこに置いてこっちに移動しろ」
マサはカウンタートップの空いたスペースを指差した。今度はおとなしく言うことを聞き、マサの指差した位置へ殺到する野球部員達。
「よーしよし、じゃあそのままおとなしくしてろよー? 逃げ出そうなんてしたら、力加減間違えてうっかり潰しちまうかもしれねぇからなぁ?」
マサはニヤっと笑いながら、全裸の野球部員達をその巨大な両手で鷲づかみにしては、彼らが元々入れられていたガラスボウルの中に再び入れていく。左手の指先に歯先程潰された部員の血肉が残っており、最初の一掴みで掴み上げられた野球部員には、チームメイトの血肉が身体にベットリと付着してしまい、これから自分達の身に起こる運命を悟り涙を流して震えだしてしまっていた。そんな哀れな様子など気にもかけず、淡々とボウルへと放り込んでいくマサ。
(よし。これでメイン食材の「下ごしらえ」は終了だな……。普段人間の街でパクッと摘まむ程度ならそんなに気になんねぇけど、流石にこんだけの量だと、服着てっと舌触りが悪いあるからなぁ。でも人間は言葉が通じるからちょっと脅せばすぐ言うこと聴くから扱いが楽だな)
心の中でそんな事を考えながらほくそ笑むマサ。ボウルの中では、野球部員たちが折り重なって不安げにマサを見上げている。
マサはそんな彼らに、ニカッと爽やかな笑顔を向けて言ってやった。
「お前らありがとうなぁ、自分からユニ脱いでくれて。俺が1匹1匹脱がしていったんじゃあ日が暮れちまうからなぁ。じゃ、もうしばらくの間そこで待ってるんだぞー?」
そういうと、マサは今度は玉ネギを取り出し、手早くみじん切りにしていく。そして切った玉ネギをフライパンで炒める。
玉ネギの香ばしい香りがキッチンに広がっていく。そんな一連の作業の最中にも野球部員たちの恐怖心はどんどん膨らんでいった。
あめ色になるまでしっかり炒め終わると、マサは一旦コンロの火を止めると、再び人間の入ったボウルへと向き直った。
「今の玉ネギでピンと来たヤツもいるかもしれねーな。……今から、お前らでハンバーグ作ろうと思うんだ!名付けて野球部ハンバーグってところかな」
屈託なくそう言い放つマサ。その内容は野球部員たちにとってはあまりにも絶望的なものだった。
「!!!」「な、なにっ!」「い、いやだあああ!」
突然の宣告に発狂寸前の球児達。しかしマサは気にせず話を進める。
「お前らも、体育会系なら肉料理好きだろ?まさか、自分達がハンバーグにされるとは夢にも思わなかっただろーけどなぁ。おっと、その前に……」
マサはボウルの中から、一人の野球部員を摘まみ上げた。
「う、うわああっ!」
そして、調味料などを置いている小さな棚の上に小皿を乗せて、その上にその野球部員を降ろす。マサにとっては簡単に手の届く高さの調味料棚だが、人間にとってはビルの屋上にいるようなもので、とてもじゃないが逃げ出すことなど到底不可能な高さだ。
「お前は、最後のトッピング用だ。そこで、チームメイトがどうなっていくかちゃーんと見ておけよぉ?」
小皿の上の人間に笑いかけてやった後、マサは塩の瓶を手に取ると、ボウルの中にまぶした。
「うぇっ、しょっぺえ!」「た、助けて!助けてくれぇっ!!」
これで味付けは完了。マサは、ボウルの中を残酷な目付きで見下ろす。
「じゃ、ボウルの中のお前らは今から全員ミンチにしてやるからな~~」
マサの巨大な左手が、ボウルの上空で翳される。
「あ、あああああ!!!」「うわあああああ!!!!」「やめろぉやめてくれえええ!!」
マサは狂乱の声が一段と大きくなるのを感じて興奮しながら、球児の集団に手を突っ込む。そして、一握りにするとその巨大な手に一気に力を籠める。
グチャアっ!!
マサが掌全体で力強く握りこんでいく度に、ボウルの中の野球部員の肉体は簡単に弾けて潰れていき、血肉が飛び散っていく。
「ぎゃあっ!」「ひぎいい!!」「ぐあっ!」
ボウルや小皿の人間にとっては途轍もなく恐ろしくて凄惨な光景だが、マサは容赦なく、手に伝わってくる人間の感触を楽しむかのようにじっくりと念入りに潰してゆく。
グッチャ、グッチャ、グッチャ……
やがて数分後には、ボウルの中はあっけなく全てピンク色のペースト状の肉塊となり、完全にミンチ状にされてしまっていた。
小皿の人間は両耳を押さえて「ああっ……あああっ……!!」とうわごとの様に声を発するだけだった。
「ふぅ、これでミンチの準備はOKだな!」
一方マサはあっけらかんとそう宣言すると、続いて先程炒めておいた玉ネギや卵、パン粉などを次々とボウルに放り込んでいく。そして再びグッチャグッチャと、巨大な掌でボウルの中身を捏ね合わせてハンバーグのタネを作っていく。
混ぜ終えると、マサはボウルの中のタネを掌に掬い上げた。そして、
パンッ!パンッ!
