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#1 「しすたぁ~! また明日ぁ~~!」  1日の終わりを告げる茜空を仰ぎながら教会に遊びに来ていた子供達がそれぞれの帰路へついて行く。 「はい、また明日。気を付けて帰るのですよ~?」  私は斜め上から差し込んでくる夕日の眩しさに片目を閉じながら、子供達の無事を案じつつ手を振って見送りの言葉を送る。  私の言葉に子供達はそれぞれバラバラに返事を返し、やがて最後の一人が見えなくなったのを確認すると「ふぅ……」とひと仕事終えたかのような息をついて教会の中へと戻っていった。 「さぁ、今日も子供たちから元気を貰えたしとても良い1日になりました……」  私は頭に被っていた修道服のフードを頭から脱ぎ、自分の長いブロンドの髪を手で解かしながら肩に垂らせ、左右に長い椅子が設置されている教会の身廊を1歩1歩進みながら……薄く目を閉じ今日一日の出来事を振り返る。  日が昇る前に、置き祭壇と身廊の清掃……。司祭様が訪問される日程に合わせて朝食づくり……。花壇の手入れ……。祈りの準備……。朝のお祈りの後は食材の買い出しを行って、子供達に教会を解放……。夕暮れまで子供達と過ごして……今に至る。  ささやかな一日ではあったけれども、穏やかで貴重な一日を過ごせた……。と、私はほのぼのした気持ちになりながら祭壇の前へと歩み進む。  夕暮れの真っ赤な陽がステンドグラスの模様を透過して私の身長の倍はあろうかという巨大な“贖罪の十字架”に当たり、美しいコントラストを映し出している。  その光景に神聖な何かを感じとった私は、夕日が沈みきる僅かの間その場に立ち尽くして惚ける様にその光景に目を奪われていた。 ――ドクン……ドクン……。  目を閉じると私の心音が早くなっていく音が聞き取れる。 ――ドクン、ドクン……。  日が暮れるとあの“お勤め”の時間が来てしまう。  それを想像すると……また一つ、もう一つと心音は高鳴り続けてしまう。  私は目を瞑ったまま手を組み、膝を床について神に祈る姿勢をとる。 ――ドクンドクン……。  鼓動は高鳴り続ける。  私がこの祈る姿勢をとると“あのモノ”がやってくるという事が分かっているから……。 ――ドクンドクンドクン……  今日こそはあのモノの口車に乗らず、キチンと追い払って見せる!  私はその想いを祈りに乗せて言葉を紡いでいく。 「主よ……我らが導き手たる主よ……我が懺悔の言葉を聞き、不浄なる罪を清めたまえ……」  祈りの言葉を言い終えるか終わらないかのタイミングで、フッと外から差し込んでいた薄暗い光が何者かの影に遮られる。  あのモノが来たのだ!  私を言葉で惑わす……あのモノが……。 「ウフフ……今日もお勤めご苦労様♥ シスターエリス」  マントの様に広げたコウモリの羽根に人間の女性を模した様な身体。羊の角の生えた頭に薄紫色の顔……。  教会の天井から舞い降りてきたその魔物のような見た目の女性は、フワリと宙を仰いで贖罪の十字架の上に腰を落ち着けるように座る。 「また貴女ですか……。そろそろ飽きて別の所へでも行かれては如何です? 毎日私の懺悔の邪魔をして……こちらはいささか迷惑しているのですよ?」  見た目には美しく妖艶な雰囲気を持つ女性……というイメージを持つかもしれないが、彼女はれっきとした魔族。なぜこの神聖なる教会を気に入ってしまったのかは分からないが、教会を閉めて私が懺悔の時間をとろうとすると毎度現われて毎度邪魔をしてくる。  何を考えているのか分からないが危害を加えるようなタイプではないようで、そう言う輩を無下に追い出すような事も出来ず……彼女が飽きるまで話の相手くらいにはなってあげている次第だ。 「あぁ~~ひっどいなぁ~~邪魔なんて言いなさんなよぉ~~。私はシスターの事気に入ってるんだよぉ?」 「べ、別に……気に入って貰わなくて結構です! 