Home Artists Posts Import Register

Content

22:快楽と辛苦の狭間に……。そして彼女達は…… 「はぎゃあぁぁはははははははははははははははははは、いひぃ! いひぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! も、もうやめでぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! ばひぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、んくひゃあぁぁあっぁぁぁぁぁあぁぁ♥♥」 ――ビュビュビュビュ! ピュピュピュ…… 「はぁはぁ、はぁはぁはぁはぁはぁ……ゴホッ! ゲホッ!!」 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! 「ひっっ!!? 待っっっっっっべへぇぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! ひぎゃあぁあはははははははははははははははははははははははは、せめで休まぜでぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! ひぎゃあぁぁぁぁああぁぁあははははははははははははははははははははははは!!」 「だぁ~め♥ 琉姫ちゃんには何度もイって貰わないといけないんだもの♥ くすぐりに何度もイかされて、何度も何度も快感を脳に焼き付けて……このクスリとくすぐりの虜にしちゃわないと、なって貰えないものね……。私の言う事を素直に聞く……お人形さんに……」 「言うごど聞ぐっっふふふふふふふ!! 言うごど聞ぐがらぁぁぁははははははははははははははは!! んああぁぁぁぁぁあぁぁああぁっぁ♥♥」 「言葉では何も信用できないわ♥ 何度も何度も頭に焼き付けて、何も考えられないくらいに責め立ててあげないとね♥ その内くすぐられるだけでイくようになっちゃうから……まぁ、そこまではなって貰わないと♪」 「そ、そんにゃの嫌ぁぁはははははははははははははははははははは、ひぎっっっひっひひひひひひひひひひひひひひひひっひひひひひ、んあぁあぁぁぁぁ♥」 「ほ~~らほら、私もくすぐってあげる♥ ビンビンにおっ勃っちゃってる、この乳首ちゃんを……コチョコチョコチョ~~♥」 「ほぎゃあぁあぁぁぁぁぁぁっっっ!!? そんにゃトコ触っちゃらめぇぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! すぐ次が来ちゃうぅぅぅぅぅふふふふふふふふふ、ヤバいのがまた来ちゃうぅうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! 「えぎぃぃひひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!!? ふぎゃああっぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁ、や、やだ!! もうやだ!! 気持ち良いのが来ちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!! ぃぎぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!?」 ――プッ! ビュビュビュビュビュビュビュ!! ピュピュピュ!! トロォ~~ ドクドクドクドク……   「かはっっ! はひっっっ!! きひっっ!! へひ……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ! ゲホゲホゲホ!」 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! 「ばぎぃ!!? ぃぎゃあぁぁぁぁぁあぁははははははははははははははははははははは、やべでっっっっへへへへへへへへへへへへへへへへ、イった後すぐにやるのはやめでぇぇぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへ!! ぎひゃあぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁはははははははははははははははははははは!!」 