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19:生き地獄  それは……私の想像を遥かに上回る責めだった。 ――コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ 「ッッィィィィィィギ、ッッッビギヒャ!? いギャァアあぁぁぁァぁぁぁぁぁァぁぁ!!!!」  全身を一斉に襲ったそのあまりにもおぞましい刺激に……私は思わず“笑う”という行為を忘れるかのように声が出る限りの絶叫を最初に吐き出してしまった。 ――ジョリジョリジョリ、コリコリコリ、コチョコチョ♥ コチョコチョコチョコチョ♥ 「っ――ハ!? ッぅぅ……はっっ!!! ッっッひゃはっ!?」  瞬時に体中を駆け巡ったあまりに凶悪な擽感の暴力に、くすぐったさよりも刺激に驚いてしまった私は叫び声を上げた後もすぐには笑い声を形にする事が出来ず、過呼吸気味の引き攣った声を上げる事しか出来ない。 ――コチョコチョコチョコチョコチョ、コヂョゴヂョゴヂョ、モニョモニョモニョモニョモニョ……  しかし、ひとたび身体の各部位の刺激を“くすぐったい”と知覚し始めると、私はこれまで誰にも見せたことの無いような口角の上げ方を顔に携え、開けれるだけ口を大きく開き、吸い込んでいた酸素を全て吐き出すかのような笑いを吐き出し始めてしまった。 「ギャハーーーーーーーッ!? やぎゃ~~~~っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、いゲひャ~~~はははははははははははははははははははははははははは、あへはひぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、うぎはははははははははははははははははははははははははは!!」  私が最初に知覚で来たくすぐったさは、足裏へ与えられている強烈な刺激だった。 「アヒャ~~ッハハハハハハハハハハハハハ、うぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ!! こひょばいぃっっひひひひひひひひひひひひ!! あじの裏ぁはははははは、あじの裏こひょばいぃぃっっひひひひひひひひひひひひひひ、うぁははははははははははははははは!!」  足裏の中心を縦に分割し、その左右の端に向けて中心から外へと引っ掻く動きをする複数のくすぐりハンド達……その土踏まずの窪みを掘り起こしているかのような引っ掻き方に私の足裏の神経は死ぬほどこそばゆい刺激を感じてしまい、私の口から多量の笑いを絞り出させ始める。 「ギャ~~ハハハハハハハハハハハ、やはははははははははははは!! 羽根もだめぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ、えっっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへ、うへへへへへへへへへへへへへへへへ」  土踏まずを分けるような引っ掻きに加え足裏の縁に沿うよう配置された羽根達も稼働を始め、カカトやら足指の側面やら指の頭やら指股の間やら母指球の膨らみやらをいやらしく撫でて、足裏全体が極端にムズ痒くなるよう撫で回し始める。  その隙間なく埋め尽くされた羽根のくすぐりは、足指1本1本までガッチリと拘束された私の足裏をイジメるように容赦なく触り回し、私の笑欲をこれでもかと刺激し尽くしていく。 「オッホォ~~ッホホホホホホホホホホホホホホ、へひははははっははははははははははははははははははは、えひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、やめでぇ!! ホント駄目ぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへ、こしょばくて、くすぐったくて、頭が可笑しくなりそうっっふふふふふふふふふふふふ、ダハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」  次に知覚したくすぐったさは、腋でもワキの下でもなく……背中に与えられたムズ痒い刺激だった。 「オヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、ぇへへへへへへへへへへへへへへへへ、せにゃかヤメぇぇぇぇっへへへへへへへへへへへへへへへ、こしょばいぃぃひひひひひひひひひ!! ビクビクしちゃうぅぅふふふふふふふふふふふふ!! カラダが勝手にビクビクしちゃうぅぅぅぅふふふふふふふ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」  指をニギニギ動かして各部位を触る小さなくすぐりハンドの刺激は、足裏程強烈な刺激を生まないまでも背中の敏感な神経を優しくマッサージするかのように揉み解す為、まるで性感帯を刺激されているかのような寒気を私に与えて来る。それに加え、ランダムに配置された羽根の先端が、私の敏感になり過ぎた背筋のラインを小さな動きでコショコショと優しく撫でるものだから余計に刺激が鋭敏化されくすぐったい!  