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6:地獄の入口一歩前 「ほ~~ら、明日香ちゃぁ~~ん♥ 笑って笑ってぇ~? コチョコチョコチョコチョコチョコチョ~~♥」  鳥の羽根を両手にそれぞれ持った綾ちゃんが、私の裸足の右の足裏を羽根先でカサコソと撫で回しくすぐったい刺激を意地悪に送り込んでくる。 「ぅぎっひぃぃぃっっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、だひゃあぁぁははははははははははははははははははははははははははは、ンギッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ、うへひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇひぇ、かはっはははははははははははははははははははははははははははははは、ひぃ、ひぃぃっっ!!」  その刺激から逃げることができない私は、口角を大袈裟なほどに釣り上げて大音量の笑い声を吐き出してしまう。 「道具に頼るなんてまだまだ甘っちょろいわね、綾は……。このバカ女の足裏なんてこんな風にぶっ壊れるくらいにくすぐってあげればいいのよ! こんな風にねっ! コ~チョ、コチョコチョコチョ~~!!」  綾ちゃんのくすぐりがある程度続いて徐々に勢いが弱まっていくと、私を休ませないとするように理子先輩の魔手が反対の左足を激しくくすぐり始める。 「ギャハッッッ!! フギャァーーっハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、うひぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! 先輩っっひひひひひひひひひひ!! りご先輩っっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、それダメっっ!! そのくしゅぐりはだめぇぇぇへへへへへへへへへへへへへへへへ!! うひぃぃぃぃぃぃぃひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひっひ!!」  左の手のひらを私の足先にあてがって足を反らすように力を加え右手を足の土踏まずに密着させ、まるで蚊に刺されて痒くなった箇所を掻きまくるかのようにガリガリと爪先で力強く引っ掻き回す。その刺激はお腹の底に溜め込んでいた笑いを搾り取るかのように口から強制的に大笑いを吐き出させ、疲れ果てていた私の身体を更なる疲労を鞭打っていく。  理子先輩のくすぐりは本当に容赦がない。  私がいくら笑い狂っても一向にくすぐりの手を緩める気配を見せない。  咳き込んでいようが、窒息感に苦しんでいようが一切の慈悲など見せず延々と私の足裏をこそぐり回すことに執着している。それはもう……鬼の面でも被っているかのような凶悪な睨み顔で……。 「だぁぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは、ゆるじでぐだざいぃぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! ぐるじいですぅぅぅふふふふふふふふふふふふふふふふ、本当にぐるじいぃんですっでぇぇぇっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへ!! ゲホゲホ、ゲッホ、ゴホっっ!!」  私がこんなにも必死に懇願しても理子先輩は話を聞いてくれようとはしない。むしろ、更なる責め苦を私に与えるために無慈悲な命令を綾ちゃんに出してしまうほどだ。 「綾、何をボーっとしてんのよ? こんなやつに休みを与えなくていいから、もっともっと大笑いさせてやりなさい!」 「えぇ? でも理子先輩ぃ……明日香ちゃん苦しそうに咳き込んでますよ~? 少しくらい休ませたほうがイイのでは?」 「そんなもの演技に決まってるでしょ! 