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#11 ――サワッ♥  まず最初に羽根先が触れたのは、あなたの足のカカト付近だけだった。  毛先のゾワゾワっとした感触が硬いカカトの皮膚に触れ、若干ムズ痒いという感触を引き起こされるが、めちゃくちゃくすぐったいという様な刺激には登ってはいかなかった。 ――サワサワサワ♥  カカトの上を焦らすように毛先をクルクル回しながら刺激を加えていく七穂の羽根遣い……  その刺激に気色悪さは感じさせられても笑うまでには至らず、あなたは足を僅かにビクつかせる反応だけを返し、彼女の責めに対しては声を漏らす事もしてあげなかった。 ――サワサワ、コショコショ、サワサワ……  しつこくカカトだけを毛先で触り回してる七穂のくすぐり……その刺激は続けば続くほどにもどかしさが強く感じられ、ムズ痒さに思わず足をバタつかせてしまいたくなる程……  七穂は敢えてそのような“焦らし”を最初に入れ、あなたの反応を観察している。  カカトの中でも過剰に反応する箇所や、全く反応を返さない箇所も見受けられる。七穂はそういう違いを一つ一つ覚えながら羽根の触る範囲を少しずつ広げていく。 ――コショコショ♥ コショコショ……コショコショ♥  触る範囲を広げていく羽根はカカトだけでなく徐々にキワドイ箇所までも刺激を加え始める。  カカトの膨らみから降りるように下った先にある“土踏まず”の領域……。くすぐったいかそうでないかのギリギリの境目付近まで刺激し始めた羽根先が、あなたに刺激の予測を促してしまい思わず想像だけでくすぐったさを感じ吹き出してしまいそうになってしまう。  しかし、実際はその境目ギリギリまで触った羽根は、またカカトの方へ毛先を戻していってしまうのであなたは結果的に吹き出さずに済む事となる。  笑わずに済んだのはあなたにとっては朗報だと言えなくはないが、笑う寸前まで追い込まれた刺激は脳が記憶してしまっている為、再び羽根がカカトから降り始める動きを見せるとあなたは無条件にその刺激を思い出し再び吹き出す直前まで我慢を強いられる事となる。  その我慢を強いられるという行為は……あなたの“笑ってしまいたい欲”と反発しあい、あなたの精神にも肉体にも負担を強いていく。  ただ我慢するだけの事象である筈なのに……あなたの身体は笑ってもいないのに負担を強いられ既にしんどさを感じ始めてしまっている。 「フフフ♥ こんなトコくすぐられても……全然大した事ないでしょ? でも……全くくすぐったくない訳ではないから……我慢はしちゃいますよね? ソレって……中々辛いことだと思いませんか? 身体が勝手に我慢しちゃう感覚って……意外と笑う事よりも辛いことになりかねませんよね?」  七穂はあなたのしんどさを理解していて敢えてそのように振舞っているようだ。  笑うよりも我慢し続ける方が負担が大きい……それは味わってみて初めて分かる辛さだ。 「ほら……際どいトコ……もう少しで触っちゃいますよぉ? ほらぁ♥ 先輩は耐えられるのかなぁ? こぉ~んなくすぐったそうな羽根で……土踏まずとか撫でられたらぁ……」  羽根の刺激がカカトから土踏まずの方へ降りてくるたびに、あなたの口角はニヤつくように笑みの形を取ってしまう。  ムズ痒くて……じれったくて……でも笑うまでには至れなくて……  まるで生殺しにされているかのように絶妙に刺激を決壊寸前まで運んで戻していく七穂のテクニックに、あなたは腕や脚をジタバタさせて嫌がる仕草を取ろうとする。  しかし当然の如く手枷足枷がその動きを抑え込んでしまい、手足を大きく動かすという動作を行わせてもらえない。結局できる事と言えば、足指や手の指に力を込めてギュッと握り込む事くらいであり、この様な意地悪な責めをされてもあなたの意思は態度で示す事が出来なくされている。 「アハァ♥ 先輩の足指……ピクピク震えてて可愛い♥ そんなに待ち遠しいんですかぁ? コレで土踏まずを刺激されるのぉ♥」  あなたの足指の握り込みを見てその様に勝手な解釈を零した七穂は、ニヤリと笑みを浮かべながらも顔に薄暗い影を落とし、カカトの降り際で羽根の動きを一瞬止めてみせる。  