閉鎖病棟体験その8 (Pixiv Fanbox)
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「川島さん、おはようございます。身体の調子はどうですか?」
「ん、んん……ッ、ンんぅ~~!」
研修最終日から数日後の朝。
全頭マスクに塞がれた真っ暗闇の視界の中で麻乃は艶の含んだ苦しそうな声をベッドの上で漏らしていた。
それもそのはず。
白い全頭マスクを被せられた頭部には、顔面を這い回る茶革帯の縛めが織りなされ、鼻下から顎を覆うマスクの内側には、口腔内を貫いて喉の奥をも埋め尽くす黒いシリコンゴムの突起が聳え立っている。
それに加え、麻乃の細首を真っすぐ固定するように取り付けられた分厚い茶革のネックコルセットや上半身を縛めるキャンバス生地の拘束衣のスリング部分。さらには両足の足首、膝下、膝上、太ももに装着されたベージュ色の革枷のバックルとベッドに散りばめられたいくつもの茶色い抑制帯が絡まり合って、華奢な体躯である麻乃の肉体を人の字にベッドへ縛り付けているのだから――声を漏らすことしかできないに決まってる。
「ちょっと、お股のところ失礼しますね?」
そんな惨めな存在へ成り果てている麻乃の様子を慈愛に満ちた表情で微笑ましそうに確認するポニーテールの看護師さんは、麻乃の身体を縛めている抑制帯や拘束衣の締め付けを見直してから、股間を覆っている黒いラバーパンツのファスナーを遠慮なく開けてきた。
導尿カテーテルの管が挿入された桜色の股間が顕になり、そこからねっとりとした汁が滴って、むわ~っと雌の匂いが室内に溢れかえっていく。その解放感に、麻乃はギュッと締めつけていた膣の力を思わず緩めてしまう。
「あらあら、こんなにおまんこから愛液溢れさせて……今日も調子が良さそうですね?」
「んッ……っ、んぉ……ッ、お……ッ!」
喉から漏れ出しているのは甘く震える惨めな声。
その声と一緒にヴヴヴと振動し続ける銀色のローターが、汗と愛液に塗れた陰部の奥でコツコツぶつかり合い。にゅるにゅると膣壁を擦りあげながら外に飛び出してくる。
昨日も、その前も、さらにその前の日も、ずっと挿入され続けているこの玩具のせいで、麻乃のおまんこは完全にほぐされてしまったらしい。
全頭マスクのおかげで自分の股間を見ることはできないけれども、自分のアソコがおかしなことになってしまっているのは、なんとなくわかる。
「このままだとちょっと匂うので……清拭しておきますね?」
「ン……ッ、んう……ッ、うぅぅ〜〜ッ!」
看護師さんは何かを欲しがるようにヒクヒクと動き続けている麻乃のおまんこを丁寧に清拭し、尿道に挿入してある導尿カテーテルの汚れも拭き取っていく。
その優しいタッチングは、ひとかけらの悪意さえ感じず、ただ程よい刺激を麻乃に与えてきて……。
湿り切った柔らかい生地が熱で蒸れた股間に触れてくるたび、クリトリスを含めたアソコが疼くように気持ちよくなって、求めていないのに勝手に腰が震えてしまう。
「すぐに終わりますからね~」
「ンッ、んぉッ……ッ、お、ぉぉ〜〜〜ッ!」
収まることのない快楽の波に頭の中が溶けていくような。灼けていくような。そんな感じがして、麻乃は口腔内を埋め尽くす異物を喉で吸引するように舐め回す。
ぐっちゅ、ぐっちゅ、と喉奥で異物が粘膜に擦れる嫌な音が頭蓋骨にまで響き回ってくるけれど、そうやって喉を必死に動かさないと気道が異物で塞がれてしまうから、まともに酸素を取り込むこともできないのだ。
「はい、おまんこ綺麗になりましたよ。ローター戻しておきますね〜」
なのに、看護師さんは容赦がない。
清拭を済ませた麻乃のおまんこへ今度はローターを押しこむように戻し入れ、ベッドに掛けてあるリモコンを操作してきた。
「ン……ッ! んん、ン~~ッ!」
ローターがヴヴヴと鈍い音を響かせ始めると麻乃の膣内が再び刺激される。
