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#15:二度目の競売 「さてさて、ショーをご覧になられた方も……そうでない方も、ここからの時間は皆様こそが主役です! 本日もよりどりみどり! 粒ぞろいの女の子たちを取り揃えてございますので、お客様の性癖に刺さりそうな女子を好きな価格設定で交渉してくださいませ~♪」  何分くらい気を失っていたのか……  さっきまでの地獄が遠い過去であったかのようにも……つい今しがた終わったばかりにも思えてしまう程私の思考能力は錯綜を極めているが、目が覚めて早々に麻由里の煽りマイクが耳の中で響き、私の意識は寝耳に水を受けたかのように一瞬でハッキリと冴えてしまう。 「勿論! 先程のショーにて仕置きを受けていた“商品ナンバー045”の彼女も出品されますので、特にあのショーを見られた方は彼女を労う意味でも声を掛けてあげてくださいね?」  商品ナンバー045……それは、多分“私”の事だ。  この舞台に立つ前に黒色のバニーからそのように呼ばれたのを覚えているし、この……今入れられている鳥かごの様な檻にも観客に見えるようネームプレートの代わりとある商品ナンバーのプレートが貼られているのだから嫌が応にも理解できてしまう…… 「昨日の彼女はどんなに柔和な条件でも跳ね除ける程意地を張り倒しておりましたが、今日の仕置きを受けて彼女の心もしっかり入れ替わったように見えます。ですので、皆様も存分に彼女との交渉が有意義に進むのではないかと私共も期待しております。どうぞ存分に彼女との“有意義な契約”を交わしに向かってみて下さいませ」  手足の拘束は特にない。ただ……衣服は相変わらず一切与えられておらず、生まれたままの姿を自分の意思とは関係なしに客達に見られてしまっている。  あの様な痴態を晒してしまった私が……今更裸を見られるのが恥ずかしいと思うのも可笑しな話だとは思うが、仕置きを受けた熱が完全に引いてしまった今のこの状況では……笑い狂っている自分を見られている時よりも恥ずかしさを感じずにはいられない。  くすぐられていた時は、笑う事の苦しさに羞恥心を感じる余裕などなかったけど、いざその嵐の様な責め苦が与えられなくなった今……急に服を着ていない事が無性に恥ずかしく思えて仕方がない。ただ裸になっているだけならまだしも……それを不特定多数の大勢に見られているというのが羞恥に拍車をかけ顔から火が出てしまいそうになるくらい恥ずかしい。ついつい内股で地べたに座り込んで股間を隠し、胸に手を回して局部を見られない様にと覆う仕草を取ってしまう…… 「では、今からの1時間……配られた整理番号の若い順に御一方ずつお目当ての女子と交渉をして頂きますので番号が呼ばれましたらステージの上へあがってきてくださいませ」  私が居心地の悪い羞恥の感情に苛まれている間にも購買タイムへの進行は着実に進んでいっている。  そして、麻由里の口から交渉時に付けるオプションの大体の相場が説明された後、いよいよ運命の時間が幕を開ける事となる。  食事や睡眠時間の交渉……過激なプレイをオプションとして付けられるかの交渉……そして、買われる期間の交渉……  それらを順番に客が直接私達と話して決めていき……両者の同意が成されれば晴れて“購入”という段取りになる流れだ。  私は昨日……その交渉の場にすらも顔を背け客を相手にすらしなかった。自分は絶対に奴隷になるなんて認めない……と、頑なに反抗の意志を見せていたのだから……  でも、仕置きを受けた私は昨日の私とは違う……  もう……あんな恐ろしい仕置きなど受けたくもない! そう心の底から思っている。  だから今日は……少しでも甘い条件が出されたなら買われる方向に持って行こう……そう決めた。  エッチな事の一つや二つ……あの拷問まがいの仕置きを受けるよりは断然マシなのだから……  っと、強硬姿勢だった自分の強い思いを軟化させ、少し大人なプレイを強要されるくらいは目を瞑って受け入れよう……と腹をくくったのだが…… 「では整理券番号1番の方! 最初の交渉相手を選んでくださいませ!」  麻由里のアナウンスを受けステーへと上がってきた恰幅の良さそうな50代くらいの男性客が何の迷いもなく交渉相手を私に選んでくれたまでは良かったが…… 「はぁはぁ……あのショー……見てすっごく興奮したよ♥ だから君を買ってあげようと思って最初に選んでみたよ♥」  ガマガエルの様なオデキまみれの顔に流れる脂汗……生ゴミを数週間放置していたかのような体臭を間近で嗅いだ瞬間、私は猛烈な吐き気が胃の奥から込み上げてくるのを感じ思わず顔を背けてしまった。 「ハハ……なんだい? 僕の様なオタクは嫌いかい?」  