本来なら魔族であるあなた方と親しくすることは禁忌とされているんですから!」 「まぁ~~た、そんな事言う~~! 別にいいじゃん、話したり遊んだりするくらいはさぁ~~」 「きょ、教会は! 遊びに来るところでは……ありません!」 「そう? 私にはこれ以上に無い遊び場だと思うんだけどなぁ?」 「ココの何処が遊び場ですか! 神聖なる教会の祭壇を目の前にして良くもそのような事が……」 「だってシスターを邪魔するの……面白いんだもん♥ 私にとってはシスターこそが遊び道具みたいなものだよ♥」 「貴女という人はっ! ほら、出ていってください! これから清身になって懺悔をするのですから……」 「あっ♥ アレだね? いつものエッチなお祈りするんだね?」 「エッ……チ……じゃありませんっッ!! 神聖な儀式です!!」 「えぇ~? だって裸になって祈るじゃん……私からしてみればエロスの塊だよぉ~?」 「は、裸って言わないでください! 清身になっているだけです!! 雑念を払うためには一糸も纏わない姿になるのが一番清らかなのですから、仕方がな・い・ん・ですっ!!」 「はいはい……そういう事にしといてあげるよ……このエロシスター♥」 「そういう雑念を入れて来るから貴女の事キライなんです! ほら、さっさとどっかに行って下さいまし! ほら!」 「フフフ~~♥ 私に邪魔されるのがそんなに嫌なのぉ?」 「んぐっ!? そ、それは……」 「ねぇ~~そんなに邪魔されたくない~? ねぇねぇ~~」 「ぅぅぅ~~~っ! ベ、別に! 貴女に邪魔された程度で、懺悔に支障が出る事なんて微塵もありませんけど……」 「へぇ~~? そう言いながら……いつも雑念に負けちゃって私が勝っちゃうじゃん?」 「きょ、今日は!! 絶対に負けません!! 私の信仰がどれだけ深くて誠実で強いものなのか……お見せして差し上げます!」 「ムフフ♥ それは楽しみだなぁ~~♥」  このようなやり取りを大体毎日行って私は懺悔の準備に入っていく。  自分でも言ったように……、雑念を払うために衣服を全て脱ぎ……生まれたままの姿になって神の前に膝をつく。  誰が何と言おうと私はこうする事で主にありのままを見て貰えると信じている。  不純な動機など……ない。  魔族の彼女はいつも清身になる私を露出癖のある変態などと揶揄するが……勘違いも甚だしい!  そんな不純な考えを……私がするはずが無い!  絶対に……。 #2  片方の膝を床についた姿勢で、胸元に組んだ手を決して離さないよう祈りの言葉を心の中で繰り返すのが私なりの祈りの儀式。純真無垢で何一つ偽らない姿を贖罪の十字架へ晒すことで清き心を主に捧げ、祈りの姿勢を崩さない事で主への絶対的な忠誠を私なりに表現している。  この祈りは毎日……教会を閉めた後に欠かさず行ってきた私の日課であり食事と同じように大事な贖罪の時間……。  いかに聖職者という立場の人間であるとはいえ、無意識に取ってしまう自分本位な行動、ふとした時の気の迷いや反省すべき言動の乱れなど1日のうちに主に許しを請わなくてはならない案件が一つや二つは必ずある。そういう自分の悪しき行動を思い起こし懺悔する事こそがこの祈りでは最も重要なのだ。  清身にて行うこの懺悔は私にとって最も心洗われる瞬間であり、今日1日を過ごした“意味”を自分で振り返り反省する素晴らしい時間なのだが…… 「くっっ……ふっっ!!」  この淫魔の女性はそんな私の清い振り返りの時間を、子供染みた行為で邪魔して楽しんでくる。 「あれ~? シスターってば祈りの姿勢が崩れそうになってるよぉ~? 良いのかなぁ? 神様の前でそんな不誠実な態度を取って……」  私が清身……裸体である事をいいことに、この淫魔は目を閉じて動かない様にしている私の身体を無作為に手で触って刺激を加えてくるのだ。 「くひっ!? んくっっふ!! だ、だって……そんなトコロ……触られたら……くふっ! 