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1:私の愛した“普通の日常”は今日、壊れていくわけで…… 「ねぇ、お母さん~~お願い! 買ってよぉ~~」 「たっくん……そんな気持ち悪いの買っても遊ばないでしょ?」 「遊ぶよぉ! 絶対遊ぶ! だからね? お願いィ!!」  平日のうららかな昼下がり、近所の駄菓子屋の前を通り過ぎようとするとお店の前で玩具をねだる子供とそのおねだりに呆れながらもカバンから財布を取り出している優しいお母さん……私はこういう何気ない平和な日常を見るのが好きだ。 平和だなぁ~っという出来事を見て、平和っていいよなぁ~~としみじみ感じながら幸せな息を一つ吐くのが堪らなく心地よく好きなのだ。 何というか……いつもの日常と言うか……“普通の日常”に自分が存在しているという感覚を感じられる瞬間と言うのが私の幸せのバロメーターでもあるのだ。 だから何人たりともこの普通の日常を壊しに来る輩は絶対に許されない……  例えばそう……今私の目の前にいる少年(少女?)がいきなり見ず知らず私に「お姉さんさ、残念だけど今日……死んじゃう運命だよ?」などと物騒な事を言い出したら……私はその少年(少女?)を全力でぶん殴ってこの世の果てまで吹き飛ばし、出会ったこと自体を無しにしてしまいたくなると考えるくらいに私は“普通”を愛している。  普通は素晴らしい……普通の日常を謳歌する事こそ私の全てなのだ!  目立たず……  波風立てず……  相手の意見に反論なんてせず……  常に周りの空気感を読んでその場に馴染むように自分を合わせていく……  さしずめ現代を生きる忍者のように、自分の個性を押し殺してでも守りたいと思った平穏普通な日常……  その愛すべき普通の日常に……彼(彼女?)は何の予兆もなしに現れた。  必死にコツコツと作り上げてきた普通の女子大学生という日常を、その彼(彼女?)は悪びれる様子もなく勝手に破壊する言動を私に突き付けた!  冗談であるなら迷惑千万! 嘘であるなら、質が悪い!! もしもそれが事実であるなら……尚更質が悪いにも程がある!  一体何だというのか? 私が彼(彼女?)に何か機嫌を損ねるような事をしたり言ったりしたのだろうか? 少なくともヤったという自覚もないし身に覚えも一切ない……。それどころか今日初めて見た少年(少女?)なのだから、そのような悪質な行為を行えるタイミングすらもなかったように思う。  まぁ、自分自身の事は自分が良く分かっているつもりだから、私がそのような“普通”を脅かすような悪戯や行為を行うとは思えない……  っとなれば……彼(彼女?)はなぜ私にそのような物騒な忠告を行ったのか……? 謎が謎を呼び……私の頭の中は混乱中だ。先程の親子を見て平静と冷静さを取り戻そうと必死になったが……ニコニコと屈託のない笑顔を携えて私の反応を伺う少年(少女?)が発した次の言葉にも衝撃を受けてしまいもはや人間の言語を発するという行為をしばし忘れてしまう。  少年(少女?)はこう言ったのだ…… 「ボクは……お姉さんたち世界の言葉でいう“死神”っていうやつで、人の生死を見届けるっていう役割を担っているんだ……。今言ったようにお姉さんは、後5時間と30分後きっかりに死ぬっていう運命になっちゃってるから……これからどうするかの選択をさせにボクは来たんだよ♥」と……。  何かしらのゲームの設定か何かか? そのゲーム世界の設定をそのまま口から出しているだけなのか、それとも妄想か想像か何かの類なのだろうか? 燕尾服のような子供用の黒い礼服を身に纏い、八重歯をチラチラと口の端から覗かせながらそのように話す名も知らぬ彼(彼女?)の言葉に何一つ現実感が湧かない。何を言っているんだこの人は? と言わんばかりに私は口が空きっぱなしで閉じられなくなっている。 「あ、ゴメンゴメン……そう言えばボクの名前って、教えてなかったよね? まぁ正確には名前なんて付けて貰った事ないから名乗る事も本当は出来ないんだけど……人間って名前が無いと呼ぶのに不便だよね? だからボクの事……今後は“モルテ”とでも呼んで頂戴よ♥」 「も、も、モルテ??」 