もどかしい刺激を送り込み続けていた羽根が動きを止めたことによって触られる感覚も薄くなり、緊張から解き放たれたかのようにホッと息を零してしまうあなただったが…… 「だったらぁ遠慮なく……くすぐってあげます! そ~れ、コチョコチョコチョぉ~♥♥」  あなたが隙を見せるや否や七穂の手が再び動き始め、カカトの中腹に居た羽根先を一気に土踏まずの窪みの中央まで滑らせ、そこを小刻みに上下に触り始め本格的なくすぐりを開始し始めてしまう。 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!  その突然に送り込まれた刺激は、足裏から雷が走るように脳天までその刺激が貫通しあなたに強烈なこそばゆさを感じさせるに至る。  全身がビリビリと痺れてしまうかのような寒気が勝手に身体を震わせ、閉じていた口もその刺激に耐えられずすぐさま無様な笑い声を発し始めてしまう。 「あぁ~~あ、先輩ってば……たったこれだけの刺激で笑っちゃうんだぁ? くすぐりフェチの癖にだらしないなぁ~~♥」  七穂の煽り言葉を聞いても、あなたの笑いは収まる気配を見せない。  むしろ、七穂の言葉を否定しようと言葉を紡ごうとすればするほど可笑しさがどんどん込み上げてきて言葉よりも先に笑いが吐き出されてしまう。  土踏まずのくすぐったいツボを的確に羽根先でなぞって笑わせて来る七穂のくすぐりに、あなたは恥ずかしさなどかなぐり捨てるかのように笑いを吐き出し続けてしまう。  足裏の中でも一際敏感で刺激に弱い土踏まずの神経を、反発性の高い羽根先でコソコソと撫でるようにくすぐられれば、そりゃあくすぐりフェチであろうがなかろうが例外なく笑ってしまう。  七穂はあなたがくすぐりフェチだからくすぐりにはさぞかし強いのだろう……と考えていたようだが……別にくすぐりフェチは超人でも怪人でもないただの一般人だ、特別くすぐりに強いとかそういうものではない。  それを伝えようと口を開こうとするが、開いた口からは言葉の代わりに次々に新しい笑いが吐き出される一方で一向に言葉を紡ぐことが出来ない。  あなたが何かを伝えようと口を開いているのを七穂は理解しているようだが、彼女はそんなあなたに対して容赦のない責めを展開し始める。 「ほらぁ! 喋ろうとしなくていいですから大人しく私に笑わされてください? でないと……こんな事して無理やり笑わせますよぉ? ほれほれぇ~♥♥」  七穂はその様に零しながら、まだ使っていなかった左手に持っていた羽根もあなたの右足に合流させ、2本同時に操ってあなた右足裏をくすぐり始める。 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!  今まで単一だけだった羽根の刺激が2つに増えた事により、ますます刺激の予測が困難になったあなたは、その刺激が加えられた直後から笑いのトーンと勢いを更に一段階跳ね上げさせる事となる。 「どうですかぁ? 私に足の裏をくすぐられる気分はっ! くすぐったくて笑いが止められないでしょぉ? 右足だけじゃありませんよぉ? 左の足もコチョってあげます♥ 先輩はどっちが効くのかなぁ? ほれほれほれぇ~~♥♥」 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!  右足をある程度くすぐり続けた七穂は、あなたの笑い具合を見ながら今度は左足へ羽根を移動させて土踏まずをその二本の羽根でランダムにくすぐっていく。  今まで刺激されてこなかった左足に突然そのような凶悪なこそばゆさが襲えば、準備など何も出来ていないあなたが笑わない筈がない。  くすぐりが開始されてほんの数秒で右足以上の笑いを吐き散らし始め、枷に押さえつけられていながらも手足を大暴れさせてしまう。 「コチョコチョコチョ~♥ コチョコチョコチョコチョコチョぉ~~~♥ アハハ……先輩ってばこんなに高い声で笑えるんですね? 良いですねぇ~♥ もっともっと先輩の笑い声を私に聞かせてください? まだまだ先輩の事ぉ、い~っぱい笑わせてあげますからぁ♪ コチョコチョぉ♥ ほ~ら笑って笑ってぇ? コチョコチョコチョ~♥」  左の足をくすぐったかと思えば今度は右足を……  右足をくすぐり始めたかと思えばまた左足を……  そして手を広げて両足を同時にくすぐり始めたり……  あなたが抵抗できないのをイイことに、七穂はあなたの無防備な足裏をあの手この手でくすぐって笑う事を強要してくる。  あなたはその無慈悲なくすぐりに一切笑いを我慢する事が出来ず、延々と腹の奥から笑いを搾り取られる運動を繰り返される。 