気色悪くて反射的に身体が反応するに決まってます……んくっ!?」  私が膝立ちの格好で祈りの姿勢を取ると同時に彼女は十字架からフワリと地上へ降り立ち、祭壇前で跪いている私のすぐ横に近づいてくる。  最初は私の一糸纏わぬ身体を品定めするかのように眺め、何度も何度も私の周囲を回りながら“今日の初手”を吟味する。  そして私の身体を見て回って初手に何処を触るか決めた彼女は、私の祈りの言葉が言い終えるくらいの頃合いを測って“そこ”を触って悪戯を行う。  今日は初手を“足の裏”に決めたようで……彼女は、跪いた姿勢で後ろに伸ばした左の足裏に片手を添えていやらしく撫で回し始める。  膝立の姿勢は片方の足は地面を踏みしめた格好になっているけど、もう片方の足は床に沿うように寝かす格好になっている。その足が全く地面を踏んでいないかというと、そうではなく……姿勢を維持するために足の指だけは地面につけ足を動かさないよう踏ん張る様な格好を行っている。  姿勢を崩さない為……と自分では思っているが、淫魔の彼女はその恰好を“誘っている”と勘違いしているのか初手をそこに絞って触ってくることが多い。  彼女からすれば足指で地面を踏ん張っているその恰好は“大好物な足の裏を触り易く晒してくれている”という風に見えているのだろう。この児戯をするようになって彼女はそこを狙う頻度が増えているように感じる。 「ほら……シスター? 肩を震わしてないで……お祈りしなくちゃ♥ 神様に聞いてもらわなきゃいけないんでしょ? 自分の至らなかった点を……」  この児戯をするようになって彼女は私の“贖罪の祈り”に対してある程度の理解を示しているようだ。私がなぜ跪いて祈りの言葉を呟いているのか……その理由を興味深げに聞いてきたりもするから、教えたりもしている。魔族であるから完全に理解してくれるとは思ってもいないが……。 「そ、そ、そう……です。祈りは……私の勤め! どんなに邪魔をされようがこの祈りだけはやり遂げて見せます!」  無垢な身体を自ら主の前に捧げるのと同じく心の中は清く平穏に保った状態でこの祈りは行なわなければならない。その事を彼女は理解しているはずなのだけど、魔族である彼女はそんな真剣な私の祈りを児戯によって毎度邪魔をする。 「そうだよね? ちゃんとお務めは果たさなきゃ駄目だよぉ~? なんてったって……清楚可憐なシスターなんだから♥」 彼女の行う児戯……それは別に淫魔だからといって淫らな行為を私に強いている訳ではない。  皮膚を少し触るだけの……周りから見れば本当に“児戯”……子供の戯れだと表現して差し障りは無い。  しかしこの児戯に……私は毎回神聖な懺悔を邪魔されてしまう。  目を閉じて湧き上がってくる欲求をグッと我慢して意識を向けまいとするのだけど……何度ヤられてもこの刺激には慣れる事が出来ない。むしろ触られるたびに感度が増しているかのように刺激の質が濃くなっているように感じる。  それが淫魔の力なのか……私が元々“そういう”刺激に弱かっただけなのかは判断に苦しむけど、この邪魔が始まって私は1度たりともまともに祈りを終えたためしがない。いつも負けてしまうのだ……主の御前で……無様に……。 「でもぉ~シスターの足の裏って……ほんとエッチだよね~? 大人の足って感じに窪みが深くて……淫魔である私だって見てるだけで欲情しちゃうもん♥」 「くっ……ふっ! よくも……そんな戯言を! 足に欲情する淫魔なんて……聞いたことありません!」 「まぁ、私が特別なだけなんだけどね♥ でも……シスターの足がエッチなのは本当だよ? 思わず……触りたくなるようなフェロモンを形だけで出してるって感じで……ホント高まっちゃう♥」 「え、エッチとはなんです! 神聖なる主に与えられたこの清らかな身体に……そのような……魔族を誘淫するような部位があるはず……ないでしょ!」 