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5:自白  結局……私が耐えられた時間は僅かに10分程だった。  全身を襲う信じられないくらいの痒みに白目を剥いて悶え、汗も涙もヨダレも垂れ放題に垂らしながら思い返すだけで恥ずかしくなるくらいに無様な醜態を晒しながら何度も秘密の告白をしてしまった。  許されるためだったら何度でも……同じ言葉で、生徒会長の肉声を収めたテープのありかとそれを言わせるに至った経緯を繰り返し叫んだ。  最初は私の自白など聞く耳を持たないという態度をとっていた玲美さん一同だったけど、私のあまりの発狂ぶりに“やりすぎた”と思い始めてくれたのか、テープを手中に収めると約束通り痒みを抑える薬を塗ってくれて……私は無事に夜通しの痒み責め地獄を迎えずに済んだのだった。  私の拘束を解いた後……玲美さんは、実に悪役らしい捨て台詞を私に零して部室を去っていった。 「私が持っていったこと部員の誰かに漏らせば、即座に捕まえて今以上の地獄を見せることになるから……」という、身も心も凍りつくような捨て台詞を……。 解放された私がまず行ったことは、証拠の隠滅だった。 あのテープが私のせいで取られてしまったとバレてはいけない! 部員の……特に小夜子先輩に勘付かれでもすればたちまちに私への制裁が確定してしまう。 それだけは避けなければならない!  まずは部屋の掃除……。 私の体液まみれになってしまった椅子を綺麗に拭きあげて、元の位置に戻し、教室の換気も行ってこもっていた匂いも外へ排出する。そしてあのテープ! あの会長の告白の入ったテープと同じものをコンビニで買ってきて元あった場所へと寸分の違いなく置いて身代わりを立てる。 勿論、本物のテープは玲美さんが持ち去ってしまったのだからこっちのテープには何も録音がされていない。だから再生されればすぐにバレてしまう……。そうならないように疑問を持たせないようにしなくてはならない! 特に……あの勘の鋭い小夜子先輩にはっ!!  なんだかんだ証拠を隠滅するのに要した時間は、ゆうに2時間半……。私が拷問を受けている時間より長くそれに時間を費やしてしまった。 時間を使った甲斐があり、部室は拷問される前の状態へと戻すことができた。机や椅子の向き一つとっても、無造作に置かれた小さなゴミですらも元の位置に戻したつもりだ……。帰る前に写真やビデオを撮っていない限りは部屋に異変があったことなど分かりやしない。あの……勘の鋭い小夜子先輩であっても。  私はようやくホッと息をつき、寮へと帰っていった。  時間は深夜の23時を回っており……寮長からこっぴどく怒られはしたけど、これだけ時間をかけないと安心なんてできない。それだけ勘が鋭いのだから……小夜子先輩は。 次の日、私は前日の苦行など思い出しもせず呑気にアクビをしながら登校していった。 普通通り授業を受け……普通通り昼ごはんを食べ……普通通り居眠りして……普通通り放課後に部室へ足を運んだ。 部室のドアを開けると、そこには私の胸をドキリとさせる恐ろしいモノが小夜子先輩と部長の手によって建設されていた。 鋼鉄で出来ているのか重々しく強度のあるX字の拘束台……。全体が赤くて所々に黒い帯が巻かれるように模様がかっている……見るからに怪しい台……。 それを見た瞬間、私は凍りついた。 バレてしまったんだ……と瞬時に私の脳内危険センサーが赤色に点灯した。 どうしてバレたか分からない。完璧に証拠を消したはずなのに……こんなにもあっさりと見抜かれてしまうなんて考えられない! しかし、あの拘束台は明らかに私に罰を与えるために用意されたもの……その証拠に部長が綾ちゃんにこう指示を出したのだ……「綾、理子、あいつを捕まえておけ」と。 そりゃ……誰だって逃げるよね? 捕まれば間違いなく制裁がくだされると分かっているのだから! 