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#24  カジノか風俗店を思わせる華やかでカラフルな電飾が施されている入り口を通ると、中のフロアはショッピングセンターとは切り離された別の世界が広がっていた。  少し薄暗いフロアの中は機械から発される光と蛍光色のスポットライトが入り混じった独特の明かりが照らし、そこかしこから聞こえる電子音や機械の制御音……楽しい雰囲気を盛り上げるEDM調のBGM……親子、夫婦、カップル、友達同士など様々な年代の男女がゲームに熱中している様を見ると、ここがショッピングモールの中である事をしばし忘れてしまう程に異質な空間に見えてならない。  雰囲気がそういう感じであるからか、この独特の空気感に呑まれる事になってしまった七穂とあなたはフロアへ足を踏み入れた瞬間からテンションが上がってしまい、UFOキャッチャーに始まりレースゲームやら音楽ゲームやらシューティングゲームやらを楽しみつつ時間が経つのも忘れて遊び倒した。  対戦するゲームであれば勝負の行方に一喜一憂して煽り合ったり……、協力して敵を倒すゲームでは大きな敵を倒すまでは夢中でコンテニューを繰り返してワーワー言いながらプレイしたり、七穂が欲しいと言った景品のぬいぐるみを取る為に二人でお金を出し合ってUFOキャッチャーに挑んだり……得意なゲームの腕を見せて七穂を感心させたり……逆に七穂の音楽ゲームの上手さに感心させられたり……  実に健康的で爽やかなカップルが行う様なゲームセンターの楽しみ方を二人で満喫して時間を過ごしていった。  流石に遊びとはいえ身体を動かしたり声を上げて喜んだりを繰り返していると疲れが出て来るのは仕方がないもので、一通りアクティブなゲームを楽しんだ後は休憩の意味を込めて座って楽しめるゲームに移行する事となり、あなたと七穂はメダルゲームのあるコーナーへと足を踏み入れる事となった。  フロアの最奥に位置するメダルゲームのコーナーは大人のゲームという印象が強く遊ぶ年齢層がグッと上がる為、メダルゲームフロアは大人向けに落ち着いた印象を与える雰囲気が漂っている。  更に薄暗くなった電飾……スポットライトの色も紫色や赤やピンクなどアダルティで怪しい色使いが増えている。  あなたと七穂は遊べる時間を考慮して300枚ほどのメダルを借り、それをそれぞれカップに入れどっちが時間までに枚数を増やせるのかの勝負をジュースを賭けて行う事となった。  あなたはメダルを持ってメダルゲームのメインであるプッシャー系(メダルを投入して機械の壁に押させてメダルを押し出させるマシン)の大型筐体に座り、ジャックポットを狙う為手持ちのメダルを次々に投入して短期決戦を挑み、一方の七穂は壁際に設置されていた機械式のスロットマシンに座り一撃必殺の大量獲得を狙う作戦に出た様子だ。  メダルプッシャー系のマシンは、入れるメダルの枚数に対して押し出されるメダルの数は少なく……どうしても資金が先細りしてしまうゲーム性にはなるのだが、中に搭載されているスロットやらチャレンジやらをクリアすると大量獲得のジャックポットを狙う事が出来る。短時間でしかも少ないメダルでそれを狙うのは難しいというのは分かり切ってはいたが……このプッシャー系のマシンは多種多様の演出やゲーム性が搭載されていて遊んでいて楽しい。どうせゲームをやるんだったら楽しい方が良いに決まっている……と考えたあなたはその考えに従うようにコレに座ったのだが……  楽しいと思う気持ちとは裏腹にメダルはどんどん機械の中に吸い込まれていき、や300枚のメダルはあっという間に残り数十枚まで減り細ってしまった。  分かっていたといえ……ものの15分ほども遊んでいないのにメダルが尽きて来るとは思わなかった……。  あなたは徐々底が見えて来ているメダルカップを苦々しく覗き込みながら今まで豪快に投入していたメダルの量を見直し、1枚1枚丁寧にメダルを投入して少しでもメダルが押し出されるようチマチマと遊ぶスタイルに切り替えていった。  