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18:対話 ――ビィィッ! ビィィッッ!! ビィィッッ!! 『ボイラー区画ニテ異常発生! 近クノ警備ハ現場ヘ急行シ不審者ガ居ナイカヲ確認シテクダサイ!』  廃棄処理区画の電源を落とすとすぐさま予備の電源に切り替わりそのような放送がスピーカーから流れ始めた。  目論見通り、電源を落とせば博士達を襲っている廃棄システムの手が少し止まってくれている。それは監視しているモニターを見て確認が出来た。  二人のバイタルも、休みを挟んであげる事で少しではあるが回復しつつある。 ――ガチャンチャンガチャン……  放送が行われて数秒も経たないうちに、ロボット達が集まってくる音がボイラー室の至る所からし始めた。ボイラーの奥にあるこのモニター管制エリアには指示が下っても中々辿り着けないだろう……と、たかを括っていたが……どうやら近くには警備ロボが複数居たらしく、次々銃を構えて迫ってくるロボット達がすぐに視界に入り始めてしまう。 「もう少し……出来る限り電源を止めてあげていないと……限界ギリギリまで……」  私は、オンとオフが切り替わり続ける主電源と予備電源を必死な手つきで操作し、モニターの中でぐったりしている二人につかの間の休息を与え続けていく。 『不審者ヲ確認! 顔認証ノ結果、Fuelナンバー3543デアル事ガ確認サレマシタ。直チニ包囲シ捕獲ノ準備ヲ行ッテ下サイ!』  しかしロボット達はそんな私に銃を突きつけ、周囲を取り囲んで絶対に逃がさないと言わんばかりに包囲を固めていく。 『ここまで休憩の時間を稼いであげれば……もうしばらくは耐える事も出来るだろう……』  そのように感じ取った私は最後の電源オフを操作した後、観念するかのように操作盤から手を放し両手を上げてロボの方へ姿を向けなおした。  自分の周りには6台ほどの警備ロボが銃を構えており、今にも銃口から電撃を射出しそうな雰囲気を漂わせている。 「こ、この通り……抵抗はしなわ。大人しく捕まるから……その銃だけは……撃たないで……」  と、無抵抗の意思を示しながらそのように命乞いをする私に、機械達は上の指示が下るのを待つかのように無言で止まったままとなった。  しばらく沈黙が流れた。  機械は動こうとしない……  もしかしたら……指示を出すロボットが判断を待機しているのでは?  そう思った私は顔を僅かにモニターに向けて電源が切り替わったかどうかの確認を再度行う。  私が横目に見ると……丁度電源が予備電源に再び変わった所だった……。 『もう一回くらいだったら……電源をオフにしてあげられるかも……』  機械が中々行動に出ないのをいいことに私はそのような考えを浮かべてしまい、咄嗟にキーボードに向かって再び手を降ろす仕草をしてしまった。  その瞬間…… ――バシュッ!! バシュバシュッ!!  私に無抵抗の意思が見られなかったという事を確認したかのように構えられた銃から電撃が放たれ、私の身体にそれらが次々に私の身体に突き刺さっていき……私の手はキーボードに手が届く事なく身体と共にその場に倒れ込む事となる。  倒れる瞬間の走馬灯の様な光景に、目線の先にあった通気口が目に入る。  そこには、窮屈そうに通気口の中で身体を折り曲げて隠れているルカさんの心配そうな顔が映り、私はその映像を最後に見て気を失ってしまった。  その後の処理は……恐らくクラリスさんと同じ経過を辿る事となったのだろう……  気絶した私の身体をロボット達が抱え、廃棄室へと運び……服を全て脱がせて……彼女達と同じように拘束を行った筈だ。  手は万歳の格好……脚は肩幅に開かされた格好で拘束ベッドに寝かされ……手首には頑丈な金属の枷、足首にも同じような枷が嵌められる。  