悪知恵の働くこの女のことだから、責め手を同情させようと大袈裟に振舞っているだけよ! そういうズルい作戦に責め手がはまってしまったら後で舐められる事になるわ! あの責め手は甘いだとか、演技も見抜けない馬鹿だって思われる事になるの!」 「な、なるほどぉ。勉強になります!」 「拷問は最初が肝心よ! 最初こそ徹底的に責めきるの! もうこんな苦しみ二度と味わいたくないって、心の奥底に刻み付けなきゃ効果が薄くなるわ!」  確かに……理子先輩の言っていることは間違いではない。というかよく見抜いていらっしゃる……。  この咳き込みも、この甲高い笑い声も……実は、少し盛って演技を行っている。 しかしこれは“演技ができるほどの余裕がある”という悠長な理由で行っているわけではない。私の本能が“くすぐり責めの恐怖”を覚えているから過剰に反応してしまっているのだ。 以前、私がこの部室で『生徒会のスパイ』として疑われた際に行われたあの拷問を……私の体はしっかり覚えている。覚えているがゆえ、その先の展開も想像ができ……なお怖い。 あの……延々と洗面器の水に顔を無理やり浸けさせられているかのような窒息感……。笑い過ぎて酷く痛んでくる肺やお腹の筋肉……。いつ終わるかも分からない……いつ休ませてくれるかも予測できない……ひたすらくすぐられ無理やり笑わされて苦しまされ続ける絶望感……。 それらを味わいたくないから、体が拒否を示すように大袈裟に反応を返してしまう。 笑いのトーンも1段高くなり、手足の暴れ方も必死そのもの……咳き込んで同情を誘おうともしてしまう……。 「ほら……そんな物に頼らないで手で直接くすぐってやりなさい! もっともっと笑わせまくって気を失うまで責め立ててやるのよ!」  しかし、理子先輩にはそういう“過剰反応”はすぐ見破られてしまう。これが経験の差というやつなのか? それとも小夜子先輩の入れ知恵なのか……?  まぁ今となってはどちらでもいいのだけど……とにかく理子先輩の手は緩まない。私を1秒でも長く笑わせようと、足裏の弱い箇所を徹底的にこそぐり回していく。  そんな彼女を見て綾ちゃんもニンマリと笑みを浮かべ再び羽根を私の足裏へと運び直す。 「先輩~♥ 確かに手で直接くすぐるのは物凄く効くと思いますけどぉ~手だけじゃ刺激の質が変わらなくて……飽きちゃうと思うんですよ~♥」  口元を緩ませながら鳥の羽根を足のカカト付近に近付けた綾ちゃんは、可愛く「えいっ♥」と声を発したかと思ったら羽根先でカカトから足指の先までを一直線になぞって新たな刺激を私の足裏に与えた。 「ぐひぃぃぃぃぃぃっっっ!!? はひっ、あひっ!! や、や、やめで! 綾ぢゃんっっそれやめでぇぇぇ!!」  カカトから土踏まずを経由し拇指球を登って足の中指の先までを一気になぞり上げた羽根先の刺激があまりにこそばゆくて、私は演技ではない素のリアクションを大きくとってしまう。 「飽きる……か。確かに。2人で同じ責めをしても……確かに刺激に飽きが来るかもしれないわね……」   「でしょう? それに、ずっと強くくすぐり続けるよりも……たまぁ~に、こんな風に羽根の先っぽのところでコソコソ~~って悪戯してあげたほうが、先輩の激しいくすぐりをより引き立てることが出来ると思うんですよぉ~♥」 「アハ♥ あんた中々イイこと言うじゃない♥ 私のくすぐりを引き立てる為の羽根くすぐりかぁ……イイわね、それ♥」 「当然ですぅ♥ 後から貰うご褒美……楽しみにしてますからぁ♪」 「フン! いいわ、気に食わないけど……その本能に素直な性格は嫌いじゃないわ。後で好きなだけイジメてあげる♥」 「やった♥♥」  どうやら……私が責められる裏で、綾ちゃんは理子先輩となにやら取引をしていたらしく……私への責めを躊躇うどころか、積極的に先輩へ助言を呈する始末……。  唯一、私のことを心配してくれそうな人物さえも“あっち側”に買収されているため、いよいよ私が情を訴えかけられる人物というのが居なくなってしまう。  そう感じた瞬間、私の目の前が真っ暗になって、途端に窮屈な空間に押し込まれたかのような息苦しさを味わう。  笑い続けて苦しくなった……という物理的な苦しさとは違う……。