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1:裏切りの代償  教会の地下深く……  そこは……どんなに怒声を上げても、どんなに悲鳴を上げても決して外まで声の届かない……  そんな上階とは隔離されたかのような深い階層の小部屋に彼女は捕らえられていた。  腰まで届くであろう銀色の艶髪を靡かせ、普段なら薬物研究員用の白衣を着て暇な時は片手を腰に当てながら偉そうに溜息を付くのが彼女の癖であったが……今はそのような余裕ある態度を取れる状況ではない。  手を腰に当てたいが、両手は見るに間抜けな万歳の格好を強いられ……手を下ろせないようにと手首に革製の枷がしっかりと巻きついて拘束している。  ならばせめて椅子に座って脚を組んで高飛車な言葉の一つでも吐きたいところだが、その長身に似合うスラっと長い美しい脚はこちらも無様に肩幅に開かされ、足首に枷を巻かれて琥珀色をした美しくも見える拘束台の両端に固定されてしまっている為それも出来ない。  彼女は琥珀の結晶で出来たX字型の拘束台にこのような無様な体勢で寝かされている。体勢だけが無様ならまだ救いもあっただろうが、彼女に羞恥心を与えているのは体勢だけではない。  普段風呂と寝るとき以外は何時でも着用していた研究員を主張する白衣……その下に飾り気のないモノを選んで着込んでいた下着類……そして黒いハイヒールや黒いニーソックスでさえも全て剥ぎ取られ、俗に言う素っ裸に剥かれた状態で拘束されていた。  プライドの高い彼女にとってこれほどの屈辱は見るに耐え難い。妹よりも遥かに母性を主張するかのような胸の膨らみも、見事にくびれた腰も、寝ている格好であるため饅頭を押したかのように変形した柔らかそうな尻も……そして最も他人に見られたくはない陰部でさえも彼女は隠すことを許されていない。これがどれほどの屈辱でありどれほどの羞恥に値するのか……それを強いた“彼女達”は微塵も理解しようとは思っていない。  扉から溢れる光は扉が締まると同時に失われ、捕らえられたメリッサの視界も地下室の暗さに負け周囲の壁すらも見えなくなってしまう。  暗くなることが自分の裸体を隠してくれるという意味では有意義な部分ではあるが、どこから喋っているのかもわからない敵の声には不気味さが一層際立ち拘束された格好の彼女には必要以上の不安が湧き上がってしまう。 「残念だわぁ♥ メリッサちゃん……」  急に耳元で甘ったるく上擦った声が囁かれる。  メリッサはその突然の囁きにビクリと体を震わせ、声の聞こえた方を向いて睨み目を入れる。 「まさか薬が出来る直前で裏切るなんて……私……悲しくて泣いちゃいそうよ? いつから……誘惑(チャーム)が切れてたのかしら? それとも……最初から効いていなかったのかしら? 貴女のことだからそういう薬を持ってたのかもしれないわよね? チャームに耐性のある薬を……」  先ほど聞こえてきた方向とは反対の方から次の囁きが耳に入れられる。メリッサはまたも体をビクつかせその声を追うように顔を反対に向けて睨み目をし直す。しかしその方角にも喋り主はおらず…… 「どちらにせよ……貴女には心の底から協力的に“薬”を作って貰えるよう……再教育してあげなくちゃダメね……。勿論、裏切ったお仕置きも兼ねて……ね?」  今度は更に近くから声が聞こえ、今まで以上に体がビクリと脈打たせてしまったメリッサは、今度こそ喋り手の姿を捉えようと真っ直ぐに天井の方を向き直す。  すると、暗闇に彼女の輪郭がぼんやり浮かび上がる。口調や声からおよその想像は出来ていたが、目の前にいたのは間違いなく彼女だった。 「へぇ……どんなお仕置きをしてくれるのかしら? 楽しみで……仕方がないわね……」  薄紫色の肌に吸血鬼のような尖った八重歯、そして燃えるように赤い目をしたサキュバス……。メリッサの目の前には自分を淫魔の女王と名乗るラフェリアの顔がそこにはあった。 「あら? 私の隣でアレをいっぱい見てきたから分かっているでしょうに? これから自分が何をされるかくらい……」  薄ぼんやりした輪郭からでもわかる頬を赤く染めて欲情しきっている淫魔の女王の甘く蕩ける声。彼女の吐く息にも魔力が宿っていることはメリッサが一番知っている。だから彼女は息を吸わないように顔を横に向け……反抗的な口調で女王に言葉を返す。 「フン! また、あのふざけた“児戯”をして弱者を弄ぶつもり? 女王を名乗るんだったらもっとそれらしく振る舞えないのかしら?」  