清拭のときとは違う。
直接的な玩具の刺激に思考がピンク色に侵されていく。
「他の玩具も交換しますよ」
「ン、んんん〜〜〜ッ!?」
でも、まだ玩具は終わりじゃない。
クリトリスを吸引するクリキャップや、内ももに張り付けられている電極パッドも看護師さんは新しいものに交換し、次々と電源を入れていく。
この快楽地獄から麻乃を解放するつもりがないのだろう。
「では、流動食流し込んでいきますね」
「ン、んんッ……ッ!? ん~~~~ッ! ——んごッ、おぉッ、お、おぉ~~~~~~ッ!?」
そんな玩具責めを受けている最中に行われるのは、麻乃を生かし続けるための栄養食——ドロドロの白い液体——の摂取だった。
専用のシリンジの中へたくさんの流動食を用意され、口元を覆っている革マスクの差込口に専用のチューブが連結される。
朝、昼、夕、と決まった時間に必ず与えられるこの流動食は、麻乃の意思とは関係なく、無理やり喉の奥へと注がれて、麻乃のお腹がいっぱいになってもシリンジの中身すべてを飲み干すまで流しこまれることになっている。
「ッ、ッ~~~~!?」
だから麻乃は、それを体内へと受け入れていくしかない。
だって、流動食は喉の奥に挿入されたシリコンゴムの先端部から滲み出るように溢れ出してくるのだから――。
「~~~~~~ッ、っ、っ!?」
けれど、やっぱり、息苦しいものは息苦しい。
研修最終日の日から、もう何度も繰り返されているとはいえ、気道が完全に塞がるこの瞬間だけは、死に物狂いになってしまう。
「いっぱい飲んで、元気になってくださいね〜」
「ッ、ッ~~~~~~~!?」
しかし、もういらない。飲みたくない。と願っても、看護師さんの手は止まってくれない。
乳首やおまんこを刺激する玩具の責めを受けながら、脳がとろけていく快楽と一緒に喉の奥も犯されているような、そんな責め苦を味合わされる。
「ンんッ……、ンッ、んん〜〜〜ッ!? んぉ、ぉ、おぉ〜〜〜〜ッ!」
気が付けば、つい先ほど清拭されたばかりの麻乃の股間は見る影もないほどびちょびちょに濡れそぼり、艶かしい臭いを室内に撒き散らしていた。
その淫乱めいた猥褻な吐息を漏らしながら拘束衣の縛めに抗う姿は、まさに性欲に塗れた獣ような姿で――
「あらら、食事中でもこんなにおまんこ喜ばせちゃうなんて……あなたって本当に――淫乱な患者さんなのね?」
「お、ぉ、おぉお……!? んぉ~~~~~ッ、ッ!?」
研修最終日のあの日から、麻乃はずっとこの調子で、えっちなメスの匂いをまき散らすだけの女の子になってしまった。
この病棟に来る前まで、麻乃はこのような行為自体ほとんど手を付けたことのない初心な女の子だったはずなのに。
この閉鎖病棟で与えられる唯一の栄養源である流動食を飲めば飲むほど、麻乃の思考力はおかしくなって、マグマが噴き出るように全身が激しく疼きだし、ただ気持ちよくなることばかり考えてしまう。
もしかすると、この流動食には、おかしな薬が混ぜられているのかもしれない……。
だが、それを確かめる手段は麻乃にはないし、「もう、いやだ。飲みたくない。」と否定したところで拘束衣と抑制帯によってベッドに磔にされているから、喉の奥まで挿入されたシリコンゴムの突起から強制的に注がれる流動食をお腹いっぱいになっても飲み続けることしかできない。
「ふふふ、全部飲めましたね。偉いですよ〜」
「んふぅ……っ、んぅぅ……っ、ん……!?」
何度も経験してきたその無力感を味わっている間に、看護師さんは口元に繋いでいた流動食のチューブを外していく。
シリコンゴムから滲み出ていたドロドロの液体が消え去ると、喉の奥に少しだけ余裕ができて、呼吸がなんとかできるようになる。
だから、麻乃は呼吸を整えるためにシリコンゴムの突起を必死に舐めまわしながら、息を整える。
すると疲れ切っていたはずの身体が、なぜか精気を取り戻すように熱くなっていく。