「子供やお客さん達が見てる前で先輩ってばあんなに馬鹿みたいに本気で私の足くすぐっちゃって! 無理やり笑わされた私がどれだけ恥ずかしい思いをしたか分かってますかぁ? 仕舞には店員さんまで先輩と私の事迷惑そうに見て呆れていたんですよぉ? 今後あの靴屋に行くの恥ずかしくなってしまうじゃないですかぁ! 自分の罪の重さ……分かってますぅ?」  土踏まずの中心を羽根先で上下にジョリジョリと引っ掻き耐え難いくすぐったさをあなたに与えて来たり、カカトや足首の端の方を羽根横の毛でソワソワと優しく撫で上げたり……  母指球と小指球の間に出来ている縦溝をコショコショと小さくなぞってくすぐったり、足指の間に羽根を横にしながら挟み込んで股の間をノコギリに見立てるように押したり引いたりを繰り返し凶悪な刺激をあなたに送り込んで来たり……  足の裏の責め方だけ見てもおよそ素人とは思えないその七穂の多彩なくすぐり技巧に、あなたは笑わされながらも彼女のくすぐりを舐めていた事を後悔し始める。  普通の人が思い浮かべる“くすぐり”という行為は、くすぐりフェチの考えるくすぐりとは似て非なるものだとあなたは思っている。  普通の人はくすぐりを“じゃれ合い”だとか“スキンシップの一環”だとか考え、笑わせるという行為自体にフォーカスを合わせない。しかしくすぐりフェチは、対象を“いかに笑わせて苦しめるか”や“どのようにくすぐれば対象を効率的に笑わせる事が出来るか”などに思考が行くしその部分に興奮を覚える人種でもある。  だから普通の女子である筈の七穂が行う“仕置き”など、所詮は一般人の考えるじゃれ合いくすぐりの延長程度にしか考えていないだろうと踏んであなたは油断していたのだが……  彼女の責めは熟練のくすぐりフェチであるかのように責めがねちっこく、そして上手い……  足の裏一つ取っても、あなたが“くすぐったい”と思うであろう箇所をくすぐりながら把握し、弱いと判断するやその箇所を集中的にくすぐってくる。  そして……部位による刺激の感じ方が違うという事も理解しているらしく、くすぐる部位によって羽根の動かす速さや羽根先を押し付ける強さ、なぞる方向までもその時々で変えて、あなたへの刺激がマンネリ化しないよう気を付けながら責めてきている。  くすぐりフェチでも何でもない七穂がなぜ責めの初手でこの様な本格的な責めを行えているのか……酸欠になりかけているあなたの頭ではその答えを自力で導き出す事は叶わない。  とにかく笑う事が苦しくなり始めていて……その疑問に思考を巡らせる余裕が無いのだ。 「フフフ♥ 先輩ってば……今、ビックリしてるでしょ? 私のくすぐりが想定外に上手いから……」  笑い続けつつもその疑問に答えが見いだせないあなたの様子を見て、七穂がその疑問に対して自ら言及を始める。 「実際私も……こんなに“くすぐりで笑わせる”って行為が深いものだとは知りませんでしたよぉ? 昨日の夜までは……」  昨日の夜までは……と彼女は言っている。それはどういう意味か?  昨日の昼であれば七穂はあなたの家に立ち寄ったという経緯があるが……その日の夜はお互い自分の家でデートの準備をしていた筈だ。その夜に彼女に何かしらの変化が訪れたとでも言うのだろうか? たったの一晩で……? 何が……? 「先輩から没収したあのDVD……実は私……昨日、全部見ちゃいました♥」  その様に零すと、七穂はそれまでの激しい責めを一旦休め……あなたの足裏に負担を掛けた事を労うように羽根をゆっくり大きく上下に動かして愛撫して慰め始める。 「先輩が普段どういうプレイを見て興奮しているのか……それを知りたくて、全部見させてもらいました……ソフトなじゃれ合いプレイから……死ぬほどハードな責めのヤツまで……全部……」  激しい責めから一転してジワジワと嬲る様なくすぐり方に変わり、あなたは笑う事だけはどうにか我慢できたが、羽根を止めようとせずゆっくりした動きで足裏全体を撫でて来る七穂の意地悪な羽根使いに、すぐに吹き出しそうな笑欲が込み上げてきて喉元を圧迫し始める。  七穂の口ぶりから察するに、どうやらあの日持ち帰ったあなたのコレクションを七穂は一晩で見漁ったらしい……  あのコレクションの中には、友達同士のじゃれ合い程度のプレイから……ガチガチに拘束して身動き一つ取れなくした女優をくすぐりだけで死ぬ寸前まで笑わせ責めにするハードなものまであった筈だ……。