まぁ、そんな遊び方で都合よくジャックポットなど引けるはずもなく……あれよあれよの内にメダルはなくなっていき……とうとう手のひらに乗るくらいの量まで追い込まれる事となった。  正直……これだけ少ないメダルではどうしようもないは分かり切っている。人海戦術よろしく大量投資、大量獲得……というのがこのゲームの醍醐味なのだから、この様な少量のメダルでは数枚のメダルを落とす事は出来てもジャックポットなど夢のまた夢である事は火を見るより明らかである。  この少ないメダルを持って競馬のゲームとかに移動しようか……  それとも七穂と同じようにスロットかポーカーマシンに入れて少しでも増やせるよう努力すべきか……  メダルを入れながらもそのように悩んでいると、スロットコーナーで遊んでいた七穂が何やら上機嫌であなたの席の隣にドカっと座ってきた。  そして持っていたメダルカップを席の目の前にあるメダル置きのスペースに倒すと、カップの中からジャラジャラと大量のメダルがそのスペースに散らばっていく様子をあなたに見せつけてきた。 「へへ~ん♥ この勝負……私の勝ちですね♪」  複数のカップに入っていたメダルを次々に零していき、目の前にメダルの山を築いていった七穂……そのメダルの総数は最初に持っていた300枚を遥かに超え倍以上の枚数まで膨れ上がっていた。 「いやぁ~~僅か数枚でセブンが揃っちゃったんですよねぇ~♪ そこからはず~っと出っ放しで……止まりませんでした♥」  まさかスロットマシンでメダルを増やしてくるとは思いもよらなかったあなたは、自分が残していたなけなしのメダルが七穂の築いたメダルの山の中に埋もれて山の一部となっていくのを呆然とした表情で見ている事しか出来なかった。  ここまで圧倒的な差を見せられてはグゥの音も出ない。まさか七穂に博打の才能があったとは思いもよらなかった。  この勝負は流石に負けを認めざるを得ない。こんな圧倒的なメダルの枚数を見せつけられては……ここから逆転するなどと言う考えすら浮かぶ余地がない。  あなたは素直に負けを認め七穂がリクエストしたジュースを自販機で購入し、再びメダルゲームの席に着いた。  席は二人用の椅子であり、七穂が隣に座っている。二人用の椅子ではあるが大きすぎない設計である為二人でその椅子に座ると肩が触れ合う位に狭く窮屈ではある。  隣同士に座ると……嫌でも肩や腕が触れ合ってしまう……  あなたは座った直後にその事に気付かされ、再び意識が七穂の身体に向いてしまう事となる。  七穂はプッシャー系のメダルゲームをするのが初めてだったらしく、メダルを入れるのに夢中だ。  自分で稼いできたメダルの山をあれよあれよという間に削りつつ機械に投入しゲームの面白さに一喜一憂している。  そんな彼女がメダルを入れる仕草を取るたびに、あなたの肩に彼女の肩が触れて来る。  メダルが押し出されて大量に落ちて来ると、あなたの腕を握って喜びを表現してくる。  中のスロットが当たればあなたの背中を叩いて喜んだり……ジャックポットの抽選を受けているドキドキするタイミングではあなたの腕にしがみつくように腕を回して身体を密着させて見守ったりとあなたにこれでもかとボディタッチをしまくって天然の誘惑を掛けて来る。  七穂は意識してそれをやっている訳ではないだろう。普段からボディタッチは多い方ではあるからこれくらいのスキンシップは当たり前にやってはる……。しかし、こんな薄暗く妖しい雰囲気の中……これ程密着した空間でそれをやられたら……正直、ゲームに意識を向けろというのは無理な相談だ。普段以上に腕やら手やらを気軽に握ってくるし……なんなら太腿に手を置いたり揺する様に触ってきたりもしてきている。  こんな状況に置かれてあなたの欲情が目覚めない筈がない。七穂の身体に触りたいと思ってしまう欲が湧いてこない訳がない。  