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22:降臨  禍々しく立ち込める妖気。赤く燃えるような目……そして強くしっかりと生えた蝙蝠の羽根。  ミゼル司祭の体には時間を追うごとに次々に淫魔の特徴が現れ始めた。 マナの許容量の少ない人間の体に淫魔の部位転移を施せば、たちまちに部位崩壊を起こして絶命してしまうという恐れがあったため今までは身を隠すように彼女の体を隠してはいたが、不老不死の霊薬を飲んだミゼル司祭の身体はもはやどれだけマナを供給しても青天井で蓄えることができる。限りがないわけではないが、その上限は想像を絶する許容を持っていることに違いない。ラフェリアの身体の部位を転移して元の体にすげ替えていくなど造作もない事……あとほんの少し時間が与えられれば完全なる転移が完了する事だろう……大量の淫魔のマナをその無限の胆力に流し込みながら。 「まずいぜ……ありゃ……絶対にまずい!」  圧倒的な霊圧の前にレファは腕で目の上に覆い肩目をつぶって舞い散る砂埃から片目を守る。 「レファさんっっ! 私が魔法で牽制しますから、その後の追撃をお願いしますっ!!」  レファの立ち位置よりも少し前に居るエリシアは、片手を前に出し呪文を詠唱しながら彼女に追撃を要請する。   「分かったっ! お前の魔法が直撃したあとこのナイフでトドメを指してやる! 妖力が高まろうと淫魔は淫魔だ、水銀のナイフがヤツのマナを固まらせてくれるだろう!!」  そう言うとレファは片手に握っていた拳銃を投げ捨てナイフだけを利き手に持ち直し、それを横に構えジリジリと少しずつ距離を縮め始める。 「愚かね……。そのへんに居る有象無象の淫魔と同じだと思っているのかしら? 私は淫魔の女王となる特別なマナを有した淫魔なのよ! そんなチンケなナイフごとき……私の強大なマナですぐに無効化してみせるわ!」  霊圧の突風を遮りながら少しずつ前へ出るレファ……。そんな彼女に捨て台詞を吐いたラフェリアは、視線を呪文詠唱中のエリシアの方へ向けそっと人差し指をさして見せた。 「それよりも……エリシアちゃんの呪文は少し怖いわね、だから……」  差した人差し指を反転し、銃の照準を覗き込むように人差し指の先をエリシアの股間に合わせたラフェリアはその指の先をクイッと上にあげる仕草を見せる。すると…… 「はひっっっ!!?」  呪文を詠唱中だったエリシアから悲鳴のような声が上がりそれと同時に…… ――ブシュッ! プシュゥゥゥゥゥゥゥ!!  ホースから水を撒き散らしたかのように彼女の股間から新鮮な粘液が吐き出されていく。 「んへっっ!? な、な、なんで……私……今……勝手にイって……」  呆然となりその場に力なくペタリと座り込んでしまうエリシア。彼女の座った床には多量の愛液が水たまりを作り、それが今もなお広がり続けている。 「エリシアっ!? どうした! おいっっ!!」  ガクガクと震えながらヘタリこんでしまったエリシアを見てただ事ではないと悟ったレファは、ナイフの構えをやめ彼女の方を振り向いてしまう。 「クフ♥ よそ見は、だぁ~め♥」  ほんの一瞬、横を振り向いただけだった……。時間にしても1秒にも満たない。  しかしその僅かな時間の間にラフェリアは消えるようにレファのすぐ正面まで高速移動し、また前を向き直したレファを驚かせる。  突然接近してきた彼女にレファは一瞬“攻撃を繰り出す”という行動が頭から抜けただただ驚いてしまう。力を得た淫魔がその隙を逃すはずもなく、今度はレファの股間にも人差し指を差し込みズボンの上からではあるが秘部の部位を一撫でしてみせた。  ズボンの下には下着も勿論履いている。指の感触などほとんど感じられないはずだったのに、その指が淫裂の縦スジを撫で上げる素振りを見せた瞬間…… ――ブシュッッ! プシュッッ、プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!  全身の力が脱力していくかのような絶頂を強制的に迎えさせられてしまった。 