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2:如月恭子 「放しなさいよっ!! ちょっと! 痛いじゃないのよっっ!! このっ!!」  なぜこんな事になったのか……なんでこんな目に合わされているのか……意味不明だし、何の説明も受けていない。  学校から帰って……寝て……目が覚めたら母さんが私の部屋に黒い服を着た女の人を数人連れて入ってきて……その女の人達にココに連れてこられた。  昨日は私の18歳の誕生日を母さんとささやかに祝ったはずなのに……その母さんが私に告げたのだ……  『あんたのカラダで父さんが残した借金の一部を返すから……』と。  母さんは……いや、もう母親でもなんでもないからあの女って呼ぶけど……あの女は多分待っていたんだ……私が18歳の誕生日を迎えるのを……  頭パニックになりながらも、ココの支配人らしき女性とあの女が契約書を交わす際に聞いたんだ……この奴隷市場は“18歳”になっていないと登録できないとかなんとか……  だから、いつも不愛想に私を突き放した態度をとっていたあの女は……私の18になる誕生日だけは祝ってくれたんだ……満面の笑みで……。  どうせろくでもないあの女の事だから……“やっと金ヅルになるカラダに育ってくれた”とか内心ではほくそ笑んでいたのだろう……ムカつく! あの女だけは許せないっ!! 「商品ナンバー105番の如月恭子(きさらぎきょうこ)を連れてまいりました」  昨日の品評会だか販売タイムだかで危うくどっかの誰かに売り飛ばされるところであったけど、いやらしい目をして私を買おうとした男共の話なんて一切聞かず自分の身を守ったつもりだけど……そうして売れ残った私は何やら“仕置きショー”とか言う見世物に出される事になったらしい。そういえば、頭がパニックになってたからぼんやりとしか覚えてなかったけど……昨日、その仕置きショーとやらを売りに出される直前まで見せられたのだけは覚えてる。   名前は忘れたけど……私と同じ18歳の女子だったっけ? その子が私の今の格好と同じように“裸”にさせられて……この黒いバニー姿の女に連れられ“あの中”に閉じ込められたんだ…… 「ご苦労様♥ それじゃあ早速……拘束人形の中に入れて貰える?」  黒バニーの女が話しかけたのが私の元母親と契約を結んでいたここの支配人……確か名前を……江月 麻由里(えづきまゆり)とか言ったか……  そしてその女の背に隠れながら顔だけを出して私の顔を興味深げに見ているのは娘の万理華とかいう子だった……それだけはあのパニックになってた頭でも覚えてる。 「はい。すぐに!」  娘がいるような年齢にも見えないほど若そうに見える麻由里という派手な赤いドレスを着た支配人が黒バニーに指示を与えると、そのバニーはまるで軍隊にでも所属しているかのような敬礼をして私の腕を再び力任せに引っ張り“アレ”の横に私を連れて行った。  アレ……とはコレの事である。昨日も仕置きショーの時に使われていた……コレ……。  遠目に見たら……人が万歳したような姿をそのまま型取りしたような透明なガラス製の等身大人形……  昨日見た限りではこの中にあの子は入れられ、仕置きと称して子供染みた馬鹿みたいな悪戯を延々されていた。  コレに私も入れられるのか? と思ったのも束の間、黒バニーは私の腕とは逆の手に持っていた鍵の輪束から大きなカギを1つ選んで、その人形の蓋を閉めている3か所の鍵をそれで開け始めた。  鍵がすべて開けられると、ガラス製の蓋は女性の手でも簡単に上げられるようになり……見た目とは裏腹にあまり重みがあるとは感じられない。しかし、特殊なガラスで作ってあるのか……プラスティックの様な柔軟性や脆さは一切なく、重くはないが強度の高いガラスである事が何となく分かる。  そのガラスっぽい何かでできた人を模した型の蓋が完全に開かれると、黒バニーは私にそこへ入れと促しを入れる。  素直に従いたくなかった私はその促しに顔を横に振って後退ろうとするが、黒バニーは私を上から見下すような冷酷な目をして強引に腕を引っ張り上げて私の身体をその人型に押し付ける。  