メリッサの言葉に赤く燃える目を鋭くさせたラフェリアは、甘い声から一転して今度は低く響きのある声でメリッサに威圧のかかる言葉を被せなおす。 「児戯? 貴女には私のアレが児戯に見えたのかしら? そうであれば……中々にお間抜けさんと言わざるを得ないわね……」 「じ、児戯でしょうが……あんなものっ! 拘束さえされていなければあんな児戯……ただの悪ふざけ程度にしか感じないわよ!!」 「拘束されていなければ……か。まぁその通りよね?」 「……………っ!?」 「そりゃそうよ……だってアレは手足を自由に動かせる人にしても全く意味はないわ。逃げられて終わりだもの……。だから逃げられないように拘束するのは絶対に必要なの♥ ほら……今の貴女みたいに……ね?」 「うくっっっ!? ひ、卑怯よ!! こんな……無防備な格好にさせて拘束するなんて……」 「フフフ♥ 今まで見てきたんだから……想像できるでしょ? 私のこの指に……一体何人の女子が狂わされてきたかしら?」 「っっ!? こ、このっっ!!」 「ほら見て? この細い指……。その気になれば何処へだって潜り込んで触ることが出来るのよ? 例えば……ほら、貴女の最も恥ずかしい……こんなトコとか……」  目が慣れてきたとは言え暗闇の奥の方は見えない為ラフェリアの手がどこを触ろうとしているのか分からなかったが、言葉が途切れてしばらくして股間の付け根にソワリと撫でるような感触を受た事により彼女がメリッサの恥部の秘裂をなぞった事が明らかとなる。 「ふひゃっっ!?」  淫魔の指が性を想起させる二枚貝の淵をいやらしくなぞる刺激があまりにもおぞましく、メリッサは思わず間の抜けた悲鳴を上げてしまう。 「あら……♥ いい声で鳴くのね? このまま淫魔としての食事をしてあげてもイイんだけど……でもそれじゃあご褒美になっちゃうわ……」  なぞった指をすぐにその場から離し、そして触っていた指が人差し指だったことを示すようにメリッサの目の前に掲げ、わざとらしくクネクネと指先だけを曲げて見せる。 「ほら……この指に触られて……どう感じた? 淫魔の指先で陰部をなぞられた感想は……如何なものだったかしら?」  嫌がるように顔を背けようとするメリッサだが、その怪しい動きがどうにも警戒心を煽り目だけは離せなくなる。  彼女の言葉に言葉を返したくはないが、何かで会話を繋げないとすぐにでも“ソレ”が始められてしまいかねない……。メリッサは渋々だが態度で舐められないよう強気な言葉を崩さず反論の言葉を返した。 「気色悪かった……だけよ! そんな所をそんな風になぞられれば誰だってそう思うはずよ! 気色悪いってっ!!」 「あん♥ もう……その言葉遣い……。妹ちゃんに似て乱暴で嫌いだわ……」 「ふ、ふざけないで!! 妹は関係ないでしょ!」 「言葉遣いは大事よ? 目上の存在に対して敬意を表してもらわないと……その人の品位が疑われるんだもの……」 「ふ、ふん! だったらお生憎さまね……私はあんたなんかに敬意は払わないっ!! 絶対にっ!!」 「う~~ん……そうだと思ったから誘惑(チャーム)をかけるとき、お嬢様言葉で喋るよう仕向けたんだけど……あれも演技だったのかな? 途中から……」 「そんなものあんたを騙すために最初から演技してたわよ! まんまと騙されてるあんたを見て、私はいつも心の中でほくそ笑んでいたんだけどね……馬鹿みたいって……」 「へぇ~~成程ぉ~~? そんな態度で私達のこと見てたんだ? 馬鹿にしてたんだ? 心の中で……」 「そうよっ! 最初から霊薬なんて作ってあげるつもりなかったわ! 途中からバレないように毒を盛り込んでやろうと企んでさえいたけど……。でもそれもそこの司祭様が邪魔してくれたおかげでパァになったわ!」 「毒を……? ふぅ~ん? それ……本当?」  毒を盛ろうとしたことを聞いたとたんに目を険しくさせたラフェリアは、メリッサの体の上に浮くような形で馬乗りになっていた姿勢を正し、後ろを振り返って相方に意見を求めた。 「はい。私もアレが毒であるということは認識していませんでしたが……彼女が別の薬物を混ぜようとしていたのでその時は止めました……。しかしその後すぐに姿を消し、シスターを逃がす裏切りを行っていたので……アレが毒であった可能性はかなり高いかと……」  暗闇から姿こそ現さないがその声は低く圧力のある小声であり、その声の主がミゼル司祭のものであるとメリッサはすぐに悟る。シスター・マリナを逃がした瞬間を目撃され、自分を眠らせてこのような場所へと連れ込み拘束した張本人……彼女もラフェリアとともにこの小部屋へ入ってきていたのだ。