「シスターがどう否定しようと、エッチなものはエッチなの♥ 別にいいじゃない……人間は生殖するうえで色欲を高める部位があるのはそれだけで他者より有利でしょ? シスターの場合はそれが足の裏ってわけ♥」 「せ、生殖って……貴女はそのような目でしかこの清身を見ることが出来ないのですか!」 「そうだよ? 人間も魔族もこの世に生を受けた瞬間から生殖し子孫を残すためだけに生を享受している……。裸になるっていう事はその生殖を行いたいっていう願望の表れでしかないって私は思っているよ?」 「違います! 清身はそのような願望の為に行う俗物的な行為ではありません! 自分を飾っている全ての物を取り払い何も持たない無垢な状態のまま主の前に身を差し出す神聖な行為です! 生殖をしたいという願望なんて……持ったことなど……」 「本当にぃ~?」 「……えっ?」 「本当に無いの? 男と交わりたいって……思ったこと……」 「あ、ありません!! あるわけがないじゃないですか! 私はシスターなのですよ!」 「シスターであることはこの際関係ないよ。エリスはどうなのって話さ……」 「わ、私……?」 「そう。人間の一人の女……エリスとしての気持ちはどうなんだい? 男と交わって……子を孕みたいって思った事は無いのかい?」 「ま、また……問答ですか? くだらない……」 「ううん、これは私個人の好奇心から来る質問だよ。淫魔の私じゃなく、いち個人のリッカとしての好奇心さ……」 「リッカ……と言うのですね? 貴女の名前……」 「あぁ、名乗るのは初めてだったよね? そう……私はリッカ……淫魔のリッカと言えば魔界では変人として有名なのさ♥」 「素敵な名前があるじゃないですか……魔族のクセに……」 「ほら、そういう差別発言はよくないよ? そういう風に種族で個人を見ちゃうから頭も固くなっちゃうんだよ……」 「ま、魔族に言われたくありません! 貴女方は人間の村を焼き払って簡単に人命を奪うではありませんか! 貴女だって……人間の精気を糧として生きているのでしょう? そんな不浄な存在を……私は人間と同じ物差しでは見れません!」 「魔族だから人間の村を襲っている……と?」 「違いないでしょっ! この前も西の村が襲われたと聞きます……」 「じゃあ……人間はなぜ家畜を飼ってそれを食したりするの?」 「っ!? そ、それは……生きていくために……仕方がなく……」 「魔族もそうだよ? 生きていくためには栄養が必要……でも同族を食べ合うわけにはいかない……。っとなれば、家畜を食べてブクブク太った人間を食事にするのが自然の流れだと思わない?」 「それは魔族の勝手な言い分でしょ! 魔族も人間も……知性を持って生きているのですから共存を考えるべきなのです!」 「確かに……共存は一つの模範回答にはなるね……。でも、領土は? この世界は私達魔族が最初から住み着いていた言うなれば原住民ってやつだよ? そこに人間が勝手にズカズカ入ってきて勝手に土地の所有権を主張してきた。それをよしと思う魔族が居ると思う?」 「人間だってこの世界には存在してました! それに、貴女方魔族が最初に領土を広げる為に侵略してきたのではありませんか!」 「……っとまぁ、お互いの歴史は自分たちの良いように解釈されて紡がれているから、この話はきっと平行線を辿るんだよね……」 「…………まぁ、確かに……。“どっちが先か”なんて……先人が勝手に歴史書に残した内容でしかありませんから……その時代を生きていない私達には何が真実かは分かりかねますけど……」 「そんなもんだよね? 結局、知性がある者たちが歴史を紡いでいくというのは自分たちが都合のいい解釈をして土台を作っているんだから……」 「……否定は出来ません。私も……そうだと考えていた時期もありますから……」 「ほんと……シスターと話すのは楽しいなぁ~♥ 他の人間だったら今の話……絶対自分たちが正しいって言い張って引かないもん……」 「べ、別に……私だって、人間側なのですから……私達が正しいと信じたいとは思ってます! でも……」 「……でも?」 