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16:無力の果てに その刺激は痛烈であった。 力を抜いてはいけない状況であるにもかかわらず、強制的に弛緩させられるその刺激は……まさに奈落へと誘う悪魔の刺激だと言わざるを得ない。 「ぶひゃっっっっ!!? アギャアアアァァァァぁぁハハハハハハ、ぃはははハハハハハハはハハハハハハ、えひぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ギャ~~っハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」  床の抜けた奈落の通路を必死に壁伝いに渡ろうと試みている彼女に……その責め苦はあまりにも陰湿を極めていた。 「ひぎぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ダメだぁぁはっはっはっはっはっっはっはっはっはっはっは、そこだけはやめでぐれぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! 手に力が入んねぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ、やめろっっっほほほほほほほほ、落ぢるっふふふふふふふふふふふふふふふふふ!!」  遥か頭上にある横溝に必死に手を伸ばして指を届かせ、どうにか指に力を込めて体重を支えながら床のない通路を渡りきろうとしているレファに与えられた刺激は、彼女にその頑張って支えていた手の力を抜かせ笑い狂わせることで体力も削り取ろうと仕組まれた仕掛けた者の性格の悪さが際立つ罠の刺激だった。 「へひっっひひひひひひひひひひひ、ダハァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! う、動けねぇぇぇへへへへへへへへへへへ、もう動けねぇよォォォほほほほほほほほほほほ、ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! ひぃ、ひぃぃっっ!!」 頭上の高い位置にある横溝に、ギリギリ届いた手が差し込まれているため上半身……特に腕は限界まで伸ばしきった格好になっている。そんな格好で横壁を渡ろうとしている彼女に、ハリガネムシという体が小さくて細くしなやかな手足を持つ虫たちが襲いかかった。 その虫は無防備なレファの素足に這い回り……触られればたちまちに力が抜けてしまう足裏を集中的に張り付いてくすぐり彼女を笑わせた。 しかしそれだけでは留まらず……今度は彼女の手……踏ん張っている指の先から手のひらに至るまでをこそぐって回った後……メインディッシュを食するかのように“この場所”を責め立て始めたのだ。 「がはぁはははははははははははははははははは、ひぃ! はひぃぃぃっっ!! くるひっっっ! やめろっっっ!! だめだってばぁぁはははははははははははははははははははははははは、そこはダメなんだってぇぇへへへへへへへへへへへへへっへへへへへ!!」  手首を伝って腕を下り……肩の上へ登った虫たちが次に目指したその場所……。  袖を切っていて見てくれと言わんばかりに晒されたその腕の付け根……。  そう……“ワキ”の部位だ。  必死に腕を上げている為そのワキは凹凸が少なく……むしろ筋肉の筋が浮き立っていて見る者によれば官能的にも映るくらいに綺麗に伸ばされたそのワキに、黒く小さな6本脚の虫が無数に張り付いている。  汗をかき、滑りそうなくらいに見事にツルツルしたワキの皮膚に、ハリガネムシ達は細い脚を杭のように肌に刺し自分の体を安定させるように張り付いている。脚が細すぎるため刺される痛みはほとんど無いが、脚よりも太い腕の刺激は触感がはっきり伝わるほどに力強く撫でられればそれこそ名前の由来になってもいる針金に触られているくらいに痛痒く感じてしまう。  それが何を意味するか……痛痒い刺激が“ワキ”の部位に与えられたらどうなるか? それは言わずもがな……“くすぐったい”のである。  ワキの伸びきった筋に無数の細い手がカリカリと引っ掻き回す刺激は、とにかくくすぐぐったくて仕方がない。特に腋の中でも敏感な窪みの中心の柔肌を強く掻かれると、飛び跳ねてしまうくらいに強くじれったいむず痒さを生む。  しかし、レファは今……飛び上がることも寝転んで暴れまわることも出来ない。手を放せないのだから、与えられる刺激に黙って耐え忍ぶことしか許されない。  だから、彼女は顔を左右に振り乱し必死に笑い悶える。  せめて笑って発散しないと、この反射的に拒絶感の動きをしてしまいそうになる擽痒感から身を守ることができない。  気を抜いたら手を放してしまう……足を踏み外してしまう……そういう場所だから……。 「がひっっっひっひひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、ぶひゃっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、もうやめろぉぉっっ!! 卑怯だぞォォ!! こんな罠を張るなんて卑怯だぁぁははははははははははははははははははははははははは、へぎゃあぁぁははははははははははははははははははははははははは!!」  虫は時間を追うごとに増えていく。  足は黒い靴下を穿いているかの様に足首のところまで虫が埋め尽くし、手から腕……ワキに至るまで虫の通り道が黒く帯を引いているかのように行列を成して蠢いている。  