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#16  七穂の体温が直に感じられる柔らかで張りのある肌を掴んでいたあなたの指は、彼女の緊張の表われでもある小刻みな震えをその指先に感知するや否やまるで理性を失ってしまったかのようにその指先をくねらせ始めてしまった。  白い柔肌に指先を沈め切って、身体の内側から揉み解す様な感覚をイメージしつつ彼女の横腹でパンをこねるようにモニョモニョと力を込めて刺激を加えるあなたの指。  その突然の謀反のような刺激に七穂は一際大きな震えをビクンと全身に走らせ、思わず爪先立ちを解除し姿勢を崩してしまう。 「ちょっっほっ!? せ、せ、せんぴゃいっっひ!? 約束がっっ……はひゅぅっッ!!!!」  手を真っすぐに頭上へ伸ばし万歳の格好であなたに脇腹を差し出す格好となっていた七穂は、あなたのその不意に行ったくすぐり攻撃に何の抵抗も出来ず刺激をモロに受けてしまう事となる。  棚にほぼ密着するように立っていた七穂はそれ以上身体を前へ出してあなたのくすぐりから逃れると言った防御策を取る事は出来ない。くすぐりながらも結果的に七穂の身体を支える形にもなっている為、彼女は身体を後ろや横に逃がす事も出来ない。それに……足場も狭い為、大きな動きをすれば更に身体のバランスを崩して落ちかねない。だから、あなたのこの無慈悲な攻撃を受け続ける事を余儀なくされてしまう。 「だはっ! はひゃははははははははははははは!! やだっっはははははははははははははははははははは、しぇんぱいダメ! やめでぇへへへへへへへへ、ホントにくすぐるの無しですよぉぉ!!」  凝った筋肉を解していくかのように七穂のピンと張った脇腹の柔肌を軽快にくすぐっていくあなたの指先。その刺激は七穂の笑いのツボにクリーンヒットしてしまったようで、彼女は身体をジタバタさせつつ顔を天に向けて反らしながら大笑いを吐き出し始めた。 「やは~~~っはははははははははははは、く、く、くす、くすぐったぁぁはははははははははははははははは、くすぐったいぃぃひひひひひひひひひひひ!! 先輩の手の動きぃぃっっ滅茶苦茶くすぐったいぃぃぃぃ!! はにゃはははははははははははははははははははははははは!!」  身体を捻る事も暴れさせる事も許されない七穂は、必死に足場の上で地団太を踏みながらあなたのくすぐりに可愛い笑い声を返してくれる。その可愛さたるやあなたが求めていた反応ド直球であり、いつか自分の手でさせてみたいと思っていた笑顔そのものだった。 「おほ~~ぅほほほほほほほほほほほほ! ほひぃひひひひひひひひひひひひひひひひ!! ちょっっ待っっへへへへへへへへへへへ、落ちちゃうぅぅ! 足に力入んなくて落ちちゃいますぅぅっっふふふふふふふふふふ!!」  七穂はすぐに手を降ろし、脇腹をくすぐっているあなたの手を引き剥がそうと抵抗し始める。しかし、あなたの手は七穂の脇腹を食い込むように掴みつつくすぐりを行っている為、笑って力が思う様に入らない七穂の手ではあなたのくすぐりを引き剥がす事は出来ない。 「あはっっっははははははははははははは、ひぃひぃ! くすぐったぃぃ! くすぐったひひひひひひひひひひひひひひひひひ、もうダメ、もうやめて! もうやめてぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ウヒ~~~ッヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」  あなたの手の甲を叩いたりつねったりしてどうにかくすぐりを止めようと必死な七穂だが、そんな些細な抵抗ではあなたの積年募っていた“七穂をくすぐってみたい”という欲の強さを止める事など出来やしない。  抵抗すればするほど、あなたの手は“七穂をもっと笑わせてやろう”と言わんとするように力強く彼女をくすぐり続けていく。 「もうぅっしつこいぃぃひひひひひひひひひひひ!! 