肌という肌が敏感になって、素肌に触れるわずかな締め付けさえも心地よくなって、下腹部の奥がグツグツと煮えたぎり、それがぶわーっと全身に広がるように爆発する。
「ンゥ〜〜〜〜ッ! ん、んぉ、おぉお〜〜〜ッ!?」
暴れだす身体と手足。
そして、ミシミシと音を鳴らす抑制帯。
きっと、何も知らない他人が今の麻乃の姿を見れば、性欲を手放すことができない精神病患者が自慰をしたくて拘束に抗っているようにしか見えないだろう。
だって、麻乃は実際に自分で自分の身体をめちゃくちゃにしたくて拘束から抜け出そうとしているのだから、そう見えるにきまってる。
でも、違うのだ。
麻乃は、本当に精神病患者なんかじゃない。
麻乃はただ、研修のためにこの病院へ来ただけの看護学生だ。
なのに、頭がおかしくなりそうな病棟生活を強制的に送らされて……。
人格も、意思も、麻乃の何もかも、否定されて……。
「それでは、おまんこのマッサージ始めますよ~」
「ン、んんん~~~~ッ!?」
毎日、毎日、ずーーっと自分では何もできないように拘束された状態でおまんこを無理やり弄くり回され、頭がバカになるような気持ちいい生活を延々と繰り返されている。
こんな生活を休む暇もなく、数日間続けられたら誰だっておかしくなると思う。
「んぉ、お……ッ、ッ、おぉお~~~ッ!?」
本心では――
もうやだ。
助けて。
ここから出して。
と、反芻思考を繰り返しているはずなのに。
この状態へ陥ってしまうと、麻乃の思考は焼き尽くされたかのようにあいまいになって、「もっと、もっと」と、とにかく気持ちよくなることばかりで、何も考えられなくなる。
拘束衣の縛めに締めつけられながら、無防備なおまんこをくちゅくちゅされるのは、それほどまでに——気持ちいいのだ。
だから、麻乃は思考することやめてしまう。
「今日はこのあとに入浴がありますからね~、マッサージのあとは浣腸もしますよー」
「ンぉッ!? ぉぉお~~~~ッ!? お、おぉおッ、ッ!?」
そこで看護師さんの指の動きがより一層激しさを増し、おまんこがさらに擦り上げられる。
内ももや、下腹部に張り付けられた電極パッドの動きも再開し、わけのわからない気持ちよさが体の隅々まで送られてきて————
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」
ただ、気持ちいい。という快楽を身体の外へ逃がすため、自分が何者であるかも忘れながら、拘束衣に包まれた両腕を脊髄反射のように激しく暴れさせて腰を震わす。
「ほら、気持ちいい~、気持ちいい~ですよ~」
そして、膣内に挿入された看護師さんの指先に、クリトリスの裏側を根本からグチュグチュとこすり上げられたとき——
「ンぉ、おぉお〜〜ッ!? お、ぉぉおおおおおおぉおおおッッ!? ——ッ、おぉ〜〜〜〜ッ!」
白い生足を大きく震えさせながら、麻乃は背筋をのけぞらせて――絶頂した。
「~~~~ッ、~~~~ッ、ッ、っ!?」
膣内に挿入された看護師さんの指をおまんこでギュッと咥え込んだまま、真っ白になった思考で白い波間を漂っていく。
「ふふ、さぁ、もっと気持ちよくしてあげますね~」
なのに――看護師さんは、浮つく麻乃の下腹部を、左手でぐりぐりと抑えつけ、膣内へ挿入している右手をさらに激しく動かす。
「ん、ンんん~~~~~ッ!?」
グチュグチュと肉壁が掻き回されて。
頭の中が真っ白になって――幸せで――どうにかなりそうで――多幸感に包まれたまま、すべてがどうでもよくなって、何もわからなくなって……。
「ん、ンんーーーーッ!? んぉお~~~ッ! ——お、おぉッ……!? んぉ、おぉ~~ッ、おぉ、おぉおッ!?」」
さらなる快楽の暴力を前に足首をピンと張りながら、麻乃は自らの痴態を晒し続るしかなかった。
――――――――――
――――――――
――――――
――――
数十分後。