ワキの部位も足裏と同じく黒い塊が埋め尽くし、ワキに辿り着いてもその虫は目的の場所をくすぐる事ができない。  そんな溢れた虫たちは何処に行くかというと……  とある虫達は袖の中に潜っていき、シャツの中へと侵入し……服で隠されているレファの素肌……特に胸周りや脇の下……横腹……背中をコソコソと這い回りながらこそばゆい刺激を与え始める。そしてまたある虫達は、彼女の脚を登り膝の裏や、太もも、内太腿を這い回り、やがてズボンの裾から中へ入り、黒いパンティの隙間から体を入れ彼女の尻穴や秘所の淫裂へと忍び込み、耐え難いむず痒さをその箇所に与える。  もはや全身に虫が行き渡ったと言っても過言ではない。  むしろ虫のいない箇所の方が少ないくらいだ。  それらの虫が一斉にくすぐり立てるものだから、レファの笑いが途絶えるはずもない。  虫を振り落とそうと下腹部や頭を必死に振って抵抗するも1匹たりとも振り落とせず、無駄に体力を使い手の力を無くしてしまう手助けをしてしまう結果となる。 「た、た、たひゅけてくれぇぇぇへへへへへへへへへへへへへ!! マジで落ちちまうってぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへ!! 誰か、この虫を払ってくれっっへへへへへへへへへへ!! か、体中が……くすぐったくて堪らねぇぇぇへへへへへへへへへへへへへ、いひぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、はひ、はひぃぃぃ、イギャアァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」  何度も指先の力が抜けそうになる。  何度も体のバランスを崩し足を踏み外しそうになる……。  あまりのくすぐったさに落ちてしまう恐怖も薄れ、笑い狂うたびに死んでしまうかもしれないという絶望さえも忘れかけてしまう。   可笑しくもないのに……面白可笑しい場面でもないのに……真剣に命をかけて渡っているのに……笑いが止まらない。  笑いたくないと思っているけど、刺激に対する反射が笑うことをやめてくれない。  笑えば笑うほど苦しくなるのは分かっているのに……笑ってしまえば死に近づくことなど分かりきっているのに……笑うことがやめられない。全身をこそぐり回す虫たちの刺激に抗うことができず……無様に笑い続けてしまう。 「はひゃあぁぁははははははははははははははははははははは、も、もう無理だぁぁあははははははははははははははははははは指が滑ってるっっふふふふふふふふふふふふふ、もう耐えられないィィィひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ハギャアァァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」  指の感覚は既に無い……自分の指ではないかのように麻痺してしまっていて、いつ放してしまってもおかしくはない。  足の指も同様だ。足指がジンジンと痺れもはや何を踏みしめているのかさえ曖昧に感じる。  虫達はそんな哀れな足にも容赦なくくすぐりの刺激を送り続ける。足指の間に入り込んで股の間をカリカリやったり、足指の上や指の横を優しく引っ掻いたり……。無抵抗に晒された身体中を悪意ある刺激で責め立てて奈落の底へ落とそうとするこの虫たちにレファは憎しみと恐怖を同時に味あわされる。 ――ズルっ!!  そうこうしていると、レファの左手が力を無くして溝の淵を放してしまう。 「うぐっっ!! くそっっっっっ!!」  必死にもう片方の手に力を込めなおすレファ。左腕は麻痺したかのようにブランと体の横に垂れ力が入らない。 「カハッッ!! ま、待てっっ!! ちょっと待ってくれ!! そっちのワキは今はやめろっっ!! 頼むからァァァ!!」  左手が陥落したと見るや、右ワキを責めていた虫達は急に活発に手を動かし始め、止めを刺さんとするように伸びきった腋のラインをガリガリと引っ掻いてくすぐりったい刺激を強める。  その刺激に思いっきり吹き出してしまったレファは、今まで以上に…… 「ひぎゃああああぁぁぁあはははははははははははははははははははははははははははははははは、だははははははははははははははは、ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ひぃひぃぃぃ!! やめ、やめぇぇ、やめろっっほほほほほほほほほほほほほほほ!! アギャァァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」  盛大に唾を飛ばしながら大爆笑を強いられてしまう。 「ギャハァアァァァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!! あへっっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、いぎぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、はひひひひひひひひひひひひひひひひ、んばぁははははははははははははははははははははは、ギャァァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」  肉感の厚い彼女の足裏もくすぐられている箇所が赤い帯を引くように跡を残し力強くこそぐられている。もはや痛いのではないかと思えるぐらいに肌は赤い線で一杯だが、レファにはくすぐった以外の刺激は感じ取られない。  