「そっ! 何だっけ……えっと……イタリアとか言う国の言語で“死”っていう意味らしいよ? 他の国の言葉を名前にしても別に良かったけど……そこの国の言葉が一番可愛らしかったからボクの好みで決定しちゃったよ♪」  イタリアの言葉で“死”を意味する言葉がモルテ……それを名前として呼んでくれと宣う少年(少女?)……一体どういう教育を受ければこんなぶっ飛んだ言葉を口にする子供が育つのか? 親の顔が見てみたい……いや、今すぐその親の元にこの子を引き渡してしまいたい! こんな不気味で物騒な言動を繰り返す子供を私の普通の日常に登場させていてはいけない! 今すぐにでもこの子を目の前から消さなければ! むしろ出会わなかったという事にして記憶からも抹消しておかねば……出来る限り早くっ!! 「でね? 今回は初回の“回避”だから、特別に死の運命の時間を教えてあげたけど……次からは運命までの時間を教えることは出来ないから、それだけは注意してね?」 「う、うん……ご忠告ありがとう(ニコ♥) すごく参考になったわ。もっと話を聞いていたいところだけど……私これから大学の授業が有って急いでいるの♪ ごめんね? また今度お話……聞かせてね?」  私は彼(彼女?)が気分を害さないよう気を付けた言動を取りながらもごく自然にその子の横を通り過ぎようとした。 「あれ? 選択……しなくていいの? 最初だからサービスして30分で許してあげようって思ってたのに……しないって言う事なら最初からマックスで苦しむことになるよ?」  もはや何を言っているのかすら分からない。サービスだの30分だのマックスだの……何処の風俗の話をしているんだ? いや……風俗の話を子供がする筈はないんだから……これもゲームか何かの話なのだろう。いけないいけない……授業の前に心が乱れて私らしからぬ妄想をしてしまった。反省だ…… 「ゴメンね~~次の授業の先生すっごく遅刻にうるさいの♥ だから急いで大学に行かなくちゃ♪ ホントにごめんね~~?」  完全にすれ違うように少年(少女?)の身体を横切り足早にその場から駆けようとする私に、彼(彼女)は振り向かずにクスクスと笑い声を零しながら私に言葉を返した。 「それじゃあ……5時間30分後にまた会う事になると思うから……その時また遊ぼうね~~♥ あ、そうそう! これはボクにとってはどうでもいい事だけどいちお知っておくと面白いだろうから伝えておくね?」 「……次の大川先生の授業は休講になるよ。通勤中に追突事故起こしちゃうんだって……休みになって良かったね、美乃梨(みのり)お姉ちゃん♥ 先生から出されていた課題……終わってなかったんでしょ?」   私はその言葉を聞きハッとなり振り返った。  その言葉には……私の平穏な日常を壊し得る3つの不可解が混ざっていたのだから……  1つは名乗っていない私の名前を言い当てた不可解……2つ目は私の事を知る由もないのに私が大学生であり、かつ私の次の講義予定が大川先生の講義である事を当てたという不可解……  そして3つ目……  私すらも忘れていた……先週先生から出された課題。それが出されたという事を知っているのもそうだが、それを私が“やっていない”と言う事まで当ててしまった不可解……  それら私のストーカーでもやっていないと分かり得ないであろう情報を3つも言い当てた少年(少女?)に、私はそこで初めて得体のしれない不気味さを覚えてしまったのだ。  せめて、その情報をどこで見聞きしたか? という疑問をぶつけるだけはしようと、すれ違いの直後に勢いよく振り返ってみたのだけど……  そこにあの少年(少女?)の姿はなく……代わりに、その少年(少女?)の残り香を含んだ甘く冷たい風が1つ私の頬を撫でるように吹いていくのだけは感じられた。  彼(彼女?)は一体何者だったのだろうか? まさか……本当に死神? イヤイヤまさか! そんな筈はない!  そんな事……信じたくもない!  