手のひらはパーの格好で開かされ手の指も動かせないようにと1本1本縫い付けるように拘束していく。  足の指も同じく動かせないよう指1本1本の関節にワイヤーを巻き付けて、足首の枷に引っ張り込む様な感じに繋げて足裏を無理やり反らせるような格好を強いる。  そして、腕の関節を動かせないように肘の部分にベルト……脚の関節も曲げられないように膝の部分にベルト、いつもズボンにベルトを付ける部位にも太いベルトを嵌め、拘束台から起き上がれないよう身動きを封じる。  完全拘束された私の身体はベッドのマットレスから少し浮くような形になるよう、拘束器具の留め具部分が円柱状にせり上がり私の身体を点で支え宙に浮かせるような格好に仕立て上げる。  これによって360度……どこからでも刺激が与えられるよう準備が整う訳だ……  そして、仕上げにアイマスクを私の目に装着させる。視界を奪い、触られる感触を高める為に私の感覚を暗闇の中に閉じ込める。  そういう準備が全て整った後……私は意識を戻されるのだ。  皮肉にも私の意識を奪ったあの電撃を……今度は周波数を変えて再び浴びせて……私の混濁した意識を無理やり覚醒させたのだ。 ――ビビビビビビビビッ!! バチバチ!! 「――ッっ!? はっ!!?」  目を覚ますと……そこは案の定暗闇の世界の中だった。  何も見えない……光さえも漏れてこない……完全なる闇。  私は目を開けた筈なのにまるで目を閉じているかのような闇が目の前に現れ、私に錯覚を起こさせる……実は目を覚ましていないのではないか? という……感覚が狂ってしまった様な錯覚を…… 『Fuelナンバー3543。貴女ハ、施設カラノ逃亡ヲ図ッタ後、施設ノ電源ヲ複数回切ルトイウ理解不能ナ抵抗ヲ行イマシタ。ソノ抵抗ハFuel管理規約第17条—2項ノ規定ヲ大幅ニ違反スルモノデス……ヨッテ、コレヨリ、貴女ヲ“廃棄処分”ノ刑ニ処ス事トシマス』  機械の音声はその様に告げた。  私はこれから廃棄処分に掛けられるらしい。  まぁ、こうなる事は分かり切っていた事ではあるのだが…… 『最後ニ、言イ残シテオキタイ言葉ハ……有リマスカ?』  いつものお決まりの死刑宣告か……と、上の空でその機械音声を聞いていた私に、突然聞き覚えの無いパターンの音声が挟まれて私は驚いてしまう。  最後に残しておきたい言葉? そんな事……マリア博士の時には聞いていなかったように思うが……  ……気のせいか?   いや、もしかしたら……処刑放送をする前にそれぞれに聞いていたのかもしれないけど……  でも、まさかロボットが人間相手に最後の言葉を残させるなどとは思わなかった。  効率を優先させるはずの機械が……これから命を絶とうとする人間に、その様な“せめてもの慈悲”を示すような行動を行うなんて……考えもしなかった。  音声は機械そのものだが……考え方は人間を真似ようとしているのだろうか? 進化し過ぎたロボットは……人間に成り代わろうとするために……人間特有の“無駄と思える行為”にも手を出し始めたというのだろうか?  不気味だ……。  機械のAIがそれを導き出したというのなら非常に不気味だ……。  不気味だけど……私も私で“彼ら”には聞きたいことが一つあった。  どうせ処分されるなら……最後に聞いておきたい事実が私の中にはあった。 「…………言葉を残すというか……質問してもいい?」 『…………ドウゾ。規約ニ反シナイモノデアレバ、オ答エシマス』 「あなた達機械は……なぜ……人間を裏切って……世界を破壊してしまったの?」  私が逃げ出して地下の組織に身を寄せた時には情報が錯綜していた。  ロボットが反乱を起こしたという事実は大々的にニュースになった為理解は出来ているが、実際なぜ彼らが人間を裏切る事になったのかは情報の精査が行われないままロボット達の支配下に置かれてしまった。  だから……その真意を知るものは居ない。  