先輩しつこ過ぎィィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、あがはははははははははははははははははははははは、ひぃひぃ! いひぃぃぃっっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!!」  暴れればそれだけ脇腹の皮膚の筋がくねって、あなたの指先への肌の触り心地に変化をもたらしていく。腕を上げていた時は張りや抵抗感の強いピンとした肌感を感じていたが、手を降ろしてジタバタしている時の彼女の脇腹は柔らかくムニムニっとした餅をこねているような感触に変わる。どちらの肌も触り心地は最高であり……七穂の上気していく体温や滲み出て来る僅かな汗も相まってあなたは指を動かすだけで多幸感を得てしまうまでに意識が指先に集中してしまう。  あなたの手を叩く七穂の抵抗も、手の甲に“僅かな痛み”という新鮮な刺激として伝わり、あなたの多幸感にスパイスを添えてしまっている。  もはや、この指を動かし彼女の肌を触るという動作自体が興奮の起爆剤となっており、自分の意思ではこの動作を止める術が見つからない。 『何もきっかけが無ければ永遠に指を動かし続けてしまう』  と、あなたは、いけないとは思いつつも止められない手に制限を付けようともせず七穂の脇腹をくすぐり続けたのだが…… 「もぉぉほっほほほほほほほほほほほほほほほ、先輩しつこいぃぃひひひひひ!! その手を止めないならこっちも力づくで止めますよっッ!!」  その様に笑い悶えながら七穂は何を思ったか右手を再び頭上へと挙げる動作を取り始める。  まさかくすぐられると分かっていながら自分から手を再び挙げるような行為に出るなど思ってもみなかったあなたは、コレはもしや……口ではあの様に言っているが本当はあなたにもっとくすぐって貰いたいという意志表示を始めたのでは? と勝手な解釈をし、ならばと言わんばかりにくすぐる手を更に強めて彼女の要望に応えようとした。  しかし七穂は伸ばした手の先に触れた本を摘まんで勢いよく引っ張り出すと、あなたの幻想を冷まさせる一撃をその本にて繰り出す事となる。 「このっぅ! いい加減にぃぃひひひひ……しろっ!!」 ――ゴスッ!!!!  七穂の怒り口調のすぐ後にあなたの頭上に何やら鈍い痛みが突き刺さり視界が一瞬にして真っ白に染められてしまう。  あなたはその一撃で「何事か!?」と頭を押さえて七穂の脇腹から手を放してしまうが、その頭の上に刺さった痛みの正体が七穂の手から放られた“本”であった事が地面に落ちて来たソレを見て確認が取れた。 「ハァハァハァ! 先輩……目は覚めましたかぁ~?」  その痛みで一気に現実に引きも出されたあなたは、頭を摩りつつ低い声で怒りを露わにする七穂の顔に視線を合わせた。  彼女は自分の脇腹を隠すように両腕を回し、少し前屈の姿勢にしてあなたを警戒するように立って睨んでいる。 「やってくれましたねぇ~。まさか本当にくすぐってくるなんて思いませんでしたから、油断して思いっきり笑っちゃったじゃないですかぁ! 私にこんな恥をかかせて……タダで済むと思ってませんよねぇ?」  現実に戻されたあなたは、必死に七穂への謝罪を繰り返しつつ彼女が踏み台から降りるのを手を差し出して丁寧にサポートしようとする。  しかし、七穂はご機嫌ナナメである事を見せつけるかのようにその手をパシンと払い除け、あなたの顔を下から覗き込んで睨みを利かせ続ける。 「あぁ~~~あ、折角これから先輩と楽しく昼食を取ろうと思っていたのにぃ~? こんな事されたらデートどころじゃなくなりましたよねぇ?」  あなたは床に落ちた本を拾い上げそれを棚の元あった場所へと戻そうと手を伸ばす。  するとそれを止めるかのように七穂が挙げそうになっていたあなたの手を押さえつけ…… 「床に落ちた本は商品として価値が下がっちゃいますよね? 誰も、床に落ちた本を買いたいなんて思いませんよねぇ?」  と、あなたに脅しをかけ始めた。 「この本を落としたのは私ですが……落とさせたのは誰が原因ですか? それくらい分かりますよね? 