「あがっっっは!!? あっっっはっっっっ……ひっっ!?」  何が何やら分からずレファもそのまま床に膝を付き次々に愛液が溢れ出していく股間に手を当ててどうにかその勢いを止めようと足掻く。しかし、一度吹き出した愛液の噴出は意思とは無関係に吐き出され続け……自分の手で抑えることも出来ない。 「これでも手加減して触ってあげたのよ? 本来の私の力では、人間なんて一撫ででイキ殺してしまうんだから……。まぁ、手加減したとは言えしばらくは出っぱなしだろうけどね♥ クフフ……♥」  まるで全身の敏感な神経を柔らかい羽根でなぞられているかのような強烈な寒気と悪寒が駆け巡り、脳へ過剰な電気刺激が送り込まれ快感と認識する前に反射的に股間から次々に愛液が生まされそしてすぐに吐き出されていく……。  何度も何度も時間をかけて絶頂を繰り返しているかのような快感をその一瞬で凝縮して味あわされ、レファは視界が真っ白に染められていく。意識を保つのも難しい……体を支える力も抜けていく……。衣服の上からのたった一撫での愛撫だったはずなのに……身体は何も言う事を聞かずイキ狂わされていく……。 恐ろしい……。改めてラフェリアという淫魔の恐ろしさを目の当たりにしてしまった。 「どう? この指がもし……衣服を脱がして生身の肌を直接触ったらどうなるか……想像を絶するでしょ? 衣服のフィルターがあっても私の魔力は届いてしまうのだから……これが直接触られたら……どんなにイキ狂う結果になるか……」  想像しただけで吐き気を催してしまいそうになる……。  意識が飛かけるほどの絶頂を味わったレファとエリシアは、一様に恐怖を植えつけられてしまう。体の中から支配されているかのような……芯が凍るような恐怖感。淫魔という悪魔がいかに恐ろしい生物であるかを……この短い時間に初めて彼女達は味わった。 「どんなに頑丈な相手であっても……私の魔力には耐えられない……。だから、食事が面白くもないし美味しくもないの……。だって簡単に死んじゃうんだもの……」  一歩……一歩……ゆっくりとエリシアの方へ歩を進めていくラフェリア……。 「だから、魔力を抑えて“くすぐり”という責め苦で楽しむ事が至上の悦びに成り代わったの♥ ね? 分かるでしょ?」  一歩近づくにつれ床に尻をつけながら怯えるようにエリシアは半歩分の距離を後ろへ下がる。  当然、その距離はすぐに詰まり、彼女の前に腕を組んでニヤつくラフェリアの顔が近づいてくる。    ミゼル司祭の特徴だった長い黒髪は深い紫色へと変わっていて、肌もツヤのある薄紫色へと変化している……。手の爪は淫魔らしく長く伸び、悪魔の直系であることを示すような細い尻尾がいつの間にか彼女の尻に生えていた。  もう……ミゼル司祭の面影はそこにはない……。居るのは紛れもなく淫魔……。ラフェリアの肉体を受肉した彼女がそこには存在していた。 「生命力の強いエルフに……不老不死の霊薬を与えて、本気の淫技を施したら……どうなるかしらね? 実験も兼ねて……貴女にはその役を買って出てもらいましょう♥ 私の分身を焼き殺した……お礼も兼ねて……ね?」 「ひっっ!! い、いやっっ!! ち、ち、近寄らないで……そんなの……嫌っっ!!」 「命の危機を迎えることはないから、琥珀化は発動しないと踏んでいるけど……どうかしら? そういうのも見てみたいわねぇ~♥」 「や、め……やめて! 嫌っっ!!」 「貴女の同族は琥珀化に逃げる前にイキ死んでしまったわ……もうほとんどショック死に近かったわね……。それくらいの……いえ、それ以上の快楽死を……何度も味あわせてあげる♥ もちろん、私の大好きな“くすぐり”も同時に行いながら……ね♥」 「ひっっ! ひぃぃぃぃぃっっ!!」 「アハハハハハハ♥ その顔……その恐怖に歪んだ顔……大好きよ♥ すぐにその顔を笑わせてあげるからね? 無理やり笑わせてあげるから……覚悟してね? クッフッフッフッフッフ♥」 「やめて……やめてっっ! やめてっっ!! もう嫌っっ!! そんなの……もう嫌っっ!!」 「ほ~ら、捕まえたぁ♥ もう逃がさないわよぉ~? ンフフフフ♥」 「い、い、い、いやぁぁぁっっ!! 