「だいぶ、射精の勢いも弱まっちゃったわね……。だったら、もっと快感を増やしてあげる♥ 強制的に気持ち良くしてあげるから♥」 「ああぎぃぃひひひひひひひひひひひひ!! な、な、何する気ぃぃひひひひひひひひ!! これ以上……にゃにをぉぉぉぉぉ!? へひぃぃぃぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 「乳首ちゃんと……お股のお豆ちゃん……同時にコチョコチョしたらぁ~~♪」 「けひっっ!!? 待っっっ!!? それは! だんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇぇっぇ!!?」 「ほら、コレでまたエッチな気分になれるでしょ? 遠慮なくイきなさい。頭を空っぽにしてイキ果てなさい!」 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! 「だびゃへひひゃぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁっ!!? くしゅぐりだめぇぇぇぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ、変なトコしげきしないでぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへ! 無理無理ぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ、すぐ我慢出来なぐなるぅぅぅぅぅぅぅふふふふふふふふふふふふふ!! いびゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ♥♥」 ――ドクっッ!! ビュビュビュビュビュビュ!! プシィィィィィィィィィィィィィィッ!! 「アハ♥ いっぱい出た♥ よぉ~し、もっと絞り出すわよぉ~~♥ ほ~~ら、コ~チョ、コチョコチョコチョ~♥♥」 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! こちょこちょこちょ、コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!! 「いびゃあああぁぁぁぁはははははははははははははははははははははははは、あだまがおがじぐなるぅぅぅぅぅふふふふふふふふふふふふふ、馬鹿になっちゃうぅぅぅふふふふふふふふ!! 気持ち良いのとくすぐったいので馬鹿になっちゃうっっふふふふふふふふふふふ、ヒギャアァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 「ほらほらぁ、もっと笑え! もっとイキ狂え! コチョコチョ! コチョコチョコチョ~~!!」 「ぐひゃあぁぁあはははははっははははははははははっは、えgzjべひゃぎひへはははははははっはは!! ぎbぃはびゃへはひひひひひひひxgがzはひjぎはくへぇぇっへへへへへへへへへへへへ!!」 ―――――― ―――― ――  琉姫への快楽&くすぐり責めは延々と思える時間続けられた。何度もくすぐりに笑わされ、何度もくすぐりにイカされ……自分が今何に笑わされているのか? なぜ笑ってしまっているのかさえ曖昧になっていく。  くすぐったさと快感……それらを交互に与えられ続け、もうその刺激の境界すら曖昧になりかけていた頃……。くすぐりと快感が一体になりかけた瞬間……ようやくこの地獄のループから救いの手が伸ばされる。 ――バタン!! ザザザザ! ザザザ!!!  突然吹き飛ぶように強引に開かれた地下の鉄扉。開いた扉の奥からは複数人の男女入り混じった機動隊がなだれ込む様に部屋へと入ってくる。  その瞬間、地下の狂笑の宴は一方的な逮捕劇へと場面を転換する。  警棒と盾を持った機動隊員によって琉姫の身体に纏わりついていた部下達は次々に引き剥がされていく。   「はぁ、はぁ、はぁはぁ……はひぃ……はぁはぁ……ゲホゴホ!」  