これら二つの攻め手が入り乱れ、様々な箇所を様々な方向に移動しながら予測不能な刺激を加え続けるものだから、私のくすぐりに対する防御力はたちまちにゼロに近い値にまで下げられ刺激に対する抵抗力を無くしてしまう。  ゾワゾワ、ムズムズ、ジクジク……と、色んな“痒い”刺激が背中に与えられ、私は思わず何度も腰を浮かせてしまいそうになる程の拒否反応を見せてしまう事となる。 「あはっっはははははははははははははは!! お尻ズルいっっひひひひひひひ!! お尻ナデナデはズルいぃィぃィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、うひ~~~っひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!!」  背中全面を覆うそのむず痒い刺激とは別に私の尻や膝裏などにも羽根や手の責めが加えられており、その刺激を知覚するや否や私は足の枷を引き千切らんとする勢いで足をバタつかせて逃げようとしてしまう。 「ぃひぎゃあぁぁぁぁははははははははははははははははは!! あ、あ、穴っっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、穴にぃぃひっひひひひ羽根先がぁぁはははははははははははははははは、そんなの反則ぅふふふふふふふふふふふふふ!! ダハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……」  くすぐりハンド達は私のお尻の柔肉をモミモミと解すような動きをメインで行っているが、何本かの手は特殊な動きをしている個体もある。  その何本かは、私の尻穴付近の尻肉を左右に持ち上げるように開かせ、尻穴を強調するかのように露出させようと力を込めている。  ただでさえ排泄物を出す部位でありデリケートな部分である為恥ずかしいと思える箇所なのに……その様に菊穴を広げるかのように開かされると、もはや顔から火が出る程の恥ずかしさに苛まれる事となる。  医療行為でもないのにこの様な仕打ちを受ければ……誰だって死ぬほど恥ずかしいと感じる事だろうが、機械達はその恥ずかしい部分を更に際立たせるべく複数の羽根先をそこへ向かわせ“くすぐり”を施してくるのだ。 「ダヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、ぅえへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、あにゃあぁぁあははははははははははは、穴コチョやめぇぇぇ! 穴をコチョコチョしないでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへ!! 恥ずかしいぃィぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! くすぐったくて恥ずかしいぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひ!!」  広げた菊穴を取り囲むかのように複数の羽根が集まり、一斉に羽根の先端部分を尻穴や尻筋に薄く当て、小さくコチョコチョと動き回ってくすぐってくる。  その絶妙な触り加減と、羽根の元々持っている反発力が合わさって、尻穴を“ほじくる”様な刺激が生み出される。その刺激は私にとっては未知の刺激であり、それらの刺激に慣れていない事も重なり、私の身体は拒否感としての寒気を身体の芯から発し続けてしまう。  ヒクヒクと勝手に痙攣してしまう尻穴に這い回る無数の小さな羽根達……  かつてこのような責めを受けた事など無かったため、私の脳はこの刺激に対して混乱を招く事となる。  恥ずかしい感情と、むず痒い刺激……そして確かにこそばゆくて勝手に笑いが込み上げて来る感覚……これらが複雑に入り乱れ、私は自分が今恥ずかしがっているのか笑っているのか分からず感情が混乱しっぱなしの状態にさせられる。  そんな、感情さえも混乱させられる背中&尻責めを味わっていると……また別の刺激が私の感情を更なる混乱へと導いていく。 「ギャハッ!? はギャはっッ!!? あぎゃーーーーっっっははははははははははは!? いひゃ、ワギぃ!? ワギがぁぁはははははははははは!? ひゃだぁぁぁあ!!! あひゃ~~~~~っひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! やだ、やだぁぁはははははははははははははははははははははははははは、ワギのそれやだぁぁぁはははははははははははははははははははははははは!!」  突然、腋の窪みにヒヤリとした液体が塗られたような感触が感じられたかと思うと、そのヒヤリとした液体を腋全体に塗りたくるかのように複数の手が蠢き始めた。 ――ゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョゴヂョ!!!  その液体は揮発性の何らかの液体である事はすぐに分かった。