「貴女と話をしていると……いつもその“正しさ”が揺らいでしまいます。今までは魔族は敵だと教え込まれてきていたのに、貴女と問答していると……その敵だと思っていた種族は実は私達と同じような考えを持っているのではないかと……思えてならなくなる……」 「私だって人間は忌むべき敵だって教わったよ? だから私は興味を持った。なぜ人間が忌むべき存在なのか……それを知りたくなったんだ……」 「私は聖職者として未熟なのです。このようなことで自分の信じた理がグラグラと揺れてしまうのですから……」 「それじゃあ……私も淫魔として未熟なんだろうね。私だってかなり揺らいじゃってるもの……人間という存在のイメージが……」 「……………………」 「………………………………」 「はい、今日の問答は終わり! そして、シスターはまたしても祈りの最中に私とくっちゃべる事になったんだから今回も私の勝ちだね♥」 「ひ、卑怯ですよ! いつもはこんな長い問答はしなかったのにっ!」 「そうだねぇ~いつもはイタズラに邪魔されて祈りが出来ない事の方が多いもんね♥」 「そ、それは……」 「シスター? 実は物足りないんじゃない? 今日のおさわり……少ししかしてないから……」 「んなっ!? 何を言って――」 「私はさ……淫魔だからさ……知ってるんだぁ~♪」 「な、な、なにを……ですかっ!」 「実は……シスターは、私にイタズラされるの……大好きだったって事♥」 「っッ!!? あ、貴女って人は主の見ている前でなんて事をっッ!!」 「ゴメンね? でもさ……ほら……私ってば人間の淫欲の高まりに敏感な方だから……分かっちゃうんだよねぇ~~シスターが実はこういう趣向が好きだってコト♥」  足裏に這わしていた手が今度はカカトの端をソワソワっと指先でなぞり上げてくる。その刺激は足裏への刺激よりもむず痒く、私の目覚めさせてはならない感情に揺さぶりをかけてくる。 「うひぃっっっ!!? ちょ、気色悪いっ!! 触らないでっ!!」 「言葉では拒否してても……身体は正直なんだよねぇ~~シスターは……」 「うぐっ!! な、な、なにを言っているのですか! 聖職に就いている私がその様な事思う訳が……」 「でも……今……ウズウズしてるでしょ? 胸の奥の方が……」 「っっ!!?」  リッカの表現した言葉通りの疼きが……今まさに私の胸奥の方で湧き起ってしまっている。  ウズウズ……ジュクジュク……と、何かを期待するかのような疼きが、私の意志とは無関係に高まっている。 「どう言い繕っても……人間である以上……色欲っていうのは存在するんだ……。それが、純真可憐で清楚なシスターであっても……ね♥」  リッカの指がカカトを離れ足首をなぞり、ふくらはぎの部位を指先で触りつつ膝裏へと登り詰めていく。 「くっ…………うぅ……」  膝裏に辿り着いた指はその部分を少しだけコショコショっと刺激したかと思うと、すぐさま移動を再開し更に上の方へと登り始める。  太腿の裏を通過し、尻肉の上をなぞり……腰のくびれをこそばしながら背中の筋へと指を這わせていく。  指先がそのルートをなぞっていく過程があまりにもこそばゆくて身体をクネクネとくねって嫌がるそぶりを見せるが……一方でそのじれったい刺激が、私の胸の奥で燃えそうで燃えきれない悪しき欲に油を注ぎ燃え上がらせんと誘いをかけてくる。 認めてはいけない……主に身を捧げている私が、淫魔の誘惑に負けるなどあってはならない。  ましてや……彼女は淫姦で私を誘惑しているのではない。子供の悪戯のような刺激を繰り返して揺さぶりをかけているに過ぎない。  このような行為など、昼間の子供たちとの戯れでいくらでも受けてきたはずだ。  