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#25  映画館やフードコートからはやや距離があり、大きく空いた吹き抜けの通路の丁度対岸に位置する店構えのスポーツ用品店。次に向かう場所の選択権はあなたに譲られてはいたが七穂はこのスポーツ店にも行きたいと思っていたらしく、あなたがこの場所を選ぶと目をキラキラさせながらあなたの手を引っ張り早く行きましょうと急かしてきている。  あなたは七穂の手に引っ張られつつ店の入り口まで辿り着くが、七穂はそこに辿り着くや否や逸る気を抑えられないといった感じでお店の中へ先に入って行ってしまった。  何が彼女をそこまで捲し立てているのか……?  スポーツに彼女程情熱を傾ける訳でもないあなたは、彼女の興奮気味な足取りに呆れる様な息を零す。 「せぇ~~んぱい、見てくださいよぉ! コレ!! あのメジャーリーグで活躍してるオオタニ選手モデルのバットとミットのセットですよぉ! 凄くないですか!?」   七穂が海外の野球事情に詳しいというのは前々からうんざりする程話を聞かされていたから彼女は日本の野球よりも海外の野球の方が好きなんだろうなぁ……とぼんやり思っていたのだが、流石に海を渡って活躍している同郷の選手が活躍しているのを聞くとそちらに興味が向くらしく、彼女も一般の女子同様に連日TV放送されているオオタニ選手の活躍を楽しみに見ている。  そんな選手の野球道具が展示してあると知っていたから、彼女はココにも行きたいと心の底では思っていたのだろう……  では、なぜ自分でそれを言い出さなかったのか? という疑問は残るが……  まぁ、あくまであなたへの罰としてのデートなのだから、今回は自分の“好き”で場所を決めないようにしようとしていたのかもしれない。自分の好きなところに行き過ぎれば……こんな風に罰デートである事も忘れて勝手にテンションが上がってはしゃいでしまうと分かり切っていたからだろう…… 「あ! 見て見て! こっちにはテニスのシャラポア選手の直筆サインが飾ってあります! あっちにはゴルフのウッズ選手のサインもッっ!? 向こうにはNBAのジョーダン選手の限定モデルのバッシュがぁぁ!!」  スポーツに無知なあなたでもなんとなく名前くらいは聞いた事のある有名選手の名を次々に挙げてはそれらの展示物を興味深げに目を輝かせている七穂を見ていると、彼女の有名人好きは野球だけに留まらず様々なスポーツに広がっていたのだなと知る事が出来る。  そして、この興奮具合を見ると……普段あなたに語り掛けて来るスポーツの話題はほんの一触り程度の話しかしてこなかったのだと気付かされる。  いちお……あれでも気を遣ってくれていたのだろう……。喋り過ぎないように……  しかしながら、こんな郊外のショッピングモールの一角にあるスポーツ店になぜこのような有名人のサインやら限定モデルのバスケットシューズやらが置いてあるのかは甚だ疑問だ。  こんな郊外のショッピングモールよりも都心部の大きな専門店で展示すれば良いのに……  などと、七穂とは別ベクトルの疑問と興味を向けショーケースに入れられた展示物を見て回っていると、その疑問は1枚のチラシを見る事で解消されてしまう事となる。 “○○スポーツ店、全店リレー展示会開催中! 〇月〇日まで”  チラシにはそのような触れ込みの文字が並んでいた。  どうやらこれを見る限り、期間限定のイベント的なヤツだった事が分かる。  店のグループが合同でレアなサインやスポーツ用品を回し合って集客目的のイベントを行っている真っ最中だったのだ……  恐らく大元の会社がこれらのモノを一定期間借り受けて、それをグループで回して集客する為のイベントにしているのだろう……  グループ系列店ならどこでも回ってくるイベント……という事は、この店が特別に頑張ってこれらのモノを集めたのではなく、これらのモノはスケジュール通りにこの店にも回ってきていたというだけなのだ。  しかも……この店は集客力がすこぶる振るっていないらしく、ほかの店に比べて展示する期間が長くとってある。展示する期間が長いという事は……逆に言うとこういうイベントを開かないとお客さんが訪れてくれないという事の裏返しだ。  まぁ……ショッピングモールまで来てスポーツ店をわざわざ覗くか? と言われれば、スポーツをやっていない身である今の自分は首を横に振ってしまうのが目に見えている。  