その力があまりに強く私の力ではこの女性に敵わないとすぐに分かってしまった事と、背中と脚が押し付けられた衝撃で型の縁に当たり痛みを覚えたのも相まって、これ以上無駄な抵抗をしても余計な痛みが増すだけだと悟り私は渋々ながらバニーの指示通りに型に自分の身体が綺麗に収まるよう両手を上げ、膝裏やくるぶしの形まで凹凸で再現されている足の部位にも自分の足を乗せ、お尻の窪みに自分のそれを押し当てて、背中に型の底が密着するよう立ち姿勢のままその型に入った。  ただでさえ真っ裸にされて恥ずかしいというのに……腕を上げて恥ずかしいトコを隠せない様に万歳させられるのは……それだけで苦痛だ。  誰も見ていないのであればまだ多少は耐えられるが……華々しい光の当たるステージとは違い完全に証明の光が落とされた薄暗い観客席からは、私の裸体を見て愉しんでいる醜悪な目の光がそこかしこに見えて私の苦痛と羞恥を倍増させる。  まだ誰にも……見せた事が無かったのに……。  彼氏にすら……この姿を見せてなかったいうのに……。悔しい……。恥ずかしくて顔が茹で上がるくらいに熱いけど……それ以上に悔しくてならない!  心許したヒトだけに……このカラダを見せようと……決めていたのに……。いつか彼にだけ……少しずつ……少しずつ……私のカラダを見て貰おうって……そう決めてたのに……。  それが、見ず知らず……不特定多数の良く分からない人達の目に晒される事になるなんて……  悔しくて泣きそうだ……こんな事なら……彼に先に見て貰っていればよかった……変な駆け引きなんかせずに…… 「さて、お待たせいたしました! 準備も整ってまいりましたので早速本日の仕置きショーを開催したいと思います~」  私がガラス製の型に身体をきちんと収めたのを確認すると黒バニーは先程開いた蓋をすぐに閉じ、再びその蓋が開く事が無いようにとあの3か所の鍵もしっかりと掛け私をその型の中に閉じ込めてしまう。  それと同時に支配人の麻由里がマイクを手に持ち、観客に向かってショーの開催をすると観客からは地を揺らすような歓声が返えされる事となった。 「ココに閉じ込めました哀れな奴隷ちゃんは名前を“如月恭子”と申しまして、なんと一昨日18歳になったばかりのピチピチ高校生です!」  ガラスで作られたこの“型”の中に閉じ込められると……腕も脚も腰も肩も……身体の関節という関節全てがロックされたかのように一切動かせなくなる。型の凹凸と身体の凹凸が恐ろしい程にピタリと合わさっていて顔ギリギリの所に迫る蓋の密着度も合わさって私の身体は拘束されてもいないのに拘束されているかのような不自由さを与えられている。  動かせる部位と言えば、手首より上である手の指と……僅かに横を向くことが出来る顔くらいのもの……それ以外は例え足の指であろうともピクリとも動かせない。  その不自由さは……私に不安を掻き立てる。  これからどんなことをされるのか……分かっているから……余計に不安が焦りを生む。  あんな人を馬鹿にしたような子供染みたお仕置き……だいの大人がヤるような事かしら? などと昨日は白い目で見ていた立場だったが……まさかここまで徹底的に動けなくされていたとは想像すらできていなかった。  実際……馬鹿みたいだと思っていた。なんであんな事して……仕置きになるのか謎だったし、恥ずかしそうだと思うことはあれ……怖いなんて思う事はほんの少しもなかった。  正直……アレだったら何時間でも耐えられそうだとか……軽い気持ちで見てさえいた。  だけど……この仕置きから解放された女の子の疲弊ぶりを見て……その考えに疑問が過った。  解放されるや否や「私を誰買って下さい! 何でもします! お願いします!」と泣き叫んだ姿を見て……私の考えはどこか間違っているのか? と疑問が更に重なった……  でも……その疑問は結局……購買タイムが始まると頭の奥の方にしまい込んでしまい、自分の身を守る事を最優先に考えたために忘れ去ってしまっていた。  いま……再びその疑問は頭の中に大きく膨らんで私が持っていたを平常心という名の冷静さを圧迫している。  怖くない……辛くない……恥ずかしくない……と言い聞かせてきた私だったが……いざ自分がこの中に入れられると昨日のあの子の疲弊顔がフラッシュバックしてきて……忘れられなくなる。  