元気に……健やかに……皆が笑顔になるようお互いやり合ってきた戯れではないか……  そんな純粋な戯れの行為に欲情など……してはならない! してはならないと……思ってはいるのだけど……  薄暗くなった教会……裸になった私……淫魔の悪戯……という何とも怪しいシチュエーションが、私の本来備わった性への渇望を花開かせてしまう。  性といっても……子を宿したいとか……子孫繁栄に勤しみたいとか……そういう真っ当な理由が芽生える訳ではない。  もっと下劣……もっと卑猥……自分でも忌み嫌っていたあの感情が沸々と湧き上がってきて私を苦しめるのだ。 「認める? 自分が本当は不純な思いがあって裸になってるって……認めちゃう?」  本来なら認めなくてはならない。どんなに自分の中で否定しようとも……懺悔の前に胸を高鳴らせていたのは事実なのだ。  それは懺悔に対する高鳴りなどではなかった……彼女が……リッカが現れる事を“期待”して踊った鼓動なのだ。 「み、認めません! 私は純粋に懺悔がしたくて清身になっているのですから!」  しかし、彼女に本音を零すことは憚られる。淫魔に……魔族に……そのような弱みを見せては付け込まれるのがオチなのだから……。 「そう? 認めないの? それじゃあ……今日はここまでにして帰っちゃおうかなぁ~~?」 「えっ!? か、か、帰る?」 「うん♪ いつもはサービスでシスターの事こしょぐって楽しませてあげてたけど……今日はもういっかなぁ~って」 「そ、それで満足なのですか貴女は! いつも自分勝手に自慰に耽って汚らわしい体液を撒き散らして帰るというのに……今日はそれはしないと?」 「うわ、そんな言い方酷くない? アレは私なりの神聖な儀式みたいなもんなんだよ? シスターのエロい笑い声を聞いて欲情しちゃった私の清い淫液なんだから……教会をそれで清めるには良い儀式でしょ?」 「淫欲まみれのソレが清いわけないでしょうが! いつも掃除している私の身にもなってください!!」 「アハ♥ じゃあ……今日は掃除しなくて済むね? これ以上ヤらないんだし……」 「う、うぐっ……ほ、本当に……帰っちゃうんですか? 何もせずに?」 「……私が帰るのは……嫌?」 「べ、別に……嫌ではないというか……邪魔さえしなければ……居て貰っても困らないというか……」 「私が居れば邪魔はするよ? だって暇だもん……」 「くっ! 暇だから邪魔をしていたんですか? 貴女は……」 「まぁ……それ以上の感情が無いって言うと……嘘になるかなぁ~」 「それ以上の……感情?」 「私ってさ……淫魔のクセに男と交わるのが嫌いでさ……生まれた時から“可愛い女の子”にしか興味がなかったわけ……」 「へ、へぇ~~淫魔の中でも変わり種なんですね……貴女って……」 「それに加えて、私の欲情するスイッチが女の子の“笑い顔を見る”ってとこにあるから……故郷では異端児扱いされてるんだぁ~」 「笑顔が好きなのは褒められる事でしょうが、それが淫欲に繋がっているというのは……如何なものでしょう……」 「こういう変な性癖を持った淫魔の事“変癖種”って呼ぶらしいんだけど……まぁ、私はあまり気にしないことにしてるんだぁ~」 「女性の笑顔が好きだから……あ、あのような行為を行って無理やり笑わすと……? ふぅ~ん、流石は魔族ですね……自分勝手にもほどがあります」 「えぇ~? だって無理やり笑わせるのが良いんじゃん♥ 私が支配しているっぞぉ~ってなれるし……」 「そういう支配欲が強いから魔族は……」 「あぁ! また人種差別する気ぃ? 魔族は関係ないよ! 私がそうしたいってだけで……」 「……むぐ! そ、そうですね……それは偏見でしたね……人間だって支配欲が強い生き物ですし……魔族だけがそうであるとは限りませんよね……今の言葉は取り消します」 「フフ……素直でよろしい♪ それじゃあ……身体の方は?」 「はい?」 「身体の方は疼いて仕方がないんでしょ? 私が“帰る”って言ったことで……」 「なっ!? そ、そ、そのような……ことは……」 「なんでそっちの方は素直になれないかなぁ~? 