離してっっ! 離してってばぁっっっ!!」 「大人しくついてきなさい♥ ほら……貴女の妹ちゃんも磔にされていた……あの十字架に拘束してあげるから♥」 「やめてっっ!! いやっっっ、やめてぇぇぇぇぇっっ!!」  手を引かれ十字架台の方へと誘導されていくエリシアを見てもレファはどうする事もできない。  立つのがやっとであり、ナイフを握っている手も震えが止まらない……。  エリシアの次は……きっと自分だ。彼女がいたぶられ抜かれたあと……自分の体は不老不死の肉体にされ、彼女の責め苦を延々受けることとなるだろう……。  それを想像しただけで……手足だけでなく口も背筋も下腹部さえも震えてしまう。終わらない地獄が待っていると分かっているのだから……尚更恐怖は強くなる一方だ。  逃げてしまおうか?  復讐のために動き……不老不死を阻止するためにここまで来たが……どちらも成せなかった。  自分には荷が重すぎた……それくらいに強大な相手だったのだ……ラフェリアという淫魔は。  淫魔の狩り人などと呼ばれ……復讐を胸に彼女を追ってきたのは確かだが……その相手は規格外過ぎた……。もともと勝てる見込みなどなかった試合に、更に不老不死というドーピングまで打たれてしまった。そうなれば……あとは無駄死にという結果しか待っていない。否、無駄死にさせても貰えないだろう……それは殺されるよりも恐ろしい……。延々と苦しまされ死という逃げ道さえも絶たれる……それはもう“地獄”と呼ぶしか他に例える言葉が見つからない。  これから先に待つのは地獄のみ……。で、あれば……エルフの姉妹には申し訳ないが、今脱兎のごとく逃げ出してこの地を離れ身を隠し続けていれば……命だけは助かるかもしれない。地獄を迎えずに済むかもしれない。  元々一人で動くはずだった……。無理だと分かっていたら逃げるつもりだった……。  狩り人と呼ばれていても……ただの人間だ。死ぬのは怖いし、死を迎えられないのも物凄く怖い。  今逃げても……恨まれないだろう。むしろ……ここまでエリシアを連れてきてあげたのだから感謝されはしても恨まれるなんて……。  姉だけでも連れて逃げ帰ろう。人知れず山の洞窟にこもって姉とともに静かに暮らそう……。  この化物は誰かが倒してくれる……誰かもっと強い誰かが……。 「レファ……」  逃げの算段と逃げるための口実を頭に巡らせていたレファに小声で聞き覚えのある声が届けられる。 「お、お姉……?」  いつの間にか背後まで近寄っていたのは、彼女の姉……。  連れて逃げようとしていた姉が、暗闇に紛れて彼女の背後まで近寄っていたのだった。 「ちょうど良かった、お姉……ここから今すぐに――」  助けに行く手間が省けた……そう思ったレファに、メリッサは真剣な顔で問いかけを零す。 「レファ、教えて……。私は……彼女にあの薬を……届けたの?」   「へっっ!? あの薬……って……」 「ごめんなさい……私、完全に意識を乗っ取られていたから……覚えていないの。チャームが解かれたのは、今しがたよ。だから教えて……。私が操られて調合した薬を……彼女は飲んだの?」  メリッサの表情は先ほどの無表情とは異なり元の姉の顔に戻っていた。彼女が言ったようにかけられていたチャームの魔法はラフェリアが受肉した段階でリセットされたのだろう……レファはそう悟った。 「飲んだから……完全体になっちまったんだと思うぜ……。不老不死になれなかったら人間の体に受肉してもマナを受け入れきれないとかなんとか言ってたからな……自分で……」  その言葉を聞きメリッサは表情をキツくした。そして神妙な面持ちでレファに言葉を続ける。 「レファ……聞いて……」 「お、おう? なんだよ……」 「もし私が……彼女に“あの霊薬”を届けたのだったら、ラフェリアは完全体にはなれない筈よ」 「んなっっ!!? 何を言い出すんだお姉っっ!! だってあの霊薬は不老不死の……」 「いいえ! あの霊薬は……完成されていない! 少なくとも私が調合しているのであれば……ね」 「な、な、なにぃぃっっ!?」 