そういう人が大多数であるのなら……こういうイベントで少しでも興味を惹こうとするのはするのは分かる気がする。分かる気はするが……有名選手のスポーツ用品やサインが典型的な客寄せパンダになってしまっているのか……と、頭に過ってしまうと、そのイベントの意図が分かってしまったかのようで途端にしらけて見えてしまう。  目の前にあるサインやバットやシューズは紛れもなく本物である筈なのに……  その様な詮索をしてしまうと、何か別のものに見えてしまってしらけてしまう……。  デートの最中なのに店の裏事情を詮索するのは良くないと分かっているのだけど……好きなものを純粋に楽しみはしゃいでいる七穂の様にはなれず、テンションは下がる一方になってしまった。  何も考えずにあの様にはしゃげる無邪気さは……七穂の可愛さのポイントの一つだと言える。  自分の好きなものに一心不乱になれる姿は……子供の様に無邪気で可愛げがある。自分にもそういう無邪気さがあれば……もっと積極的に七穂と付き合える筈なのに……  などと、ますますテンションが下がってしまう自己嫌悪的な反省にまで考えが傾いてしまっていると……展示コーナーからいつの間にか姿を消していた七穂からあなたに「こっちへ来て見て欲しい物が有る」と声での誘いが掛かった。  あなたは展示コーナーの隣に広いスペースが別で設けられている“体験コーナー”と書かれた入り口をくぐり、七穂の声のする方へと足を伸ばした。するとそこには…… 「先~輩~っ見て見てぇ~♪ ほら、このレッグエクステンションっていうマシン! オオタニ選手が普段やってるトレーニングの負荷を再現してくれているんですよぉ!」  野球選手のトレーニング場の風景を模したかのような複数のジムトレーニングマシンが小部屋の中に 複数集まって配置されており、その部屋では実際にそのマシンを体験できるサービスが実施されていた。  七穂は、ランニングマシンやら腹筋をする台やらが置かれているジムマシンの中から“レッグエクステンション”と書かれた脚を鍛えるためのウエイトマシンに実際に乗って動かそうとしていた。  このレッグエクステンションというマシンは、脚の……主に太腿や内太腿などを鍛える為のマシンであり、脚を使う競技である野球などでは重宝されるであろう自主トレマシンだ。  別に太腿が太い訳でもたゆんでいる訳でもない七穂がなぜこのような太腿を鍛えるマシンを選んで座ったのか……と疑問の余地が残りそうだったが、その疑問は彼女の姿を見るなり簡単に解決する運びとなった。  このマシンは、ナナメに傾いた椅子に座って脚を前に伸ばし足首が来る場所付近に用意された二本のバーの隙間に足を通して、そのバーに繋がっているウエイト(重り)を脚の力で持ち上げたり下げたりして鍛えていくマシンである。  普通の感覚なら、気軽にできるマシン体験であるのだから靴など履いたままでそのマシンを動かそうとするのであるが……七穂は何故か馬鹿丁寧にサンダルを脱いで素足になってそのマシンのバーに足を挟んでいる。  それがどういう事になるかというと、説明するまでもないとは思うが……  七穂がウエイトを持ち上げる度に靴も何も履いていない素足の裏も同時に持ち上がってきて……正面から見に来たあなたの視界に嫌でも映る様に見えてしまう。  まるで……あなたに見て貰うために重りを上げているかのように……七穂が力むたびに彼女の可愛らしい足裏がハッキリとあなたの視界に収まり晒されている。  そのあまりに衝撃的な光景を目の当たりにしたあなたは、下がりかけたテンションがV字反転するかのように爆上がりしてしまい、思わず彼女の足裏から目が離せなくなってしまった。 「いやぁ~~~流石に野球選手がやるトレーニングはハードですね♪ 持ち上げるのが……くぅ! やっと……ですよぉ……っハァ♥」  体験コーナーの入り口を入るや否やそのような光景が視界に飛び込んできてしまったのだから、あなたは備える事も出来ないままに不意打ちを受けたかのような興奮に苛まれる事となる。  ウエイトを脚の力で持ち上げる度に太腿のスジや内太腿の筋肉が動いている様子が見て取れるのだが、あなたの視線は鍛えようとしているソコを見るのではなくどうしても彼女の足裏だけに視線が吸い寄せられてしまう。  