「お風呂場へ行く前に、浣腸しますよ」
幾度にもよる快楽責めの余韻に浸りっぱなしになっている麻乃の身体から、看護師さんがローターやクリキャップなどの玩具を取り除いていく。
もちろん、愛液でぐちょぐちょになっている股間の辺りは清拭が施された。
「浣腸するので、抑制帯も外していきますね」
「ン……ッ、んぅ……ッ、ん……」
清拭が終わると麻乃の全身をベッドに縛り付けていた抑制帯のベルトが外され、身体中を締め付ける拘束が緩んでいく。
その解放感にどことなく切なさを感じてしまうのはどうしてだろう。
ここ最近は何故か拘束されているほうが安心できるような。そんな感じがするのだ。
とはいえ、拘束から解放されていくほうが心地はいい。
動かせないはずの身体が動かせるようになるのだから、そうに決まってる。
いっそのこと拘束が緩む瞬間に逃げ出せたらいいのに。などと麻乃の脳裏に理想的な展開が浮かび上がるが、今まで散々おまんこを弄ばれていたせいで足腰に力が入らず、呼吸を整えることしかできないから、正直そんな気力などはなかった。
「この患者さんは、拘束が緩むと暴れてしまう患者さんなのでしっかり押さえててくださいね」
「は、はい……っ!」
それに、一人だと思っていた看護師さんは、もう一人いたらしく、二人目の看護師さんと一緒に身体を抑え込まれて、左を向くように無理やり姿勢を変更されてしまった。
コレでは、もう逃げられない。
さらにいえば、麻乃は全頭マスクを被せられている。
視界が確保できなければ、逃げる道がわからないし、なによりどこへ逃げるというのだろう。
この病棟から外に出るためには警備員がいるエレベーターの扉を通り抜けなくちゃいけない。
でも、拘束衣を着せられた麻乃があのような扉を通り抜けられるだろうか。
きっと警備員にあっさり取り押さえられて、病室に戻されるだけだ。
もっとつけ加えるならば、この閉鎖病棟は山の中にある。
麻乃が拘束衣と全頭マスクを身に着けた状態で病棟の外に出たとして、無事に家まで帰ることができるだろうか。
無理だ。――できるはずがない。
今の麻乃はこの病棟から正式に解放されるまで、ここで行われる医療行為をただおとなしく受け入れるしかない……。
その終わりがいつ来るのか。麻乃が知ることになるのはいつだろう。
そんなの何もわからない。
わかりたくもない。
なのに、最悪な結末の想像をすると、なぜか下腹部の奥が疼くように熱くなる。
こんなにも人権を無視された環境下に置かれているのに、流動食の影響なのか麻乃の身体はまだ興奮し続けているらしい。
「浣腸用の管差し込みますよ。リラックスしてくださいね〜」
「ンッーー!?」
そのタイミングで、看護師さんにラバーパンツのファスナーをお尻の上まで開かれて、肛門のあたりをラバーの手袋でぐりぐりと撫でられた。
「はい、入りますよ」
「ンゥ〜〜〜〜〜ッ!?」
そして、息をつく暇もなく、細長いものがプスッとお尻の中へと入りこんできて、さらに変な声を漏らしてしまう。
「では、お尻の中に浣腸液注ぎますよー」
「ンーーーーーッ!」
麻乃に構うことなく管の根本にあるであろうポンプを看護師さんが操作してしまうと、お尻の中にじんわりと生暖かい液体が広がってきた。
途端に下腹部がぐるぐると音を鳴らして、強い不快感が下腹部に芽生えてくる。
たとえるなら、お腹の中を得体のしれない生き物にぐりぐりと掻き回されている感じだった。
前回の入浴時から、一度も排便をしていないからか、ものすごく苦しい。
できれば、今すぐにうんちをしてしまいたい。
「はい、管抜きますね~」
「——ッ、ん……っ、うぅ……っ」
「お風呂場に到着するまでは、うんち漏らさないようにしっかり我慢してくださいね」
「〜〜〜〜ッ、ッ、ッ」
なのに、看護師さんにそう告げられ、我慢するしかないことを知らされる。
もし、漏らした場合どうなるのだろう……?
