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10:窒息責め ――コチョっ♥  一瞬……それがくすぐりだとは気付けなかった。  流れ落ちる水が足裏に伝ってしまっただけだと勘違いしてしまった。 ――コチョコチョ♥♥  しかしそれが勘違いだと気付くのに、大した時間は掛からなかった。  水が流れるようにカカト付近まで滑り降りた指がその流れに逆流するかのように土踏まずの方へと戻っていったのだ。しかもその指の触り方は私の“くすぐったい”と感じる箇所を覚えていたかのようにわざわざ寄り道をしながら足指の付け根付近まで戻り、そこから更に私の事を笑わせようと土踏まずの中央まで降りたってそこで複数の指先を躍らすようにモジョモジョとこそばし始めたのだ。  水の流れと勘違いしてしまう程に細くて繊細そうな小さい指の感触……。それらが水に濡らされ滑りの良くなった私の土踏まずの上をコチョコチョといやらしく這い回るこそばゆさ……。  私はその刺激に顔に掛かっている水を弾き飛ばす勢いで「ぶひゃっっ!?」っと吹き出してしまう。  細い指の最先端についている“爪”が、無防備に晒された私の土踏まずの“皺”をカリッと引っ掻くだけの刺激であるにもかかわらず、流れ落ちる水に程よく冷やされた足裏は刺激を何倍にも誇張して私の脳に伝えてくる。  先程万理華にくすぐられ、触られるという刺激を覚えている筈なのに……水によるクールダウンが足の神経までも感触をリセットしてしまったらしく、触られる刺激に新鮮が感じられてしまう。  さっき……散々くすぐられて嫌という程味わった刺激なはずなのに……  下手するとさっきよりもくすぐったく感じさえする! 味わったはずなのに……経験したはずなのに…… ――コチョコチョコチョ♥ コチョコチョコチョ♥  足裏へのくすぐりは次第に私の喉元に再びあの“欲求”を押し運んでくる。  私が今一番望んでいない欲求……  そう……“笑いたい”という欲求である。 「ぐっっふっっ!? くふふっっ!! んぐっっふっっっふっっっ……」  今笑ってはいけない! 今のこの状態で笑ってしまっては絶対にダメだ!  水の勢いは収まったとはいえまだ完全には止められていない。額を伝って流れ落ちてくる水が口を開けば今も流れ込んでくるくらいの勢いは残っている。  口を開けて笑えば……その水がまた口内に流れ込んできて呼吸を阻害する。そうなればまた……私は水を吐き出しながらの苦しい呼吸を強いられる羽目になる。それだけは嫌だ! だから笑ってはいけない! もう笑ってはいけないんだ……  笑ってはいけない……  ……でも…… ――コチョコチョ~♥ コチョコチョコチョ……コチョコチョコチョ~~♥♥  足裏に這い回る細い指先の感触がどうにもこそば過ぎて……笑いを我慢するなんて…… ――コチョコチョコチョ♥ コチョコチョコチョコチョ~~♥ コチョコチョ♥  あぁ……そこはダメっ!! 土踏まずの中心から……少し横にずれた……その場所は……ホントにダメっっ!! やめてッ!! 触らないで……お願いっ!! ――コチョ? 「……ッっぃびゃっッ!?」 ――コチョ? ……コチョコチョ? 『な、な、なんで? なんで……私が“そこは嫌だ”って念じたところを……「ココが弱いのぉ?」って聞いてくるようにくすぐるの!? これじゃあまるで……私の心の叫びが聞かれているみたいじゃない!』 ――コ~チョ♪ コチョ♪ コチョ……コチョ……♥ 『あっっはっっ!? やめてってばっっ!! そこはダメって言ってるのにっっ!! 指がっっはっっ!! 指先が……土踏まずの横端に集まってきてるっっ!!』 ――コチョ……コチョ♥ 「ぎひゃっっ!? はぎぎぎっっひっっっ!! んひぃぃぃぃぃっっっ!!?」 ――コチョ♪ コチョコチョ…… 『あがぁぁっっ!? りょ、りょ、両手!? 私の弱点をッっ……両手で責めようとしてるぅぅぅ!! お願いやめでぇぇぇ!! それ以上はホントに……』 ――コ……チョ♥ コチョコチョ! コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ~~っッ!!! 「べぎゃはっっ!? ガボッ、ゴホ、ホッッ!! ゲホゲホっっ!! だひゃめへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、いひゃはははははははははははははははははははは、ゲボボボっっ! ゴホッゲホッ!! ぎべびぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひぃぃぃぃひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ、うへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」  土踏まずの中心を跨いで左右の端を誰かの右手と左手がそれぞれに分かれて、指の爪を立ててガリガリと外側方向に引っ掻いていく。その刺激があまりに私の擽感神経を痺れさせ、我慢しようと口元を力ませようとしていた私を盛大に笑かしにかかる。  