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3:挑戦者 「貴女が……私を“いかさま”呼ばわりしたお客様なのかしら?」  煌びやかで刺激的な電飾が方々のネオンプレートから発せられるカジノホールに夏姫が辿り着いた時には、テーブルを挟んで綾香と挑戦者が睨み合っている真っ最中だった。  睨み合っていると言っても睨んでいるのは綾香の方だけで、彼女を睨ませている元凶である挑戦者の女性は涼しい顔をして呑気に扇子で顔を緩く仰いでいる様子。  そしてその女性は、縦巻きロールの金髪が揺れるくらいに首を下に傾けて頭を下げる様に軽めの挨拶言葉を零した。 「ウフフ……初めまして。私、白洲川 麗華(しらすがわ れいか)と申しますの。宜しくお願いしますわ♥」  含み笑いをしている口元を真っ白な羽毛をあしらった扇子で隠しながら、片手はその大きく膨らんだフレアスカートを摘まんで持ち上げ仰々しく頭を下げる麗華と名乗る女性。その余裕のある表情や召してある衣類を見るだけで、ただの“お客様”ではない事が綾香にも分かった。  カジノに来ていた他の客も、その麗華の派手さに惹かれたのか……それとも客とディーラーが今まさに一触即発の雰囲気である事に興味を抱いたのか、人が人を集め次第にそのテーブルを囲む様に人だかりが出来始めていた。 「挨拶なんてどうでもいいでしょ? どういう事なのか説明してもらおうかしら……私の何が“いかさま”なのかを!」  涼しい挨拶をする麗華とは対照的に、静かな怒りの炎を宿した瞳で睨みを利かせる綾香は、片手を腰に回しいかにも不機嫌だと分かる言い方で言葉を放った。  その刺々しい言葉に対しても妖しい笑みを崩さない麗華は、クスッと微笑んで静かに彼女への返答を紡ぎ出す。 「先程……貴女がえげつない勝ち方で金品を搾り取ったあの男性……覚えてますでしょう?」  そう語り出すと麗華は口元に置いていた扇子をパタンと閉じ、まるで視線を導く様にその扇子だけを真後ろに構えなおしてみせた。  その扇子の先端が指し示した延長線上には、休憩に入る前に綾香により財布の中身を空にさせられた不憫な男性が申し訳なさそうな顔をしてこちらを見ているのが視界に映った。 「あの方……どうしても先程の戦いに納得がいかないと仰りましたの。貴女が“いかさま”で勝ったんじゃないか? って疑っていらっしゃいましてね♥」  その話を聞いた瞬間、綾香はギラリと鋭い視線をその男に向けるが、その不憫な男は麗華の言葉を真っ向から否定する様に大袈裟に頭を横へ振って見せた。  「その人が勝手に言ってるんです」と言わんとする様に…… 「こんな大きなカジノで“いかさま”が平然と行われていると聞いては……私も黙ってはいられませんの。だから、勝負運の強い私が代わりに勝負を挑んで彼のお金を取り戻しつつ、貴女のいかさまを見破って差し上げましょう……と思い立った次第ですわ♥」   「へぇ……確かな証拠がある訳でもないのに、いかさま“かも”しれないっていうだけで私に挑戦しようとしてるんだ……麗華さんって言いましたっけ?」 「えぇ。このカジノには初めてきましたので……貴女の事何も存じ上げていませんわ。でも、いかさまを見過ごすわけにはいきませんの……大金の動くこのようなカジノで、店側がやりたい放題お客から搾取するような不正を黙って見過ごすわけにはいきませんので……」  「なるほど……結構な正義感ね。でも、証拠も無いのに“いかさま”呼ばわりするのは如何な物かしら? 貴女は面白半分でその言葉を口にしているだけかもしれないけど……それをこんな大勢の前で喚かれちゃ店の信用だって落ちてしまうわ……」 「店の信用? あらあら……この店にそのような大層なものが築かれていたとお思いで?」 「何か知ってるような口ぶりね……でも、まぁいいわ。それよりも……」 「……それよりも?」 「私のゲームを“いかさま”呼ばわりしたという事は……もしそうじゃなかったって証明された場合、どうなるか分かってるんでしょうね?」 「さぁ……私は思った通りの事を口に出しただけですので……」 「その一言だけでも立派な営業妨害になるし、確たる証拠もなしにそういう事を言ったのであれば名誉棄損で訴える事も視野に入るわ。その覚悟があって言ったのよね? 私に……」 「えぇ……冗談半分で言った言葉ではございませんし、その言葉を取り消す気もありませんわ♥ 貴女はイカサマをやってあの男性を負けに追いやった……その主張はどう脅してこようと変えませんよ?」 「脅し? 私の忠告をただの脅しだと勘違いしている訳? たいしたお嬢様ね……」   「勘違いだなんてとんでもない。私はそれなりの覚悟を持ってこの場に挑ませてもらってますのよ? そのために“ショーの買い付け”まで行ったのですから……」 「はぁ? ショーの買い付け? 