もしかすると尿道と同じように肛門にも管が通されてしまったりするのだろうか……。
そんなのは――嫌だ。
だから、麻乃は肛門を閉じるようにめいいっぱいお尻に力を込めて、それが外へ溢れ出していかないようにする。
だって、拘束衣を着せられた両腕は使い物にならないし、全頭マスクに覆われた視界ではトイレがどこにあるのかもわからない。
看護師さんの言うとおり、おとなしく従って、これ以上変なことをされないように身を守るしかなかった。
「次は車イスへ移動するために尿パックを外しますよ」
麻乃がおなかの痛みに耐えているうちに看護師さんは次の作業へ移っていく。
それは、麻乃の尿道に差し込まれたカテーテルの処理だ。
このカテーテルのおかげで、麻乃は尿意を感じなくなってしまった。
ただ、尿道に管が通されて、おしっこの通り道が常に開かれているからか、おしっこし続けているような感覚がずっとアソコに残っている。
そんな状態のカテーテルをベッドに付属されている尿パックから一度切り離し、看護師さんは二人がかりで拘束衣をまとっている麻乃の上体を起こして、すぐさま車イスへと移動させる。
足元がふらついて、ほとんど力が入らないから、ほぼ完全に介護されてしまってるけど、頭もぼーっとして、何かを考えるのも面倒で、視界も何も見えないから、おとなしく身をゆだねるように麻乃は車イスへ腰かけた。
「転落、転倒防止のために身体を固定しますね」
物々しい車イスの深いところにまで腰を移動させられると、肩、腹部、両足。とそれぞれに用意された抑制帯がきつく留められ、車イスに身体が完全に固定されていく。
ベッドの尿パックから切り離されたカテーテルの管は車イスに付属されている尿パックへ繋ぎ直されたため、尿もれを起こす心配もなくなった。
あとは看護師さんの思うままに麻乃をどこへでも連れていけるだろう。
「では、お風呂場へ行きますよ」
「ンぉ……ッ」
麻乃が車イスに完全に固定できたことを確認した看護師さんは、返事かどうかも怪しいほど呻くような声を漏らした麻乃にそう告げて、車イスを押していく。
病室の重たい扉を抜けて、長い廊下を突き進み、研究所のような分厚い扉の前で看護師さんと警備員が無言のやり取りをする。
その間、麻乃は車イスに両腕を組んだまま腰かけ。ネックコルセットに固定された首を真っ直ぐに据えたまま、全頭マスクに覆われた顔で正面を向いて、暗闇の中。お腹の不快感を耐え続ける。
そこにやってきた浮遊感は、たぶん、エレベーター。
身体がふわりと沈みこむような気がして、車イスの抑制帯に全身がギチリと受け止められる。
そして、到着した階層で看護師さんと警備員が再び無言のやり取りを済ませたのちに、廊下の奥にまで麻乃を乗せた車イスは移動し、突き当りにある入浴場の重たい扉の中へ麻乃を連れ込んでいく。
「本日入浴予定の99番さんをお連れしました。前回と同様に排便の確認がないので、浣腸しています」
「ありがとうございます。あとはこちらで対応しますね」
麻乃の車イスを押していた看護師さんは、そういって入浴場の看護師さんへ麻乃を明け渡すと、扉の外へと出ていった。
「ふふ、おはようございます。たしか前にもお会いしましたよね? 本日入浴を担当する筒井です。とりあえず、浣腸されているようなのでまずはこのままおトイレに行きますよ」
「ン、んん……っ!?」
研修最終日に行われた初めての入浴――無理やり全頭マスクを被せられた日――のときと同じ看護師さんである筒井さんに挨拶されて、脳裏にあの日の出来事がフラッシュバックする。
あの日……。
もし、麻乃が全力で抵抗して、なんとしてでも拘束衣の魔の手から逃げ出していれば、今ごろはこのようなことにはなっていなかったのではないだろうか。
乳首にピアスをつけられた瞬間の違和感……。
両手に被せられたグルーブの存在……。
それらにもっと早くに気付いて、あと少しだけ本気で抵抗していれば——もしかすれば、麻乃は自宅のベッドでゆっくり休んでいたかもしれないのだ。
「ん……ッ、んぅぅ……っ」
そうやって後悔すればするほど、胸の奥が痛くなって、涙が溢れ出してくる。
いい加減、こんな生活は終わりにしたい。
早く、お家に帰りたい。
もう麻乃は十分頑張った。
なのに、一体いつになったら、麻乃は解放されるのだろう。