左右の手でキャッチボールするかのように、掌にタネを打ち付けて中の空気を抜いていく。小気味好いリズムで空気抜きを行う様は普通に料理しているかのように見えるが、小皿のうえの人間からすれば、発狂しそうな光景だった。
タネの空気抜きを終えると、マサはタネの上部に指で窪みをつくる。火の通りをよくするためだ。
掌を小皿の人間の方に向けて、出来上がったタネを見せ付けるマサ。
「ほーら、お前の仲間、全員ハンバーグのタネになっちまったぞー。今からこれを焼いてやるからなー!」
小皿の人間にそう話しかけながら、マサはコンロの火をつけ、フライパンに油をひいていく。そして、程よく温まったフライパンの上にタネを投下した。
ジュウウウウウウ……
心地良い肉の焼ける音と共に、ハンバーグの表面がこんがりと焼かれていく。
「あー、美味そう……。早く喰いてぇ……」
じゅるりと涎が零れ落ちそうになるのを我慢しながら、マサはフライ返しでハンバーグをひっくり返す。
そして裏面にも十分に火を通し、両面にキレイに焦げ目が付いたことを確認すると、ハンバーグを火を消して皿へと取り出し、盛り付ける。
「よしよし……、上出来だな!」
ジュウジュウと音を立てている湯気がたちこめる中、食欲を刺激する肉の焼けた良い匂いが立ち込める。
最後に、マサは再び火をつけ、フライパンに残った肉汁にバターやケチャップ、ウスターソースなどを加え、かき混ぜる。
「フライパンに残った旨みも余さず使わないともったいないもんな~?」
半分は小皿の人間に語りかけるような、半分は独り言のような呟きを発しながら、とろみがつくまで煮詰めていき、手早くハンバーグソースを作った。
「よっしソースもこれで完成だ!」
そう一声上げると、マサはフライパンを皿の上へと移動させ、さっとソースをハンバーグへとかけた。こうして、野球部ハンバーグが完成した。
湯気を上げるそれは、見た目は通常のハンバーグと変わりがない。それがかえって、チームで最後の生き残りとなってしまった小皿の人間にはおぞましく、むごたらしいものに感じられた。もう、小皿の人間は頭を抱え、身体を丸めてうずくまることしかできずにいた。
「おっとそうだ、忘れてた。最後は生の人間をトッピングしてーっと」
そんな小皿の人間をマサを摘まみ上げると、熱々のソースがかかったハンバーグの真ん中にポトリと人間を落とした。
「ぎゃあああ!!」
とろみに絡めとられ、熱さにもだえる人間をよそに、マサは皿を持ち上げるとズシン、ズシンと足音を立てながら机へと運んだ。ほかにもコップにお茶を入れ、箸を用意しすると、どっかりと着席する。そして顔の前で両手をパチンと併せて合掌した。
「じゃ、野球部ハンバーグいっただっきまーす!」
それから、ハンバーグの端から箸で切り分け、まずは一口目を口に運び入れるマサ。
「……んっ!美味ぇ!」
モグモグと咀嚼しながら、目を見開くマサ。
噛むごとにジュワッとした肉汁が滲み出す。それがソースの甘みと相まって口の中いっぱいに絶妙な風味が広がる。
骨ごとミンチにしたため、食感はどちらかというとつくねのような感じだったが、その、肉肉しい歯ごたえも含めてマサの好みにクリーンヒットだった。
ゴクリと口内のものを全て飲み下すと、
「うんうん!美味いぞお前のチームメイト!」
トッピングとして生き残っている人間を見下ろし、ニッコリと笑いかけてそう言ってやった。
それからも2切れ3切れと次々とハンバーグを口に運んでいくマサ。
トッピングが乗っている中央付近はあえて最後に残しておくために飛ばして、どんどん食べ進めていく。
トッピングの人間は、もはや目の前の現実を受け入れられずに、うつろな目でマサを見上げていた。
やがてトッピングの人間が乗っている部分以外は全て食べてしまったマサは、ニヤリと笑う。
「じゃ、最後はトッピングごと、いっただっきま~す」
そう言うと、マサは人間の乗ったハンバーグを箸で摘まみ上げ、口をあんぐりと開ける。
もはや人間は悲鳴を上げる気力も、逃げるようとする気も失って、ただただ巨人の洞窟のような暗い口内を絶望的な目で見つめていた。
ハンバーグが巨人の舌の上に置かれると、巨人の口は閉じられ、一気に視界が闇に覆われてしまった。
生暖かく湿った闇の中で、今更になって恐怖感が蘇ってきた人間。
「うわアアアアアアアアアアアアッ!」
巨人の口内でパニックを起こして泣き叫ぶ。しかし。
グチャアッッ!
巨人の前歯によって、ハンバーグごと人間の上半身は嚙み潰された。その肉体からは血が溢れ出し滴っていく。
マサは舌の上で、口内のものをこねくり回すように転がした。
しばらく、ハンバーグと生の人間の味のハーモニーを楽しむと、ゴクリとようやく口内のものを全て嚥下する。
「ふうーっ、美味かった……。へへっ、ごちそーさん」
マサは、自身の腹筋辺りに手を当てると、ポンポンと叩きながら腹に向けて言った。
「しっかり消化して、俺の筋肉の一部にしてやるからな……」
そう言って静かに腹を擦る。
「……」
腹を擦っていたマサだが、いつの間にかその手の位置を下げ、自然と股間を撫で回していく。
人間を料理し食っていると、ムラムラとした衝動が腹の奥から湧き出て、巨根がムクムクと勃ち上がってしまうのが毎回の恒例であった。
「一発抜くかな……」
手早く皿をシンクに持っていくと、カチャカチャとベルトを外すマサ。
そして学習机の方へとズンズンと歩み寄ると、一番下の引き出しを乱暴に開けた。
「ひっ!」「うわあっ」「ぎゃっ!!」
小さなそんな声が聞こえてきて、マサは嗜虐的な笑みを浮かべて引き出しの中を見下ろした。
後編に続く