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9:そして、洗浄という名の水責めが始まる  私が身動き取れないよう入れられているガラス製の人形の頭頂部付近には、あの巨大なシャワーヘッドを装着するために設計されたであろう大きな穴が開けられている。  その穴にシャワーヘッドを宛がうと、ヘッド部分は収まりよく綺麗にはまり簡単な留め具を装着すればそのヘッドはちょっとの衝撃ではズレる事も外れる事もなくなり完全に固定される形となった。  私の頭上……僅か数センチの距離の所にそのいかついシャワーヘッドが装着されたのを感じて私の落ち着かない胸騒ぎはより一層不安の窮屈さを私に強いてやまない。  シャワーの穴一つ一つが小さな蛇口大の大きさを誇るそれを目の当たりにし、なぜ普通の大きさのシャワーヘッドにしなかったのだろうか? と、今更ながら疑問符が頭に浮かぶが……その答えはきっと私が望むような答えではないのだろうと悟り無駄に考えて脳の酸素を無駄に消費するのは賢くないと思い立ち考えるのをすぐに放棄した。  そうこうしていると再び私の目の前に姿を現した麻由里が妖しい含み笑いを浮かべながら手に持ったリモコンのスイッチを私に見えるように仰々しく押して見せた。  すると、部屋袖の奥にあるのであろう配水機か何かが起動するような機械音が低音で鳴り響き、そこに繋がったホースの中を何かが通っているのが一目でわかる様な膨らみが徐々に私に接近しついにはそれが頭上のシャワーヘッドの元へと送られる。  そしてヘッドの中に入ったであろう水は間髪を入れずに複数開いていたヘッドの穴から排水を始め私の頭頂部周辺をものすごい勢いで濡らしにかかった。 「っっ!? 水!? ……冷たい!」  空気穴かくすぐる為だけに開けられた窓以外は完全密封されたガラス人形の中に、雪山の雪解け水を思わせるような冷たさの水が大量に供給されていく。  恐らくただの水道水であろうとは思うけど、サウナのように蒸され火照り過ぎた身体にその水は一際冷たく感じ、私はその程よく冷たい水の感触にある種の快感すらも感じてしまった。  汗でべとべとになっていた顔や上半身……熱で蒸れていた頭……自分の放尿のせいで汚れてしまった内太腿や脚……それら全ての気持ち悪いと思っていた要素が涼し気な清水によって一気に洗い流されていく。  こんなに気持ちの良い水浴びを私は経験したことが無かった。こんなにも求めていた欲求を満たして貰えるなどと思ってもみなかった。  正直……気持ち良くて……頭がダメになるんじゃないかと思える程の快楽物質が脳から分泌された。  火照った身体に……汚れてしまった身体に浴びせて貰える水が……こんなにも気持ちの良いものだったなんて……  私はその快感に酔いしれ……一瞬自分の今の境遇を忘れてしまう程に意識をぼんやりさせてしまった。  しかし、その快感を味わえたのは……ほんのひと時……  正確には、頭の横を流れ落ちていた水が頭を濡らし切った後、今度は私の顔を洗い流し始めたのを境にぼんやりしていた意識がすぐに戻される事となる。 「うべっぺっっ!! ぷはっっ!! ちょ、水が顔に掛かってっっ……ぶはっ! 上手く呼吸がっっはっっ!!」  そう……前髪を伝って流れ落ちてきた水はそのまま私の目や鼻、口にまで流れる経路を作ってしまい鼻で息をしようとすれば水が鼻から入るし口を開けようものなら多量の水がその開いた口から口内に侵入してきてしまう。水の量は時間の経過とともに徐々に勢いを増し私の顔を滝のように流れ落ち私の呼吸を阻害していく。  私は堪らず下を向いてどうにか水が口内に入らないよう防御の態勢を取ろうとするが、狭い人形の中……下を見る事は出来ても完全に頭を下に傾ける事は叶わず、口を開けば少しは呼吸は出来るがその分水も多量に飲んでしまうという最悪の循環がが出来上がってしまった。 「ごはっっげほっっ!! み、みず……止めっべっっ!! このままじゃ息がっはっっ! 出来なくなる……っふ、ゲホゲホ!!」  止めどなく滝のように流れ続ける水の勢いに私は隙を見て口を開け必死に酸素を吸い込もうと藻掻く。隙を見てとは言ったが、その隙というのは運よく水の当たり加減が頭の横に振れ、水の流れが正面よりもサイドに行ってくれた瞬間という数秒に一回来るか来ないかの運頼みである。  