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#19 「あら? 分からない訳がないでしょ? だってあんたは自分の意思で奴隷契約を結んだんだから……」  貴方は鈴菜のクスクスと笑う顔を見ないようにと無言で横を向く。すると鈴菜は貴方の向いた方を追いかけるように顔を後ろから覗き込ませ意地悪そうな顔には似合わない無邪気な笑顔を見せ付けてくる。まるで反抗心の芽生えた貴方の調教を楽しみにするかのようなその笑顔は、次の言葉から徐々に陰りを見せ始める。 「まぁ、とぼけるっていうんだったらコッチにも考えがあるわ……。とぼけたり反抗したりする気力も湧かないくらい現実の厳しさってものを教えてあげるんだから♥」  目を閉じんばかりのジト目で貴方を見上げながら鈴菜はヒョイッと身体を下げ、貴方の視界から姿を消す。背後に立った鈴菜はまたクスクスと怪しい笑いを零しながらヒールの音をコツリコツリとわざとらしく鳴らせ、ゆっくり貴方の無防備な背中に近づいていく。 「あんたを買ったオーナーさんはね、綺麗なブロンドの髪をした背の高い美人さんだけど……」  鈴菜はそう言いながら貴方の背中の中心に片手を伸ばしていく。 「隠し持っていた性癖はかなり変態さんなの……」  彼女の細い人差し指の先が貴方の背中の中心にソッと置かれる。貴方は不意に触れられたその刺激にビクリと身体を震わせ思わず手枷に拘束された手を引こうとしてしまう。 「あんたを買い取った後にね、調教師である私にこう依頼してきたわ……」  鈴菜の指が背骨の浮き出た皮膚をなぞりながらゆっくりと縦に線を引いていく。そのフェザータッチな触られ方に貴方の背中の敏感な神経は泡立つ様にゾクゾクし始め耐え難いこそばゆさに尻をくねらせ嫌がる仕草を取ってしまう。しかし鈴菜の指は止まらない。腰の窪みまで撫で下げた指は今度は来た道を戻るように爪の表面で背筋を撫で上げていく。その上下運動は貴方の我慢をすぐに打ち崩し、小さな笑いを口の端から零させていく。 「『くすぐりられて笑い苦しみながらも快感を感じてしまう身体に調教して頂戴』って♥」  首の根元まで焦らすように登ってきた彼女の人差し指はそこで動きを止める。貴方は今までなぞられた刺激の余韻を感じつつもブルリと身震いをし、刺激の止まった指に無意識的に安堵の息をついた。 「そんな依頼を受けたんだから、これからあんたが何をされるのか……簡単に想像つくわよね?」  一瞬止まってくれた指は今度は肩のラインに沿って右に逸れて行き、肩甲骨の部位をなぞり始める。再び動き出した指に貴方はまた身体をビクつかせ、そのじれったさに小さな悲鳴を零してしまう。 「くすぐったい刺激が快感に変わるまで……っと言うことは、当然あんたの拘束された無防備な身体をこの細い指で責め立てなくちゃならないわ……」  肩甲骨の端まで来た指は貴方の肩を円を描くように一撫でし、そしてゆっくりと肩の下側へ向かって滑っていく。 「くすぐったい刺激にとことん弱い箇所を……。そう、例えばこういう……」  肩の下まで降りた指がまた突然動きを止める。鈴菜の言葉もクイズの正解をもったいぶって溜めているかのように止まる。  そして数秒間無言の時間が過ぎた後、突然! 「脇の下なんていう場所をね!!」 溜めた後に吐き出された言葉の強い語圧に合わせるかのように、彼女の右手は突然肩下からその裏にあたる脇の下の部位に滑り込み、そして…… ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョっ!!  胸の横の肋骨が浮き出た皮膚の部位を爪を立てて引っ掻き回し、貴方に強烈なもどかしい刺激を送り込み始めた。  突然のくすぐり攻撃に貴方は構えていたにもかかわらず、口から息を大量に吐き思わず吹き出してしまう。そして吹き出した勢いのまま無理矢理生成された笑いの塊をだらしなく口から吐いてしまう。 「ほ~~ら! こ~~ちょ、こちょこちょこちょ~~♥ これがあんたに執行される調教メニューよ! 笑いたくて仕方のない刺激を休みなく送り続けてあげるから、あんたはそんな風に素直に笑い続けていなさい!」  腕の付け根の筋肉が突っ張るほどに引き伸ばされるような万歳の格好を強いられた余裕のないワキの部位に、鈴菜の細い指達がカサコソと音を立てて這い回る。その指の爪が脇の敏感すぎる神経を横切るように引っ掻いていく刺激は耐え難く、思わず身体が飛び跳ねてしまいそうになるくらいの拒否反応が起きてしまう。しかし、枷に拘束された手足は飛び跳ねようとする身体に抑止を掛け逃げようとしてしまう身体を抑え込んでしまう。ワキのラインを上下に素早く引っ掻き回していく鈴菜の指から逃げられないもどかしさは、貴方に唯一与えられた“笑う”と言う反応だけを助長してやまない。笑いたくないと思っていても笑わされてしまう。