認めちゃえば楽になれるよ?」 「わ、私は! そのような堕落した精神を自制して主にお仕えするのが仕事です! 曲がり間違っても淫欲に流されるような事はあってはなりません!」 「その自制心……ポッキリ折ってみたくなっちゃうなぁ~~」 「んなっ!? なんて事を言うんですか貴女はっ!!」 「神に仕えるよりも楽しい事がこの世の中には沢山あるんだよ? その一端を……一緒に楽しまないかい?」 「あ、悪魔の誘惑です! そのような戯言に……耳を貸すわけには……」 「シスターってば……毎夜毎夜私にくすぐられて……実は“笑わされる事”に快感を覚え始めているんでしょ?」 「は、はぁ? 何を言っているのですか! その様な事があるはずが……」 「……ワキぃ♥」 「はひっ!? あっ……う?」 「足の裏ぁ♥」 「あぐっ! うぅぅ…………」 「ほら……触ってもないのに、責め場所を口に出されただけで淫欲が高まってきてる♥」 「た、た、高まってません! そんなわけ……」 「ワ~~キぃ♥ コチョコチョぉ~~♥」 「ひっっ!?」 「足の……裏ぁ~~コチョコチョコチョ~~♥」 「ひぃぃぃっっ! や、やめて!!」 「ほぉら……また反応しちゃってる♥ まだ触っていないんだよぉ? それなのになんでそんなにモジモジしちゃってるのさぁ?」 「だ、だって……想像しただけで……気色悪くて……んんっっ……」 「私の細い指で……シスターの綺麗な腋をソワァ~って撫で上げたら……どんな悲鳴を上げるんだろうね?」 「ひっっ、ひぃぃっっ!!」 「シスターの敏感な足の裏を……私のこの長く尖った爪の先でコソコソ~って引っ掻いてあげたら……どんな笑い声を上げてくれるだろうね?」 「あひっ!? はひぃぃぃっっ!!」 「どうしたのシスター? さっきより腰が落ち着かない様子だけど? なんでそんなにモジモジしてるのさ?」 「も、モジモジなんて……してません! わ、私は……そのような悪魔の誘惑に惑わされたりは……」 「へぇ? そう? じゃあ……触っちゃおっかなぁ~~? シスターの弱いトコ♥」 「か、か、勝手にすればいいでしょう! 私は……もう……貴女が悦ぶような反応はしたりしません!」 「ホントかなぁ~? じゃあ……お言葉に甘えてぇ~~まずはココを~~♥」  リッカが私の背後に回り込みそっと両手を私の背中に近づけさせる。  私はギュッと目を瞑り心の中で自分を律する言葉を唱え続ける。“今日こそは負けてはいけない、今日こそは反応してはいけない”と。しかし…… ――ソワっ♥ リッカの爪先が私の背中の敏感な皮膚に僅かに触れただけで、私は情けない悲鳴を口から漏らしてしまう。 「ぃひぃぃぃっっっひっっっ!!?」  背骨を中心としてその左右の背皮膚を爪の先でツッ~っと掠るように撫でるその刺激は、片膝をついて格好正しく祈りの姿勢を取っていた私の腰の力を無作為に奪っていく。  腰に力が入らなくなった私は。上半身をクネクネと海中に揺らぐ海藻の様に揺らし、全身を駆け巡ってくる“こそばゆい”という感触に敏感に反応してしまう。 「あれぇ~? シスター? 祈りの姿勢とやらが崩れてきてるけど良いの? 神様が見ているんでしょ?」  リッカに言われるまでもなく、主の御前で祈りの姿勢を崩すとは言語道断! 私は崩れてしまった上半身を再びしっかりと立て直し手を胸の前で組みなおして静かに目を閉じる。 「おっ! 良いねぇ~~♥ 今日は私の悪戯に抵抗しようと必死になってるじゃん♪ そういうシスターを邪魔するのが……私の楽しみなんだよねぇ~~」  爪の長い指先で私の背中に大きな円を描いて刺激を広げていくリッカだったが、私が祈りの姿勢を正しなおして対抗すると更にキワドイ刺激を送り始める。 (※続きは誠意製作中です)

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