「さぁ、おトイレですよ」
でも、全頭マスクに覆われた麻乃の表情は筒井さんたちには見えず、何かを気にする素振りもない。
麻乃を車イスに磔にしている抑制帯とカテーテルの尿パックをただ事務的に外していくだけだった。
「立ち上がってから、パンツを脱がしますね」
「んぉ……ッ、おッ……!?」
彼女たちにとって麻乃の意思など気に掛けるようなものではないのかもしれない。
車イスから無理やり起こされるように両脇から二人係りで身体を立たされる。
視界が塞がっていても、背中のほうで股下のベルトを固定しているバックルが緩められていくのがわかった。
それだけ、拘束衣のベルトは麻乃の股下に食い込んでいたのだろう。
あとはこの調子で、前と同じようにトイレでウンチをするだけ――のはずだったのに――
「ンッーー!? ンーーーーッ!?」
めちゃくちゃになっている麻乃の感情に覆い被さるように、突如として、強烈な腹部の痛みに襲われる。
おなかの中に溜まっていたものがグルグルと暴れだし、激しい便意によって、おなかの中に溜まっているものがお尻から外へ飛び出そうとする。
「あ、ダメですよ! 暴れないでください!」
「ン、ん~~~~ッ!?」
だから麻乃は、今すぐにでもトイレに座り込もうと肩を揺らして暴れだす。
なのに、両脇の看護師さんに身体を押さえつけられていて、動くこともできずにお尻を突き上げるように足を震わせるしかない。
このままじゃ、——うんちを漏らしてしまう。
「ンーーーーーーーーーーーーーッ!!」
そう思ったところですでに手遅れで……。
「あら……? あらあら……まぁ……なんてこと……」
「ン、んッ~~~ッ!?」
びちゃ、ビチャビチャッ、と音を立てながら、暖かいものがラバーパンツの隙間から、太ももを伝って床へと滴り、もわっとした便臭を周囲にまき散らす。
つい先ほどまでは、ちゃんと我慢できていたはずなのに。
なんでパンツを下げる間際にこんなことになってしまうのか。
もうわからない。
「あなたってば、おしっこだけじゃなくて、うんちも漏らしちゃう患者さんだったのね……? かわいそうに……」
「ン……ッ!? ンぅ……うぅ……ッ」
特に動揺する様子もなく、ただ心配されるかのように筒井さんにそう呟やかれて、麻乃の自尊心が砕け散る。
うんちを漏らしてしまったという現実に、頭が真っ白になって、下腹部当たりを埋め尽くす自分の排泄物のぬくもりに、麻乃は何も考えられなくなった。
けれど、時間は止まることなく流れているのか、筒井さんは麻乃の拘束衣の股下のベルトを緩めてから、カテーテルが抜けないように股間を覆っているラバーパンツを脱がしていく。
パンツ内にある排泄物をトイレの中へと捨て去ると「こっちへ」とほかの看護師さんに指示を出し、お腹周りから下肢にかけてうんち塗れの麻乃を浴室の中心部へと移動させる。
「とりあえず、お湯で洗い流しますね」
「ンん……ッ!? ん、んッ……!?」
拘束衣の上から、シャワーでお湯がかけられ、肛門や下肢に付着してる排泄物が流されていく。
お尻から下肢にかけて手際よくそれは行われ続け、あっという間に肌にこびりついていた不快感も消え去っていく。
「さぁ、残りのうんちも出してくださいね」
それらの作業が終わると麻乃は再びトイレの便座へと強制的に座らされた。
やられていることは前と同じ。
筒井さんにへそのあたりを時計回りにぐるぐる摩られ、排便を促される。
まるで子どもをあやすみたいに行われるその行為に、自分がどれほど哀れな存在なのか麻乃は思い知らされる。
正直なところもううんちなんてしたくない。と麻乃は思っていた。
けれども、それが数秒続けられるとおなかに残っていた不快感が再び芽生え始め、さらに数十秒経過したころ——
「ンぅッ、ん……ッ! ン~~~~ッ!」
麻乃は思いのままにうんちをしていた。
水分量だけが多い、やけに水っぽいうんち。
それは、明らかにお腹を下しているときに排泄されるタイプの便に感じた。
いや、そもそも麻乃は固形物を口にしていないのだから、うんちが水っぽくなっても不思議じゃない。
この先もずっと、こういううんちをしなくちゃいけないのかもしれない。
もう麻乃は普通のうんちもさせてもらえないのだろう。
そう思うと尚のこと涙が出てきた。
「よくできましたね~、えらいですよ」