私だって怖くなってすぐに逃げましたわ……脇目もふらず一目散に下駄箱へ。 でも、元々運動など嗜んでいない私の脚力では下駄箱へと辿り着く前に彼女達に捕まってしまう。 案外足が速くて体力もあった綾ちゃんと……子供らしくすばしっこい理子先輩の両名に……。 私は二人に腕を引き摺られながら再び部室まで連行される。 部室までの道中は理子先輩がギャンギャンと何やら喚いていたが、私の耳には入らない……。 私はその時絶望していたのだから……。 テープの秘密を喋り、テープ自体も痒みに負け玲美さんに渡してしまったという罪を……どのように体に支払わされるのか……不安と恐怖が駆け巡っていて先輩の戯言など聞いていられなかったのだ……。 部室に戻された私は……案の定体操服に着替えさせられ、靴を脱がされ靴下も剥ぎ取られ……いつもの哀れな被検体の格好を強いられる。 そして……台座に乗せられながら手を万歳の格好に上げさせられ、手首を拘束台の端に備え付けられた手枷に嵌めしっかりと錠をつけられ腕を下ろせなくされる。 足の方もX型の拘束台に合わせて思いっきり脚を開かされ、足首の所の枷を嵌められこちらも閉じたり暴れられないよう拘束される。 足は床を踏みしめていない。かかとの部分に小さ“かかとと置き”が備えられていて、私はそこにかかとを乗せて体重を預けている。だからかかと以外は少しだけ宙に浮いてしまっている……まるで、アレをやりやすくするようにと言わんばかりに……。 「さて……明日香? お前をこんな風に磔にしたという事は……これから何をされるのか、理解しているよな?」  部長が腕を組んで私の前に立つ。  横にはジト目で睨む理子先輩となにやら嬉しそうな顔を浮かべる綾ちゃんが顔を出し、最後に小夜子先輩がおっとりした口調で私に声をかける。 「ウフフ♥ この拘束具ね……床に固定するタイプだからどんなに暴れても倒れない仕組みになってるの♥ 存分に暴れてもらっていいからね?」  おっとりした中に狂気を感じる言葉が添えられ、私はますます顔を青くさせていく。 「まぁ、せっかくだから……この拘束台の稼働実験も兼ねての制裁なんだが……別に構わないよな? 自業自得なんだし……」  部長の意地悪な目つきが私の不安を掻き立ててやまない。確かに初日に彼女はこういった。  “いちお同意はとった上で部活動は行う”と。  今のがその同意を取るという行為なのだろうか? そうだとしたら……あまりにも横暴というか……もはや強制に近いのでは? と思えてしまう。  でも、確かに彼女の言うとおり……今回の顛末は私にも非がある。  喋るなと言われた事を一時の苦痛を逃れたいがために簡単に喋ってしまったという不甲斐なさ……それは私が背負った業であるのは自分でよくわかっている。  だから、もう逆らわない。いや、ここまでされといて逆らうも何もできないけど……ちゃんと非は認めよう……隠蔽なんてしようとしたけど……せめてココだけは正直になっておきたい……。 「構いません……私が……悪かったのですから……」 「あら、今日は随分と素直じゃない? バカ女のくせに抵抗しないなんて……明日は雨でも降るんじゃない?」 「むぐっ! ば、バカ女って……言わないでくださいってば……」 「まぁまぁ、理子。どうせ今からたっぷり時間はとってあるんだから、言葉責めはその時にしろ」 「……はーい」  今にも襲いかかりそうな鋭い目つきの理子先輩を肩を叩いて宥める部長……理子先輩は目を鋭くさせたままフン!と鼻を鳴らしてそっぽを向く。   「ほら明日香? 今のうちに謝っておけ。そしたら少しは……加減してくれるかもしれんぞ?」 「…………すいません……でした……」 「うわ、気持ち悪っ! 本当に素直に謝ったわ! なんだかいつもの生意気なあんたじゃないみたいで……気味が悪いくらいだわ」 「うぅ……今回は……全面的に私が悪いので……。私の意思が弱かったのが……全部悪いので……」 「うん? 明日香? 