明らかに私の弱い箇所を見抜いて的確にそこを責めるその手技に、一瞬、麻由里か黒バニーのどちらかがくすぐっているのだと錯覚したのだが……  その思い込みはくすぐり手の楽しそうな責め言葉を聞く事で間違いであったと気付かされる。 「アハ♥ やっぱりお姉ちゃんはこういうコチョコチョの方が効くんだね? 不思議だなぁ~万理華は足の中心の窪んでるトコが一番笑っちゃうんだけどなぁ~~」  その言葉……その声が足元から聞こえてきて私は初めて、足裏をくすぐっているのがまたあの子供であったという事に気付かされ衝撃を受ける。  さっきまでの責め方とはまるで違う……指の大きさや細さは確かに彼女のそれではあるのだが、指の動かし方が先程よりもいやらしくなっている。  土踏まずの横が弱いと言っても……私の感じ方は触られた次の瞬間には変わるもので……  同じ横サイドでもくすぐったいと感じる箇所は一定ではない。  しかしこのオーナーの娘……万理華のくすぐり方は、そんな移ろいやすい私の擽感を敏感に察知して私が“今一番触られたくない”と思っている箇所へ的確に移動し的確な刺激を加えてくる。  まるで……神経を流れる微弱電流の変化を察知できるセンサーでも生えているのではないかと思える程正確で……この弱点だけをしつこくくすぐってくる彼女の責めに私は口の中に水が入り込むのもお構いなしに大口を開けて笑ってしまう。 「あがぼはっっはっはっはっはっはっはっはっはっは、げぼびはははははははははははは、ケホケホ! いぎっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ……グボっ! ゴバッっ!? おげっっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへ、げごほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ!!」   水が口の中に入ってきて喉を詰まらせる。それを吐き出す為に咳き込むと、頬や鼻の下から流れ着いた水がまたも喉奥に入り込んできて私は笑いながら咽る事となる。  笑えば咽る……咳き込めばまた咽る……終わりのない咽と咳き込みのループに陥り私は笑いながら溺れさせられているような奇妙な感覚に陥る。  咳き込むのが苦しくて鼻で息をしようとすれば鼻にも水が入ってきて余計に咳き込みが大きくなってしまう。笑いってはいけないと笑いを堪えようとするも万理華の容赦ない弱点へのくすぐり責めに無理やり笑わされる。  苦しい! さっきの水攻めよりも数倍こっちの方が苦しい!!  くすぐりに……ただ蛇口一本分くらいの水が頭から垂れ流されているだけでこんなにも苦しい思いをすることになるとは思いもよらなかった。  苦しい! 死ぬほど苦しいっっ!! もう嫌だっ!! もう……くすぐられるのも水を浴びせられるのも嫌だっ! 嫌だっっ!! 「あがばばばばばばばばばばばばばば、げほっ!! ゲホゲホゲホ!! ゴホッッ!! くかはっっ!? あぎぱばばばばばばばばばばばばばばばばばばば、びばびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ、ゲッッホ、ゲホッ!! ぉげぇぇぇへへへへへへへへへへへへ、ぐげへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」  意識が遠くなっていく……  咳き込めば咳き込むほど自分の視界にフィルターが掛かる様に薄暗い影が重なっていく……  今私は……何に苦しめられているのか……  水を吐き出しているのが苦しいのか……それともくすぐりに笑わされているのが苦しいのか……分からなくなってきた。  もう何も考えられない……頭は既に真っ白にさせられている……  ただただ頭の中は「苦しい!」という悲鳴と「くすぐったい!」という叫びに埋め尽くされ、私の顔は発作を起こしてしまっているかのように自動的に笑いを吐き出す機械になってしまっている。  こんなに咳き込んで苦しいのに……呼吸が出来なくてこんなに苦しいのに……  私はそんな状態に置かれているにもかかわらず“笑っている”。  死にそうなほど……意識が途切れてしまう程に苦しんでいるのに……私は笑っている。  こんな十歳以上も年が離れてそうな子供の手に足の裏をくすぐられて……無様に笑い狂ってしまっている。  恥ずかしい……  悔しい……  悲しい……  ムカつく……  さっきまでは色んな感情が頭の左端から右端へと走り去っていってはまた戻って来てたけど……  今はその感情すら何に対して感じていた事なのか思い出すことが出来ない。  ただ……くすぐったい。  ただ……苦しい。  それ以外の言葉は思い浮かばなくなってきた……  自分でも……ヤバいって思ってる。  この状態は、死んでしまうか自我を失ってしまう一歩手前である事は……経験したことが無くても理解できてしまう。  それでも……私は笑っている。  今まさに自分という存在がこの世から無くなろうとしているこの瞬間に……私は笑っている。  ゲラゲラと……。  ギャハギャハ……と……。  ガハガハ…………と…………

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