持ち上げる度に力を込めているのが分かる程浮き出た足裏のスジ……  力がこもる様にとギュッと握り込むように丸めようとしている足の指……  ウエイトの重さに苦しむように左右に暴れる足の爪先部位……  足先の動きに合わせて窪んだり伸びたりを繰り返す土踏まずの肌……  七穂がウエイトを持ち上げる度にその変化に富んだ足裏の姿が拝めてしまう為、あなたは七穂の太腿や内太腿を眺めるよりも足の動きを追うように視線を上下に動かすのを繰り返してしまう。  あまりに唐突に訪れた嬉しいサプライズに、退屈になりそうだと思っていた反動も相まってあなたの興奮は上限を降り切れてしまう程に全身に熱い血を滾らせる結果となってしまった。 「どう……です? フッ! ンン♥ 私の……脚の……力も! フン! くぅ! 中々のもの……でしょ? フフフ♥」  少し離れた所にはマシンの説明をしてくれるガイドのお姉さんがニコリと笑顔を零し軽い会釈を見せながらこちらを見つつ立っている。  あなたはそんなお姉さんの会釈すらも無視し食い入るように七穂の足裏に視線を集中させる。 「ンッ♥ ふっ♥ フフ……。なんか……先輩に見られてるって……感じると……クッ、フッ! ちょっと……だけ……恥ずかしい様な……むぅ! うく……! ムズ痒く……なる様な…………変な……気持ちに……なっちゃう……なぁ♥ ンンっ! ふぅ♥」   部屋の端に立つお姉さんからしてみれば、七穂の言葉は“トレーニングを見られて”小恥ずかしいくらいにしか捉えられないだろうが……七穂の言った言葉の真意は違う。  七穂が見られて恥ずかしいと思っているのは、あなたが食い入るように見つめている足の裏の事で……決して運動して変な声を出している部分でも、汗をかいしまっているという事でもない。  くすぐりフェチであるあなたに……自分の無防備に晒している足の裏を見られるのが……恥ずかしい……。公衆の面前であなたに自分の足裏を性的な目で見られているという事が恥ずかしくてその様に零しているのだ。  その裏を事情を察したあなたは増々彼女の足裏を興奮覚めない様相で見つめてしまう。  きっと、この体験コーナーを見つけて……瞬時に企んだに違いない。  退屈そうにしているあなたをこの体験コーナーで誘惑するのも面白い……と、考えに至ったに違いない。  店のお姉さんが見ていてくれているから、手を出すような事はないだろうと踏んだのだろう……  本命は雑貨屋か映画館での誘惑なのだろうから……それまでにあなたの興奮度を冷まさないようにしてやろうと模索したに違いない。  だから、ココまで大胆に……くすぐりと言えば! な弱点部位をあなたに見せつけられるのだ……  さぁ、くすぐりたかったらくすぐってごらんなさいよ! と言わんばかりに堂々と……足の指をクネクネさせながらあなたを誘っている。  普通の人がこの光景を見れば……裸足になっている彼女の姿に少しはドキッとはするかもしれないが、あなたが感じる程の触りたい欲は湧いてくるものではない。  トレーニングをしている女性に欲情する人種というものも少なからず居るとは思うが、足の裏を見て興奮して襲いたくなっているという人種は限られている筈だ。  だから、今あなたが手を出せば……ガイドのお姉さんもビックリしてしまう事だろう。運動しているだけの彼女の足裏を当然くすぐり始めたら……普通の人だったら理解出来ずに困惑してしまう事だろう。  異端な目で見られる事は間違いない……  だから、手を出すわけにはいかない……  手を出せば……変に思われるのは間違いないし……七穂が嫌がる声を出せば……最悪、警備の人に取り押さえられる事も……  それだけは避けたい。そうなる事だけは避けなければ……七穂だけでなく色んな人に迷惑が掛かってしまう。  しかし……  この誘う様な足裏の動きを見ていると……  我慢しなくちゃ駄目だと分かっていても……手を出したくなってしまう。  運動をしていたせいか……少し汗ばんで見える七穂の足裏……  自ら限界まで足を反って力を込めている彼女の足裏を……人差し指の先でツ~っとなぞって軽くくすぐれば……七穂は吹き出すように笑い出してくれるんじゃないだろうか?  皮膚を張る様に伸ばし切っている土踏まずの肌に指先を留めて……軽くコチョコチョ動かしてくすぐってみたら……きっと七穂は耐え切れずに大笑いしてくれる事だろう。  その姿……想像しただけで興奮してしまう。  