それを全部“見た”という事は……そういうフェチ以外はお断りなプレイも見てしまったという事だ。  普通の感覚であればそれを見ても……  何だこれは? と思うか、馬鹿馬鹿しい……と思う位で興奮などしないのでは? と思うのだが…… 「少しでも先輩の気持ちを知ろうって思って見始めたんですけど……見れば見る程になぜか私も興奮してきてしまってですね♥ いつの間にか女優さんを先輩に置き換えて見るようになって……どんな風にくすぐったら先輩の事笑わせられるだろう? って……妄想するようになってました♪」  どうやら彼女はそれらに出演している女優を、あなたに“置き換えて”見ていたらしい。  つまりは、今のあなたの様に拘束されくすぐられている女優をあなただと思って見ていたという事だ……あなたの声やあなたの笑い顔を想像で補って…… 「ほら……私って、興味が湧いたらそれに執着して勉強しちゃう癖があるじゃないですかぁ……今回もそういう癖が出ちゃってですね? 昨日のうちに勉強させてもらったんです♥ あのハードなヤツを何度も見返して……」  ハードなくすぐり物を見て勉強した……。彼女のその言葉にあなたは戦慄を覚えてしまう。  なにせ、その作品達の中にはくすぐりのプロが“笑わせるためのくすぐり方を伝授”的なコーナーが設けられている作品もあったのだ。それを見て勉強したという事なら……彼女はもう素人だとかそういうものではない。一度ハマったものをとことん追い求め勉強してしまう癖を持つ彼女が、生半可にその知識を付けたとは思えない。恐らく……相当な時間をかけて理解したに違いない……くすぐりという行為の……深さを……。 「だからぁ……本当はこんな“お遊び”で先輩の事笑わせるつもりではなかったんですよねぇ~? こんな羽根で責めても……先輩の事喜ばせるだけで……お仕置きにはなりませんもの♥」  ふと、上下に撫でていた羽根の刺激が止まる。  そして羽根の先端が静かにあなたの足裏から離されていく…… 「先輩だって……本当は思っていたんでしょ? 一度はあの女優さんみたいに“本格的な責めを受けてみたい”って……」  あなたはドキリと心臓を高鳴らせてしまう。  昨日までのあなたは、七穂がお仕置きをすると言ってくれた事で、確かにその欲が膨らんだのは間違いない。  彼女の言葉は間違っていない…… 「だから早々にあんな事して……ワザとお仕置きされる流れを作ったんでしょう? 我慢しようともしないで……」  確かにそういう部分も無きにしも非ずだが……ワザとお仕置きされる流れを作ったというのには若干の反論を申し立てたい。この流れになってしまったのは紛れもなく七穂の誘惑があったからこそだ。アレがあなたのフェチ欲を貫いてしまったが為に手を出したと言っても過言ではない。それ故七穂の言葉は一部正解であり一部不正解だと言える。まぁ……そんなことを指摘したからといってあなたの正当性が高まる訳でもないので、余計な反論などしようとも思わないのだが…… 「だったら……今から私がその願いを叶えてあげますよ♥ こんな“お遊び”のようなくすぐりはもう終わりです。ここからは私自らの手で先輩のカラダをくすぐって……死ぬほど笑わせてあげます♥」  その様に告げると七穂は手に持っていた羽根を地面に捨てた。  そして羽根を持っていた手をワキワキと動かし、あなたの足裏を狙うようにその手を近づけ始める。  あなたは彼女の手の気配を察し、頭を横に振って嫌がる仕草を見せる。  しかし、七穂の手はあなたの主張を無視するかのように無言で足裏に近づいてくる。 「どんなに嫌がってもやめてなんてあげません♥ あの女優さん達みたいに……精魂尽きるまで笑わせてあげますから……覚悟してくださいね?」  その様に零すと早速と言わんばかりに七穂の指が、餌に食いつくようにあなたの足裏を鷲摑みにした。あなたは足裏全体を掴まれるかのようなその刺激にビクンと身体を大きく跳ねさせ、小さな悲鳴を一つ零してしまう。  初めて触れる七穂の細い指先……  彼女の指に足裏を触られるなど叶わぬ夢かと思っていたあなただったが、罰を受けるという異質なシチュエーションを経て今こうして現実のものとなってしまった事に嬉しさと不安を同時に味わう事となる。  七穂自身の手でくすぐって貰える……という喜びと期待をあなたは先程までは持っていたが、今は不安と恐怖に頭が支配されていてその事を素直に喜べる雰囲気にはなれない。  