全身汗だくで……顔は血の気が引いたように真っ青……  息も絶え絶えで……声なんて枯れたようにカサカサ……  仕置きを受ける前は……あんなに可愛らしい顔をしていた彼女だったのに……仕置きが終われば別人のように弱り果てて生気を失っていた。  私もあんな風になるのではないか? 私も……あんな風に追い詰められるのではないか? 考えない様にしていたその想像は……この狭苦しい……圧迫されるかのような身動きの封じられた空間で容赦なく私の不安を煽っていく。  こんな状態で……  こんな格好で……  こんな無防備にされて……  昨日みたいに……あんな事されたら私……どうなってしまうのか?  これから6時間もの長時間……アレに晒されて……正気を保っていられるのだろうか?  尽きぬ不安が次々に浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返す……  私はそこで始めて裸を見られている恥ずかしさよりも不安の強さが勝ってしまっていた事に気が付いた。  額に汗が垂れ、口はカチカチと寒がるように震えている。  ガラスが氷のように見えるから寒いのでは? と勘違いする人も居るだろうが……実際は暑い……  クソ暑い! というか尋常じゃなく暑い! 完全に密閉された狭い空間に閉じ込められているというのもあるが、そもそも裸で入れられている為肌から熱が放出し中にこもってしまっているから尚の事暑い!  入っているだけでサウナに入れられているかのような……日焼け用のライトをライトを浴びせられているような暑さがこのガラスの型の中にはこもってしまっている……  空気を入れ替える為の穴や隙間もない……だから吐く息……二酸化炭素も中に溜まって出て行かない……  暑いのに加えて……息苦しい。サウナの熱風に耐えている時のあの息苦しさを思い出すかのように暑くて酸素が薄い……  このまま閉じ込められたままだと、型の中の空気が無くなって窒息死するのでは!? と、更なる不安を抱きかけた瞬間、胸の横付近から突然ヒヤリとした風が送り込まれたのを感じた。  私はその風がなぜ入ってきたのか!? と疑問を抱くが、答えはすぐに出た。  ショーの説明をしている麻由里がおもむろに型の胸横に付けられていた小窓の蓋をパカっと開けたのだ。お陰で蒸し風呂のように暑かった型の内部に僅かながら外の空気が入り込み、私の胸横を涼しくさせたのだ。  ステージの上は照明やスポットライトなんかが煌々と当てられていたため、涼しいというよりも暑いくらいだと感じていたが……こういう暑すぎる環境に置かれたカラダにその空気を入れられると恐ろしく涼しくて清涼な感覚を受けてしまう。  酸欠で殺されるかも……などという考えは杞憂に落ち着いたが、胸の横や腕の付け根以外はまだ暑いままだ……私はただこの型の中に入っただけだというのに恥ずかしながら汗だくになってしまっている……。  体中にまとわりつく……気色の悪い自分の汗……。本来ならその汗が肌の体温を奪って蒸発するはずなのだが、この殆ど密閉された空間ではその汗も気化せずこびり付いたままになってしまっている。汗が気化すれば寒気を感じるはずだけどこの中ではその寒気よりも暑さが勝るようで一向に寒気を覚える気配がない……。まぁ寒がりな私としてはそれだけは助かると思える事なんだけど……それにしてやっぱり暑い! このままではのぼせてしまうのではないかという位暑い!  寒くされるのは嫌だけど……この暑さもどうにかならないモノだろうか? 「見てください皆さん! ほら……今開けましたこのワキ窓から、18歳……現役女子高生のいたいけで可愛らしいワキが完全に露出しちゃいました♥ 中は相当暑かったんでしょうねぇ~~腋の窪みに……こ~んなに汗かいちゃってます♥」  右の小窓を開けた麻由里は次に反対側へ回り込んで左の小窓も解放してくれた。小窓と言えど長さは腕の付け根から下乳の横くらいまでと広く取ってあり、更に、その窓を開けば背中側まで完全に開ききる作りになっている。だから腕の下から胸の横と……少し背中側までは涼しく感じられる。左右両方を開けて貰えたことによって随分とその部位だけは涼しくしてもらえたと言える。 「皆さんはサウナスーツというのを使った事はありますか? アレ……凄く暑いですよね? 