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#14  専門店の立ち並ぶフロアの最奥には様々な楽器を取り扱っている専門店がある。  七穂はその昔ピアノを習っていたと言っていた事があり、こういう楽器の置いてある店に興味が湧くのだろう。あなたは誘導されるがまま店へと入り、壁に掛けられている高そうなエレキギターやショーケースに並んでいるバイオリンなどを一緒に見ながら店中を回った。 「あのギターは、あの大物バンド○○の××が△△のライブの時だけに使った限定モデルなんですよ! ほら! ネックの部分がピンクで可愛いでしょ? ネックはピンクなのにヘッドやエルボーカットの部分は血の様に真っ赤で攻撃的なんです♥ まさかこんな辺鄙なショッピングモールの楽器屋でこれを見れるなんて思ってもみませんでした!」  あなたの背中をバシバシ叩きながら興奮気味にそのような早口で語るが、そのバンドの事を深く知る由もないあなたには彼女の言葉が暗号か何かにしか聞こえず……少し引き気味に返事を返す事しか出来ない。  そんなあなたを見ても語る事をやめない彼女だったが、視線を試遊コーナーに向けた途端更に目を輝かせてそのコーナーへと走って行ってしまった。 「先輩見てくださいよぉ! これも○○のドラマー☆☆が□□で$$したψψですよ! こんな高そうなものが試打出来るなんて……これは早速やってみなければ♪」  相変わらずあなたには1mmも理解出来ない言語を話し興奮している七穂だが、その試遊(試打)コーナーに置かれているドラムセットが彼女が愛してやまない女性パンクバンドのドラマーが使っているモデルだと気付くと、彼女は更に興奮の度合いを高めてそのドラムセットの椅子にウキウキしながら座った。 「うわぁ♥ ドラムスティックもピンクだぁ! 凄い拘り!」  置かれていたスティックにすらも興奮気味に反応し、目をキラキラと輝かせながらそのドラムを試しにと言わんばかりに叩き始める七穂……  そのスティック捌きは流石は音楽に触れてきた人間だと思わせるくらいに手慣れていて、普通にドラマーだと言われても通用するのではないかと思えそうなリズムを叩いている。 「ふあぁ~~~♥ やっぱりドラムってカッコいいですよねぇ~♪ 憧れちゃう♥」  普段から音楽の話になると我を忘れて語り始めてしまう位に子供の頃から音楽というジャンルが好きだった七穂だが、高校では軽音楽部や吹奏楽部には入らず何故か水泳部に入部していた。本人曰く将来の為に肺活量を鍛えたかった……という理由らしいのだけど、結局大学に入ってもその鍛えられた肺活量は音楽の為には使われず、楽器を触る時間もあなたと過ごす時間に割かれとうとう彼女が音楽を奏でる姿は見られなくなっていた。  しかし、こうしてデートである事も忘れて子供の様にはしゃいぎながらドラムを叩いている彼女を見ていると、本当に音楽が好きなんだなぁとしみじみ思う事ができる。  それに……彼女のドラムを叩いている姿は……何と言うか……カッコイイ。  女子的には可愛いと言われた方が嬉しいものかもしれないけど……でも、その可愛いの方は普段から十分に摂取出来ている要素であり、いつもそれに満たされている。だから尚更、このようにスティックを素早く動かしドラムを叩く彼女の姿は可愛いとのギャップが激しくて逆に魅力的に映ってしまう。  まさか自分の彼女がこのようなギャップを隠し持っていたなど今日の今日まで気付けなかったあなたは、驚くと同時にそのギャップにドキリとさせられ性欲とは別の心臓の高鳴りを覚え始める。 「う~~ん、バスドラムでリズム取りたいから……やっぱりフットペダルも踏みたいなぁ……」  あなたは感心するような目で彼女のドラムプレイを眺めていたが、彼女のこの言葉を境にあなたの視線は一気に別の箇所へと移る事となってしまう。 「後で拭けば大丈夫だよね? うん……」  と言っておもむろに両足のサンダルを脱ぎ捨てる七穂……  どうやらフットペダルをヒールのある靴で踏むのは難しいらしく、その靴を脱いで素足でフットペダルを踏みたかったようだ。  突然裸足になった彼女を見て、それまで感心の眼差しで見ていたあなたの視線は急に妖しい色を帯びた視線に変えられてしまう。  まさか、こんな場所で七穂の素足を再び拝めるチャンスがあるなど思いもよらず……あなたは七穂のドラムプレイそっちのけで彼女の足に視線を集中させる事となってしまう。 「うん! やっぱりリズムが取り易くて良い♥」  正面から見る七穂の足はペダルを踏み終えた際に僅かに足裏がチラ見えする程度で、足裏を見るには少し物足りない。  