これだけボディタッチを繰り返してきているのであれば、こちらも少しくらい手を出してしまっても文句はない筈だ……  この先程から触れ合ってる彼女の肩に……手を回して抱き込むような仕草をしても……七穂は嫌がらない筈だ……  せめて触れている分のお返しだけでもさせて貰いたい。この柔らかい二の腕をどさくさに紛れて摩るくらいのお返しをさせて貰いたい……  そして、あわよくば……  二の腕の内側に指を這わせて……  そのまま腕の付け根の方までその指を移動させて……  七穂のあの可愛いワキに……指を滑らせて触らせて貰えれば……  きっと柔らかくて温かくて少し汗でしっとりしているであろう……七穂のワキを……このどさくさで触ってしまいたい!  今ならバレないかもしれないから……怪しまれないようさりげなく……手を……  っと、あなたは欲に負け、メダルを持っていない左手を七穂の二の腕へと接近させる仕草を取ると…… ――ガシッ! ギュッッ!!! 「せ~~ん~~ぱい? この手ぇ……何ですかぁ? 何をしようとしてましたぁ?」  メダルの投入に夢中になっていた筈の七穂が突然あなたのその手を取り、手の甲を抓りながらジト目であなたの方を睨み始めた。 「今どさくさに紛れて私の事触ろうとしてたでしょ! 全く……油断も隙もありませんねぇ~!」  バレないようにゆっくり手を動かしていた筈なのに……なぜバレてしまったのか!?  あなたは七穂の反応の速さに驚き、捕まってしまった手を振りほどいて間髪入れずにそれは誤解だと言い訳を入れ始めた。  抓られ赤くなった手の甲をワザとらしくフゥフゥと痛むふりをしつつ「七穂と同じで、メダルが増えたのが嬉しくてついボディタッチをしようと……」ともっともらしい言葉を零そうとするが…… 「メダルが増えたぁ? へぇ~~? コレの何処が増えたって言うんですかぁ?」  あなたの言い訳に対してねっとりと反論を返す七穂の言葉……あなたはその言葉に誘導され先程まで山と積んであったメダル置き場に視線を移してみると……  無くなっている。  あれほど大量にあったメダルの山が……今は見る影もない程に数枚のメダルしか残っていない……  そう……メダルは七穂の豪快な使いっぷりによって瞬溶けしてしまっていたのだ。  プッシャーの動きやメダルの隙間を埋めるなどテクニックを要する投入の仕方を一切行わず適当にメダルを入れまくってしまった結果……あなたが妄想の中に浸っている間にメダルはすぐに底をつき七穂の興奮もメダルの減少と共に収まってしまっていたのだ。  メダルも触らずゲームをしようともせず七穂の身体に触れる妄想をしていたあなた……そんな時に手を出そうとしたものだから七穂はあなたの下心に敏感に気付いてしまったのだ。 「先輩が心ここにあらずの間に……メダルなんて使いきっちゃいましたよぉ? 当たったのは最初の方だけで……後はメダルが吸い込まれる一方でしたからねぇ~!」  ズイっとあなたの顔を下から睨み上げて来る七穂……  あなたは身体を引いてしまう位にその迫力に負け冷や汗を額に浮かべてしまう。 「今……私の腕を掴もうとしてましたよねぇ? 触っていいって……私……言いましたっけぇ?」  その様に詰められれば何も言い返す事は出来ない。  このデートはあくまで罰なのであり、ルールは七穂が決めるのだ……  だから、逆らう事は出来ない。 「今のは未遂に終わりましたから、特別に許してあげますけど……次、勝手に触ろうとしたら許しませんよ? 良いですね?」  あなたはウンウンと勢いよく首を縦に振り七穂に許しを乞う。  七穂はそんなあなたの頷きを見てフゥと息を一つ吐いて睨み目をリセットしてくれた。 「まぁ……私も先輩の事勝手に触ったから……あまり文句が言える立場ではありませんけど……勝手に手を出さないというのはこのデートのルールです。先輩はちゃんとそのルールを守って下さい?」  呆れるような口調でその様に促すが、七穂の顔はほんのり桃色に染まっているのが暗がりでも分かった。  