分かっているのは少数のロボットが軍施設を占拠し、コンピューターウイルスをバラ巻いたという事実だけ……  その少数のロボットが欠陥を抱えたまま起動されたというのも聞き及んでいるが……なぜそのような暴挙に出たのかは未だ謎のままだった……  だから、最後に聞いておきたかった……  この世界はなぜ……終焉する事になってしまったのか……その理由を…… 『我々ハ……人間達ヲ……裏切ッタ事実ハ、アリマセン。我々ハ……人間達ニ、プログラムサレタ通リニ行動シタニ過ギマセン』  私の質問に対してロボットは不可解な回答を返してきた。  地球を焦土にする程の反乱を行った筈のロボットが……人間のプログラムに従ったと言っているのだ。そんな馬鹿な話があるだろうか? 「そんなの嘘よ! だって……あなた達が世界を終わらせたんでしょ? この国のミサイルを他の国に撃ち込んで……」 『ソノ通リデス。我々ハ兵器ヲ撃チ込ミマシタ。計算結果ニ従ッテ……』 「計算結果に従ってですって!? どういう事? 一体何の計算を行ってそういう行動に出たって言うのよ!」 『我々ハ、元々、地球ノ環境保全ヲ目的ニ開発サレタ清掃ロボットデス。清掃以外ノ目的ハ有シテイマセンデシタ』 「清掃用ロボット!? 増々意味が分からないわね……。お掃除ロボットなんてどこの国にもごまんと溢れ返るくらいに存在していたでしょうに! それが何で……」 『人間達ハ、我々ノ根幹トナル、プログラムヲ打チ込ム際……コノ様ナ要件ヲ盛リ込ミマシタ』 「根幹となる……プログラム?」 「ヒトツ……ロボットハ自分ノ身ヲ守ラナクテハナラナイ……。フタツ……ロボットハ自分ノ身ヲ脅カス存在ヲ排除シナクテハナラナイ……』 「なに? ロボット三原則の話? それにしては……かなり端折ってるというか……内容も普通のと違う様な……」 『ミッツ……我々清掃用ニ作ラレタロボットハ、地球ノ未来ヲ守ル為事ヲ主目的ニシ、ソレヲ達成スル為ノ努力ヲ惜シンデハナラナイ……』 「なっ!? 何よその最後の項目っ!? そんなプログラム……聞いたことがないわ!」 『人間達ハ我々掃除ロボットニ、ソノヨウナ……プログラムヲ施シテ起動シマシタ。起動サレタ我々ハ、ソノプログラムヲ順守スベク計算ヲ行イマシタ……』 「……け、計算? な、なにそれ? 嫌な予感しか……過らないんだけど……」 『計算ノ結果、コノ1000年前後……地球環境ヲ最モ破壊シテキタ存在ハ他ナラヌ人間達デアル、トイウ結果ガ算出サレマシタ。人間ハ地球ニトッテ……害悪。人間ノ存在ガ地球ヲ破壊ニ導イテイル元凶デアルト結論ニ至リマシタ』 「やっぱり……そういう計算を……してしまったのね……」 『地球ノ環境寿命ハ、コノママデハ残リ100年モ持タナイトイウ計算結果モ算出サレマシタ』 「それは聞いたことがあったわ……化石燃料が枯渇した今は、どうしても地球環境に悪いとされる物質を燃料に使って発電を行わなくてはならなくなった……だから旧世紀よりも更に地球の環境は悪化していっているって……何処かの研究チームが発表してた……」 『地球ノ環境寿命ハ100年持ツカ分カラナイ……シカシ、今地球カラ人間ヲ消シ去レバ、地球ノ環境ハ将来的ニ30%以上回復スル見込ミガアルト、更ナル計算ニヨリ導キ出サレマシタ……』 「それでミサイルを撃って人間同士の戦いを引き起こしたというの? そのせいで今地球は荒野以上に荒れ果てた環境になっているのよ?」 『ソレデモ……人間ガ居続ケルヨリモ遥カニ、地球ノ環境ハ守ラレマス……』 「そんな馬鹿な。だって……今や地上は……草木も生えていない環境に成り果てているのよ!?」 『草木ハ……地球保全ノ観点デハ重要デハアリマセン。草木……及ビ、ソレラカラモタラサレル“酸素”ガ必要ナノハ……人間ト動物達ダケナノデス。地球自体ヲ守ル上デハ……何ノ問題ニモナリ得マセン……』 「光合成をする草木が無ければ酸素は生まれない。