今の彼女は……そのサウナスーツを着せられている状態よりも暑さを感じている筈です♥」  蓋を被せられた瞬間は外の音も一切聞こえてこず完全な密室となっていたが、この“ワキ窓”とか言うふざけたネーミングの窓が開けられたことによって麻由里のマイクパフォーマンスが聞こえるようになった。別に聞きたかったわけではなかったが……聞いていないと次に何をされるのか構えることが出来ない為嫌でも聞かざるを得ない……自分の状況を事細かに説明されるのは耐え難い恥ずかしさに苛まれる事になるが……仕方がない。 「この“暑い中に硝子の中に入れられ、一部分だけ涼しくして貰う”……っていう行為は、これから行う仕置きにとっても素晴らしいスパイスとなります。もちろん! どうスパイスになるかは……我々には見て判断はつかないでしょうが、想像は出来るでしょう?」  突然、型を立たせるように支えていた背中の土台部分が機械音を発し始め、立ち姿勢を強要していた型の姿勢を傾けさせ始め若干“斜めに寝る”ような姿勢に型を傾けていく。  型の背中部分だけに固定されていた土台が斜めに傾く事で、型の足元は宙に浮き型自体も斜めを向き……中にいる私も当然それ同様に斜めに寝る形を取らされる事となった。   「思い浮かべてみてください……。彼女のように密閉された空間の中に閉じ込められて……暑い思いをしながら苦しんでいる時に……ふと、ワキの所だけ涼しさを感じたら……どうですか? ソコ……すっごく敏感になっちゃうと思いません?」   少し斜め上を見るような格好で寝かされる体勢にされた私は、司会者である麻由里のその言葉を聞いてハッとなる。  彼女の言う通り……小窓を開けられ、涼しさを感じている箇所は他の暑さを感じている部位とは違って極端に心地よく……その心地よさをもっと味わいたいと思ってしまうのか、涼しい風が吹けばその風が何処からどのような強さで吹いてきているのかまで敏感に察知できてしまっている……。それはつまり……その部位だけが他の部位と比べて優遇されている為意識がそこへ向いてしまっているという事に他ならない。  いや、彼女の言葉を借りて……端的に言うと……まさに“敏感”になっていると思わざるを得ない。その証拠に……風が吹かなくても、空気のちょっとした揺れの様な微細な変化も感じ取れてしまっているのだ。それだけ意識がその部位に向いてしまって感じ方を鋭くしてしまっているのだ…… 「暑さは……人の感覚神経を鈍感にしてしまう働きをしてしまいますが、逆に涼しさや寒さは……人の神経を鋭く敏感にさせると聞きます……。彼女には今それを同時に味わってもらっているのです♥ 頭や下腹部なんかはボ~~っとなるくらい暑さに眩んでいるでしょうが、この小窓を開けたワキの部位だけは今……些細な刺激にも反応してしまう程敏感なはずです……そんな敏感な肌を……このような小さな棒でツツ~~っと撫でられたら……どう感じるでしょうね?」  麻由里はそう言葉を零しながらもポケットから20cmくらいの先がフォークのように3つに広く割れた樹脂製の棒を取り出して皆に見えるように掲げた。そして反対の手に持っていたマイクを黒バニーに手渡し自分の声をそのマイクで拾えと指示をして、彼女自体はもう一本その棒をポケットから取り出し両手にそれぞれ持って私の右腋を狙うかのようにその横に立ち直した。 「ウフフ……こんなに汗をかいちゃって~♥ さぞかし暑くて堪らなっかったんでしょうね?」   両手に持った小さな熊手の様な樹脂製の棒をゆっくり私のワキへと近づけていく麻由里……。その顔は興奮しているかのように赤く紅潮し目は悦に浸る様に惚けている。 「どれどれぇ~? 折角だからこの“特製コチョコチョ棒”で……あなたの腋の汗を拭い取ってあげましょう♥」  フォークのように3つ股に分かれてはいるが、その別れた先端は何かを掻き出すために作られたのか熊手のように急な角度で下を向いている。  何かを掻き出す為に作ったなら……もっと大きな……てのひらサイズに作るのが相場だろうが……アレは違う。  3つの先端は互いに離れすぎており何かを掻き出そうとすれば隙間から零れる事が目に見えている。つまりはそういう事だ。アレは何かを掻き出して掬うために作られた棒ではなく、何かを“引っ掻く”為だけに作られたモノなのだ。  それが何を引っ掻くのか……そんなもの……考えなくても分かり切っている。  