誰かさんが私の脇腹をコチョコチョくすぐったのが原因だって……分かりきってますよねぇ? だったら誰がこの本を買うべきか……言わなくても分かりますよね? 約束を破った罰を受けたい人がココに居そうですし……」  顔を近づけ睨み目で圧をかけてくる七穂に、あなたはタジタジになりながらも言わんとする事を理解し、その本を本棚に戻すのではなくレジに持っていくことを余儀なくされた。  中々の値段がする心理学の専門書を購入しそれを七穂に渡してあげると、七穂はそこでようやく機嫌を直してくれたのかいつもの笑顔をあなたに向け本屋を後にした。  本屋を出た後は、予定していたこの先のデートは全てキャンセルとなり……彼女と約束した通り、我慢できなかったお仕置きを受けるために彼女が予約したというホテルへと向かう事となった。  ホテルへと向かう電車の中で、七穂はすっかり機嫌を取り戻したようであなたと他愛ない話をして最寄りの駅まで降り立つが、あなたは彼女の話よりもこれから行われるであろう仕置きの事の方が気になって仕方がなかった。  一体……どんなホテルでどんな部屋に入れられどんな仕置きを行おうとしているのか? その事ばかりが気になって七穂との会話に集中など出来ない。  そうこう考えている内に目的のホテルへの前へと辿り着いたあなたと七穂……  キラキラと怪しげなピンク色のネオンが煌々と光るいかにもという雰囲気のそのホテルの入り口にあなたは入る事を躊躇するが、七穂はそんなあなたを気に掛ける様子もなく手を引っ張って入り口の中へと入っていった。、  入り口に入ると暗証番号を入れてロックを解除するタイプの小さなロッカーが靴棚の様に並んでおり、七穂はそのロッカーから予約した部屋番号の扉を開き中から部屋の鍵を取り出した。  その鍵を持ってエレベーターへと乗ったあなたと七穂は、ホテルの最上階である七階へと降り立ち、704号室と書かれた真っ赤な扉の前に二人で手を繋いで立った。  他の地味な扉とは明らかに違う、そこだけ主張するように真っ赤で高級感ある装飾が施された部屋の扉……  七穂はあなたの緊張する顔を見上げながらも、口元に笑みを携えながらドアに鍵を差し込み部屋の入り口を開けてあなたに部屋の中の様子を見せた。  扉が開くと自動で部屋の電気が点き、中の様子が鮮明に視界に入ってくる。  部屋の中は扉の高級感から想像できない程おどろおどろしく……見た目にも圧迫感を感じさせる小物が置かれていたり部屋の色使いもそれに準じた怪しい色があしらわれていた。  黒を基調とした壁紙に赤いラインがX字に入っている怪しい空間。その空間の中央には中世で拷問に使ってきたかのような肘置きに鉄枷のついた椅子や石を切り出して作ったようなベッド……更には鞭や蝋燭などの調教器具らしきものも棚に並べてあったりと、あなたを怯えさせるのに十分な道具達が部屋の中には備えられていた。 ――ギィ…………バタン。……ガチャ……ガチャン!  部屋の様子に呆気にとられながらも、七穂の誘導に従って扉の中へと誘われるように入っていったあなたに扉はあなたを部屋から出さんとするように勝手に閉まり自動で施錠を行う。  あなたは閉じ込められた危機感が増し、扉の方を振り返ってドアノブを触ろうとするが……その手を七穂に止められる。 「せぇ~~ん、ぱい♥ ほら……そっちは違うでしょ? 先輩は……コッチ♥ 私と……コッチの部屋に行って……楽しいコト♥ い~~っぱい、しましょうね?」  七穂の笑みに影が差し込んでいく。  甘く……蕩ける様な声であなたを誘っているが……その言葉の語尾には力がこもっており、あなたに拒否権など無いと暗示するように手首をしっかりと握って放そうとしない。  彼女らしからぬ強引な力であなたの身体を引き寄せ、部屋の中へと一歩一歩ゆっくりと引っ張って誘導していく。  その様はまるで罪人を処刑台に連行する処刑人の様……  あなたは心臓を張り裂けんばかりに高鳴らせ、七穂と部屋の中央へと入り込んでいく。  部屋の中央には……十字架を模した拘束台が地面に頑丈に固定されて立っていた。  罪人を磔刑に処す為に作られたであろう赤黒い色をしたその十字架に、七穂はあなたを連れて近づいた。  