スーッと清涼感が抜けるような感触を肌が受けた後すぐにその清涼感は蒸発するかのように消えていき、何事もなかったかのように元の肌に戻していく。それはさっき機械が語った揮発性のアルコールである事はすぐに理解できたが、ワキに配置されたくすぐりハンドは私の腋にその液体を塗るだけには留まらず更なる攻め手をそこに加えてきたのだ。 「えぎぃぃひひひひひひひ!? うひゃ~~はははははははははははははは、やはははははははははははははははははははははは、ヤバいぃィひひひひひひひ、くすぐったいぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひ!! これ滅茶苦茶くすぐったいぃぃぃ!! ぃぎっひっっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、だははははははははははははははははははははははは!!」  アルコールが塗られた箇所はすぐに揮発し元の状態に戻るのは確かだが、揮発するまでの間は水分が含まれているかのように濡れた状態にさせられるため、肌との摩擦が極限まで薄められてしまう。そんな摩擦が殆ど無くなったワキの肌を小さな指がコチョコチョとまさぐるかのようにくすぐると、そこに感じるくすぐったさは通常の何倍もの火力を発揮される事となる。  加えて、そのアルコールが揮発する瞬間の体温を奪う清涼感が、余計に神経を過敏にしていくものだから、ただでさえガスによって弱くさせられている神経が余計に敏感になってしまいくすぐったさは何百倍にも膨れ上がってしまう。  そんなくすぐったさを、私は手を降ろす事も許されれず万歳の格好で強いられている。  どんなに暴れても、どんなに嫌がっても手を降ろす事は叶わない。  くすぐって下さいと言わんばかりに間抜けに万歳し続けている私の無防備な腋を、機械の手は何の遠慮もせずにくすぐり続ける。  私はその凶悪過ぎるくすぐったさに抗う事が出来ず……ただただ刺激に対して笑う事だけを強いられ続ける。 「だはははははははははははははは、いひぃ~~っひひひひひひひひひひひひひひひひ、うぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、はひぃ、あひぃぃっひひひひひひひ、いひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、はひはひ、はへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、くかかかかかかかかかかかかかははははははははははははははははははははは!!」  笑い始めてから何分が経ったことだろう? 数分? それとも数秒? 恐らく大した時間は経っていないだろうという事は自覚出来ているが……私の身体は既に何十時間も笑い続けたかのように疲弊し関節の節々に痛みを感じ始めている。  笑い続けている顎は大きく開けすぎて根元が痛いし疲労感がすごい。  横隔膜の収縮が頻繁に行われている胸部は肋骨が軋むように痛み始めている。  横腹も笑い過ぎて捻じられているかのように痛い。足裏の刺激に拒絶する為に何度も足を暴れさせようようとしている為、枷が食い込み続けている足首も千切れそうなくらい痛い。勿論、手首の枷も食い込んでいる為手首も痛いし、ベルトを締められている身体の各部も痛みを発している。  開始5分と経たずして満身創痍……  そんな絶望を感じた私に、機械の責め手は更なる刺激を私の身体に与え始める。 ――グニッ♥ グニグニグニ♥♥ 「……はぎゃへっ!!?」  今まで様子を見るように動かないでいた脇腹から脇の下のラインに設置されていた細長い蟹の手の様なくすぐりハンド……  それらの手が突然私の側面の肌に指を食い込ませるように潜り込みを始めたのだ。  ワキの下にある肌に浮き出た肋骨……その骨と骨の間に丁度納まる太さの機械の指……  それらが骨の間にの皮膚に沈み込むように力を込め始め、私の不安をこれでもかと掻き立てていく。  その機械は恐らく他の手と違って指の数が極端に少ない。  多分……親指に当たる指と人差し指に当たる指の二本しか指はないのだと思われる。  なんだ……指が少ないのだったら、くすぐったくないのでは? と思うかもしれないが、結局その二本指の手が複数集まっている為私からすれば、指が少ないから大丈夫だと言い切れる事象にはならない。むしろ、余計な指を省いて“ココを責めるのに一番効率的”だと思える構成にしたからこそ二本指にしたのかもしれない。  その証拠に、この指は明らかに私の“くすぐったさを感じるツボ”を的確に突く配置取りをしているのだ。  親指の部分を背中側まで伸ばし、まるでベルトでも巻くかのように私の身体をガッチリその指だけで固定する。その親指の力は背中の皮膚に爪が食い込むほどで、背中のくすぐりが無ければ少し痛いと感じてしまう位には力がこもっている。  親指の力でしっかりと私の身体に固定された手は私が身震いしたり身体を横に振るなどしてもビクともせず張り付いている。もはやギブスを付けられたかののような錯覚を起こしてしまう程のホールド力を見せるその親指だが、そのホールドは人差し指の責めを補助する役割でしかない。  