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6:シャワー  あの後……何度読み返したか分からない。  ただ物語の中で私が玲をくすぐっているだけ……という内容だけのはずなのに、読み返せば読み返す程その行為自体に理解不能なエロティシズムを感じるようになってしまっていた。  自分の項目だけでは飽き足らず、他の女子の項目も目次を辿って目を通してみたりして……  結局内容はほぼ同じだった。  表題の女子に呼び出され、やっぱり裸にされて拘束され……くすぐり責めを受ける。 場所やシチュエーション、責め言葉や責め方は人によって描写は違うが、一貫してエッチな行為は一切ない。ただただ玲がくすぐり倒されるだけの話である。  でも私は大いに興奮してしまった。正直……何度股間を弄って気持ち良くなったか覚えてすらいない……  攻め手が変わる度にその人物に感情移入し、さもそのシチュエーションに自分が居るかのように玲の体を触り……彼女を言葉で嬲り……責め立て続けていく。描かれていない行間も「きっと玲ならこんな事を生意気に言うハズ」とか妄想しながら補完していく。  気付けば自分の脳内で勝手に玲をイジメ始めてしまう。文章が途中で途切れていても、その後の展開を勝手に自分で想像し勝手に気持ち良くなっていく……  私の脳内は玲を責めて楽しむ事でいっぱいになってしまった。  ノートの小説を読み終えた私は不意にクラス写真を引っ張り出し、無表情で写っている玲をぼんやりと眺めてしまう。  彼女が実際はどんな顔で……どんな無様な顔で笑い悶えるのか……想像しようとするが想像できない。    彼女の笑った顔……一度だって見たことがないのだから……  何度も気持ち良くなって下着をこれでもかと汚してしまった私は、家族にバレないように下着を洗濯機の奥の方へ入れ込んですぐさま熱いシャワーを浴びた。  熱いシャワーが身体の隅々に当たる度に私の頭の中には玲の無防備な姿が映し出される。  ココをくすぐったらどんな反応を見せるだろう? ココは? ココとかは??  シャワーを当てる場所を様々に変えながら水圧で自分の身体をくすぐってみる。腋やお尻……背中やお腹……  チョロチョロと刺激するシャワーの水圧はじれったいくすぐったさを生んだ。  くすぐったいと感じる神経を優しく撫でる様に刺激するこの水圧……  思わず笑ってしまいたくなる刺激……  身体が拒否反応を示すようにムズ痒さを感じ、ジッとしていられなくなる不思議な感覚……  ワキに当てているシャワーを今すぐ動かしてしまいたい! そう思った瞬間、逃げられないように拘束された玲の姿が再び脳裏をよぎった。  彼女は拘束されていたのだから逃げたくても逃げられない。逃げたいと思っていても逃げられない……  こんな風に自分で水圧を調整してくすぐったさを弱める事も、その刺激から逃げる事も出来なかった。  それを思い出した時、私は急に背筋に寒気を感じるほどのエロスを感じ取った。  このどうしようもなくムズ痒い刺激を逃げられない状態で与え続けられたらどうなるだろう?  物語の玲のように縛られて容赦なく無防備な身体をくすぐり責めにされたら……私はどうなってしまうのだろう?  想像しただけドキドキしてしまう。  身動きできない自分がこそばゆいという刺激に翻弄される姿を想像すると、下腹部が勝手にカァッと熱くなってしまう。  私は高鳴る鼓動を自分で感じながらも、腋からシャワーを離しハンドルを捻って水圧を最大にしてみた。 「わ、私……足の裏……弱いんだよねぇ~」  そんな事を口から零しながら風呂場の床にあぐらをかいて座る。  丁度足の裏が上を向くように格好を整え、水圧を強めたシャワーヘッドを徐々にそこへ近づけていく。  期待と不安が入り混じった吐息がハァハァと漏れ始め、私の心音も最高潮に鳴り響いている。  そして、手始めと言わんばかりにかかとへ向けてシャワーを当ててみると――  シャーーーッ! 「うひゃぁぁぁっっ!?」  かかと全体に突き刺さるように細い水流が当たるや否や背筋がゾワっと寒気を帯び、私は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。 先ほどよりも遥かに強い水流の刺激は私にジッとしてはいられないむず痒さを与え、思わずシャワーノズルを足から反射的に離してしまう程の拒否感を生んだ。 「はぁ、はぁ、はぁ……や、ヤバいよこれ……。少しも我慢できないじゃん……」  足裏の中でも比較的皮膚の層の厚い箇所であるかかとにも関わらず、思わずシャワーを遠ざけてしまうほどに我慢ならない刺激であると感じてしまった。こんな刺激をもし足裏全体に当てたらと考えると想像だけでゾワゾワっと再び背筋が寒気を感じる。普段何気なく使っている普通のシャワーであるはずなのに……当てる箇所を意識して使うとこんなにもこそばゆく感じてしまうものなのかと、私は浴室の床にあぐらをかいた格好で天井を見ながら深い息をついた。  そしてまた想像してしまった……。  もしも、足までも拘束され逃げられない格好にされた状態で今のような刺激を延々と与えられ続けたら私はどうなってしまうのか? 何分まで耐えられるのか? いや、一時たりとも耐えられないかもしれない。耐えられないのに延々とこそばされたら……きっと私はバカみたいにゲラゲラと笑ってしまうだろう。くすぐったくて仕方がないから思いっきり爆笑してしまうかもしれない。でもその後もくすぐりが止まらなかったら? 逃げられない足裏をずっとずっとくすぐられ続けたら?  小説の中の玲の様に笑いながら苦しむことになるかもしれない……。無理やり笑わされ続けるというのは、彼女が書いていた通り苦しくて辛くて耐えられないほどの苦行なのかもしれない。  でも彼女はそれを“やる側”ではなく“やられる側”で書いている。  私にとっては数秒で逃げてしまいたくなってしまう刺激なのに、彼女はそれを“受ける側”の立場に立って自分を描いている。  それは彼女の願望の表れなのだろうか? 心のどこかで“くすぐられてみたい”と思っているのではないだろうか?  思っていないと……きっとああいう風には書かない。  玲は……  心の奥底にくすぐられたいという願望を持っている。 縛られ……不自由にされた身体を……私やクラスメイトに存分にくすぐられイジメられたいと思っている。  あの小説からはそんな思いがヒシヒシと伝わってくる。 私はそのように頭の中で結論づけると……そんな彼女に再び興味が湧いた。  今度は好奇心とかいう興味本位な衝動などではない。  はっきりと自分自身でも自覚してしまっている。  お腹の底から湧き上がる加虐心を……。  受けたいと思っているのなら……与えてやってもいいじゃないか……  小説に書き連ねる程に私に虐められたいと思っているのであれば……その願いを叶えてあげてもいいじゃないか。 明日は土曜日……。授業もお昼まで……。 彼女を誘うには絶好の日取りだ。 彼女を誘う? ううん、違うか……ここは小説のとおり“呼び出す”が正しいか……。

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