身体を這い回る妖艶な指達の刺激が次々に失われ、ようやく笑いと快感の渦から抜け出すことが許された琉姫。呼吸はままならず咳き込みもひどい状態だが、どうにか意識は保っていた。   「先輩ッッ!! 大丈夫ですか!? 先輩っっッ!!!」  職員に枷を丁寧に外され、ようやく床に足を踏みしめる事が出来た琉姫は極度の疲労からそのまま倒れ込もうと膝を崩しかけたが、倒れ込む寸前に聞き覚えのある声が耳に届き下半身へ最後の力を振り絞り倒れ込むのを踏ん張り直した。 「先輩っっ!! ごめんなさい!! 本当にごめんなさい!! 私のせいで……私の……」  毛布を手に、いつの間にか警察官の制服に着替えていた後輩の涙を流す顔を見た琉姫は、その毛布にくるまれながらもようやくホッと一息を突くことが出来た。 「はぁはぁはぁ……はぁ、はぁ……何が“ごめんなさい”なのか……後で……説明してくれるわよね? 勿論……」  謝りながらも泣きじゃくる後輩に枯れ果てた声でその様に告げた琉姫はポンポンと彼女の後頭部を手で軽く撫で、疲労困憊の身体を美香に預けていった。  終わった……。やっと終わった……。  琉姫は逮捕され連れて行かれる部下達を遠くに眺め、再び安堵の息を零す。  そして疲れから襲ってくる強烈な眠気に抵抗せず……美香の腕の中で静かに意識を手放していった。  眠りに落ちる直前……そう言えば主犯格である悠里が逮捕されていた光景を見ていないかも……と、不吉な思い直しを浮かべた彼女だが、押し寄せる眠気の波に抗う事は出来ず……そのまま静かに眠りにつくのだった。  悠里が居なくなったのを不吉だと思ったのは確かだが、なぜか最後に自分の上司の顔が意識に過った。  チーフである志乃がニコリと微笑む姿を浮かべると何故だか安心して眠りに落ちる事が出来た。  身体の芯から力が抜けていく心地が……琉姫を覆っていった。  もう……意識を手放し完全に寝息を立ててしまっている琉姫に、美香はそっと言葉を呟く。  琉姫の最後の不安を読み取ったかのように……。 「先輩……。悠里なら大丈夫です。彼女が……志乃さんが必ず……」 ―――――― ―――― ―― 「はぁはぁ、危なかったわ……足音に気付けなかったら、この脱出口に逃げ込む事も出来なかった……」  人一人が立って頭がついてしまうくらいに低い用水路……今は水も流れていない為ただのトンネルと成り果てているが、悠里はその道を必死に走り抜けていた。恐らく人生の中でここまで本気で走った事はなかっただろう……それだけ必死に無我夢中でその薄暗いトンネルを疾走していた。  トンネルの出口を示す陽の光が遠くに見えてくる。この脱出口を抜ければ緊急脱出用のモーターボートが用意されている。  この島を放棄するのはいささか勿体ないが、自分が捕まる訳にはいかない。とにかく仲間の所へ逃げ込んでしばらく表へ出ないようにしなくては……。その為にもまた海外に飛んで麻薬にモノを言わせた資金集めからやり直しか……。  そんな事を考えながらトンネルの出口付近まで近づく。  しかし、そのトンネルの出口だと思っていた光は……悠里の想像とは違うモノの光であった。 「……っ!? 志乃……さん? 貴女……その格好は……」  陽の光に負けない強い光……。その正体は志乃が片手に構えた警察用のフラッシュライトの光だった。 「ごきげんよう……三城屋、楓…………いえ、八重神悠里。貴女を待っていたわ……ココに逃げ込んで来るって分かっていたから……」  先程まで着ていたスーツ姿にの上に機動隊が着ている紺色の分厚いジャケットを羽織って待っていた志乃は、フラッシュライトを悠里の顔に当て強い光によって視界を遮っていく。   「どういう事? 貴女……まさか……」  自分に向けられたライトの光に敵意を感じ取った悠里は、目を横に背けながら志乃を横目に睨んだ。 「私は厚生労働省所属の麻薬取締官……五十嵐志乃よ。八重神悠里……貴女を逮捕させてもらうわ」 「ははっ……まさかトリマだったとはね……あんなに協力的だったのに……恐れ入るわ……」 「騙して潜り込んだのは申し訳ないとは思うけど……これも仕事なので恨まないでね?」 「……ふぅ~ん、私を捕まえちゃうって……事かしら?」 「そうね……。まぁ私個人的にも気になっている事があるから……、それを喋ってくれたら逃がしてあげない事もないかもだけど……」 「フフ……嘘ばっかり。