肋骨の間に突き立てられた人差し指……  私がどんなに暴れてもその指が正確に“くすぐりのツボ”を突けるようサポートするのがその親指の役割なのだ。  そして、その役割を十分に生かし切る様に人差し指は肋骨の間や脇腹の奥にある“くすぐりツボ”に指を到達させ始める。  ココを強く刺激されれば、どんなにくすぐりに強い人間でも死ぬほど笑い狂ってしまうであろう……くすぐったいツボ……  普通の人間が責めても力加減が分からず、ただ痛いだけだったり力不足で何も感じなかったりするような繊細な箇所だが、機械の責めはそういう力加減を熟知している。  何処をどのように……どのような力加減で責めれば人間の笑いを最大限引き出すことができるのか……それを熟知している機械が責めるのだから、くすぐったくないと感じる訳が無い。  そんな刺激を……私のこの……早くもギブアップ気味な身体に施そうとしているのだ……  耐えられるわけがない……  そんなもの……数分も続けられれば笑い過ぎて窒息死してしまうに決まっている……  そうは思うのだけど……機械はやはり私に容赦がない。  私がどう感じようが……どんなに怖がったり嫌がったりしようがお構いなしにプログラムされた責めを実行する。 ――ガチャッ! ウィィィィィン……ピピ!  ――モニョモニョモニョモニョモニョモニョモニョモニョモニョモニョ!! 「――ッ!!? っケひャへっ!?」  それが始まった瞬間……またしても時が止まったかのような衝撃を味わった。  あまりに強すぎる刺激であったため、他のどのくすぐりも一瞬刺激を忘れてしまう程に脳内が真っ白に染め上げられてしまった。  しかし……その刺激が知覚できるようになってくると、私は身体中の筋肉を痙攣させ始め…… 「ぶぎゃっっっはっっ!? ぶひゃはっっっっ!! ウビャギャ~~~~~~~~~~ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、やぎゃはははははははははははははははははははははははははははは、あぎゃははははははははははははははははははははははははははははははは、エヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」  顎が外れるのではないかと思える程口を限界以上に開き切って、眼の玉が飛び出さんとする勢いで目を見開かせつつ激しい笑いを吐き出し始めてしまった。 「ギャ~~~~ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、やははははははははははははははははははははははははは、いひぃいぃぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハハハハハハハハハハハハ、いぎゃあぁぁあぁぁぁははははははははははははははははははははははは、うははははははははははははははっははははははははははは、んへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」  それはもはや“くすぐったい”という次元を超えたくすぐったさだった。  電撃を浴びせられたかのような強烈な刺激が私の全身に駆け巡って脳を貫いた。  「くすぐったい!」と感じる前に脳が条件反射的に“笑え”と命令を下してしまう。刺激に対して拒否反応だけが反応して笑いが起きてしまっているような感覚……  正直、身体の何処がくすぐったいかなんて判断出来やしない。  なにに笑わされているのかも理解出来ない程その刺激は凶悪なものだという事しか認知できない。 「ほぎゃーーっはははははははははははははははははははは、えげへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、やめっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、やめでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」  私は電気刑に掛けられている囚人の様に身体を痺れさせ、激しく身体を震わせながら身を捩じろうとしてしまう。  しかし、辛うじて少し身体を捩じれたとしても、しっかり親指が食い込んで固定されている手からは逃れる事は出来ず、私が触られたくない箇所をピンポイントで責められ続け笑う事を余儀なくされてしまう。  逃げようとしても逃げられない……くすぐりのポイントをほんの少しずらす事も叶わない……  その様な責めに、私は肺の全ての空気を吐き出してなお笑う事をやめる事ができない。  この責めは……地獄だ。  笑う事で身体は勝手に暴れてしまって体力はどんどん奪われていく。動かした筋肉や関節は暴れた量に比例して疲労が蓄積していってしまう。それに加えて笑いによる呼吸のし辛さ、肺の中の酸素の乏しさによる窒息感が合わさり、辛さは万倍にも膨れ上がる。  笑いたくないと思っても笑わされる。  これ以上身体を動かしたくないと思っていても拒否感と身体の反射が勝手に身体を暴れさせてしまう。  