様々な汚れがこびりついて元の柄すらもまともに見れなくなってしまっているよれたTシャツ……ボロボロに破けた趣味の悪い紫色のズボンにこれまた異臭を放っている汚れまみれのスニーカー……別にオタクだろうが変態だろうが今の私には気にする要素では全くないのだけど、この不衛生を絵に描いたような男の姿に……私は吐き気すらも催すほどの嫌悪感を抱いてしまう。 「じゃあ……早速条件だけどぉ~」  私の嫌がる顔を見ても引くどころか嬉しそうに笑みを浮かべるその男は、異臭を漂わせながらも私に購入のために付け加える“オプション”の交渉をマイペースに始めた。 「まず! 朝起きたら寝起きの1発は絶対だよね♥ 朝食前にもそのままもう1発かなぁ~? 気持ち良くなって朝ごはんは食べたいし……。あ! 勿論ご飯は君が作って食べさせておくれよ? 夢にまで見た手料理ってやつだな……アハハ♥」  手料理……というのは別に気になる節はなかったが……それよりもその前に行った“1発”っていうのが何なのか分からない。何を1発……なのだろうか? 「その後はメイド服に着替えて貰って家事全般をしてもらって~あぁ……メイド服でも1発やっときたいからそこも了承してもらおっかなぁ~」  メイド服で家事……は分かるとしても、再び出てきた1発という言葉……  その意味は……言葉のニュアンスなので何となく察しがつき始める。 「あとは昼前に1発とおやつの時間におやつを食べながら1発……夕食前も今度はチャイナ服を着せて――」  1発……1発……と弾を乱射しているかのように回数が重ねられていってるが……これが私の想像通りのアレだとすると…… 「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください! さっきから言っている“1発”って……まさか……」  もう何発分を条件に組み込まれたのか数えていなかったが、あまりにもその数が多い事もあり不安に駆られた私はついにその濁されていた言葉の意味を彼に問いてみた。すると……彼の口からはまたも不可解な言葉が発せられる。 「あぁ、勿論全部“生”でやるよ? やっぱ生が気持ちいからねぇ~~ナ~マぁ♪」 「ナ……マ……?? えっと……ビールの種類とかの……事……ですか?」 「ん? あぁ! ハハハ……成程! 君、面白い冗談を言うんだね!」  「えっ!? は? はい??」  1発の次に飛び出してきた“ナマ”という言葉。それが何を意味する言葉なのかは、彼が説明するより前にいつの間にやら彼の隣にやってきていた麻由里の口からなされる事となる。 「お客様? コンドーム無しのセックスは1日に3度までと規定がありますので……。あと、商品を妊娠させた場合は堕胎料を徴収させて頂くと共に契約違反による罰則金も頂きますのであしからず♥」  コンドーム……無しの……セックス……?  妊娠させたら……堕胎?? 罰則金?   その言葉を聞いた瞬間……私の目の前が真っ暗になるのを感じた。  恐らくそういう言葉なのだろうなと察しはついていたが……出来ればそういう言葉ではない事を密かに願っていた。もしくは、そういうプレイはこの市場の規定で禁止にしてもらっていればいいなと淡い期待を抱いていた。  しかし、突き付けられた現実は……そういうプレイは回数制限が設けられているとはいえ許容されていて……更には妊娠させてもお金を払えば問題ないという口ぶり……  私はその時初めて……自分が……人間以下の……ただの“道具”として取り扱われているという現実を目の当たりにさせられた。  彼女にとって……彼にとって……私は結局……モノ同然なのだ。  性欲を満たす道具……彼のアレを入れる為の……穴の開いた……ただの肉体……そういう扱いなのだ……  奴隷の心情や意志など汲み取ることなく……妊娠しようが壊れようが……お金さえ払えば不問にされる……  彼女はお金さえ払って貰えればいいし……彼はお金さえ払えば多少の無茶も出来る……  奴隷に堕とされた女子は……皆、お金を動かす為の道具に過ぎない……そういう考え方なのだ……ここのシステムは。  背中に脂汗がゾワリと流れていくのを私は感じた。  改めて……ココで“売られる”という事がどういう事なのかを知らされた私は……泣き声を上げる間もなく涙を目から零していた……  どうしようもない……地獄の……窯の底……  私の脳裏にはそのような言葉が浮かび上がってきた。  そして……それ以降……私はまた……彼の出す条件に、首を横に振り続ける動作だけを繰り返した。  興味津々に色んな条件を出す彼は……子供のように楽しそうに笑いながら私に不条理な条件を投げかけてくる。  私は泣きながら必死に首を横に振った。  まだ……自分は……人間でいたいという……その儚い思いに縋る様に……

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