だって……その……死神と言う存在が本物だとすると……私は……  私は……今日…………  ……死んでしまう運命に……ある……という事なのだから———— 2:這い寄る運命 「なぁ~~聞いとるん? 美乃梨ってばぁ~~」  大学入り口にある掲示板を見て私は愕然とした。  掲示板にはあの少年(少女?)の零した予言を的中させたかのように“大川助教授の講義『近代科学と運命論A』『近代科学と運命論B』及び『確率国家論A』の講義は臨時休校となります”という張り紙がA4サイズの紙にしっかりと明記されていた。 「おぉ~~い? 美~乃~梨ぃ~? そんなに大川の講義なくなってショックやったんかぁ~~? あんたこの講義……嫌いやって言うてたのにぃ~?」  青い顔をして唇を震わせている私に、遊佐 和泉(ゆさ いずみ)が、心配半分、面白がり半分な表情で顔を覗き込んでくる。  和泉は私がこの大学に入学して始めて出来た友達…… 入学式の式場でたまたま隣同士に座ったというだけの縁であったが、話をしていくうちに意気投合し……今では同じ講義を履修して同じ空き時間を作って食事や遊びに行くという仲にまで進展してしまっている。  私の……引っ込んで閉じ籠ろうとする性格とは真逆で、明朗解決が地を行くような明るい性格なのが和泉だ。 長い黒髪を野暮ったく腰まで伸ばしている私と違い、和泉は大学生の女子らしく明るい茶色の髪を肩に掛からないくらいのショートで切り揃えて前髪もその大きな目に掛からないよう短く切られてある。服の趣味なんかも紺や黒のジーンズとか真っ白のカッターシャツを好む地味な私とは正反対で明るい春らしいカラーのワンピースを着ていたり、薄く淡い色合いの短いスカートなんかを着こなしたりしている。 まさに元気のあり余る彼女らしい見た目なのだが、その性格も見た目と差異なく活発でいかにも関西人らしい乗りの良さを振りまいている。  なんでこんな真逆の性格の彼女が私なんかと友達に? と何度も疑問に思ったが……今ではそれを考える時間こそ無駄で馬鹿馬鹿しいと思えるほど彼女とは仲良くさせて貰っている。  きっと……性格が逆だから上手くいっている部分はあるのだろう…… 「同じような性格が集まれば……疲れるんだわ~」って彼女が話していた事もある。関西の高校では……きっとそういう感じだったのだろう。だから大人しい性格の私に居心地の良さを見出してくれたんじゃないだろうか?  私も彼女のワチャッワチャする賑やかさには自然と笑顔を浮かべることが出来る。一緒に居て心地良いし、楽しい。  出来ればこのまま……二人で卒業まで楽しく過ごしていきたい……と思えていた頃に、今日のコレである!  せっかく……自分なりの『大学生の普通』が出来上がってきたところだったのに! それを邪魔するようにあの子供が現れ、普通に過ごす筈だった一日を非日常と言う特異点に変えていった……  冗談じゃない! あんな子供の言葉に……折角出来上がりつつあった“理想の日常”を壊されてなるものか!  何としてでもあの子の言葉がイカサマであるという事を証明しなくてはならない! 死神だとか死の運命だとかそんなものを認めてはいけない! そんな非現実的な言葉が私の“普通”を汚していいはずがない!! 「ねぇ和泉!」 「お。おう!? なんや?」 「この貼り紙……何時頃に貼ってあったか分かる?」 「んへ? これが貼られた時間? いや……分からへんけど? うちが学校に来た時にはすでに貼ってあったしなぁ~」 「じゃあ、和泉は何時頃学校に来た?」 「うち? うちは……えっと……」 「……………………」 「購買部に用事あって早目に来たから~~10時半頃くらいに来たわな……」 「その時には……貼ってあった? この紙……」 「う~~ん、ハッキリとは見ぃひんかったからこれが貼られていたかと言われれば分からんけど~~何かしら貼ってあったのは見たで? 知らせの紙が貼られてあるなぁ~って遠目には見たから……」 「そっか……ありがとう……」 和泉の言葉を信用するなら、この貼り紙は10時くらいの時間にはもうすでに貼ってあった…… 私とあの子供が出会ったのが11時過ぎくらいだったから……この貼り紙を私より先に見て情報を得ているという可能性は往々にしてある。  