それが延々とループする。  どんなに苦しんでも……どんなに辛いと感じていても……機械による“強制笑わせ責め”は止まらない。止めてくれない……  そして、体中の酸素が笑いによって吐き出され、圧倒的に足りなくなる酸素の窒息感と苦しさを味あわされ私の脳が意識を手放そうとしようとすると…… ――プシュッ! シュゥゥ……  意識が途切れるか途切れないかのギリギリのタイミングを計ってガスを放出しているチューブから勢いのある空気の塊が喉奥に吹き出され、私の肺に直接少量の酸素を届ける動作が加わる。  この空気の塊はただの空気という訳ではなく何かしらの“着付け剤”を含んだ混合気であるようで、吸った瞬間、空気の流れが知覚できるほどにビリビリと熱い痺れが気道に感じられてしまう。  その気体が肺に到達すると、その成分は赤血球の流れに乗って全身へと流れていき……私の身体全身を一気に強烈な熱い痺れで覆い、それまでの倦怠感やら混濁した意識やらを一気に吹き飛ばす衝撃を私に与えていく。  その効果は空気を吸った一瞬の出来事ではあるのだけど、体内から電気を放電されているかのようなその強烈な痺れに私の意識は瞬時に“くすぐられる前の明瞭な意識”にまで戻される事となってしまう。  酸素を与えてくれるというのが慈悲であると感謝をしたいところだが、明瞭になってしまった意識はくすぐりに対する刺激もリセットされてしまう為、その後のくすぐり責めが再び新鮮な地獄として認知され新たな笑いを生んでしまう。  その苦しさたるや……死んでも死んでも蘇させられるまさに地獄そのものを再現させられているようだ。  苦し過ぎて意識がぼんやりし始めたと思ったら強制的に意識を覚醒させられ、呼吸困難で死んでしまう直前まで追い込まれたと思ったら、肺に強制的に命を繋げられるギリギリくらいの酸素を送り込まれ延命させられる……  身体は疲弊しているのは変わらないのに、その身体に鞭打つように更なる笑いを強要される……  その繰り返しがこの地獄を作り上げている。  くすぐり責めの最も苦しい部分を延々とリピートされているかの様なこの責めは……まだ一思いに酸欠で殺された方が苦しみが少なく済むのではと思ってしまう程だ。 「だがはははははははははははははははははははは、うひぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、んへへへへへへへへへへへへへへへへ、ぐるじぃぃぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、もういいから殺じでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、こんな事繰り返されるんなら殺された方がマシぃぃいひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ダハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、かははははははははは!」 『身体中ノ弱点ヲ的確ニ責メラレ、終ワリノナイ笑イヲ搾リ取ラレルトイウ行為ハ……人間ニハサゾ苦シイ行為トナル事デショウ……』 「おぁぁ~~っはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、くしゅぐったいぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、身体全部くしゅぐったいぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、だははははははははははははははははは、やはははははははははははははははははは……」 『コノママ、手足ヤ腰ヤ胸ノ骨ガ、自ラノ動キデ折レ切ルマデ、暴レサセ、身体機能ニ深刻ナ障害ヲ負ワセルマデ意識ヲ保タセル予定デスガ……構イマセンカ?』 「ギャ~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハ、身体の骨が折れるまでぇっへへへへへへへへへへ、暴れさせるッ!? い、いやっっっはははははははははははははははは、そんなの嫌っっははははははははは、そんな死に方嫌ぁぁあぁぁぁぁはははははははははははははははははははははは!!」 『既ニ、腕ノ関節ハ70%ノ疲弊度ニ達シテイマスシ、脚ノ関節ハ75%ヲ超イマス。90%ヲ超エレバ、暴レテ骨折ヲ引キ起コス確率ハ50%ヲ越エマス。他ニモ、腹部ノ筋力ノ断裂ヤ、咳キ込ムダケデ胸骨ノ骨折モ見込メル確率トナル事デショウ……』 「あがっっははははははははははははは、うははははははははははは、やははははははははははははははははははははは、やだぁあぁあははははははははははははははははは、そんなの酷過ぎるぅぅふふふふふふふふふふふふふふふふふ、えげへへへへへへへへへへへへへへへ」 『ソウナリタクナケレバ、今スグニ答エヲ述ベナサイ……。先程ノ行動ノ真意ハ……何ダッタノデスカ?』 