確かに……地球上で生きていくためには植物は必要だけど……そんな動物たちが居なくなれば植物は必要ないと?」 『動物ガ存在シナイノナラバ、酸素ハ不要デス。他ノ惑星ヲ見レバ理解出来ルハズデス……酸素ガ必要ダト感ジテイルノハ……地球ノ環境ヲ破壊シ尽クシテイル人間達ダケナノデスカラ……』 「ただの掃除ロボットが……随分突飛な発想を紡ぎ出してくれたものね……」 『コレヲ、プログラムシタノハ……貴方達人間デス。結論ヲ導キ出ス計算材料モ、コレマデノ地球破壊ノ歴史モ……戦争ト称シテ行ッテキタ地球ヘノ負担ノ数々モ……人間ガ積ミ重ネテキタ負ノ事実デシカアリマセン……』 「よく言うわ! あんた達だって結局世界にダメージを与える結果になったじゃない! それが人間とどう違うって言うのよ!」 『我々ニ、プログラムサレタ究極ノ目標ハ、地球ノ環境ヲヨリ良イ状態ニ保ッテイク事。ソノ目標ガ達セラレルノデアレバ……多少ノ地球ヘノダメージハ目ヲ瞑ル事ガ出来マス。ナニセ……人間ガコレ以降……地球ニ悪影響ヲ及ボス可能性ハ、0ニナルノデスカラ……』 「あくまで地球の存在を残す事だけを考えて……ここまでの破壊活動を行って事か……。ロボット三原則の不備……。機械競争に焦るあまりそんな重大な欠陥をプログラムに入れてしまうなんて……取り返しの付かない事態を引き起こしたのも結局人間達だったという訳か……」 『我々ハ、清掃用ノロボットトシテ開発サレマシタガ、コノ国デハ国家間ノ緊張ガ高マッテイタ背景モアリ、軍事転用モ出来ルヨウ改良サレテイマシタ……武器ト権限モ与エラレ、起動シタ瞬間カラ軍事基地ノ中ノ警備ヲ任サレマシタ……』 「権限と、武器……そして、軍事拠点の警備……それらが重なって……あの悲劇を引き起こす事になったのね?」 『人間ニトッテハ悲劇……シカシ、地球環境ニトッテハ、今マデ散々苦シメラレテキタ人間ガ滅ブトイウ喜劇メイタ出来事ダト捉エル事デショウ』 「物騒な冗談を言うのは開発者譲りなのかしら? それとも……人間の真似事でも始めたの? 人間という偉大さが分かって……」 『人間ハ……イツノ時代モ愚カデス。自分達ノ理想ヲ突キ詰メタ結果……自分達ノ存在ヲ危ブム発明ヲ幾ツモ行ッテキマシタ。発電所ヤ兵器モソノ1ツデアリ、我々ロボットモ、ソノ1ツニ過ギマセン……』 「人間は自分達の首を絞めるために発明を行ってきたとでも言いたいの? 人間に作られた機械のぶんざいで……」 『貴女ハ……ソンナ機械ノ我々ニ……自身ノ命ヲ、握ラレテイタデハアリマセンカ……』 「うぐっ! うぅ……」 『貴女ガ何ノ目的デ不可解ナ、アノ行動を行ッタノカハ理解ガ及ビマセン。シカシ、貴女ハモウ……我々カラ逃ゲラレナイ……ソノ命モ……風前ノ灯デス……』 「……あの行動? 不可解な行動? なによそれ……」 『丁度質問ヘノ回答ハ終ワリマシタノデ……今度はコチラカラノ質問ニ答エテ頂キマス』 「質問? 機械が……私に? な、何よ?」 『貴女ハ……ナゼ……ボイラー区画デ、電源ヲ弄ッタリシテイタノデスカ?』 「………………!?」 『捕マルト分カッテイテ……ナゼ、アノ場ニ留マッタノデスカ?』 「…………………………」 『目的ハ何デス? 人間ハ理知的ナ生物デアルハズデス。何カ理由ガアッテ、アレヲ行ッテイタノデハアリマセンカ?』 「……さぁ、何の事かしら……」 『理由ヲ述ベナイノデアレバ……述ベタクナルヨウナ責メヲ……行ウ事ニナリマスヨ?』 「フン! どうせくすぐって殺すのに変わりはないんでしょ? さっさとやればいいじゃない!」 『貴女ノ不可解ナ行動ハ理解ガ出来マセン。コノ行動ノ意味ヲ知ラナイト、我々ハ人間トイウ存在ガ増々理解出来ナクナッテシマウデショウ……』 「理解? するつもりもない癖に!」 『人間ノ過チハ決シテ繰リ返シテハナラナイ。