顔に水が集中している時は息を止めその瞬間が来るのを懸命に我慢するけど……その瞬間がそもそも来ない事だって多々ある……そうなると焦りが募り息苦しさが更に増していってしまう。  息が吸えたら吸えたで、全く水が顔に掛かっていない訳でもないから口の中はすぐに水で一杯になってしまう。それを吐き出す為に咳き込めば……当然肺の酸素も消費してしまう訳で……  くすぐり責めを受け笑いに呼吸を阻害されていたあの時と似た息苦しさをくすぐられてもいないのに感じてしまっている。 「ぼういい!! もういいがらぁぁ……ゲホゲホ!! 水どめでっっ!! 今すぐ水どめでぇぇぇぇ!! ゴホッゴホッ!! ゲホッ!!」  息を吸おうとすれば水が高確率で口に入り十分に酸素が吸えない。空気を吸えるチャンスは確かにいくらかあるけれど、それも水の気まぐれを待つという不確定なもの……  私はだんだん酸欠と不安によって胸が苦しくなり始めていた。このまま水の勢いが増し続けて行ったら……顔にかかる水が増えていよいよ完全に呼吸が出来なくなってしまうのではないだろうか?  水の中に居る訳でもないのに……溺れてしまっているような感覚……  ただ頭から水を掛けられているだけなのに……なぜここまで苦しめられなくてはならないのか?  ただの水浴びなのに……  火照りを取り去ってくれて……身体を綺麗にしてくれているだけの水なのに……  苦しい……苦しい……苦しいっっ!!  拘束された状態で顔に水を浴びせられ続けるという事が……こんなに苦しくなるなんて思ってもみなかった。  顔さえ自由に動かせれば……前かがみにさえなることが出来ればこんな水なんてことない筈なのに……ほぼ直立の状態で流される水は防ぎようが無い。  逃げたり防御したり……そういう事もさせて貰えない。  それが苦しい。それが不安を煽る。  もしかしたらこのまま……直立不動のまま溺死させられるのではないだろうか? それは嫌だ! そんな情けない死に方……絶対にごめんだ!  でも苦しい……苦しいっっ!! 息をさせて貰えない! 苦しいっっ!! 「フフ……そろそろ良い頃合いかしら……」  私の苦しみを知ってか知らずか、本当に限界だと私が訴えかけようとする前に麻由里が絶妙なタイミングで手に持ったリモコンの水圧ボタンを何度かタップしシャワーから出る水の量を少なくしてくれた。 「がはっごほっ! おえっっへっ! ゲホゲホっっ!! がはっはっっはひ……はひ……ケホケホ!」  死ぬ寸前の所で助け舟が出された! 私には麻由里の行動がそのように映った。  しかし、シャワーからの水は完全には止めてはくれていない。これが何を意味するかを考えれば嫌な予感の一つでも浮かんできたであろうが、緩めてくれた水圧を私は感謝さえしながら今まで制限されていた呼吸を慌てて繰り返す。  顔への水流れは完全に収まってはおらず呼吸をすれば水は容赦なく口の中に入って来るけど……さっきまでの勢いはないため簡単に水は吐き出せる。そして呼吸をさせて貰える……私はそれが何より嬉しかった。人間として当たり前に行える権利を取り戻させて貰えたような感覚を覚え、もはや呼吸するだけでも快感を得られるようになってしまった。 「フフ……じゃあ、万理華ちゃん? この後……このお姉ちゃんに何をしてあげたらいいか……分かるわよね?」  呼吸に必死になっていた私には麻由里の言葉がぼやけて聞こえた。だからこの警戒しなくてはいけない場面で……私はあろうことかこの奴隷商のオーナーに感謝の念を抱いてしまっていた。  水を……止めてくれて……ありがとう……。などと、心の底から感謝の言葉を頭の中で浮かべてしまっていた。 「うん♥ このままヤるんだよね? お姉さんを綺麗にしながら……」 「そうよ……このままヤるの♥ その為に緩めてあげたんだから……」  水が口に入りながらも……必死に呼吸を繰り返す私。  シャワーヘッドから流れている水は私の身体を伝って足元へと流れ落ちていく。  その水は足裏に開いた“くすぐり用”に設けられた小窓から地面の排水溝へと流れ落ちて行っている。  その……今も水が滴り落ちている足元に万理華が満面の笑みを浮かべて座り込んだ。  私は彼女が足元を狙っている事に気付かずただただ与えられた呼吸の時間を貪った。  しかし、その呼吸の時間も……すぐに終わりを迎える事となる。  万理華の手が……水の流れ出る足裏の小窓に差し込まれた瞬間から……

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