「はぎひひひひひひひひひ、そ、それは……はははははははははは、それはぁぁははははははははははははははははははははははははは」 『答エナイノデアレバ、更ナル責メを追加シ、新タナ刺激ヲ加エル事トナリマスヨ?』 「新たな責めぇへへへへへへへへへへへへ!? にゃにそれぇぇぇっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへへっへっへっへ、まだ責める手段があるって言うのぉ!? ひぎひゃはははははははははは! イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ……」 『受ケタクナイノデアレバ、今スグニ答エテクダサイ。先程ノアノ不可解ナ行動ニハ……ドンナ意味ガ隠サレテイルノデスカ?』  「はぎひひひひひひひひひひひひひひ、それはっっははははははは、言えないぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ、絶対にぃぃぃひひひひひ、どんな事をされても絶対に言えないぃィぃ!!」 『ナルホド……マダ抵抗スル意志ガ残サレテイルヨウデスネ? デハ、追加ノ責メヲ呼ビ出シテ差シ上ゲマショウ……』 ――ピッッ!! ピピッ!! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……  機械音声がそのように告げると、仰向けに寝かされている私の身体の上空から何かが迫ってきているかのような気配と駆動音が聞こえ始める。  目隠しをされている為、その天井から降りてきているものが何なのか想像すら出来ないが……何やら身体のサイズ以上に大きい何かが降りてきている事だけは気配で察する事が出来た。 「はひひひひひひひひひひひひひひひひひ、何ぃ? 何かが蠢いてる気配がすりゅけどぉぉ!? コレなにぃっひひひひひひひひひひひ!? 何なのぉほほほほほほほほほ?? うぎひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、えへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」  何か小さな物が頭の先から足の下までビッシリと生え揃っていて、ワラワラと動き回っているような気配が降りて来る距離の応じて感じ取れる様になっていく。それが何のなのかは想像すら出来ないが“新たな責め”と呼称した機械の言葉が真実であるならば、この無数の何かが動き回っている気配は嫌な予感しか掻き立ててこない。  おぞましい何かが……私の目の前数センチの位置まで降りてきている。それだけは理解出来ている。  その“何か”を直接見る事は叶わないが……私はそれを“見せて貰っていない”という事に感謝すべきなのかもしれない……  何せ……この“装置”をもし見ていたら……  その見た目のあまりのおぞましさと……これからソレに襲われると想像する私の絶望に……心が砕けてしまっていただろうから……  私には見えていないが……天井からは私の等身大程の“蓋”のような物が降下してきており、私の身体を頭から足先まですっぽりとその蓋で覆う為降下を続けてきている。  丁度普段行われる発電カプセルの蓋の様に丸みを帯びたソレなのだが……防音と集音を目的とした発電カプセルの蓋とは決定的に違う点がその蓋には存在している。  それは……蓋の表側ではなく裏側に私を絶望へと落とし込む仕掛けが施されていたのだ。 「ねぇっへっへっへっへへっへっへっへっへっへっへっへっへ、何が始まるのっッほほほほほほほほほほほ!? これから何が始まるというのっ!? ねぇっっへへへへへへへへへへへへ!!!」  蓋の裏側は逆光になっていて影が掛かっておりしっかりは見えないが、確かに何かが蠢いている様子が見受けられる。  それは1本や2本などではなく複数……いや、蓋の裏側にビッシリと……何かが張り付いていて蠢き続けている。  私には見えていないが……それらは……小さなマジックハンド達に他ならなかった。  蓋の裏側に隙間なく埋め尽くされた人間の手の半分以下のサイズの小さな手達……  それらが、私の体に触るのを待ちきれないと言わんばかりに指をワキワキさせて蠢いているのだ。 「ひひひひひひひひひひひひひひ、ぃひひひひひひひひひ、へへへへへへへへへへへへへへへへ……ハァハァ……こ、怖いっっひひひひひひ! 何かが目の前まで迫って来てるぅぅ!! コレなに? なんか蠢いてるみたいだけど……コレ何なのっ!?」 ――ガタン……。プシュゥゥゥゥゥ……  その蓋が完全に降り切ってベッドと一体となり完全にカプセル状の拘束台に成り代わりロックが掛けられた瞬間……  蓋の裏をビッシリと覆っていた小さなマジックハンド達が一斉に私の無防備な身体めがけて手を這わせ始めた。  その手達が触り始めた箇所は……私の想像を絶する刺激を生み出す事となる。  その手達は、今まで側面や背面ばかりを責めていた責め手と違い……私の身体の“表部分”を責め始めたのだ。  今まで手付かずのまま放置されていた……  刺激に晒されていなかった……身体の表部分……全てを……。一斉に……

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