逃がすつもりなんて微塵もないんでしょ?」 「あら……ばれちゃった?」 「クックック……いいわ……少しだけ教えてあげてもいいわよ? 私をココまで追い詰めた貴女に敬意を表してね……」 「そう? じゃあ聞かせてもらいたいわね……」 「何かしら?」 「ブリード・ラッツの“本当の隠れ家”は……何処?」 「アハ♥ 何を言っているの? ブリード・ラッツは私がリーダーよ? 隠れ家はココに決まってるじゃない! ココ♥」 「嘘おっしゃい! 貴女はただの広告塔に過ぎない……ただの道化でしょ?」 「道化? それは……聞き捨てならないわね……」 「ブリード・ラッツは表向きは1つの組織で動いているように見えるけど……本当は腕のある麻薬ディーラーが集められた群衆組織。いくつもの支部を持ち国々に散らばって麻薬を撒き散らすドブネズミのような集団よ!」 「へぇ……良く調べてあるじゃない……」 「貴女はその支部の内の1つの広告塔に過ぎない……。ブリード・ラッツの脅威を世に知らしめ、裏社会の勢力を強める為の宣伝部隊……それが貴女の役割なんでしょ? 国際的に指名手配を受けて派手な活動を行う事こそが貴女の目的でしょ?」 「成程……だから道化かぁ~~まぁ、遠からず近からずね……」 「……?」 「確かに……ブリーズ・ラッツは複数の支部を持っている。でもその支部の力は別に拮抗している訳ではないわ。力ある所に財力とネットワークは集まっているの。そしてその力を持っている支部こそが本部に成り代わる……」 「貴女……自分の役割以上の事を企んでいたの? 自分達が組織のトップに立つために……」 「日本は特に薬物に厳しい国よ……その厳しい国を内部から崩せたら……力が手に入ると思わない? 政界も、財界も、芸能界からヤクザの末端でさえも支配する事が出来るのよ? 特に……日本のヤクザはマフィアなんか比にならないくらいの裏のネットワークを持っているわ。それを統合できれば……私達に歯向かう支部は居なくなる……。それすなわち、私達が立てるのよ? シンジケートのトップに!」 「……かなり無理のある夢物語ね……」 「そうかしら? 私は本気よ? 本気だったんだけど……でもその足掛かりとして乗っ取ったこの島が……見事に潰されちゃったわ……たった今ね……」 「そうね……。もう日本での活動は無理よ。貴女もこれから逮捕されるわけだしね……」 「フン、そんなの……やり直せば良いだけよ。本部に戻って力を付け直せばいいだけの話……。日本人である私は重宝されているのよ? 日本の情勢や地理に明るいから……」 「だから! 貴女はこれから逮捕されるって言ってるでしょ? 私に……」 「志乃さん? 貴女……さっき言ったわよね? 本部は何処にあるのか……って」 「え、えぇ……」 「連れて行ってあげましょうか? その本部に……」 「っッ!? なんですって?」 「そして一緒にやり直さない? 今度は……トリマの潜入捜査官じゃなくて……私の仲間として……」 「な、何を言って……」 「貴女は優秀よ。私に気付かれず尚且つ私の企みを潰して見せた……。人質だって取っていたハズなのに……」 「………………」 「私は貴女が欲しいわ、貴女のような優秀な人材が……」 「ふざけないで! 麻薬を取り締まる立場の私にそんな誘い込み……無駄だって分からないの?」 「無駄じゃないわ。貴女がまた警察に潜り込んで情報を垂れ流してくれさえすれば私は日本を取れる……いや世界を取れる足掛かりにすらなる」 「だから……私がそんな協力をするわけが……」 「今までの関係と何ひとつ変わらないのよ? 今度はアッチを騙してあげるってだけ……」 「騙すって……」 「もしあなたが協力してくれるのなら……一生困らないだけの財を貴女に提供することを約束するわ♥ 勿論組織での立場も保証するし……アッチの組織には未だ潜入捜査の途中だって説明すればいい……。貴女は麻薬に一切かかわらなくて普段通りに生活が出来てお金だけを受け取れる。どう? 魅力的な条件だとは思わない?」   「……へぇ……それは……確かに魅力的に聞こえてくるわね……。今まで通り警察の適当な情報を流すだけでお金がもらえるんだったら……」 「適当な情報? あぁ、今まではそうだったのかもしれないわね……。