さっきの羽根でのくすぐりであれだけ笑いを絞られたというのに……アレを“遊び”だと七穂は言っていたのだ……  その言葉が真実であれば……あれ以上の責めがこれから行われる事になる。  それがいかに苦しくなるものなのか……どれだけ辛い責めになるものなのか……想像もつかない。  素人だと舐めていた拘束される前の自分が恨めしい。  まさか七穂が……自分の想像を超える責め師になっていたなんて……思いもよらなかった。  くすぐられたいとは思っていたが……苦しめられたいなどとは思った事はなかった……  くすぐりに対して何でも知っているつもりでいたが……いつもは映像の外側という安全な場所からプレイを見ていたから、興奮するという余裕が持てていた……  でも今は違う。  今は映像の中と同じ……自分が当事者なのだ。  プレイであれば時間やセーフワードを定めてお互いの了承のもとで行うものだが今のあなたは七穂に手を出してしまった罪人であり、彼女の気が済むまで延々と罰を受けなくてはならない哀れな負け人である。  七穂がどういうつもりで仕置きの時間を考えているかは分からない……  しかし……少なくとも……仕置きと言っている以上……簡単には解放して貰えないのは明白だ。  一体どれだけの苦しみを背負えば許してもらえるのか……  七穂はやる気満々であり、あなたを責める事にも悦びを見出している様子……  その責め欲……それはどれほどに強いモノなのか?   あなたはその底知れぬ七穂の責め欲の深さに不安と恐怖を募らせ彼女の指が動くのを黙って待つ事しか出来ない。  下着だけという半裸の格好でうつ伏せに寝かされ……手を万歳、脚を肩幅に開かされ拘束されている無力なあなたには抵抗するという選択肢を与えられてはいない。  成すがまま……されるがまま……七穂の思いのまま……  くすぐられ笑い続ける事しか……あなたには許されていないのだ。  そんな無防備無抵抗を強いられたあなたに七穂の無慈悲なくすぐりが幼稚な掛け声とともに襲い掛かる。 「そ~~れ、コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ~っっ!!」  両足の足裏を掴むように添えられていた七穂の10本の指が一斉に蠢き始めたのだ。  土踏まずを中心にその周囲を取り囲む様に配置されていた指達が一斉に土踏まずの中心に向けて引っ掻き始め、あなたはそのあまりに暴力的なくすぐったさに我慢の余地など持つ事も許されず大爆笑を吐き出してしまう事となる。 「コチョコチョ~♥ ほれほれぇ~コチョコチョコチョ~♥ こ~ちょ、こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~~~ぉ!!」  指1本1本から伸びる赤いマニキュアが塗られた七穂の鋭い爪先があなたの足裏を素早く引っ掻い回し、耐え難いむず痒さを足裏の神経全体に植え付けて来る。  そのこそばゆさたるや先程の羽根の比ではない。  七穂の“絶対に笑わせてやる!”と強く持った意思が反映されるかのように素早く力強く動く指が足裏の離れた箇所をそれぞれランダムに刺激するものだから、刺激が予測できず常に新鮮なこそばゆさを脳が感知してしまい笑う事が止められない。  頭の中はすぐに“くすぐったい!”という言葉で埋め尽くされ、七穂に思わず“止めてくれ”という旨の懇願を吐き出してしまう。 「止める訳ないでしょ? お仕置きは始まったばかりなんですから! 先輩にはもっともっと……た~っぷり笑って頂きます♥」  あなたの懇願に対してその様に返すと七穂はくすぐっていた右手を一旦右足から離し、左足をくすぐっていた左手と合流させるように移動させ始める。  手を合流させた彼女はその右手の手のひらをあなたの足指をベッドの縁壁に抑え込むかのように手のひらに力を込めて押さえつけ、あなたの足先がジタバタと暴れられないよう自らの手でも拘束を行う。  足先だけは自由に動かす事が出来ていた為にくすぐられてもその部分を暴れさせて幾分かの気の紛らわせを行う事が出来ていたが、そのように足先を押し付けるように拘束されるともはやその僅かな自由さえも奪われる事となる。  七穂は、そんなあなたの足の指すらも自由に動かせなくなった足裏に左手をワキワキさせながらその手を近づけて来る。 「私の恨みのこもったくすぐりを味わって、しっかり後悔してくださいね? あの時……誘惑に負けなければよかった……って……」  暴れる事も抵抗する事も出来なくなった足裏に七穂の細くしなやかな指が着地していく。  