23:狩り人の姉 「完成されていないってどういう事だ? 材料は集まっていたんだろ? それにお姉が調合したんだったら……霊薬は完成してしかるべきだろ?」 「そう……材料は全て集まっていたわ。そして……ミゼル司祭からも最終的な調合比率の正解も聞かされていた……」 「じゃ、じゃあ……」 「操られていた私はラフェリアの意のままに薬を調合したはずよ。不老不死の霊薬を完成させるために……」 「だよな? って事は……やっぱり完成しているんだろ? あの霊薬は……」 「マルカスはラフェリアにこう言っていたそうよ……“不老不死の霊薬を完成させるには強いマナを含有しているエルフの体液を使う必要がある”……と」 「あ、あぁ……よく分かんねえけど……そうらしいな……」 「エルフは代を重ねるごとにマナを強く保有する傾向にある……。そしてエルフの巫女と呼ばれる彼女達はその最高位のマナを身に纏っている……」 「それは……エリシアが言ってたな……子供よりその娘……娘よりもその孫の方が魔力が高いって……」 「だから……ラフェリアは彼女を捕らえたの。そして体液を抽出して基礎原液とした……」 「…………彼女?? アイネのことか?」 「そう彼女のこと……今、怯えて震えて床にヘタリ込んでいる彼女のことよ!」 「お姉……何が言いてぇんだ? こっちはさっぱり――」 「ラフェリアは知らないのよ……彼女が……純粋なエルフじゃないって……」 「……っっ!? そ、そうか!」 「そう。巫女の末っ子であるアイネさんは……人間との間に作られたハーフエルフ。だから純粋なエルフの血族ではない!」 「そうだ! そう言ってた!! 確か……マルカスとあいつらの母親との子供……だったよな?」 「えぇ……。でもラフェリアはその事実を知らなかった。だから巫女の末っ子はマナが一番高いと勘違いし……彼女を攫ってひたすらに彼女の体液を集め続けた……」 「そうか……その事実を知らなかったラフェリアは、アイネの体液さえ搾れば霊薬はより強い効果を発揮すると考えて作らせたんだ……本当はエリシアの半分にも満たないマナしか持っていない彼女を中心に据えて……」 「私は、エリシアさんの体液も渡されていたわ。なにか起きた時のための予備にと……」 「エリシアの? あぁ……そう言えば彼女も採取されていたもんな……あの村の祠で……」 「でも私はその体液をあらかじめ捨てておいたの……私が操られてコッチを間違って使わないように……」 「そうか……巫女の中ではエリシアが一番のマナ持ちだから……完成しちまうもんな……ちゃんと調合すれば……」 「巫女の長女……エイレーヌの体液は調合の比率を導き出すための実験に使って全て使い切っていた……他のエルフの体液も同様に……ね……」 「っとなれば……残った体液は……」 「そう……あの、ハーフエルフの中途半端な体液だけ……」 「それを調合して作った霊薬だから……未完成だということか?」 「えぇ。彼女が受肉できているのは、ハーフとは言えエルフの巫女の直系でもある彼女のマナが強かった故よ……でもこの効果はすぐに限界に達してしまうはず……」 「なるほど……中途半端ではあるが、霊薬は霊薬ってわけか……。その効果のおかげであれだけ魔力を宿せているわけだ……」 「あれは一時的な効果でしかないはず……。時間が経てば許容を超えたマナが垂れ流され制御しきれなくなるはずよ……」 「って事は……もしかして……倒せるかもしれないっていうのか? あの淫魔を……」 「えぇ……。そのナイフは水銀製でしょ? だったら……彼女のマナを固めることができるわ……」 「もし……固まらなかったら? お姉の言っていた事は仮説だろ? ……ハーフエルフのマナでは不老不死の霊薬完成しないって言うのも……実証されたわけではないんだろ?」 「確かに……不安要素は多々あるわ……。彼女のマナが予想よりずっと強くて……エリシアさん……いえ、エイレーヌさんのマナに匹敵する力を宿していれば……完成していてもおかしくはない……」 「そうだよな……人間とのハーフだと言って、マナが少ないと決まったわけではない……」 「統計学的には少ない……ってだけのデータしか持ち合わせていないわ……今は、それに縋るしかないわけだけど……」 「やっぱり……試せってことだよな? それは……」 「アイツが不老不死の優越感に浸っている今しかチャンスはないわ……エリシアさんを拘束している今しか……」 「お姉……。