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4:秘密のノート  家に帰った私は自分の部屋に入るなり制服を雑に脱ぎ捨て、飛び込む様にベッドへ潜り込んだ。  掛布団の中には下着姿の私と手に持った赤い背表紙のノート……  私は携帯のライト機能をONにし、掛布団の中で隠れるようにそのノートを持ち込んだ。  いったい何が書いてあるノートなのか? クールな玲をあのようないかがわしい行為に導くこのノートには……どんな秘密が隠されているのか? 期待に……私の心臓は否が応にも鼓音を高鳴らせてしまう。  唾をゴクリと飲み込み、最初の表紙をゆっくりと開いていく……  薄暗い中でノートを開いたものだから何と書かれてあるかをすぐには読み取れなかったが、最初に分かった事はぎっしりと詰めるように羅列された文字の量だった。  時折段落が区切られ、会話である事を示すようにカッコが多数用いられ、その会話部分と地の文章が交互に書き連ねられている。  その形式を見るにこれが“小説”である事はすぐに分かった。  彼女らしい凛とした丁寧で綺麗な文字が、ノートにあらかじめ入っている薄い横線からはみ出さないように整然と並べられ一種の形式美の様なものを感じさせる。綺麗で丁寧な字で書かれた直筆の小説……それがこのノートの最初の正体だった。 「玲ってば……小説を書いていたんだ?」  字はノートの端から端までビッシリと形よく埋められ、その文字量は2枚3枚とページを捲っても減る様子を見せない。  ノートの正体が自作の小説だと分かった私が次に興味を惹かれるたのは勿論その中身だった。  玲が人の目を忍んで書き綴っていた小説がどのような内容なのか? 気にならない筈がない。  私は携帯のライトがしっかりとノートに当たる様に調節を加え、パラパラと適当に捲っていたノートを最初のページへと戻した。そして、表紙の裏に書かれている目次を見て驚愕の声を上げてしまう。 「んえっっ!? なにこれ!? うちのクラスの……女子の名前??」  それは確かに目次の体を取っていた。番号が1から順番に振られその隣には大きな文字で章のタイトルが書かれて、それが何ページ目にあるのかを書き示してある。しかし、そのタイトルの部分は人の名前になっていた。しかも自分の学校の自分のクラス……そのクラスメイトである女子の名前がずらりと…… 「わ、私の名前も……ある……」  上から順番に名前を確認していると、最後の方に私の名前……橘 美沙(たちばな みさ)の項目が書かれてあり2度驚く。  どんな内容の小説かはまだ分からないが、タイトルが人の名前になっているのだ……良い気分がするハズもなく戦慄を覚える。  先程までの知的好奇心による心音の高鳴りとは別の……恐れに似た鼓動が私の背筋に寒気を走らせる。  恨み日記とか復讐妄想とかの類の小説だったら……どうしよう……。何かしら彼女に不快な思いをさせてしまっただろうか? それで小説の中で私に酷い事を……。  私は額に冷や汗を滲ませ、緊張のつばを飲み込む。  正直次のページを捲るのは怖い……特に自分の名前がタイトルになっている章を見るのは……物凄く恐ろしい。しかし、ここまで彼女の秘密を知ってしまった以上……どういう内容なのかは理解しておきたい……。例え……酷い復讐の物語であっても……彼女が私達クラスメイトにどんな感情を抱いていたのか……知ってしまいたい……。  怖い気持ち半分だが私は再び好奇心の方が大きく膨れ上がり……その自分の項目を目に収める事を決意した。 『第7章:橘 美沙と私』  目的のページを捲ると目次とは異なるタイトルがノートの上部に書かれてあった。  そしてそこから始まる冒頭の文章を読み進めていくと、話の内容が学校の中の様子である事がすぐに掴めてくる。    ――同じクラスの隣同士の席になった美沙と私。積極的に話をしようとはしない私が悪いのだろうが……ほとんど言葉を交わす事もなくお互いをあまり意識し合わないまま6か月が過ぎた――  冒頭の文章は私と玲が同じクラスの隣同士になったという事と、6か月が過ぎたという現実と大差のない地の文章が綴られている。  