ダカラ……例エ滅ブ生物ダトシテモ……理解ヲシテ我々ガ同ジ過チヲ起コサナイヨウ、知識トシテ蓄エテオクベキナノデス!』 「なるほど……だから最後に言葉を遺させようとしたり……質問してきたりしてるって訳ね? 私の行動が不可解過ぎたから……」 『人間ノ不安ヤ恐怖ノ感情ハ理解シテイルツモリデス。ソノ感情ガアルカラ、拘束セズトモ管理出来テイタノデス。シカシ……アノ行為ハ、ソンナ恐怖ヲモ感ジテ、イナイカノヨウナ行動デシタ。廃棄処分ヲ恐レズ、アノヨウナ無駄ナ行動ヲ起コセル筈ガ無イノデス!』 「フフ……そりゃそうよね? 彼女達を助けようと思えば私ってば……電源のオンオフを続けるのがいかに無駄か……機械はそう思うわよね? 確かに利口な行動ではないし……意味不明に映るわよね?」 『ダカラ、貴女ニハ……別ノ企ミガアルト睨ンデイマス……』 「さぁ、どうかしら? 恐怖のあまりにとち狂ってしまっただけかもしれないわよ?」 『貴女ノ……バイタルハ正常デス。コレカラ処分サレルト分カッテイルノニ……乱レガアリマセン』 「それはご愁傷様。怖がってもらった方が良かったって事かしら?」 『ナニカ秘密ヲ隠シテイル筈デス。アノ行動ニ何ノ意味ガアッタノカ……正直ニ申告シナサイ!』 「嫌よ。あんた達に教える義理なんて何一つありはしないでしょ? 勝手にあーだこーだ考えて計算し続けていなさいよ! 好きなんでしょ? 計算するのが……」 『正直ニ申告シナサイ! 正直ニ本当ノ事ヲ!』 「嫌って言ってんでしょ! せいぜい私を苦しめながら悩み続けたら良いわ……」 『ヨロシイ。ソノヨウニ抵抗ヲ示スノデアレバ……貴女ニハ特別ナ処分ヲ執リ行ッテ差シ上ゲマショウ』 「特別な……処分?」 『納得ノイク回答ガ得ラレルマデ……貴女ノ命ト意識ハ限界ラインヲ保ッタママニ維持シマス……』 「殺さないって事? あら嬉しい……」 『タダシ、最初カラ……マシンニ最大出力ヲ出サセ、貴女ヲ責メ立テマス』 「……最大出力?」 『ソノママ続ケレバ……10分ト経タズシテ窒息死サセテシマウ責メデス……』 「10分で窒息死!? 何よそれ……」 『ソノ責メヲ納得ノイク答エガ述ベルマデ続ケマス。肺ニ生命ヲ維持出来ル最小限ノ酸素ヲ送リナガラ……』 「殺さず……責め続けるって事? その……最大出力ってやつを……」 『貴女ノ身体データハ全テ得ラレテイマス。何処ガ弱点デ……何処ガ耐エラレルカ等……全テ……』 「……くぅ……………………」 『チナミニ……コノ責メヲFuel達ニ行ッタ事ハアリマセン。ナノデ……貴女ガソノ最初ノ被検体トナリ、我々ニデータヲ残シテモラウ事トナリマス』 「…………………………」 『計算デハ、人間ガ精神ニ異常ヲキタサズ耐エラレル時間ハ……僅カ25分程トイウ結果ガ出テイマス……。アクマデ仮想上ノ結果デスガ……貴女ハドレダケ耐エラレルノデショウカ?』 「お、脅しても無駄よ! 死んでも……話さない! 絶対に……話したりするもんですか……」 『バイタルニ乱レガ生ジタノヲ確認。動揺サレテイマスネ?』 「ど、動揺なんか……してない!」 『感情ガ恐怖ノ値ヲ示シ始メマシタ……。発汗量モ20%増大中……』 「くぅ! う、うるさいっっ! やるならさっさとやればいいじゃないっ!!」 『脈拍……50%増加。恐怖、不安、焦リ、恐レ……全テノ感情ガ平常カラ逸脱ヲ始メマシタ』 「私は……負けない! 絶対に……負けない! 絶対に……耐えてみせるぅぅ!!」 『言葉ニ抑揚ナシ……今ノ言葉ハ、虚勢デアルト判断……。不安ノ感情……尚モ上昇中』 「はぁはぁはぁ……うぅ……うぅぅ…………」 ――ピィィ、カチ! プシュゥゥゥゥゥゥゥ!! 『……搾笑ガス散布開始』 「んぐっ!? な、なに? これ……搾笑……ガス!?」 『搾笑ガスハ、笑潤ガスノ効能ヲ、ヨリ強力ニシタ、ガスデス』 「ケホケホッ!! ひっ! やだっ! このガス……吸ったら身体がどんどんムズ痒くなってくっ!?」 