まぁそれはそうか……アッチ側の人間だったわけだし……」 「当たり障りのない情報……警察にとって知られても痛くない情報……それを適当に流していただけよ……」 「それでも良いわ、貴女が警察に在籍しているってだけでも大きいんですもの♥」 「そんなに私の事を買って貰えているんだ? 裏切ったっていうのに……」 「過去は過去よ……もう裏切った事は気にしない。これから新しい関係を作り直せばいい……」 「私は……逆ね。過去の恨みは晴らすまで残し続ける嫌な女ですもの……」 「過去の……恨み?」 「えぇ……。私は覚えているわ……。私の父を……殺した殺人鬼を……」 「父? 殺した?」 「五十嵐……志乃……。私の名前は旧姓よ。父が生きていれば……わざわざ旧姓を名乗って復讐を誓う事なんてしないで済んでた……」 「ま、まさか……貴女!?」 「そう……本名は、三洲穂 志乃。ミズホモーターズ先代のオーナーの2人目の娘よ!」 「三洲穂……志乃っっ!? じゃあ……今のオーナーは……」 「三洲穂咲枝は私の実の姉……。彼女に会社を任せたの……私の復讐の為に……」 「復讐の為!?」 「私の父は10年前に殺されたわ……この島を頑として守ろうとして……」 「っッ!?」 「この島は私の祖父が戦時中に命を賭して守った旧日本軍の前線基地だった……。戦後その功績を認められこの島を譲り受けた祖父は死ぬまでこの島を誇りに思いながらこの島で死んでいった」 「………………」 「そんな祖父を尊敬していた父はこの島を誰にも譲ることなくそのままの形で守ってきた……でも、貴女達ブリード・ラッツが日本への足掛かりにと交渉を続け……そして痺れを切らせ強硬手段に出た」 「私より先に……ブリード・ラッツが……そんな事を?」 「父を殺し、そのまま死体を海に沈めた……」 「殺したんだったら……この島はブリード・ラッツが?」 「いいえ! 奴らは殺すだけ殺して勝手に撤退していった……。島に魅力を感じなかったのか……日本の領海に死体を捨てたのがリスキーになったのか知らないけど……勝手に逃げていったのよ! 勝手に……」 「………………」 「私は復讐を誓って警察を目指す事になる……。それから麻薬専門の潜入捜査が出来る厚生労働省に移る事になって……貴女の情報を掴む事になる……」 「私がこの組織に加入したのは4年前だけど……そんな事件を起こしていたなんて聞いてもいなかったわ……」 「そうでしょうね……だから私が誘導したの。日本で地盤を固めたいって言った貴女に、この島で固めてはどうか? ってね……」 「どうりでスムーズに行くなぁって思ったわ……。貴女の台本通りだったわけね? あの潰れかけだったミズホモータズとかいう会社も!」 「そう。貴女を招き入れる為に従業員はほとんど解雇した……麻薬に汚染されるって分かっていて一般人をそこに残しておくのは嫌だったしね……」 「私がその会社に部下達を引き入れて維持させたのも計算の内ね? その会社を薬物の温床に仕立て上げる手筈だったから……」 「そうよ。新しく入社してきた子も全員事情を話して裏で退職してもらっていった……。でも、ひとりだけ手遅れの子が出てきてしまった……」 「それが愛染千里……。入っては1日で辞めていく従業員に痺れを切らしてすぐにクスリの虜にした新人……」 「その子の存在が私の計画を狂わせた……。本当なら、すぐにでも島のクスリを押収して警察に踏み込んでもらう手筈だったのに……」 「人質が出来てしまった……と言う事よね?」 「えぇ……人を簡単に殺してしまう組織だって知っていたから……彼女の命も危うくなった。だから計画を変更せざるを得なくなった……」 「計画の……変更?」 「人質を助けるための囮を立てる必要が出てきた……」 「それが……神崎……琉姫ちゃん?」 「えぇ……彼女が捕まっている間に人質の場所を特定して、同時に逃がす……そして機を見て警察に踏み込んでもらう……そういう流れに変えたの」 「まんまと……その作戦に乗せられてしまったって訳か……私は……」 「そうね……やっと実ったわ……」 「悔しいけど……まぁ、完敗よね。ここまでは……」 「どう? 大人しく言う気になった? 本部の場所と構成員の名前とか……」 「どうあっても……私の仲間にはなってくれないのね?」 「くどいわ! 私は復讐を果たすために今ココに立ってるの! 