もしも、あの少年(少女?)の親とか親戚とかそういう人が私の事を最初から知っていて……なにかしらの良からぬ勧誘や事件に巻き込もうとして計画を立てたとしたなら……この貼り紙を見て私を脅かす材料を思いついたという可能性も出てくる。  休講の理由なんて事務所とかに問い合わせれば教えてくれるだろうし……事故を起こしてしまったという情報も簡単に手に入るだろう……  私の事を調べたのだったら私の名前なんてどうせ知っていただろうし……あの子が私の名前を口にしたのも説明が付く。  多分……悪い大人に利用されたか何かで私の前に出てきたのだろう。そして計画通りに私を怖がらせ……「死の運命を回避したくばこのツボを買いなさい」とかなんとか言ってくるに違いない! そういえば……後でまた会いに来るとか来ないとか言ってた気がする! そういう事だ……そういう詐欺的な何かに私は今絡まれているのだ!  そうと分かれば……もう怖いものはない! 詐欺だと分かっているのであれば……脅されてもすぐに警察に言えば解決できるはず!  私はそのように確信を持ち、自分を安堵させつつ再び和泉の方を向く。 「和泉! 今からカラオケ行かない? ちょっとそこで話したいことが有るの!」 「はへ? あ、あぁ……それ……うちの方から言おうと思ってたことやで? どうせ今日の講義はこれだけやったし……暇潰しに誘ったろって思うとったわ~~。しっかし……美乃梨から誘ってくれるようになるなんて……なんや、嬉しいなぁ♥」 「行きましょう! ほら! 早くっ!!」 「おぉ~~今日は積極的やなぁ~~? 気合入ってるやん♪ ええでぇ~今日も点数勝負で罰ゲームでも賭けよかぁ?」  私は……誰が何処で聞いてるかもわからない大学の広場から離れ、和泉をいつも行くカラオケ屋へと誘い込んでいった。  本当は彼女を巻き込むつもりではなかったけど……何も知らないよりも自分の置かれている状況を知ってもらって少しでも警戒していてもらった方がお互いの安全のために良いと判断した結果……話す事を決意した。  私の尋常じゃない剣幕の話口調とあまりにも非現実的でぶっ飛んだ考察を聞いて和泉は最初こそ引いていたようだったけど……「私の友達である和泉だってターゲットになる可能性があるから気を付けて!」と真摯に告げると、彼女は唸りながら様に頭を捻らせて、僅かに頬を赤く染めながら私を見直した。 「そっか……うちの事も気にかけて……言ってくれたんやね? 今のぶっ飛んだ話……」  私は力強く頭を縦に振った。 「なんや……ちゃんとうちの事“友達”やと思ってくれとったんやな? それはメッチャ嬉しいで……」  そう言われて……そういえば自分の口から和泉に“友達”と言う言葉を告げた事がなかったことを思い出す。  普段は和泉の方が口を開けば“親友や親友や”と言葉の安売りを受けていたから、あえて自分からは言わずに秘めたままにしておこうと決めていた……と、勝手な理由付けをしていたが……実際の所は今更そのような言葉を口にする方がなんだか気恥ずかしい……というなんとも不甲斐ない理由が強かっただけでそれが故キチンとは口に出したことはなかった。  彼女は頬を赤らめながらも顔を下げ手を太腿に挟んで可愛くモジモジしている。よほど私が零した“友達”という言葉が嬉しかったのだろう……いつもの元気な彼女とは真反対の照れて恥ずかしがるというレアな姿を目の前で拝むことが出来た。  とは言いつつも……自分も思わず口から出たその思いがけない言葉に改めて気恥ずかしさが込み上げ、顔を真っ赤にして横を向いてしまうという……気まずい告白をした初々しいカップルのような体裁をお互いに取ってしまう。 「嬉しいけど……犯罪が絡んでいるんなら……早う警察やら親やらに言った方がええんちゃう?」  和泉のもっともな意見に、私はチラリと彼女の顔を見て小さく頷きを見せる。 「うん。そう……だけどさ……」  思ったより恥ずかしさが強くなりすぎ先程までのイケイケ感のある態度が出来なくなった私は、和泉の顔を見てはすぐに横を向くという……なんとも弱々しく普段以上に恥ずかしがり屋な小動物に成り果ててしまった。 