曲げられなくなった為に深く窪んでいた土踏まずも平らに伸ばされ凹凸さえも滑らかになってしまったその足裏に、狂おしい程のこそばゆさを生む七穂の5本の指が次々に触れていく。 「そして反省もしてくださいね? 私にあんな恥をかかせてしまった事とか……私との約束を簡単に破ってしまった事……そういうの全部……反省させてあげます♥ このくすぐりで……」  着地した指先があなたの足裏の皮膚を少しずつ引っ掻き始める。  カカトの少し下の位置から土踏まずの中心に向かって……狭い範囲ではあるが、その肌を指先だけで優しくなぞりランダムに引っ掻いていく。  もうその刺激だけでも耐え難いこそばゆさをあなたに与えている。ムズムズっとさせるその小さな動きの刺激にあなたの頬は笑いの圧力で膨らみ始めてしまう。 「笑い狂う準備は出来てますかぁ? そろそろ……先輩の事本気で笑わせようと思ってますけど……大丈夫ですよねぇ?」   七穂の指が突然くすぐる動きを止め、再びスタート地点であるカカトと土踏まずの境目の位置に戻っていき不気味なほど静かに待機し始める。  あなたは七穂のその下から威圧するかのような低い声に身体をビクつかせる程怯え、その言葉に首を激しく横に振り自分の意思を返す。  しかし……七穂はそんなあなたの反応など気に留める様子もなくスタート地点に戻った指達に力を込め指先を皮膚に食い込ませ始める。 「死ぬほど笑い狂ってくださいね? 私の……こちょ……こちょ……でっ!」  そしてこの言葉を漏らした直後、足裏の皮膚に食い込んだ七穂の指が突然強い力で引っ掻く動作を始めてしまう。 ――ガリガリガリガリガリ!!  その指遣いは先程までの繊細で丁寧なくすぐり方とはまるで違う……痒くなった皮膚を必死に引っ掻くかのような激しいくすぐり方だった。  掻かれた皮膚はきっと赤い筋が走っているだろうと想像がつくほどの力強い引っ掻き! その強烈な刺激が伸ばされた土踏まずの皮膚全体に行き渡り、瞬時にあなたの脳にはその刺激が電撃の様に伝わり“笑え”という指示を出す事を強制されてしまう。 「ほらぁ! 悲鳴とか絶叫はもうイイですからぁ! もっと笑ってぇ! ほらほらぁ!!」  静かだった山が突然噴火を始めたかのように強烈な笑いの衝動に見舞われたあなたの口は、発声の最初の方は笑い声よりも先に甲高い悲鳴を上げる事が優先されそれを実行してしまった。  しかし、その悲鳴は数秒も経つ頃には激しい笑いへと切り替わり、七穂はそれを聞いてますますテンションを高めくすぐり方を荒くさせていく。 「こぉ~~~ちょ、こちょこちょこちょこちょこちょ~っ!! コチョコチョ~♥ こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~! どうです? くすぐったいでしょ? 足の裏をこんな風に強く引っ掻き回されたら滅茶苦茶くすぐったくて笑いが込み上げてきちゃうでしょ?」  土踏まずの中心から上下左右ナナメ、とあらゆる方向に引っ掻く方向を変えあなたの足裏をくすぐったい刺激で埋め尽くそうとしてくる七穂の責めに、あなたは激しい笑いを吐き出す事でその刺激に応えるしかない。  まさかあの華奢で女性らしいしなやかな指をした七穂の手から、この様に野蛮で荒々しいくすぐりが飛び出してこようとは思いもよらなかった。  足裏にジンジンする程広がる強い引っ掻きの刺激は、足裏にくすぐったいという刺激を確実に植え付けあなたの笑いをこれでもかと誘発してやまない。  まるで頭の中を書き回されているかのようなじれったいくすぐったさの応酬に、あなたは背筋運動を強いられているかのように頭を限界まで持ち上げ、天井に口を向けて大笑いを吐き出し続ける。  その過剰な笑い狂いを見ている七穂は、さも満足げな笑みを口元に浮かべ更なる無慈悲な責めを自分の手に命令していった。 「強い刺激ばっかだと飽きるでしょ? ほら、こういう刺激も欲しいでしょ? ね?」  七穂の言葉を聞いて方針を変えるように彼女のくすぐりに変化が加えられていく。  今まで激しく引っ掻いていた手の力をフッと抜いたかと思うと、今度は逆に皮膚を触るか触らないかのタッチに変えその上皮をソワソワと優しくこそばし始めたり、母指球の膨らみをキュッキュとマッサージするように揉み込んでまた違う刺激をあなたに植え付けたり……手を逆さに構えて指を土踏まずの皮膚を素早く指先だけでなぞってくすぐり始めたり……  実に多彩な責め技法を披露しながらも強く引っ掻く刺激も適度に交え、あなたに刺激慣れを起こさせないよう注意しながら責めを続けていく。  