貴女のような道化に私は絶対にならない!」 「…………そう、じゃあ……仕方ない……か……」 「仕方なかったら……どうする気?」 「フン! 知れた事!! 貴女を殺して、ココを通ってしまうだけよっ!」  いつの間にか後ろに回していた悠里の手がその言葉を合図に前に引き抜かれると、フラッシュライトの光が何かに当たりギラッと光を反射させる。その反射した光が水平に弧を描く様に志乃めがけて振り抜かれようとしたのを彼女は寸前の所でバックステップにて身を翻しその鋭い光を避けた。  光を反射させたそれは何だったのか? 振り抜かれた悠里の手に握られた物を見て志乃はすぐにその正体を悟る。 「軍用ナイフ? そんな物騒なものを持ってたなんて……相変わらず油断ならないわね……貴女は……」 刃渡り13cmほどの先の尖った鋼鉄製の軍用サバイバルナイフ。切って良し突き刺して良しの殺傷能力の高いそのナイフが後ろ手から素早く引き抜かれたその手には握られており、一瞬避けるのが遅ければ容赦なくその細首をかっ切られていて然るべきだった。  「チッ」と舌打ちをした悠里の凶悪な顔を見ての通り、彼女は間違いなく志乃を一撃のもとに葬り去るつもりでいたのが分かる。 「反射神経だけは良いみたいね? 今のを避けるなんて……」  空振りしたナイフを軽く空中に放り、ナイフの柄を逆手に握り直した悠里は、腰を低く構え獲物を狙うかのようにジリジリと志乃との距離を詰め始める。 「あんなに怪しく片手を後ろに回しておいて、警戒しない訳がないでしょ? 意外に振りが遅かったから逆に驚いたくらいよ……」  志乃はそのナイフを持つ手を警戒し両手を胸の前に構えて、摺り足で距離を保とうと後ろへと下がる。  しかし、素手の志乃に対し凶器を手に持っている悠里の方が圧倒的に戦闘的優位を得ていて、保とうとしていた距離も簡単に詰められていく。 「フン! 私は特別な訓練を受けていた訳じゃないからね……。人を切るのに少し躊躇が出てしまっただけよ。でも次は外さないわ……確実にその喉を掻き切ってあげる!」  喉を掻き切る……その言葉に、手の構えを上にあげてしまう志乃。悠里はその構え直しを見てニヤリと口元を歪ませた。 「警察の厳しい訓練を受けてきた私に……素人の貴女が立ち向かえると思う?」  いつ襲ってくるか分からないナイフの切っ先に意識を集中する志乃。そんな彼女を翻弄するかのように悠里は何度もナイフを振るフリをフェイントとして加え、徐々に志乃を壁際まで追い詰めていく。  強気な言葉で牽制する志乃だが素手対ナイフという圧倒的不利な状況に焦りを覚えていて、彼女にしては珍しく額に焦りの汗を一筋流していた。 「訓練の素人でも……ナイフの振り方くらいは分かるわ♥ そして今……私の方が圧倒的に有利な立場にいるって言う事も……ねっ!」  悠里のナイフが声の抑揚と共に一瞬で志乃の目の前に突き立てられる! 志乃はとっさに右手を上げそのナイフを払おうと構えるが…… 「残念でした♥」  顔に迫ったナイフは途中でピタリと止まりこれもフェイントであったと言う事を志乃に悟らせる。  見事にフェイントに引っ掛かってしまった志乃はもう一度手を構えなおそうと右手を下げようと試みるが、悠里の次の動きの方が遥かに早く……軌道をずらすように胸元へ狙いを変えたナイフの切っ先が物凄い速さで突き立てられる。 ――ズンッ!!  悠里の体重を乗せた渾身の突き差しが志乃の胸めがけて繰り出され……構えを下げきれなかった志乃は悠里のナイフを払い除ける事が出来ず、ズブリと肌に差し込まれたナイフと身体を密着させた悠里の胸が志乃の血で真っ赤に染まる。  確かな手応え。胸に突き刺さったナイフは志乃の心臓を完璧に貫いた……  ハズだった……。   「小賢しい貴女のフェイントに……何度も引っ掛かる私じゃないわよ!」  致命の一撃を貰ったはずの志乃が強気な言葉を返してくる。  嫌な予感を頭に過らせた悠里はナイフを引き抜いてもう一度体勢を整えようと試みるが、そのナイフが抜けない。  ピクリとも動かない。    視線を一瞬下に落してみると、悠里は気付いてしまう……そのナイフが心臓を突き刺してはいなかったという事に。  フェイントに反応してしまった志乃の右手……それとは逆の左手がいつの間にか胸の前に構えられていて、ナイフの突き刺しに対して防御を行っていた。  