仲間だと思ってた唯一の人物が急に裏切って一人取り残され孤独感に苛まれているかのような息苦しさ……それを感じたから、いよいよ絶望に拍車がかかってしまう。  自分をもう……弁護してくれる人は居ないという絶望が、緊張と不安をみるみる増幅させていく。 「さて……明日香。その顔色から見るに、これからの拷問に耐え切れないって感じだが……どうだ? 我々に話しておくことはあるか?」 そんな私の不安と焦りを見て部長が腕を組みながら私の目の前に歩み出る。  「あ、あ、あの! 言います! 正直に言いますから……その……これ以上は……許してください! も、も、もう、耐えられませんっっ!!」  本格的な拷問が始まる前に助け舟が出された! 私はそう思い、必死に部長に命乞いを行う。 「耐えられない……か。なるほど……これ以上の拷問は耐え切れないと言いたいんだな? お前は……」  何を言っても話すら聞いてくれない理子先輩、信じてたのに裏切った綾ちゃん、そして何を考えているか分からない小夜子先輩……この3人にいくら情で訴えかけたところで……糠に釘……責め欲を無駄に掻き立てるだけであることは間違いない。  しかし、部長なら……。この部を仕切る部長を情で落とせれば逆転もありうる。  だって……長なのだから! この部の長なのだからっッ!! 「は、はい!! もう限界です!! もう耐えられません!! 無理なんです!! お願いです……助けてください……お願いですから……」  私は涙を速攻で目尻に溜めそれをドラマチックに一筋頬に零していき、部長の良心に訴えかけようと涙声になりながら必死に言葉を紡いだ。  演劇部が見れば真っ青になるほどのリアルな演技を私はしたつもりだ。まぁ、限界であることは間違いないのだから演技じゃないと言われれば否定はできないが……。 「私は確か……お前に教えてやったよな? 初日に……」  そんな演技派な私の顔を部長は覗き込むように鋭く睨み、頬に流れた涙を本物なのかどうかを確認するかのように指で掬って自分の目の前に運ぶ。 何やら雲行きが怪しい……。口調が何やら不穏な陰りを見せ始め、私はドクンと大きな鼓音を胸に響かせる。 「は、はい?」  私の半分演技の懇願に対して、嘘の部分を見抜いているかのような鋭い視線を向ける部長は、指についた涙をペロリと舐めたかと思うとさらに低く威圧するような声を響かせながら…… 「苦痛から逃れようと足掻く被者が吐く言葉が、どれほど信用できないかを……」  そう冷たく言い放ち私に背を向けまた距離を取ろうとした。 「んまっっ、待ってくださいィィっっ!! 本当に本当のこと言いますからっッ!! 信じてくださいィィ!!」  部長の言葉は確かにこの部を訪れた初日に言われたセリフだった。 確か……拷問を受けた被者は、苦痛を受けたくないが為にあらゆる手段で情に訴えかけてくるもの……とか説明してもらったような気がする……。 それは、間違いなく今の私の状況と相違ないじゃないかっ!? 苦し紛れに演技を入れたというのは……今の私じゃないかっ!!  苦痛を受けたくなくて必死に足掻いている姿とは……今の私……。  そこまで悟ると、部長はクックックと笑い、恐怖に顔を青ざめさせた私の顔を再び見て更なる追い打ちの言葉をかぶせていく。   「お前の“秘密にしようとしてる事”は、これからたっぷり絞った後に聞き出してやるから安心しろ」  背筋を凍らせるような冷たい言葉が放たれ、私の顔面も瞬時に恐怖で凍りつく。 「あ、あの……し、し、絞った……後というのは……どういう意味で……?」 「決まってるだろ? ご・う・も・ん・の後って事だ♪」 「はひぃぃぃっっ!! ヤですっ! 嫌ですぅぅぅぅ!! 助けてくださいよォォ部長っっ!!」 「まぁ、その……秘密なんちゃらの事は置いておいたとしても……どちらにせよ、理子の手は止まらんと思うぞ?」  「ふぇ??」 「お前を苦しませたくてウズウズしていたみたいだからな……昨日から……」 「ひぃっっ!? り、り、理子せんぴゃい??」  綾ちゃんの羽根と理子先輩の手が再び私の足裏へと運ばれ、これからの長丁場になるであろう拷問の準備運動をするかのようにくすぐるフリを始める。 「だから、ほら……私が言いたかったのは、理子に対して“何か言っておくことはないか?”