その恐ろしい程にあなたの笑いのツボを押さえたくすぐりの数々に、あなたは目に笑い涙を溢れさせつつ声が枯れる程の大声で笑い、まな板の上のコイが暴れるかのように腹部をベッドの床板にバタバタと何度も打ち付け暴れ狂った。 「アハハ♥ どうです? やめて欲しいでしょ? 私のこの手から逃げたいでしょ? 足の裏を守りたくて仕方がないでしょ?」  あなたは笑い苦しみながらも必死に懇願を繰り返す。  もうやめて! と、何度も笑い苦しみながら七穂に訴えかける。 「でも残念ながら先輩は逃げられません♥ 私のこのコチョコチョ動き回る指からは絶対に逃げられないんですぅ♥ だって……足に枷が巻かれてて拘束されていますもんね?」  しかし、七穂はそのようなあなたの訴えを聞き入れてはくれない。  逆にあなたが無様に懇願する様子を見てSっ気が増し始め、その責め言葉にもあなたをイジメたい欲が濃く反映されていく。 「逃げられない足の裏をこしょぐるだけの行為がこんなに楽しいものだとは思いませんでしたよぉ♥ 私が指をちょっと動かすだけで先輩ってば子供の様に笑ってくれるんですもん……。これほど楽しいものはありません♥ くすぐりプレイってこんなに楽しいモノだったんですねぇ? ウフフフ♥」  自分の足が拘束されていてくすぐりから逃げられなくされているという事実を自覚させられると余計に足の裏がこそばゆく感じ始めてしまう。 「私の指が動けば先輩は嫌で笑ってしまう……。それってなんか……私が先輩のコト支配してるみたいでゾクゾクしちゃいますねぇ♥ 私の思い通り……好きなように、先輩を笑かす事が出来る……。いつも私の一歩先を歩いてエスコートしてくれてる先輩を、まさか私がこんな風にイジメる事になるなんて思っても見ませんでした♥ これは楽しいです……楽しいですぅ♥♥」  左足をくすぐるのに飽きたら今度は右足を左手で抑え込んで右手でくすぐり回す……  右足が飽きたらまた左足へ……  それを延々と繰り返し、あなたを笑い漬けにし続けていく七穂……  彼女の顔は真っ赤に火照り、目も悦に浸る様に遠い目となり、口元からは拭う事も忘れられた涎が顎の先端まで垂れて行っている。  七穂は心の底からくすぐりを楽しんでいる。  あなたをくすぐる事自体に興奮を覚えつつある。  少しSっ気が強い……という印象は最初から持っていた。  大人しい見た目をしているが、芯の部分はしっかりしていて先輩であるあなたにも堂々と意見する程に強気な面も多少は見られていた。  普段はそのSな部分を隠してあなたと付き合っていたが、所々で彼女の意地の悪さが垣間見える場面が訪れると、そのギャップにあなたは不快感を覚えるよりむしろ彼女の可愛さの一つであるという認識の方が強まり、それも含めて奥ゆかしいとさえ思っていた。  しかし、拘束され抵抗できなくされたあなたを前にした彼女は、そのような奥ゆかしさを保つ素振りも見せずSっ気を全開にしあなたを責めている。  まるで我慢していた欲を解放するかのように……  あなたに本当の自分を曝け出すかのように……堂々と、あなたをイジメて悦ぶ様を見せつけている。  本当は……このような自分が居る事を……あなたにも知って貰いたかったとどこかで思っていたのかもしれない。  あなたが性癖を隠していていつ打ち明けるか苦しんでいたのと同じように……彼女も自分の本当の気持ちを出すのを恐れていたのかもしれない……  あなたは笑い苦しみながらもその様に彼女の心の内を理解した。  笑わされて苦しい思いをしているが……いじらしい七穂の感情を読み解くと、その責めは愛おしさすらも感じられる様になってしまう。  七穂は今……あなたをイジメて悦んでいるのだ。  それは……ずっと彼女も夢見ていた事だったのだろう。    あなたが七穂を“くすぐりたい”と思っていたのと同じように……彼女もまた、あなたの事をイジメてみたいと思い続けていたのだろう……  笑え笑えと彼女がくすぐるたびに、その興奮の度合いが指先に伝わってくる。  彼女のくすぐりにはそのような無言の訴えが聞こえて来るようだ。  くすぐったくて……死ぬほど苦しい思いをしているが……それはそれで嬉しいことだ。  