たとえ強い刺激で引っ掻かれても、足裏は今までのくすぐりで敏感になってしまっていて痛みより先にくすぐったさを感じてしまう。無論それはワキも同様だ。 「はひ、あひっっ!! げ、げ、限界っっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、もう限界ィィィィィィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!! 落ぢるぅぅふふふふふふふ!! もう落ちちまうっっっふふふふふふふふふふふふふふふふ!! ギャアァァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」  前へ進もうにも……来た道を戻ろうにも片手だけではどうしようもない。ましてや少しでも進むための力はもはや残ってすらいない。後はジリジリと体力を削られ……落ちてしまうのを待つのみ……。  こんな格好で死ぬのは嫌だ……。こんな無様に笑いながら奈落の底へ落とされるのは……絶対に嫌だ。  そう思っていても笑いは止められない。  くすぐりの刺激に逆らうことは出来ない。  右手はもはや人差し指と中指でしか淵を掴んでいない……。他の指には感覚が宿っていない。  その2本の指もズルズルと淵を放そうと力を抜かしていく。時間はもうない。限界は近い……。  顔を上げてゲラゲラと笑い狂わされていたレファに限界という2文字が突きつけられる。  手の感覚はない……足の感覚もなくなってきている……。体を支えられない……もう自分の力では……。 その時……ふと、上げていた顔の先にとあるモノが見えレファの周りの時間が一瞬止まる。いや、止まったかのような錯覚を受けた……走馬灯のようなもののように時間の流れがゆっくりに感じた。 『あ、あれは……蝋燭を備え付ける……蝋燭台??』  頭の中にその言葉が浮かんだ瞬間また激しいくすぐったさに笑い悶えさせられ緩まった時間が再び流れ出すような感覚に襲われる。  レファが見たものは確かに蝋燭台だった。普通は通路を明るく照らすために等間隔に備え付けられている光源ではあるのだが、今はその蝋燭に火が灯されていない。わざと奈落の底を見せないために光源を絶っていたのだろう……蝋燭の本体すら設置されていない。  鉄の丸い杭だけが壁に設置されている。その杭は見た目にも頑丈そうで“人一人を吊り下げておくには十分すぎる強度を持っている”と想像できた。  力なく垂らしていた左手……。虫達は離脱してしまった手にはもう用はないと言わんばかりに左のワキから右のワキへと移り渡ってしまっていた。 少しの休息を与えられた左手……試しに拳を握ってみる。 ……うまく握れた。 手に力は戻っている。  次に左手を腰の装備に回す。  手の指先にベルトに備え付けられた金属製のフックに指先が触れる。  レファは笑い悶えながらも必死にそのフックを左手で引っ張りワイヤーを伸ばしていく。  そうしている間にも右手の指の力は抜け、足の踏ん張りも利かなくなっていく。  滑る指……抜ける力……。  力尽きた左手をもう一度掲げるなど至難の業だが、残っていた体力はそれに注ぎ込むしかない。  蝋燭台のフックは手を入れていた横溝の少し上にある。  背伸びをすればギリギリ届くかどうかの距離……。  必死にレファは左手を伸ばす。そうしている間に左足の力が抜け溝から離れてしまう。  幸か不幸か左ワキはくすぐられていない。フックの後ろを掴み直して必死にフックの切れ目に蝋燭台の輪を近づけていく。  その時!   とうとう力の尽きた右手が溝の端を放してしまう!  体は一瞬宙に浮き、そしてバランスを崩すように奈落側へと倒れていこうとする。  手が離れた瞬間、またも時間が緩やかに流れるかのような感覚をレファは味わう。  フックは輪に触れている。後は押し入れるだけ……。  緩やかになった時間の中、レファは最後の力を右足に込め……指先が離れた直後にジャンプするかのように宙に浮いた。  それはジャンプというにはあまりにも小さな高さしか稼げない……悪足掻きのような宙浮きだが、差し込む直前だったフックには十分な高さをもたらした。 ――ガシャっっ!!  金属音が鳴ると同時にレファの体は奈落へと吸い込まれそうになる。しかし、すぐにワイヤーにロックがかかりレファの体は腰のベルトに仕込まれていたワイヤーフックによって宙にぶら下げられることとなった。 「はひっっはひぃぃぃ、あ、あぶねぇぇ……マジで……やばかった……はぁ、はぁ……」  手や足で踏ん張ることなくワイヤーによって体を支えてもらえたレファは、すぐさま体中にまとわりついていた気色の悪い虫達を手で払い除け、服の中に入った虫達も追い払うことに成功する。  不自由だった手足が自由に動かせるようになった開放感はレファに深い安堵を与える。もう虫に襲われても払い除けることができる……。ワイヤーさえ掛かっていれば落ちる心配はないため、ある程度力が戻れば横壁渡りに復帰できる。  後はどれだけ先が長いのか……だけが気になるところだが……。  自分の笑い声が響かなくなった瞬間……とある声が聞こえ、そのゴールとなる対岸がそう遠くないところにあると確信を持つことができた。  その声はレファがよく聞いた声……一緒に行動を共にした彼女の笑い声……。  餌場に捕まっているであろう……アイネの笑い声が……扉の隙間から漏れ聞こえてきていたのだから……。

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