私は今……逃げようと考えてたんだぜ? お姉を連れて……エルフを見捨てて……」 「えっ?」 「私は酷い女さ……。自分が怖いと思えば……平気で仲間も身内も裏切ろうとしちまう……根っからのヘタレなんだよ……私という女はな……」 「あのサキュバスは……生かしておいてはいけないわ……。逃げた先で必ず……私たちは殺される」 「そうだな……捕まってまた酷いことされるよな? どこに逃げても……」 「私が聞き及んだ淫魔の狩り人は……とってもズルくて……とっても卑怯で……力もひ弱ですぐ逃げる……なんて噂が立っていたわね……」 「ははっ……ひでぇ言われようだ……。まぁ……それが事実ってやつだけどな……」 「でもね、その淫魔の狩り人は……必ず標的にした淫魔を滅して帰ってきていた……そうも伝え聞いてたわ……」 「………………」 「過程や道程なんてどうでもいい……必ず結果を残してきたのが淫魔の狩り人なのだそうよ? それも事実ではないの?」 「……………………」 「あんたは私の妹であり、私にないセンスを持ち合わせている……頼り甲斐のある淫魔の狩り人さんよ。そんなあんたが……逃げ腰になっていてどうするの?」 「勝てない相手に一旦引こうと考えるのも狩り人の作戦なんだぜ? どうせ不老不死にはなれないんだろ? だったら無理に戦わなくても……」 「次に繋げる撤退であれば“逃げ”もアリだけど……今のあんたは“純粋な恐れ”からの逃げでしょ? 逃げたあとに再戦を考えることはできる? 倒す算段を立てることは?」 「………………ちっ! そんなに捲し立てんなよ……私だって……それくらい理解しているさ……」 「マルカスが生きている限り……霊薬はいずれ完成するわ……。今しかないとは思わない? 逃げるよりやる事があるって……思わない?」 「ったく……理で追い詰めようとするのはお姉の悪い癖だぜ……」 「理系の人間はいつでも“理”で思考を固めるものよ? あんただってそうだったでしょ? 研究所にいた頃は……」 「そうだな……。私だって研究員の端くれだったんだ……理で考える癖は拭いきれなかった……」 「貴女の理は……なんて言ってる? このまま逃げたほうが理があるって……言ってるの?」 「……そうだな……。言ってたな……さっきまでは……」 「……もう……やるべき事は分かっているわよね?」 「あぁ……分かった。お姉の……言うとおりさ……」 「だったら……コレを使いなさい……」 「これは?」 「霊薬作成の傍らでどうにか作り出したポーションよ……」 「たったの……これっぽっち?」 「材料となるハーブが調達できなかったんだから……仕方ないでしょ!」 「ほんとに効くのか? これ……」 「安心なさい。私が調合した物よ? 安心して飲みなさい」 「いや……だから心配なんだよ……」 「なんですって?」 「イエ……ナンデモ…ゴザイマセン……」 「私が……アイツの注意を逸らすわ……。あんたはそれを飲んだら暗闇に紛れてアイツの背後を取りなさい」 「あぁ……分かった……」 「淫魔の魔力は心臓と脳から生まれ出ているって聞くわ……だから……」 「分かってる。心臓を貫いてやればいいんだろ? こっそり忍び込んで心臓を刺す……今までと一緒さ……」 「失敗すれば……この村だけでなく世界が……彼女に支配される……。不老不死を持っていなくてもこの魔力よ……完全体になったら……きっとこの世界はヤツの餌場にさせられる……」 「させねぇさ……淫魔の狩り人の名にかけて……絶対に……ね……」 「私も……狩り人の姉として……勤めを果たすわ……。だから、あんたも……無事に役目を果たしなさい……」 「はいはい……分かってますって……。狩り人の……オ・ネ・エ・サマ」

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