七穂がそれで悦んでくれるのなら……これくらいの苦しみなど……いくらでも耐えられる……  あなたは改めてそのように思った。  彼女に対する認識も……その様に変わっていった。 ―――― ―― ―  やがて……何時間続けたかも分からない七穂のくすぐり責めは終わりの時を迎えた。  くすぐっていた手が思った以上に疲れてしまったのか……それともあなたの苦しみ様を見て気が済んでくれたのか……七穂は足裏から手を放しおもむろに立ち上がってあなたの胸横まで移動し、背中に重なる様にあなたの上に倒れ込んできた。  全部の体重を預けるように重なってきた七穂に……あなたは何事かと警戒するように身体を震わせてしまう。  ラバースーツのしっとりとした感触と七穂の柔らかい胸の感触が同時にあなたの背中に押し当てられる。  その胸からは……彼女の鼓動の大きさが聞き取れてしまう程の鼓音が背中に伝えられる。 「どうでしたか? 先輩……。私のくすぐり……くすぐったかった……ですか?」  その様に恥ずかしそうに零した七穂は、寝重なった格好のまま自分の両手をあなたの胸横に滑らせるように移動させる。  “もしかしてこのまま脇の下をくすぐられる!?”と期待半分警戒半分に心臓を高鳴れせ始めたあなただったが、七穂はあなたの万歳して無防備になっている腋には触れずその奥の胸の方に手を這わせ、あなたの乳首を指で転がすように弄り始める。 「私のお仕置きも終わったしぃ……このまま……抵抗できない先輩に……エッチな事……しちゃおっかなぁ~? なんて……」  乳首を指で転がしながら耳がとろけるような甘い言葉で囁いてくる七穂に……あなたは思わず首を縦に振ってその申し出を実現してほしいと意思を返した。 「……フフフ♥ でも、だぁ~め♥ 最初に言ったじゃないですかぁ……お仕置きはくすぐりだけでエッチな事はしないって……」  七穂はその様に返しあなたの乳首から手を引かせていく。 「先輩が……ちゃ~んと我慢できるようになったらぁ……エッチな事も……してあげるかも……ですけどぉ……それまでは……お・預・け……♥」  引いていった手をあなたの二の腕に運び、腕を伸ばしながらも七穂も控えめな万歳の格好になってあなたに体重を預けていった。  あなたの肩には、丁度七穂のワキの部位が当たるように運ばれ、うつ伏せの格好で寝ていてもその柔らかくて温かな感触を直に感じる事が出来た。  ジッパーの隙間から主張するように出ていた七穂のワキを拘束されながらも感じる事が出来たあなたは、今までの疲れが吹っ飛んでしまうかのように興奮を覚えてしまう。  そのしっとりと汗ばんで体温が上がり切った彼女のワキ……それを触ってみたい。あのたのその想いを代弁するかのようにあなたへ意地悪な言葉を投げかけて来る。 「私の……ワ・キ♥ 触ってみたい……でしょ?」  あなたは頭を激しく縦に振ってそれに応える。 「私の敏感なこのワキ……早くくすぐってみたいと……思ってるでしょ?」  勿論あなたの頭は縦に振られる。くすぐりたいと思う気持ちはもはや抑えきれない領域まで達しているのだから…… 「だったら……次は……我慢できますよね? ちゃんと……我慢……してくれますよね?」  そのように言われ首を縦に振らない訳にはいかない。しっかりと何度も首を縦に振り七穂の言葉に約束を交わす。 「クス♥ だったら……また来週の同じ時間に……あのデパートでデートの続き……してくれますかぁ? その決意をそこで……証明してもらいたいです♥」  あなたはその言葉に力強く「うん」と七穂に返し、七穂はそれを聞いて安心するかのようにあなたの背中で寝息を立て始めてしまった。  あなたは七穂の重みを背中に感じつつも自分の疲れも癒す為にそのまま寝入る事とした。  拘束ベッドの上で重なり合うように万歳の格好をしながら寝入る二人……  他の人が見たら……きっと「何をしているのだ?」と疑問に思うだけの光景ではあるが……  あなたと七穂はこの寝姿は特別な思いが込められている事を理解している。  抱き合う訳でも身体を擦り付け合う訳もなく……お互いのワキや足の裏を曝け出した無防備な状態で寝るという特殊な寝姿……  それはお互いがその部位を“好きにしていい”という想いのあらわれだった事など言うまでもない…… 【足の裏くすぐられエンド:完】

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