という意味だったんだよ……。素直に謝っておけば少しは同情を買えた可能性はあっただろうが……」 「部長、そんな純粋な心をこのバカ女が持っているわけ無いじゃないですか。どうせ、助かりたいがために部で一番影響力のある部長に泣き付くはずだって……小夜子先輩も言ってたじゃないですか♥」 「ハハ……まぁ、シナリオ通り……ってやつだな。明日香よ……残念だがお前への助け舟は出せそうにない……」 「そ、そ、そんにゃっっ!! 待ってくださいィィ!! 理子先輩っ、部長っっ待ってぇぇ!!」 「あぁ~あ、残念ね……素直に私に謝っていれば、少~しだけ優しくしてあげようと思ってたのにぃ~♪」 「そ、それは絶対にないです! 理子先輩が手を抜くなんて……絶対有り得ませんんっっ!!」 「何よそれ、まるで私が血も涙もない鬼だとでも言いたげな言葉じゃない。酷いわ~~傷つくわぁ~~♪」 「だ、だって! いつも容赦してくれないし! どれだけ謝っても許してくれなかったじゃないですか!!」 「それは、ほとんどあんたが原因でしょうがっ! あんたがわざわざ踏まなくていい地雷を踏んで回って逆鱗に触れまくるのがいけないんでしょっ!!」 「あうっっ……うぅぅ……」 「言わなくていいことをうっかり言ってしまう、一言余計だと思っていてもその余計な一言をつい呟いてしまう……。そういうユルユルでガバガバな脳みそに育ったから私のことも素直に敬うこともできないんじゃないの?」 「うぐぅ……そ、それは……」  理子先輩を先輩として敬うという部分に関してはかなり努力しないと難しいと思うのだけど、余計な一言を言ってしまう事や、言わなくていいことを言ってしまうというのは確かに昔からの悪い癖だと自覚している。  親や先生に叱られる時も、ただ叱られっぱなしというのが我慢できず……揚げ足を取ったり、逃げられそうな口実を探して言い訳をしたり……100%自分が悪いにもかかわらずそういう事をついついしてしまって相手を更に怒らせてしまうことが多々ある。  自分でも直さなくちゃいけないってよく思ってはいるんだけど、自分が責められる立場に置かれるとどうしても感情的になってしまって……「言い返さなきゃ!」とか「負けちゃいけない!」なんて思ってしまう。  今だってそうだ。  理子先輩の小生意気なニヤケ顔にガツンと言い返してやりたいという衝動が大いに湧き上がっているところだけど……それをヤってしまうと彼女の言った事を体現することになると同時にドヤ顔されながら罵倒されるという未来しか見えてこない。だから悔しみを表情に乗せて睨むことしかできない。悔しいかな拘束されている身の上ではそれくらいしか許されないのだ……。 「ほ~ら、理子ちゃん? そんなに明日香ちゃんを虐めちゃだァ~め♥ それよりも……拷問の続きを進めちゃってよぉ~♪」 「そうですね……私たちの気分を高めるためにわざわざ時間を割いて言葉責めを始めたつもりだったけど……綾も私も思いのほか高まる結果になりましたし……そろそろ本格的に責めましょうかねぇ~? このバカ女を……♥」 「はい♥ 綾も……早く責めたくてウズウズしてますぅ♥ 先輩っ! 早くヤッちゃいましょうよぉ~♥」  いやらしく羽根先をユラユラと揺らせながらくすぐる真似をして屈託のない笑顔を浮かべる綾ちゃんに対し、顔はまんざらでもない表情を浮かべつつ言葉では「しょうがないわねぇ~」などと呆れた言葉を零す理子先輩……。2人の手が合図も交わさず同時に私の無防備で哀れな足裏に再び近づいてくる。  私はそれに抵抗の言葉を発したいとは思ってはいたが、安と恐怖に頭の中は塗りつぶされ訴えるべき言葉が整理できずただただその2人の手をゴクリと唾を飲んで見届けることしかできない。  逆手に構えワキワキと指先をくねらせながら触られる刺激を想起させようとする理子先輩の手つきと、ワザと羽根先を揺らしてくすぐるフリをしてみせる綾ちゃんの握る羽根……それらが私の足裏に僅かに触れ始めると、そこから私の地獄が鮮やかな笑い声とともに幕を開くのだった。

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