何の事よ……」 「フフ……このカジノは21時から来場者の方向けに中央ステージでショーを開くでしょ? ダンスショーだったりオペラのショーだったり有名歌手のライブショーだったり……」 「それが……何よ?」 「そのショーの時間……1時間を買い取らせて頂きましたの♥ 今日のために……」 「はぁ? ど、どういう事よ! 何のために?」 「簡単な話ですの♥ 私と貴女がこれからブラックジャックの勝負を7回戦行って……その間に私は貴女のいかさまを暴く。もしもいかさまが発覚したならば、そのショーの時間は貴女への“公開お仕置きショー”の時間として利用させてもらうつもりですわ♥」 「公開お仕置きショー? 何言ってんのよ……バカバカしい。そんな事のためにあの無駄にクソ高いショーの時間を買い取ったってわけ?」 「えぇ……あまりに法外な値段だったため、さすがの私も最初は戸惑ってしまいましたわ……」 「……それで? もし暴けなかったら貴女の方はどう落とし前を付けるつもりなのよ? 名誉棄損だけじゃ到底償いきれない罪を負う事になるわよ?」  「私が“万が一”いかさまを証明できなかった場合は……その時は、そのショーの中で私を貴女の好きなように罰してもらって構いませんわ……。煮るなり……焼くなり……辱しめるなり……ご自由に」 「へぇ……それは面白そうじゃない。まぁ、証明できなければ逆にお店の信用も私の信用も高まるだろうし……名誉棄損の部分はその部分で帳消しにしてあげても良いわ。でも迷惑料はしっかり支払って貰わないと気が済まないわね……」 「その時は……貴女の好きなように私の事を見世物にしてくださって結構です……」 「身体で償って貰う事になるけど……別に構わないわよね?」 「えぇ……ご自由に♥」 「うちのディーラーに“夏姫”っていう子がいるんだけど……その子は中々のテクニシャンなの。貴女を裸にひん剥いて拘束して……衆人が見ている前で無様にイクまで責め続ける。そんな事をしても……別に良いって事よね?」 「はい。構いませんわ♥」 「何回もイカせるわよ? ショーの時間が尽きるまで……何度も……男達が見てる前で無様に果てさせてやるんだからね?」 「ウフフ♥ 楽しみですわね……とても……♥」  テーブルを囲む様にして集まった観客の中からも「おぉ!」と歓声が上がる。主にその会話を聞いていた男性が上げたものであるが、客からしてみれば……特に男性客からしてみればその条件は彼らを喜ばせる材料しか用意されていない。  普段ならショーなど見向きもしない彼らだが、この勝負……どちらが勝っても楽しめる。  完全無欠のディーラー……綾香が勝利すれば、公開SMショーばりの罰が見られ、彼女が負ければそんな彼女に対して“公開お仕置きショー”とかいう謎のショーが執行されるらしい。  後悔お仕置きショーというのが何をするものなのか想像も出来ないが、綾香のえげつない条件から想像するに同程度の“仕置き”が行われる事は想像に難くない。観客からすれば『どちらが勝ってもタダで面白いショーが見れる!』そんな期待がこのショーの時間に設けられたのだ。 「いいわ……やってやろうじゃない! 私は7回戦……貴女とサシで勝負すればいいだけよね?」  歓喜と熱気が高まる周囲を煽るように周りを見渡し、テーブルにドンと両手をついて前のめりになり顔を近づける綾香。  急接近した自信ありげな睨み顔を、麗華はフフフ……と涼しい微笑を零して受け流し、再び扇子を口元に当てた。 「それでは早速……始めましょうか? 最初の1戦目を……」  扇子で口を隠した麗華は静かに勝負の始まりを告げた。  すでに受け取っていた新品のトランプを箱から開け、いつでも戦いが出来る様にカードのカッティングを行い始めた綾香は、待っていましたとばかりに冷たい微笑を口元に浮かべ直す。  そして、獲物を狩る猛禽類の目で麗華を睨み、最初のカードを配り始めた。    2人のショーを賭けた戦いがこれを機に幕を切ったのであった。

Comments

ガリタル

ショーダウンとスニーカーズがハルカナさんの作品の中で特に好きな二作なのでホント楽しみです。

ハルカナ

リメイクにあたってこーじさんが新たにイラストを書きおろしてくれるという事なのでそちらの方もお楽しみに♪

ハルカナ

少しだけ見せて貰ったのですが……大変エロいです♪ まだ見せて貰っていないシーンのイラストもあるそうなので自分も楽しみに待っているのです

こーじ

僕の知らない所で名前が出ると凄く嬉しいですね(*^^*) 中々の自信作なので✨小説リメイク楽しみです🎵特に拘束されくすぐりが始まるまでのシーン✨

ハルカナ

いや~早くお披露目したいっすね🎵自分も頑張って書かないと✨