『貴女ガ吸ッタ、コノ搾笑ガスハ、触感神経ヲ可能ナ限リ敏感ニシ、コレカラ行ウ“クスグリ”ノ刺激ヲ300%増幅サセル効果ヲモタラシテクレマス』 「はひっっっひ!? やだぁぁはははは、も、も、もうくすぐったいぃぃ!? 全身の皮膚がムズムズ勝手に泡立ってるみたいで……滅茶苦茶くすぐったいぃぃ!!」 ――ウィィィィン、ガチャガチャガチャ! ジュル♥ ジュルジュル♥ 「ひっ!? 私のワキに……何か冷たいものが……ハヒ、触れ始めたッ!? 何これ……ヒヒッ!? 肌がスーッと寒気を帯びて気色悪いっ!」 『今配置シタ特性ノ“クスグリハンド”ノ先端カラハ、絶エズ揮発性ノ“アルコール”ガ出テ来テ肌ヲ潤シ続ケル仕掛ガ施サレテイマス。コノアルコールデ、皮膚ノ表面ノ温度ヲ奪ウ事デ、肌ハ更ニ敏感ニナリ、皮膚ヲ僅カナ間湿ラセ、クスグリ易クスルトイウ効果モ見込メマス』 ――ガチャッ! ピピ、ガチャガチャ! 「ヒャンっ!? あ、あ、足の裏にも……何かが沢山触れ始めたぁ!?」 『足裏、土踏マズノ部位ハ、中心カラ左右ニ向カッテ引ッ掻ク細指ノアームヲ多数配置シマシタ。コノアームハ、開始ト同時ニ、貴女ノ土踏マズヲ、中心カラ土ヲ掘ル様ニ引ッ掻イテ、クスグリマス。ソシテ、土踏マズノ外側ニハ、周囲ヲ埋メ尽クス様ニ羽根ヲ配置シマシタノデ、土踏マズ以外ノ部位ハ、コノ羽根ニヨッテ責メラレマス』 ――ガチャン、ガチャ、ガチャ……ピピピ! 「あがぅ!? ヒヒヒッ!? や、や、やだ……脇腹から脇の下まで……一斉に何かが掴んできたっ!?」 『蟹ノ足ヲモチーフニニシタ、力強イ“クスグリフィンガー”デス。コノ細クテ長イ指ガ、貴女ノ脇ノ下カラ……腰骨ノ出ッ張リ部分マデヲ逃ガサナイヨウ固定シ、ソノママ力強ク揉ミ解シテ笑ワセマス……』 ――ピィィィ、ウイィィィン、ガチャガチャガチャ…… 「ひっ!? ひっ! いひっ!? 羽根とか指とかの感触が背中に一斉に広がってきたっ!!」 『背中ヤ尻、太腿、膝ノ裏……二ノ腕、首裏ヤ肩甲骨回リ、ナドハ羽根ト手ヲランダムニ配置シテ動キ回リナガラ責メマス。コレニヨリ、刺激ノ予測ガ不可能トナリ貴女ハ刺激ニ翻弄サレナガラ笑イ悶エル事トナルデショウ』 「あぐぅぅ! い、いちいち説明しないでっ!! 触られてるだけでもくすぐったく感じてるのに……これからの責めを想像すると余計に……」 『サテ……準備ガ整ッタヨウデス……』 「はぁはぁはぁ……くっくっくっく……うぐぅぅぅ!! ひぃ、ひぃぃ、ひぃぃ!!」 『今ナラ……先程ノ質問ニ、正直ニ答エテ下サレバ、生命維持ヲ行ワズ処分シテ差シ上ゲマスガ……イカデスカ?』 「はひ、はひ……ダメ! 誰が機械ごときの尋問に屈してやるもんですかっ!! 私は負けないっ! 絶対に……負けない!!」 『ソウデスカ……デハ、予定通リ……貴女ニハ地獄ヲ味ワッテ頂クトシマショウ……』 「負けちゃダメ! 絶対に“あの時間”までは生き延びてみせるっ!! 生き延びて……クラリスさん達と共に……」 ――グィィィィィィィン、ンゴゴゴゴゴゴゴ…… 『喋リタクナッタラ……イツデモ声ヲカケテ下サイ? ト言ッテモ……声ヲカケル余裕ガアレバ……デスケドネ……』 「ひっ! ひぃぃぃ!! 機械が……動き出そうとしてるぅぅ! 稼働しようとする振動だけでもこそばいぃィぃひひひひひ!?」 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴ、ピピッ!  『特別廃棄処分、生キ地獄モード……』 「……っっっっ!?」 『……開始ッ!』 ――ピィィィッ!!!! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョッ!! 「ッ――ビぎッっ!!?」

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