ワザワザそれ用に特注で作らせたかなんかしたのだろうから……。 「暴れても無駄よぉ~? ほらぁ~~恭子ちゃんてば逃げられないんだからぁ~~♥ ほら、大人しくしなさい?」  敏感になっているソコにそのような物で引っ掛かればいったいどれほどの気色悪さを感じるのか想像も出来ない。私は無駄だと分かっていながらも身体に力を込めてをくねら動かせる部位を動かそうと試みる。しかし勿論その試みは何の効果も得ないでただただ無駄な体力を使うに至ってしまう。 「この棒の先端……とっても細く尖ってはいるけど……先端も樹脂で出来てるからそんなに痛くはないわ♥ でもね……その代わりぃ、とぉぉ~~~っても“こそばい”の♥」  そうこうしている間に麻由里の握った1本の熊手状の先端が私の右腕の付け根より少し上の方にそっと着地する。その着地した瞬間は首をある程度しか捻れない私は見てはいないが、肌に触れたムズっとした感触を敏感に感じてしまいそれが触れたのだという事に気付いてしまう。 「金属とは違って柔軟性もあるからぁ……こぉ~~んな風に引っ掻きながら移動させれば……」  腕の付け根手前の柔肌に3本の先端がそれぞれグッと沈み込んだのを合図に、麻由里はそのままゆっくりと棒を下げるように動かし始め先端で肌を引っ掻いていくようになぞり下げを行う。 「かはっ、ひぃッっ!!?」  樹脂製の尖った先端がジョリリと肌をなぞる感触があまりにむず痒すぎて、私は思わず悲鳴に近い声を上げさせられた。 「先端は押さえつける力に負けて“しなり”ながら肌をなぞるようになってるけど♥ この“しなり”こそがこの棒の真価でもあるの♥」  腕の付け根手前からゆっくりと腋の中心を目指して降りてくるそのじれったさは、私に刺激に対する備えをさせる代わりに受ける刺激は我慢など出来ない絶望的な刺激である事も同時に悟らせる。  我慢してもきっと無駄……無駄だけど我慢する事以外に抵抗の意志を伝えられる手段がない。  このような馬鹿みたいな刺激に……負たくはない! 声の一つも上げてあげたくなどない! そんな情けない姿を……大勢の人の前で晒したくはない!  そう思ってはいるのだけど……徐々に徐々に腕の付け根へ迫ってくる怪しい刺激の連続に、私の顔は勝手に口元をニヤつかせ今にも零れそうになっている笑いの切れ端を僅かに漏らし始めてしまっている。 「ひとたび……この“しなる”先端が……この汗まみれで滑りの良くなった腋の中心に滑り込めば……いかに我慢強い女の子でも悲鳴のような笑いを吐き出しちゃうことになるわ……どう? 怖いでしょ?」  それでも……私は必死に首を横に振る動作をして見せる。怖いかと聞かれ“怖い”と答えたいという本能をむりやり私のプライドが押さえつけ首を横に振らせたのだ。 「そう? じゃあ……遠慮なく始めちゃっていいわね? 今素直に謝るならなら……最初は手加減してあげてもいいけど……」  手加減してあげるという言葉に目尻がピクリと反応を示すが、私はその言葉も無視するように目に力を込めて彼女を睨みつけた。すると彼女はワザワザ私の顔を覗き込むように下から見上げ…… 「フフフ♥ その強気そうに見える態度……それを返したこと……後からたっぷり後悔する事になるから♥ せいぜい頑張って6時間耐えきって見せてね?」    と、言い放って腋の直前まで運んでいた“コチョコチョ棒”とやらを一気に腋の下まで一直線に引っ掻かせた! 「ばひゃっっっ!? ひぎゃあああああぁぁああぁぁあぁああっぁあぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」  汗のせいで滑りやすくなっている私のワキの窪みの部位を何の慈悲もかけずにジョリジョリジョリッと音を立てて引っ掻いたそのコチョコチョ棒の刺激に、私は固く結んでいたはずの口を大きく開いて甲高い悲鳴を上げてしまう。  下まで降りきった棒はそのまま引っ掻きを継続したまま今度は腋の上部まで一気になぞらせなが戻り、その後間を開けることなくまた腋の下まで棒を往復させるという動きを始めた。 「あぎゃあああぁあああぁああっぁあぁっっっっ!! いひぃぃぃぃっっっっっ!!?」  