そして…… 「さぁ、先輩? 早速ですけど……上着の方は全部脱いでこの十字架の前に立って貰えますか?」  と、床に置いてあった服入れ用のカゴを指差し、七穂はジェスチャーであなたに服を脱ぐよう催促した。 「あ、勿論……分かっているとは思いますけど……服を脱いだら、先輩の身体をソレに拘束させて貰いますのでぇ~そこに立ったら手を左右に大きく広げて枷に手首を合わせて待っていてくださいね?」  七穂はその様に言い、あなたが服を脱ぐのをニコニコ笑みを浮かべながら見守った。  彼女の前で服を脱ぐなど普通であれば恥ずかしくて顔を火照らしてしまいそうなものだが……それよりも部屋の異様な光景の方があなたに恐怖を植え付けており、恥ずかしいと思う感情よりも不安を浮かべる事の方が優先されてしまう。  あなたは不安な気持ちを抱えながらも指示通りに羽織っていた上着とインナーを全て脱ぎ、上半身裸になって十字架の前に立った。  天井まで届きそうな勢いのある高い丈の上部と、あなたの首上くらいの位置でクロスしている横の柱部分……  そのクロスした横柱の両先端には、ココに手首を“はりつける”と言わんばかりの金属製の手枷が埋め込まれ備え付けられている。  手をその枷に合わせるように伸ばして十字架を背中にして立ってみると、腕は平行ではなく少し斜め上に挙げるような格好となり、ワキのラインを無防備に晒す事となってしまう。  腕を挙げた途端にその腋を守れないという無防備な感覚が不安に感じ始めたあなたは、思わず手を下げようとしてしまうが……あなたの右手の所に立っていた七穂は、あなたが手を挙げるや否やその手首の所に枷を即座にはめつけてしまい、あなたの右手はすぐさま十字架と一体になる様に動かせなくさせられてしまった。  突然の拘束に驚いたあなたは、何とか左手だけでも拘束されまいと抵抗しようとするが…… 「ほ~~ら、先輩? 暴れちゃ駄目ですよぉ~? 左手も大人しく……拘束されて下さい? ほぉ~ら♥」  七穂の手に掴まれたあなたの左手は、彼女の目力に逆らえず再び横柱の端の枷まで伸ばす事を余儀なくされ、あれよあれよという間に枷に錠まで掛けられ両手の自由を奪われる事となってしまった。  腕を左右に大きく開いた格好で拘束されたあなたは、そのまま足元の枷に足首を拘束され首にも専用の枷を巻かれ完全に十字架と一体になるよう拘束が施されてしまった。  上半身を裸にされて磔にされたあなたは、途端に「抵抗できない」という意識が自覚されられ焦りと不安が加速していく。  まさか、こんなにも本格的な拘束をしてくるとは思いもよらなかった。  手足だけじゃなく首元にまでも枷が嵌められ、首を動かそうとすれば喉下に枷の端が食い込んで途端に呼吸がし辛くなってしまう。それ故に上半身は体はもとより顔さえも自由に動かす事も許されない。まさに罪人として磔られたと言っても過言ではない。  今なら七穂に何をされても何の抵抗もできない……  七穂にどんな事をされても……どんな仕置きを受ける事になっても……それから逃げる事も許されない……  これから先……あなたをどうするかは七穂の裁量に全てが委ねられるのだ。  七穂が……許してくれれば、すぐに身体を自由にしてくれるかもしれないが……  もしも七穂が……あなたの想像以上に仕置きに熱を込めているのなら……  もしも……七穂が……あなたが考える以上に……仕置きを楽しみにしていたとしたら……  この拘束はきっと解いてもらう事はないだろう。  彼女の気が済むまで……  これからどう調理してやろうか? どんな責め苦を与えてやろうか? どれだけ苦しい思いをさせてやろうか……  七穂の妖しい笑みはその様に無言であなたに訴えかける。  あなたは、拘束されてようやく自分の行ったことの愚かさを実感し始めた。  そして、罰を受けてその実感は後悔という念に形を変える事となる。  あの時……やっぱり我慢していればよかった……と、後悔する事になる。  #17へ→

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