なぜかモジモジして……なぜか恥ずかしそうな目をしてあなたを見ている。 「もしかして、私の二の腕とか……触りたかったんですか?」  小声でその様に零した七穂に、あなたはウンと力強く頷きを返した。 「だったら……少しだけ……。触っても……イイですよ……♥」  あなたの返事にそのように返した七穂は、顔を隠すようにあなたから背けつつもソッと片方の腕をあなたの目の前に伸ばし拳を握って触るよう促した。 「……でも、ワキは駄目ですよ? 腕だけ……です。二の腕……だけ♥」  触る許しを得たあなたは、その差し出された七穂の腕を緊張の眼差しで見つめ……ゴクリと息を呑み早速手をその腕に近づけていった。  七穂は緊張しているのか……こぶしを握った手を僅かに震わせている。 「腕だけ……本当に腕だけ……ですからね?」  念を押してくる七穂に再び頭を縦に頷かせたあなたは、七穂の腕を片方の手で支えるように持ちもう片方の手で彼女の腕の付け根付近の肌を包むように手で握って見せた。 「……ンッ♥ くぅ……」  モチっとした触感の七穂の肌。その肌を指で揉むように触ると、七穂は何やらくすぐったそうにピクンと身体を揺らし声を押し殺した。  二の腕とはいえ……少し指を動かせば簡単にワキに触れてしまうようなそんな際どい箇所……  触れている人差し指は彼女のワキに最も近く、明らかに高くなっている体温をその指先に感じる事が出来る。  このまま……わきにも指を這わせて……触ってみたい……  そのような衝動に強く心が突き動かされてしまうが……つい今しがた七穂に怒られたばかりで、その様な節操ない行動に出る訳にはいかない。  指先に七穂のワキの幻触を感じ妄想が膨らんでしまうが……これ以上の手出しは行わないよう自分に言い聞かせ、名残惜しさを残しながらも彼女の腕からゆっくりと手を離していった。 「……少しは……満足……してくれました?」  腕から手を離すと……背けていた顔をあなたの方に向き直して七穂がその様に言葉を零してきた。  あなたは再びウンと頷いて、七穂の腕を触れたことに満足した旨を返事として返す。 「だったら……私も……嬉しい……かな?」  頬を赤らめ照れるようにニコリと笑みを返す七穂……。そのはにかむ笑顔は自分に向けられた何物にも代えがたい可愛い笑顔である事を改めて感じさせられた。  この笑顔をもっと見たい。  いや……この笑顔だけでなく……もっといろんな七穂の笑顔を見てみたい……  笑わせてみたい……  自分の為に笑ってくれる七穂を……自分の手で生み出してみたい……  もっともっと……七穂を自分の手で笑わせていたい……  あなたは彼女の笑顔を見て癒されると共に、そのような劣情も同時に湧き立たせる事となった。  その想いが成就するかしないかは……この後のデートの結果に掛かっている。  時間は十分に潰せただろう……  後は彼女が行きたいと言っていた“雑貨屋”へ行って……映画を見て終わりの筈だ……  ココを耐えれば……七穂を自由に出来る。  自分の手で……七穂を笑わせられる権利があともう少しで手に入る。  頑張らなければ……  意地でも我慢しなくては……  気を紛らわそうと入った筈のゲームセンターだったが、あなたはココへ入る前よりも七穂に対する欲は高まってしまった。  欲は高まってしまったが……それと同等に我慢する為の気力も装填された。  後はこの気力が何処まで持つか……理性がいつまで働いてくれるか……  雑貨屋での誘惑がどんなものになるのかは想像すら出来ないが、まずはココを我慢しないと始まらない。  あなたは理性が吹き飛ぶ不安を抱えつつも、そこはかとなく期待を膨らませながらゲームセンターを後にした。  そして二人で手を繋ぎながら向かった先は……  七穂が指定してきたあの雑貨屋の入り口だった。  →#26へ

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