「でも……ほら……まだ……何もされてない訳だし……証拠だって……何も……ないし……」  徐々に自信を無くしていつも以上に弱気になっていく私を見て、和泉はハァと息を吐き机に置いてあったマイクの片方を私にポンと投げて渡す。 「あ、へ、んえ!?」  私はワタワタしながらもそのマイクを受け取り恐る恐る和泉の方を向き直す。 「まぁ、何かあったとしても“親友”のうちだってついてるんだし! あんたは何にも気にせんでええわ♪ ちょっとでも怪しい動きをする奴がおったらうちがすぐに通報してやるさかい、今は安心して一緒に歌い明かそうやないか!」  気が弱くなった私を無理やり元気づけようと和泉がいつもの明るい笑顔で自分の持ち歌を入れ始める。  私はその元気のあり余る彼女を見て、ホッと胸を撫で降ろし彼女に誘われるままマイクのスイッチをオンに切り替えるのだった。  結局……なんやかんやと歌い込んでカラオケ屋から出る頃には時計も16時を回っており、西の空は薄っすらと茜色に染まりかけているのが見て取れた。 「今から帰れば……17時半前には家に着くやろ?」  不意に和泉がなにやらトーンの下がった声で私に言葉を零す。 「えっ? う、うん……地下鉄で二駅だから、もっと早く着くかも……」  テンションの高いカラオケ合戦を繰り広げた後遺症かすっかり昼の出来事を忘れかけていた私だったが……和泉の方はちゃんと覚えていたようで、私に告げられた“17時半”という運命の時間をあえて私に語り掛けた。 「だったら! 大丈夫やんな? 美乃梨が死ぬなんて……そんな事……ありえへんよな?」  私は一瞬あっけにとられ間を置いてしまうが、すぐにその言葉に頭を縦に振って和泉を安心させようと笑顔を浮かべて見せる。  私が懸念した……何かしらの犯罪絡みに巻き込まれているという現実的な可能性よりも、和泉の方はオカルトチックな運命の予言の方を気に居している様子だ……  その不安げな声と顔を見ると……私も段々その予言めいた言葉が不気味に思えてならなくなる……  出来るだけ“現実的”な考察をしてみたはずだったが……やはりこの死の宣告は不気味以外のなにものでもない……。  出来れば考えたくはない……誰かの他愛ない悪戯であったり……もしくはまだ犯罪絡みの危機が迫っているというほうが現実感があって対処も出来そうな気がする。  まさか……あの子供が本当に死神とか言うやつで……本当に私が死の運命にあったとすれば……  今更ながらにあの子の言ったままの現実を考えてしまうと……背筋に気色悪い風が吹きつけてきているかのように寒気を催しゾッとしてしまう。  そんな筈はない……絶対にそんな筈は……と、自分に言い聞かせるが……一度纏わりついてしまった死の恐怖はそうそう払拭できるようなものではない。  しかし、和泉は……和泉にだけはその気持ちを悟らせてはいけない……  大丈夫だと……自分が何も恐れてなどいないんだよと、笑顔を見せて応えてあげるしかない……  心配だから家まで付いていく! なんて言いそうだから……  彼女がこの後居酒屋のバイトが有る事は知っている。その時間がギリギリに迫っている事も……  きっと、私の不安な気持ちを察して時間ぎりぎりまでカラオケに付き合ってくれたのだ……その気持ちが分かっているから……尚更心配をかけたくない。何かしらが起こるかもしれないという現場に遭遇させたくもない。巻き込みたくないんだ……彼女だけは……。 「ねぇ、やっぱり……うち……美乃梨の家まで——――」  だから、私は彼女のこの優しい言葉も遮って首を横に振った。  私の事は大丈夫だから! と強く訴えかけるように目に力を込めた。 (※続きは順次書いていく予定ですのでもうしばらくお待ちくださいませ)

Comments

Anonymous

この先の展開が気になります!

ハルカナ

ありがとうございます。いちお先の展開もプロットは出来ているのでいずれ書き上げてアップしたいと思います🎵