だからあなたは七穂のドラムプレイに興味がある風を装いつつ彼女の背後に回り込み、彼女が見ていないのをイイことに膝を曲げてしゃがみ込んで七穂の足裏だけが見えるよう姿勢を低く構えた。  小気味よく鳴り響くスネア、ロータム、フロアタムの音色……その合間に挟まれるライドシンバルの甲高い決め音。そして心音をイメージするかのようにリズミカルに鳴り続けるバスドラムの音……  そのバスドラムの音を鳴り響かせるために、七穂は足指の先端でペダルを踏む動作を繰り返している。  ペダルを踏む時と離す時では足への力の入り具合も変わり、足裏の形もその都度変化が見られる。  皺が寄ったり、皺なく綺麗な足裏になったり……土踏まずが窪んだり伸びきったり……足の血管が浮き出て見えたり動作筋が動いて見えたり……  足の踏み込む力加減によって様々に姿を変える足裏を眺める事が出来たあなたは、もうそれを見ただけであの欲求が天井を吹っ切るかのように高まってしまう。 『この可愛い足の裏を……触ってみたい!』  つい今しがた必死になって抑え込んだはずのその欲求は、この生々しく動く七穂の素足を見て再び火が点くように燃え上がってしまうのだった。  別にワザと見せつけられている訳ではない……七穂からすれば恐らくたまたまそういう行動をしてみただけであるのだろうが、そういうラッキースケベ的な偶然で見るフェチ部位は何か特別で貴重なタイミングに居合わせたような錯覚を生み普通以上に興奮度が高まってしまう。  そして辛抱堪らなくなってしまったあなたが、踏まれても良いから後ろから手を伸ばし触ってしまおうか……と、邪な欲求を浮かべ始めると…… 「………………………………」  突然ドラムを叩く音が止まり、七穂の足はペダルを踏み続けるかのようにペタンと足裏を付けて隠される事となってしまった。  足が動かなくなったことで足裏が見れなくなり何とも言えない喪失感を味わったあなたは、「もっと足を動かしてよ!」と顔を上げて七穂に訴えかけようとするが…… 「むぅ~~~~~~!!」  見上げた先には顔だけを後ろに向かせてジト目で睨んでいる七穂の怒り顔が待っており、あなたはその睨みにハッとなる様に姿勢を立姿勢に戻しそのジト目から逃れるように顔を横に逃がした。 「せ~ん~ぱ~い? 今……何処見てましたぁ? 私の演奏……見てくれてなかったでしょ?」  あなたはその言葉に必死に顔を横に振って応える。 「嘘ばっかりィ~~~! なんか反応が薄くなったなぁ~って思って振り返ったら……先輩ってば、しゃがみ込んで私の足元ばっかり見てるじゃないですかぁ! 私の演奏なんてそっちのけで……足ばっかり見てたでしょ! 今ぁ!」  あなたは更に頭を横に振って、七穂の演奏を褒める言葉をいくつも紡ぎ出す。  叩き方が素人じゃなかった……とか、リズムの取り方がプロ級だった……とか。自分でもわざとらしいと思えるほどの中身の無い褒め方をしたものだから、七穂の睨みは増々目を細める結果となり…… 「まったく……。こんな普通の動きとかでも先輩のフェチを刺激しちゃうんだから油断できないですよねぇ。今後はちょっと身の振り方も気を付けとかなくちゃ……」  と、その様に溜息交じりに零し脱ぎ捨てていたサンダルを並べ直しそれを履き直し始めた。  しかしながら、サンダルを履く瞬間は相変わらずあなたに見せつけるように足の裏をワザとらしく晒しながらゆっくり履いてくれている様子を見るに、彼女もあなたの『見たい!』という気持ちを裏切るわけではなく敢えて見せる事にも寛容な精神を持っていることが伺える。  油断しないと言いながらも、誘惑出来そうだと思った場面ではそれを逃さないようしっかり誘惑していく……そんなスタイルを貫くゾという意志がその行為には同時に感じられてしまう。 「はぁ~い、ご褒美はこれで終了です! どうせ私の演奏なんて聞いてなかったんでしょ? だったらさっさと次のお店に向かいますけど良いですよね?」  サンダルを履き終えた七穂はその様に不機嫌そうな声であなたに言葉を零すが、顔はなにやら嬉しような……もしくは何かを期待しているかのような……そんな笑みを口元に浮かべている。  その期待が何を示すものなのか……今はまだ理解出来ないが、とにかく勝手に覗いていた事で機嫌が悪くなることだけは避けられたようであなたはホッと胸を撫で下ろす。 「次はあの店行ってみましょうよ♥ ね? 先輩♥」  嬉しそうに手を引きながらあなたにそのように語り掛ける七穂……  彼女が次に行きたいと言った店は…… A:眼鏡・コンタクトショップだった……#13へ B:本屋だった(※誘惑イベント有り)……#15へ

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