その刺激の強烈さに、しばらくは悲鳴しか出せなかった私だったが……樹脂製の尖った先端が何度も往復して刺激に弱い腋を引っ掻く動作を繰り返すうちに、私は意志も感情も伴わない不可思議な可笑しさがお腹の底から湧き上がってくることに気が付いた。  笑いたいという状況ではない。何か特別面白いう顔を誰かがしている訳ではない……面白い冗談やふざけた格好を誰かがしている訳ではないのに……気が付いたときには……私は“笑って”いた。  自分の意志で笑っているのではなく……そういう感情が芽生えたという訳でもない……。でも口からは何かに憑りつかれてしまったのではないかと思えるほどの無様な笑いが吐き出されている。 「あひゃ~~~ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! うはひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、いへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、はぎゃっっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは」  笑いたいと思っていないのに……笑いたくないとさせ思っているのに……私は密閉された硝子型の拘束人形の中でゲラゲラと人が変わったかのように笑っている。 「ギャ~~ッッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、にゃ、にゃにコレぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ヤダっっ! にゃによコレぇぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、きひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ダハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 「何って……これが“くすぐり”よ? 恭子ちゃんだってよく友達なんかと遊んだりしたでしょ? 罰ゲームとか悪戯とかで……」 「く、く、くひゅぐりってぇぇへへへへへへへへへへへへへへへ、こんなんじゃないぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、こんな強いヤツじゃないぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 「いいえ、これが本当の“くすぐり”よ? 体の自由を奪って無防備にした腋とかをそれに適したくすぐり方でコチョコチョするのが本当の“くすぐり”なの♥ 貴女達が行って来たであろう“子供のお遊び程度のプレイ”とは全く違う大人の くすぐりっていうのがこれなのよ?」 「あっはっはっはっはっはっはっはっはっは、ムリ、ムリムリぃっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!! こんなの苦しいだけぇっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、辛いだけぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへ」 「だってお仕置きだもの♥ 苦して辛くなきゃ反省してくれないでしょ?」 「だひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、ちょ、一回止めて!! 一回っっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、いひひひひ、へふへへへへへへへへへへへへへへへへへ、アハハハハハハハハハハハハハハ!!」 「恭子ちゃんは……お仕置きが“くすぐり”だって分かった時……ちょっとこのお仕置きを舐めて考えていたでしょ?」 「いひぃぃっっひひひひひひ、んははははははははははははははははは、ひへへへへへへへへへへへへへへへ」 「“くすぐったいのを我慢すればいずれ解放されるから別に自分には辛くない”とか思ってたんじゃないの? 