「ん……ンん……っ」
なのに、うんちをしたことを褒められる。
この病棟に閉じ込められて数日間が経過するが、こういった麻乃に対する対応は研修のときと何も変わらない。
ここの看護師さんたちはあくまでも事務的に麻乃の身体介護をやってのけているだけなのだ。
「では、こちらで身体を洗いましょうか」
お尻の清拭が終わると左右の看護師さんに連行されていくように、浴室の中心部へと連れていかれた。
そこには当たり前のようにシリコンベルトが張り巡らされたストレッチャーが用意されていて、麻乃はその上に強制的に乗せられる。
「ネックコルセット脱がしますね」
肩幅を開いた状態で両足がシリコンベルトに固定されると、麻乃の首を真っすぐに固定している分厚い茶革のネットコルセットが最初にはずされた。
喉もとにあった圧迫感が消え去るとそれだけで呼吸が楽になる。
「拘束衣も脱がしますよ」
「ン、んぅ……っ」
次には拘束衣のベルトもかちゃかちゃといじられて、瞬く間に両腕が動かせるようになっていく。
背中の締め付けも緩みだし、背筋から外気の湿り気も入り込んできた。
「両腕は前に伸ばしててくださいね」
麻乃は、抵抗することなく言われるままに看護師さんへ身を預け続ける。
全頭マスクを着用している限り、何も見えないから、怖くて暴れることもできないのだ。
「いいですね。では、脱がしますよ〜」
麻乃が両腕を前に出すと、スルスルとキャンバス生地が肌に擦れながら遠くへ離れていき、上半身がほぼ自由になる。
とはいえ、麻乃の両手には、相変わらず革製のグローブが嵌められており、グーを作ったままの指先に、自由は何一つ存在していない。
「はい、次は身体を固定していきますね」
そのことをわかっているからだろう。
両手のグローブは脱がされることなく、看護師さんは麻乃の身体を仰向けに倒し、手首などを抑えつけたままストレッチャーに横にする。
「動かないでくださいね〜」
「ン……ッ、ンぅぅ……ッ」
そのまま手首や肩を抑えられている間に、首、胸、腰、腕、と各所のシリコンベルトがテキパキ留められ、ものの数秒で、裸に向かれた麻乃の身体はストレッチャーに磔にされていた。
「グローブ外しますね」
各部位のベルトの緩みがないことを確認してから看護師さんたちは、麻乃の両手を拘束している革のグローブを外し、指先を自由にする。
ずっと、握り拳を作っていたはずの指先がやっと動かせるようになったけど、ストレッチャーに縛り付けられているから、対して自由になった意味もない。
それがただただ虚しく感じる。
「革のマスクと全頭マスクも外しますね」
「ン……ッ!? ん、ん~~っ!
次に、後頭部の革帯が緩められ、口腔内を埋め尽くしていた異物がゆっくりと麻乃の口から引き抜かれていく。
「――んぉ、おッ、おぉッ……!? あ、~~~んぁッ!? お、おぇ……ッ」
看護師さんの手に掲げられたその太さと長さは、実に凶悪で、唾液を絡ませたシリコンゴムの突起は惨たらしい見た目をしていた。
ぽっかりと開いたままになる白い全頭マスクの開口部分から、艶めかしい吐息とよだれが溢れ出すのは無理もないだろう。
看護師さんたちは、その革マスクの処理を済ませてから、麻乃の顔を覆っている全頭マスクへ手を伸ばし、編み上げひもを緩めてから、ファスナーを開いていく。
そして、麻乃の顔を封じ込めていた全頭マスクを頭から取り除くと――
「……ッ、んぁ、あ……っ、はぁ……っ、はぁ……ッ、ぅぅ……ッ」
汗と涎でギトギトになった幼い面影を残した麻乃の顔が顕になる。
短く整えられた髪の毛も何もかもぐちゃぐちゃで、女の子にはあるまじき匂いを浴室に漂わせてしまっている。
その瞳には大粒の涙が浮かんでいた。
「も、もういぁえす……ッ、ゆ、ゆるひてくらはい……っ」
「はい、開口器つけますよ〜。お口大きく開けてくださいね〜」
「あッーー!? ぃやあッ……! はふけ――んぁッ!? あが、あぁッ!? あ、あがぁあ!?」
何かを訴えるいとまもなく口を摘まれ、上下の歯の間に差し込まれてきた開口器具によって自由になった口が裂けるほどに開け放たれる。
それは、研修最終日の日にも装着された器具——アングルワイダーだった。
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