笑ってしまう感情を抑えたいと思っていてもどうしても笑ってしまう強制力がそのくすぐりには備えられている。  貴方は無様だとは自分で思いつつも笑うことがやめられない。幼そうに見える調教師の指にいいように笑わされてしまう。それはとても悔しいことだが仕方がない。彼女のくすぐりから逃れる手段が無いのだから……。 「どう? 苦しくなってきた? 肺の酸素が笑かされて全部無くなってく感じは中々辛いでしょ?」  貴方は素直に首を縦に振って笑い悶える。 実際笑いが連続し過ぎて呼気を吸い込む暇が無い。肺の酸素は吐き出されているのに笑いが続くと吸える空気はほとんど無いに等しい。吐き出されるばかりで空気が取り込めないという窒息感は貴方に窒息死すらも連想させ不安感とコレを続けられる恐怖を同時に募らせる。このまま続けられたらいずれ呼吸困難になって死んでしまうのではないか? そのような恐怖が徐々に貴方を支配し始める。 「ほらほら! 笑うのを我慢しようったってダメよ? 笑いたくなくても私が無理やり笑わせ続けてやるんだから♥」  酸素が吸えない息苦しさに生命の危機を感じた貴方は強引に笑いを押し殺そうと唇を強く噛み、必死に笑うまいと我慢をしようと試みる。しかしそういう行為を許さないと言わんばかりに鈴菜は更なる攻撃を貴方に仕掛ける。 「コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ~~♥♥ ほれほれ~! もっと笑い狂いなさい!!」  右ワキばかりを集中してくすぐり回していた右手に加え、今度は遊んでいた左手が左のわき腹に添えられそのピンと張ったわき腹のやわ肉を一気に全ての指でモニュモニュと揉みほぐし始める。その刺激は脇をこそばす刺激よりも遥かに強く笑いを我慢しようとした貴方の口を容赦なく開かせ、先ほどよりも勢いのある笑いを吐き出させていく。  ワキの窪みや脇の下をモショモショとこそぐっていく右手と、わき腹だけを揉みほぐしてくすぐったい刺激を送り続ける左手……その毛色の違うくすぐり方を同時に与えられている貴方にもはや笑いを抑える手段は存在しない。  十字架に抱きついたまま身体をガシガシとぶつけ、手を暴れさせるように振って何かの手違いで枷が外れてくれないかと抵抗を試みる。しかし、頑丈な枷がその程度の力で外れることなど無い。貴方は救われる望みなど無いと悟らされてはいるが腕を振り続けるのをやめられない。 そうでもしていないと、このくすぐったさに正気を保てる自信が無いのだから……。 「アハ♥ あんなに反抗的だったのに……身体の方はずいぶんと素直じゃない。気に入ったわ♥ その刺激に素直な身体……私が徹底的にいじくり回してあげる♪ 覚悟なさい♥」  そう言うと鈴菜は右手と左手の責め方を入れ替え貴方に新たな刺激を加え始める。  今度は右手がわき腹を強く揉みほぐし貴方を大いに笑わせ、左手がワキの窪みや脇の下を優しく引っ掻き回しこそばゆさを増幅させる。その入れ替えを何度も何度も繰り返し、貴方がいよいよ笑いに力が入らなくなるくらいに骨抜きにされたことを確認すると、ようやくそのくすぐりループから一時の開放をしてくれた。  笑いすぎて筋肉が痛い。振りすぎた手も足も枷が食い込んで痛みが走っている。しかし、そんな痛みなど感じている余裕が無いほどに貴方は苦しい呼吸を繰り返す。失い続けた酸素を取り戻すかのように必死に口を開けて涙目になりながら荒い呼吸を繰り返していく。 「どう? 開放された気分は? 無理矢理笑わされるのは苦しいけど……それを止めて貰った時の開放感は凄いでしょ?」  確かに鈴菜の言うとおり、自分の意思で自由に呼吸が出来るようになった時の開放感は凄まじい。今まで自分の意思で呼吸をさせてもらえなかった苦しみが半端ではなく、まるで呼吸を管理されているかのような錯覚にさせ陥っていた。鈴菜の許しが無い限りは呼吸すらまともにさせてもらえない……そんな支配されるような感覚を味あわされていた。  しかし今、自由に空気が吸える。笑わなくて済む……。その開放感たるや枷を外された奴隷のような爽快感。  しかしながら勿論枷は外れていないし拘束は解かれてもいない。奴隷のようなと思っては見たが、実際は(設定上)奴隷契約をしているのだから奴隷であることに変わりはない。 貴方はそこで気づかされる。今の自分は本当に身も心も奴隷なのだと…… 鈴菜の支配から逃げ出すことの出来ない奴隷なのだと……。  そして、ある程度貴方の呼吸が整ったのを見届けた支配者の鈴菜は貴方の顔を正面から覗き込んで、また不敵な笑みを浮かべる。  さぁ、次の調教を始めるわよと言わんばかりのその笑みに貴方は背筋に寒気を走らせる。  きっと嫌だと言っても開放されないことは分かっているのだから、従うしかない。 その無邪気そうに笑う彼女の命令に……。 →→21#へ

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