昨日のを見て……」 「あはっっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、そこジョリジョリじないでぇぇへへへへへへへへへへへへへ!! そごは笑っぢゃうぅふふふふふふふふふふふふふふ、そごだめぇへへへへへへへへへへへ、はぎゃっはははははははははははははははは!!」 「見ているだけじゃ分からなかったでしょ? こんな風に抵抗できない様にされてくすぐられる苦しさなんて……」 「だぁ~~っははははははははは、やめでっでばぁぁっっははははははははははは、そこは駄目!! ワギの下はホント駄目なんだってぇぇへへへへへへへへへへへへへへ」 「腕を降ろしたくて仕方がないでしょ? このくすぐった過ぎる棒を一刻も早く跳ね除けたいと思ってるでしょ? でも出来ないわよね? この中に入れられたら……恭子ちゃんは万歳を強制させられるから今一番守りたいであろうワキを守る事なんて絶対に出来ないの♥」 「ほひゃっっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、そ、そ、そこばっかズルいひひひひひひひひひひ、そこばっか引っ掻かないでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」 「そんな無防備で無抵抗にしたワキを……くすぐる事に特化したこのコチョコチョ棒で容赦なくこしょぐり回す事こそが“くすぐり責め”っていうお仕置きの本質なのよぉ~?」 「わ、わ、わがっだぁあぁはははははははははは、もう説明はいいがらぁぁはははははははははははははは、止めて! 一回止めでぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」 「止める訳ないじゃない♥ 恭子ちゃんへのお仕置きはまだ始まったばっかりですもの……。これからみっちり6時間、くすぐりの“く”の字を聞いただけで怯えるようになるまでこしょぐり回してあげる♪」 「いやっっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、いやああぁぁあぁははははははははははははははははははははははは、無理ぃぃひひひひひひひひひひひ、そんな長い時間笑えるわけないぃぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」 「安心して? 笑えなくなったとしても無理やり笑わせてあげるから♥ 恭子ちゃんは何も考えずに口を開けて横隔膜上下させているだけで良いのよ……そしたら勝手に声帯が笑い声を発してくれるから……」 「ハヒアヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、そんにゃのやだぁぁぁぁははははははははははははははははは、そんなの酷いぃィぃひひひひひひひひひひひひひひひ!! はひはひ、あひっ、うぐっっ!! はむぅぅっふ……く……ふっっ……ん……」 「おっ? やめて貰えないって分かったから今度は刺激を我慢しようってしてるわけ? まだそんな反抗的な態度を取ろうとする訳ね? だったらぁ~~~~」  笑い続ける事がこんなに苦しいものだとは思ってもみなかった。  このまま6時間もこの状態を続けられたら……頭がおかしくなってしまうこと必至だ。  ここは本能に逆らってでも一度この刺激を我慢しなくては……  頑張れば抵抗できる刺激なのだと身体に教え込んで、少しでもこの絶望を和らげなくては精神の方が先に参ってしまう……  私はそのように考え開いていた口を無理やり閉じ、押し寄せてくる豪雨の様な笑いたい衝動をどうにか口内に押し留めてみせた。  たかが“笑うだけ”と侮っていたくすぐりの仕置きだけど……受けてみればその過酷さが身に染みて伝わってくる。  まず、笑うという行為自体にかなりのエネルギーを要するわけで……  丁度むせて咳き込むときと同じように、肺の中の空気を吐き出すために腹筋や横隔膜の収縮運動を行わなくてはならない。そして吐き出す際に発してしまう“笑い”にもそれ相応の負担を強いられるわけで……声を外に押し出そうとする為の力や声帯や喉奥の筋肉への負担、口が開く際の動き一つにしてもエネルギーを要する。  