派手に散った血飛沫は左手を貫いた際に吹き出した血……。てっきり胸を刺せたと思い込んでいた悠里は、その後の更なる差し込みを怠ってしまった。  手のひらを貫通してしまっている血で真っ赤に染まった志乃の左手。その手は執念深く悠里のナイフを掴んで放そうとしない。 「くっっ! しまっっっ!!!」  状況が呑み込めた悠里に体勢を整えさせるほど志乃も甘くはなかった。  フェイントに引っ掛かった“フリ”をした右手を更に上にあげ、重みの乗った手刀を悠里の首裏めがけて振り下ろす。  その手刀は、ナイフを意地でも引き抜こうとしてしまって逃げ遅れた悠里の首裏に見事にヒットし……そのまま悠里の身体は崩れ落ちる様に地面に倒れ込む。    完全に意識を手放した悠里を見ながら志乃も壁を背にしながらズルズルと地面へ座り込んでいく。  緊張と疲労が一気に襲い、左手に刺さったままのナイフを処置する気力も湧かずに意識を失った悠里の身体をボンヤリと見つめる。  そして……静かに呟く。 「父さん……。やっと終わった……わ。これでブリード・ラッツ本体の尻尾も掴める……」  渾身の手刀を放ったことで未だジンジンと痺れている右手だが、志乃はその右手を胸に当て大きく息をつく……。  「復讐は終わってはないけど……終わらせるための光が見えたわ……」  トンネルの奥からは遅れて追いついてきた機動隊の数人が駆け寄り、志乃の名前を呼ぶ。 「待っててね……。必ず……私の手で……父さんの無念を……晴らして……」  しかし、志乃の身体を最初にしっかりと掴んだのは彼女の部下の手だった。 「んっ? 琉姫……ちゃん?」  一旦は眠りに落ちた琉姫だったが夢の中にまで志乃の顔が浮かび嫌な予感がして、入眠もそこそこに結局起きてしまった彼女は目を擦りながらも機動隊の後を追った。そしてあれよあれよのうちに機動隊も追い抜かし先頭を切って彼女のもとへと辿り着いた次第だが……。素肌に包んだ毛布も走った影響でサービス全開にはだけきり、あられもない姿を上司の前に晒してしまっている。  しかしそんなことお構いなしに琉姫は、無言で志乃の身体をきつく包み込む。 「い、痛っ! 琉姫ちゃん……私、怪我人よ? 見て……ほら……」  いつもの強気な吊り目には涙を溜め、何かを言いたげな口はプルプルと震えている。 「ごめんね……琉姫ちゃん……。色々巻き込んじゃって……」  琉姫の頭を痺れの残る右手で優しく撫でながら謝罪の言葉を口にする志乃に、琉姫は溜め込んだ涙を一気に溢れさせる。  そして…… 「聞きますからね! 私……チーフの口から全部聞きますからね! 今回の事も! これからの事もっ!!」  涙声の琉姫に、志乃はゆっくりと目を瞑り「分かってる……」と呟く。  「全部話してください、全部ですよ! 今度は嘘は無しですからね!! 全部聞き出すんですからね! 絶対ですよ!!」  志乃はその言葉を聞きながら静かに意識を手放していく。  そして、眠りについたかつかないかのタイミングで最後に言葉を零す。 「お手柔らかに……ね……」と。

Comments

敗訴

全部読ませていただきました。おとり捜査からの拷問、そしてその背景とかくすぐり拷問の詳細とかすごくきめ細やかに書かれているのがよかったです こういう捜査シリーズは好きなので本当に >「全部話してください、全部ですよ! 今度は嘘は無しですからね!! 全部聞き出すんですからね! 絶対ですよ!!」 なんか番外で琉姫がチーフにくすぐり拷問とか期待してしまう終わり方なのもまたwあと後輩におしおきとかw

ハルカナ

読了ありがとうございます。そして感想をいただきまして大変嬉しいです。今後の励みにさせていただきます。 今回はこーじさんとのコラボが事前に決まっていましたので、変なものは出せないと気合いをいれて書いてみました。その一片が伝わってくれたのであれば大変嬉しく思います。さて、ご指摘の琉姫の台詞ですが、まさに敗訴さんのおっしゃる通り、番外編を意識してそういう台詞回しにしておりました笑 ただ、必ず書くという感じでそういう風にしたのではなく、書きたくなったらいつでも書けるようにしておきたかったという軽い気持ちで言わせたのでおまけはあまり期待しないでくださいね。 いつか書くかもです……