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5:性癖 「く……く、くすぐりの刑?」  私は潜り込んでいた掛布団の中で思わず声を出してしまった。あまりにも自分の想像していた物語とかけ離れていたため……ついつい文章の通りの言葉を口から出してしまったのである。  あの手首をロープで縛った後の場面……その後の事を要約して語るとこうだ。  玲の手首を縛った物語の中の私はそのままロープを天井のフックに通して、彼女を浮かせるくらいに吊り上げてしまう。 そうしてバンザイの格好で吊り上げ拘束をした私は彼女に向けてこんな理不尽な要求を突き付けたのである。  “私は可愛い女の子が好きで笑っている顔が好きなのだ”と……そして、いつもツンツンした顔しかしない玲に対して“私の為に笑え”と……  その要求に嫌だと答えた玲に対して私が怒って「笑えないんだったら私が無理やり笑わせてやる」と言い放ち、腕を降ろせない玲の無防備なワキを手でくすぐり始めた……という流れになっていた。  確かにそれならば玲が笑っているという理由は良く分かる。無防備なワキをくすぐられているのだから笑うのは当然だろう。  でもたとえ創作上であっても私の性格が破たんしすぎている。わざわざ体育倉庫に2人きりになって玲を裸にひん剥いてやる事が『くすぐり』で笑わせる事だけである。  百歩譲っても可愛い女の子が好きという部分は認めるとしても、裸の女の子に対してエッチな事一つもせずただただくすぐって笑わせるという趣向が理解できない。  胸を触るでなく、アソコを弄る訳でもなく……本当にただ延々とくすぐっているだけなのだ。  挙句の果てには私は実は「くすぐり」で興奮する性癖を持っていたらしい……作中の彼女が責め言葉と共に玲にそう伝えている。  そして、読んでいて自分でも恥ずかしくなる様な幼稚な言葉で玲の事を責めている。 「コチョコチョ責めにしてやる!」とか「笑い死ぬまでくすぐりの刑だぁ!」とか「私のこしょぐりテクニックは見事でしょ?」とか……  一体どんな私を想像をしてこんな責め言葉を吐かせたのか……玲に直接聞いてしまいたいほどだ。  結局……最後の最後まで物語の中の私は玲の身体にエッチな事をすることなく、様々なテクニックや道具を使って彼女の身体をくすぐり倒していた。  当然、抵抗できない身体をくすぐられる玲は絶え間なく笑わされ、最後の方では息も絶え絶えに笑い苦しむ事となる。  何度も「やめて!」「許して!」「苦しい!」「助けて!」と様々な言葉で許しを請うが、私は聞く耳を持たずにくすぐり続ける。彼女が疲弊し……衰弱して笑う力が無くなって来てもしつこく……徹底的に。  最初はこのお遊びの様なくすぐりプレイ小説に、性的な興奮など皆無だと思っていたのだけど……  笑わされ続ける事に苦痛を感じ始める玲の描写や、苦しいと言っているのに止めようとせずひたすら笑わせようとくすぐり続ける猟奇的な性格の自分の描写に感情移入し始め……読み進めていく内に身体中の芯が熱く火照り出し始めている事に気づいてしまう。  子供をあやすような「コチョコチョ~」という幼稚な言葉を囁きながら、抵抗できない玲の腋を遠慮なしにくすぐっている私……  やめて、苦しい! と必死に玲は懇願するけれど、涼しい顔で聞き流して責め手を止めない私……  笑いたくないのに無理やり笑わせる。どうしても我慢できず笑ってしまう刺激をその無防備な身体に延々と強いて子供っぽく悦んでいる私の像……。それは現実の自分とは全く違う世界のワタシではあるのだが、読み進めていくうちに自分が重なっていくような妙な感覚に襲われ……ムラムラと下腹部にイケナイ何かが渦巻くような錯覚が植えつけられていく。  ただただ“くすぐり”という児戯を繰り返しているだけの私なのに、秘密を垣間見ているような妙な背徳感に襲われ……胸の鼓動がどうしても早まってしまう。 小説の描写は妙にリアルで……私の想像を掻き立ててやまない。 特に玲の体の特徴や……触られた感触の描写……苦しさや疲労感までも玲の視点で描かれているものだから、本当に彼女の体に触れているような感覚に陥ってしまう。 そして……想像するたび……自分をその猟奇的な自分に重ねる度に……言い知れない黒い欲求が胸の中を駆け巡り、やがて頭の中にこのような言葉を浮かび上がらせる。 『実際に……こんな事……玲にしてみたら……どうなるんだろう?』と。

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