そんな全力疾走を強いられているかのような体力の消費に加えて、この“笑い出す”という行為がもたらす倦怠感や脱力感、嫌悪感……そういうものが輪を掛けて私の精神まで犯してくる。  肉体的に辛い運動を強いられているのに加えて、笑えば笑う程に力を吸い取られるような錯覚を受ける程の弛緩作用が働き、ますますくすぐりという刺激に耐えられなくなっていく。だから、体力が残っている今のうちに……出来るだけ笑う事だけでも耐えなくては……  今ここで笑うのを堪えないとこの後の未来は分かり切っている。  抵抗力を無くしてしまった私が……くすぐりの暴力に耐えられず刺激に対して笑い狂うだけの笑い人形と化してしまう未来しか見えないのだ。  だから……今は苦しくても……無理やりでもなんでもいいから笑ってしまいたい欲求を抑え込まなくては! 一度心を折られて笑いを吐いてしまえば、たちまちに私は笑いの“奴隷”にさせられるだろう。  何をされても……何処を触られても笑ってしまう……笑いの奴隷に…… 「よいしょっと♥ 恭子ちゃんの笑い顔を見れなくなるのは残念だけど……ココに来れば両方一緒に責められて便利なのよねぇ~~♪」  頬を膨らませ「笑いたい!」と暴れまくる衝動をギリギリ口内に押し留めている私に、麻由里はいつの間にか私の右横から移動し完全に私の背後へと移動していた。  斜めに寝かされている私の背後に回ったものだから中腰にならないとその位置に立つ事は難しいだろうが、麻由里は中腰という無理な体勢になる事も厭わずしっかり私の背後に位置取りを行っている。これが何を意味するか……彼女の言葉を読み解けばその答えはおのずと導き出されるのだが……今は笑いを抑え込むので精一杯で、そんな絶望を煽るような問答に意識を向けられる余裕がない。 「さぁ~て、さっきは右だけだったけど……今度はまだ何も手を付けられていない左にも刺激を送ってみるわよぉ? 果たしてその刺激に耐えられるのかしら?」  左も刺激する……と彼女は言ったが……それは左の“腋”もくすぐる……という事だろう。  右の腋だけでもあんなに笑わされたというのに……今左の腋までくすぐられたら……一体どうなってしまうのか?  右の時とは違うこそばゆさを感じてしまうのか? それとも……同じこそばゆさが私の脳を揺さぶってくるのか?  右の時と同じくワキの下付近を触られるのが耐え難かったりしちゃうのか? それとももっと上の部位の方がくすぐったく感じてしまうか?  不安が過れば過る程に意識が左の腋に集中してしまいコチョコチョ棒の接近する空気の揺らぎさえも察知してしまう程に肌が敏感になっていく。  自分の汗が腋の窪みにツツっと垂れた感触も、揺らいだ空気のほんの僅かな風圧も……まるで私の意識が左の腋に移ってしまったかのように、見えてもいないはずの自分の腋の姿形まで鮮明に脳裏に浮かび上がってきてしまう。  これはマズい……笑いを我慢なんて言っている場合ではない! こんな汗の動きひとつをリアルに感じられるほど敏感になってる腋を……あんな先の尖った先端に触られると考えると……脳が勝手に刺激を予測し始めて、その想像だけで勝手に笑いが込み上げてきてしまう。  触られたら絶対笑う! どう抵抗しようと……絶対笑ってしまう!   想像だけでもくすぐったいのに……実際に触られたら……  実際に触られて……その後ソレで引っ掻かれでもしたら……  ヤバイ!! もう笑いが……想像だけで笑いが……  だめだ! くすぐったい!! まだ触られてもないのに……左の腋が滅茶苦茶くすぐったい!!  あぁ……助けて! おかしくなりそう……。触るならさっさと触ればいいのに……  触られないのなら触られないなりに想像が膨らんで……くすぐったさが何倍にも膨れ上がってくる!  無理だ……笑いたい! もう我慢なんてせず笑ってしまいたい!!   さっきみたいに馬鹿みたいに口を開いて涎を垂らしながら何も考えずギャハギャハ笑いたい。笑う事を我慢するなんて……苦痛を自分で上乗せしているようなものだ……  我慢なんて……しても無意味だ。我慢するのにも体力は使うし、精神的にも追い詰められてしまう……  だったら……我慢なんて……もう我慢なんてせず……

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