挑発するように差し出しされた足裏を……お仕置きするようにくすぐって七穂を笑わせるシチュエーションを浮かべただけで心臓の高鳴りが抑えきれなくなる。  興奮でついつい指先に力がこもってしまう。この指を足裏の肌の上で思う存分動かし七穂の事を笑わせてしまいたいと強く思ってしまう。  もういっそ……触ってしまおうか?  お姉さんに止められても……警備の人に連れて行かれてもいいから……思う存分欲を解放してしまおうか?  と、自制心と欲の狭間に亀裂が生じ始めた危ういタイミングで、このもどかしい誘惑にお姉さんの一言によって終止符がもたらされる。 「お客様~♥ お時間10分経ちましたので、申し訳ありませんがこちらの体験時間は終了となります~~♥ ご利用ありがとうございました~」  どうやら、このマシン体験は時間制限が設けられていたようで……先にこのマシンを使っていた七穂は持ち時間の10分を使い切って終了を宣告されてしまった。  あなたの視線を感じて恥ずかしさと淫靡な感情の両方を同時に味わっていた七穂は頬をピンク色に染めつつ脚の運動を続けていたが、お姉さんのその声掛けによってハッと我に返る様に驚いた表情を作って、指示に従うようにいそいそと足をバーから外し傍に置いてあったサンダルを履き直して椅子から立ち直した。  恥ずかしさを胡麻化すようにスカートの皺を払うようにパンパンと叩きながらあなたの元へ駆け寄った彼女は、顔を火照らせたままあなたに向けて小声で「……もうちょっと見せつけてやりたかったんですけどねぇ~~残念♥」と囁き、チラリと舌を見せて部屋の出口へと独りでさっさと歩いて行ってしまった。  あなたはヤレヤレと息を吐いて七穂の後を追おうと振り返ろうとした……すると…… 「アレ? お客様ぁ? お客様は体験なさらないですか? てっきり順番待ちされているかと思っておりましたが……」  っと、後ろを振り返ろうとするあなたを、不思議そうに見ながらお姉さんが声を掛けて来る。  七穂の運動する姿を食い入るように見ていた為そのマシンに興味があるのかと勘違いされたようで、あなたは自分の邪な考えを悟られる前に逃げなくちゃと考えそのお姉さんに丁寧に断りの言葉を告げ逃げるようにその場を後にした。  体験ルームの外では七穂があなたの戻りを壁にもたれて待つ様子が見て取れた。  あなたは七穂の傍へと歩み寄り待たせた事を軽く謝ると、再び七穂と手を繋いでスポーツ店の中を見て回った。  店内を見ている間……あなたは頭の中に先程の七穂の足裏を鮮明に思い出し、触らなかった事への後悔の念を巡らせていた。  あの時……やっぱり躊躇せず触っておくべきだった……  展示物を見てあーだこーだと話している七穂の声を片耳に入れつつ、あなたはそのような事ばかりを頭に浮かべ続けていた。  結局……気を紛らわすために訪れた筈のスポーツ店で、思う様な成果を得るどころか逆に悶々な気持ちが高まる結果となってしまったあなたは、店を後にしてもその気持ちを切り替える事は出来ず胸をざわつかせたまま彼女のリクエストである“雑貨屋”へと向かう事となってしまった。  このような心持ちで……罠が待ち構えているであろう店に行くのはマズい気がしてならない。  理性がちゃんと働いてくれるか……自分の事でありながらも、それすら制御できるか自信が湧かない。  自分の事が自分で信用できない……  この店に入った事でその思いは強まるばかりで、なんの気休めにもならなかった……  あなたは期待と不安を混ぜ込んだ溜息を深く吐き、雑貨屋の入口へと七穂と歩いていった。  まるでこれからお化け屋敷にでも入るかの様に……未知の出来事への不安と言い知れぬ高揚感があなたの心臓を再び高鳴らせ始める。  お店入る前に……七穂があなたへボソリと小声で呟きを入れた。 「私……ココで探してるモノ……あるんですよぉ♥」と。  その何かしらの企みが込められたような甘い囁きに……あなたはゾクリと寒気を背筋に走らせた。  探しているモノが何であれ……きっとろくでもないモノなのだろうと簡単に想像がつく。  その様な笑みを浮かべて……七穂は囁いたのだから……  むしろ、それを悟らせるようワザと甘く囁いたとも取れてしまう。  あなたは改めて生唾を飲み干しつつ七穂と共に店内へと足を踏み入れていく。  薄気味悪い企みが渦巻く店内へと……ゆっくりと……  →#26へ

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