何を言って――」 「あ、和音ちゃん、ちょい待っち♪」 「うん? なんだ? 小夜子?」 「私から……1つ質問してもいい?」 「あ、あぁ……構わんけど……」 「ウフフ……。ねぇねぇ明日香ちゃん?」 「は、はい……」 「今……私の意思が弱かったって……言ったわよね?」 「はい……」 「それは具体的にどんな事を“されて”そう思ったのかな?」 「えっ……そ、それは……」 「おい、小夜子? 何を言ってるんだ?」 「今日……明日香ちゃん所の寮長さんが、門限外に帰宅した生徒へ注意勧告を行ったていう報告を朝の職員会議で言っていたそうよ。それって明日香ちゃんのことだよね?」 「うぅ……はい……」 「門限外の帰宅……?」 「昨日の部活は完全下校時間より前にお開きになったはずよね? 部室の鍵も明日香ちゃんが返しに行った……」 「……はい……」 「じゃあ、なんでそのまま帰らなかったの? なんで怒られるってわかっていて……門限を超えちゃったの?」 「そ、そ、それは……」 「どうやら……昨日は何かがあったみたいね……明日香ちゃんに……」 「えっ!? 小夜子先輩……気付いていたわけじゃ……なかったんですか?」 「気付く? 何に?」 「はっっ!? えっっ!?」 「あんた……なにか隠してるわね? 私たちにっっ!!」 「えっっ!? えぇぇっっ!? ちょっっ、どういう事ですかっ!?」 「どういう事なのかはこっちが聞きたいねぇ……。我々は、昨日のお前の暴言を制裁しようと準備を進めていただけなのだが?」 「ぼ、ぼ、暴言??」 「ほら……明日香ちゃん、私も責めさせてって言ったじゃん♥ 理子先輩を怒らせた罰を受けるなら……って」 「あっっ! あぁっっ!! アレ……本気だったんですかっ!? アレの為に私は拘束されたということですかっ!!」  私はすっかり勘違いをしていた。  確かに……私は拷問を受ける前理子先輩に処刑宣告を受けてた! 忘れてはいたが……綾ちゃんのその言葉で思い出した!  つまりは、先輩方は何も気づいておらず私が勝手に早とちりしただけなのだ。この物々しい雰囲気を見て勝手にバレてしまったと勘違いしてしまっただけなのだ……。 「あ、アハハ、そうですよね……そうだ、そう! 私は昨日理子先輩に酷いこと言っちゃったんだった♪ いや~~そうだった、そうだった……」  私は墓穴を掘った自分を誤魔化そうと必死に言葉を紡いで場を和ませようとした。  しかし、先輩方の目は……先程までの和やかな雰囲気でなく、何か良からぬことを考えている目に変わり…… 「なるほど……何か勘違いをしていたようだな? 明日香は……」 「そう。理子ちゃんの復讐よりも恐ろしい何かを隠している……そんな顔だったわ、和音ちゃん♥」 「だったら、今日の拷問演習は“私怨で責めを強くする責め手”っていうテーマをやめて、新しいテーマにしなくちゃならんな?」 「ウフフ♥ だったら……こういうのはどう? “絶対に洩らせない秘密を抱いたスパイを拷問によって白状させる”っていう王道のテーマ♪」 「ハハ……イイね。それで行こう♪」 「うわぁ~面白そう♥ 綾も参加していいんですよね? それ……」 「当然じゃない♥ 私と一緒に……この、悪~いバカ女を責めまくって白状させてしまいましょう? 時間はたっぷりあることだし……ね♥」 「ま、ま、待ってくださいぃぃぃ!! ち、違っっ!! 私の言ったことは忘れてくださいっっ!!」 「さぁ、テーマも決まったことだし……早速今日の課題を始めるとしようか……」 「ウフフ♥ 明日香ちゃん♪ 頑張って“秘密”守り通して見せてねぇ? お姉さん……期待しちゃうから♥」 「ひっっ!? ひぃぃぃっっ!! ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!」

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