いつも持っていた蝋燭台を何処かへ置いてきたのかその手には持っておらず、代わりに別の道具を手に持ちながら……。 「そう……本当に残念ね。非協力的な態度であれば少し正してチャームをかけてあげるつもりだったけど……。女王である私を殺害しようと企んでいたなんて……それはちょっと許されない行為よね?」 「はい。ドクター・メリッサはこのまま生かせば危険かと……」 「そうよね? だったら……もう……やることは一つだと……思わない?」 「彼女は……生きた餌。貴女様が満足するまで搾り取ることのできる……極上の餌です……」 「アハ♥ 生きた餌とはいい表現ね♥ そうね……すぐに殺すのはもったいない極上の餌だものね……」 「わ、私のことを餌呼ばわり? フンっ! どうせ貴女たちは私を殺せないんでしょ? 私を殺せば……不老不死の霊薬が作れなくなるんだから……」 「あら……そうなの? 彼女の言ってることは本当?」 「はい。ドクターの再生の霊薬を調合する技術は必要不可欠です。ですので殺したり狂人に貶めたりする行為は控えねばなりません……」 「それじゃあ……貴女の言う“生かせば危険”という言葉と矛盾するじゃない? 私はどうしたらいいのよぉ?」 「生かしておくには危険……ですが、自我を殺すことは可能かと……」 「自我を……殺す?」 「はい。貴女様のチャームが最大限まで効くよう……極限まで彼女を弱らせるのです……弱れば弱るほど……貴女様のチャームは自我をも奪い去れる……」 「なぁ~るほどぉ♥ 自我を保てなくなるまで限界まで責め続けて……消えかけの自我にチャームをかけて完全な操り人形を作り上げるってことね? 流石私の側近だわ♥ 私好みの提案をしてくれるじゃない♥」 「死ぬ手前になれば呪文にて死を回避させます故……貴女様は存分にドクターを嬲り尽くしてくださいませ……」 「んん~~♥ それは最高ね♥ 勿論……貴女も加わってくれるのよね?」 「はい。その為にこちらをご用意いたしました……」 「アハ♥ 初手の責めには確かにそれがいいわね♥ だったら是非……貴女のお手並みを拝見させてもらおうかしら?」 「光栄にございます……」 「っという訳だから♥ 今回は私と彼女で貴女の事……存分に責め抜いてあ・げ・る♥」 「……っ!? 何が“っという訳”よ! ふざけないでっっ!!」 「ムフフ♥ 私も彼女が責める姿を見るのは初めてだわ♥ 楽しみぃ♪」 「くっっ!! 勝手にしたらいい! 私は絶対に屈したりしないわ!! 貴女たちの思うような結果に……絶対にならないっっ!!」 「それがいつまで言っていられるかしら? 1時間? 3時間? 1日? もしかして1週間くらい強気でいてくれるかしら?」 「うくっっ!!?」 「私は気が長い方だから……いつまでも待つわよ? 貴女の心がポッキリ折れて……弱々しく服従を誓う姿を見るのを……」 「ぜ、絶対! 絶対負けないっっ!! 絶対に……」 「アハハ♥ 貴女ってばそんな目も出来るのね? いつもニコニコしているだけだと思っていたから……そんな反抗的な目を見るのがとっても新鮮♥」 「私の妹が必ず来てくれる! 必ず! それまではどんな責め苦にも耐えてみせるわ!!」 「あら残念……そうは言っても、あの呪いの場所はこの村からまだまだ遠いみたいよ? 場所を突き止めていて来ようとしているつもりなら……そろそろこの村の近くに来ていて然るべきよね? そうじゃないって事は……やっぱりまだココを特定しきれていないんじゃないの?」 「妹を舐めないことねっ! 貴女の底意地の悪い性格なんて読み通しているはずよ! 絶対に彼女は来るっ! 絶対にっっ!!」 「まぁ、何か動きがあればすぐに分かるし……“念のための予備策”は打ってあるわ♥ せいぜい……その期待を希望に変えて正気を保つ努力をしてみなさいな♥ その希望が潰えた時……貴女の深い絶望を私への忠誠心に塗り替えてあげる♥」 「負けないっっ!! 絶対に負けないっっ!! 絶対に霊薬なんて作らないっっ!!」  深い地下の底でメリッサの絶叫に近い拒否の言葉が木霊する。  その決意にも似た強い言葉が石壁を乱反射しながら響き渡りやがてその残響音が引いていくと、ミゼル司祭はゆっくりと音を立てずに暗闇の中を移動し始める。  手に道具を持ち……それをユラユラと揺らしながら、彼女の無防備な足の方へと……。

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