一瞬、やはり日記の様なものなのか? と私は疑問に思ったが、文章を読み進めていくとそうではないという事が徐々に分かり始める。 ――不意に美沙が小さな手紙を渡してきた。その小さな手紙には『放課後、1人で体育倉庫に来て』とだけ書かれていた。私はイヤな予感を過らせながらも体育館の離れにある体育倉庫へと指示通り1人で向かった――    勿論、私はこのような手紙を送った事はない。だからココからは玲の“創作”部分になっていく……  それにしても体育倉庫に1人でって……なんか怪しい雰囲気を感じてしまう。 ――私が体育倉庫に入ると、先に待っていた美沙が腕組みをしながら扉をしっかり締めるように私に指示した。手には黄色と黒のまだら模様のロープが握られ、私が扉を閉める様子をニヤつきながら見ていた――  彼女の小説の中ではまだら模様のロープを持ってニヤつくのが私なのか? そんなイメージなのか私は?? などと創作の対象にされた私の姿に疑問を抱きつつ続きを読んでいく。 ――「じゃあさ、服を脱いで両手を私の前に差し出しなよ……」美沙は戸惑う私の顔を下から覗き込み、そのように言い放った。私はその言葉に逆らわずコクリと1度だけ頷いて言われた通りに服を脱ぎ始めた――  この一文を読んだ瞬間、彼女がこれから書かんとする物語の方向性が簡単に想像がついてしまった。ツッコミどころは多々ある……なんで言いなりになるのかとか、私の突然のイジメっ子キャラは何処から来たんだ……とか。言いたいことは山ほどあるが、これは彼女の創作物だ……きっと物語を進める上で必要となるキャラ設定なのだろうけど……  彼女の中では私のキャラは“こういうことを平気で言いそうな人”という認識なのだろうか? もしくはこんな事を言わせたいと願望を持っていたのか……?  まぁどちらにしても、この後の展開は想像できる。  差し出した手を私がロープで縛り上げて、無抵抗にした彼女の体に無理やりエッチな事をする……  玲はそういうシチュエーションに興奮を覚えるのだろう。だから図書館でこういうのを書きながら密かに自慰をして楽しんでいたのだろうから。 ――私は一糸纏わない裸となり、言われた通りに両手を美沙の前に差し出した。すると美沙は言葉を発さず手に持ったロープを私の手首にグルグルと絡めていき、私の両手が不自由になる様縛り上げていった――  玲の書いた物語は私の想像したシナリオとほとんど差はなかった。正直「やっぱりか」と言う言葉が浮かび、そのせいで物語から距離が出来てしまいなんだか読むのがバカバカしく思えてしまった。  私は飛ばして読み進めて、本番行為がどんな表現をしているのかだけは確認しておこうとページを捲った。  すると次のページからは私の想像の斜め上を行くような驚愕の文章が私の目に飛び込んできた。 ――「きゃぁぁははははははははははははは! やめてっっへへへへへへへへへへへ!! いやぁぁははははははははははははははははははは、許してぇぇへへへへへへへへへへへへへへ!! く、苦しいっひひひひひひひ! 苦しいってばぁぁははははははははは美沙ぁぁはははははははははははは!!」――  会話の部分を埋め尽くすほどの笑い声の描写。それが延々と続いている……  一体……何がどうなったらこんな事になるのか? なぜ笑い声だけが文章の大半を占めるようになったのか?  てっきり「あん♥」とか「いやん♥」とかのアホらしい言葉が並ぶのだろうと想像していた私は驚きを隠せない。なぜこれからエッチな事をしようとしてる場面から玲は笑ってしまっているのか? 理解できない……  理解できないからもう一度先程の続きから読み返してみた。  するとようやくその笑っている原因が何であるのかが分かってしまう……  私の想像した斜め上のシチュエーション。理解不能なプレイ……そこには玲の本当の性癖を示す文章が私という責め手を介して綴られていた。

Comments

Anonymous

設定は面白いですよ!クールな子は自分が主人公にくすぐられるシーンを想像しながらじいしてますね

ハルカナ

自分の書いた小説で自慰するのはかなりエッチに映るかなと思い設定してみました🎵 楽しんでいただけたなら幸いです✨