【改稿版】閉鎖病棟体験その3 (Pixiv Fanbox)
Published:
2022-10-20 14:50:11
Edited:
2023-03-26 01:16:52
Imported:
2023-05
Content
麻乃がベッドに磔にされてから、どれだけ時間が経過しただろう。
乱れた短い黒髪が額にへばりつき、汗ばむ全身から放たれる熱気から「んふぅ」と深いため息が霧散した。
なのに、抑制帯の拘束は一切緩みを見せていない。
――ギシッ。
麻乃がわずかでも身を捻るたび、抑制帯は自らの存在を誇示するように鳴き声を上げるだけだ。
「んふぅ……ッ」
ベッドに磔にされてからというもののひたすらに拘束に抗い続けてきたのだから、いい加減、少しくらい緩んでくれたっていい気がする。
しかし、運動エネルギーを吸収する縛めは、拘束衣を纏う身体の輪郭をシーツに深く沈ませ、皺を作り上げるだけ。
ただ大人しく、ここに一生拘束され続けるのが宿命であるかのようにベッドに磔にされた麻乃に変えられるものは何一つない。
その現実を直に体験して、漠然とした不安のみが麻乃を包み込んでいた。
「ングぅうっ!」
しかし、それでも麻乃は、手のひらの汗を握りしめて、胸の前の両腕に力を込めた。
たとえこの抵抗が無意味であろうと、もう関係なかった。
「——ッ!」
口枷をガッチリと噛みしめ、身体を引き裂くようなイメージで手足に力を込める。
上半身を包み込むキャンバス生地の拘束衣は着用したときと同じ姿形をしたまま変化せず、汗を含んだ麻乃の肌に馴染んでしまっている。
この拘束衣を脱ぐことさえできていない麻乃が、そもそも抑制帯の縛めから自力で抜け出すことは不可能だろう。
ただの女の子である麻乃が、大の大男をも拘束しておくことができる縛めから抜け出すなど奇跡のようなものだ。
それは、この縛めに抵抗してきた麻乃が一番よく理解している。
しかしだ。
自分一人しか居ない病室。
周囲の音もなく、ただただ無心に過ごすだけの時間。
そのような孤独な時間を何もせずにじっとして過ごすより、あらがえば抗うほどどうしようもない無力さを思い知ることのほうが、退屈ではなかったのだ。
「――ングッ」
でも、だからと言ってずっと手足に力を込め続けることはできない。
拘束に抵抗しないときは、天井の照明や、クッション塗れの病室の壁を麻乃はただただ見つめていた。
その時に感じる無意味な時間が異様なほど麻乃は嫌いだった。
天井は何度見ても同じで、一定の煌めきを放射させながら、麻乃の痴態を照らし続けるだけだし、壁もクッションが並ぶだけで、何一つ変化は訪れない。
ぼーっと何も考えず、ただ時間が経過していくことがこんなにも精神に酷い苦痛を与えてくるなんて、麻乃は知らなかった。
「……ッ」
こんな空間に、あと何時間居座り続けたらいいのだろう。
拘束されたまま放置されているせいなのか、麻乃の体感時間はボヤケてしまい、どれほどの時間が経過したのかもわからない。
お昼の時間にやってくるはずの新井さんが未だに訪れていないということを考えると今はまだお昼になっていないということだけしか麻乃にはわからない。
「ンムッ……ッ」
退屈さに耐えかねて、シリコンの塊を噛みしめた途端グチュり。と口の中で音が鳴る。
フェイスクラッチマスクという口枷のせいで顎をまともに開くこともできないため、麻乃はこの塊をずっと咥えっぱなしだ。
口腔内の熱を取り込み、口の中に存在し続けていることが当たり前かのように振舞っている口枷の存在にも苛立ちを覚える。
「んふぅ……んむっ、んぐッ」
だが、怒りをぶつけようにも口の中はシリコンで満たされているから、結局はそれが与えてくる制限の中で麻乃ができる唯一の行動をとることしかできず、歯茎の裏に触れるシリコンの内側で舌を固定されたまま、口内に溜まった唾液をゴクリッ。と一気に飲み干す。
「ん……ッ」
それをするだけで口の中を満たしている不快感が少しだけ緩和される。
しかし、緩和されないものもある。
麻乃の視点からは見えないが、黒いゴムパンツを履いている股下。そのデリケートな部分が妙に汗ばんでしまっており、ネチャネチャとした気色悪い感触を麻乃に与えてきてるのだ。
それだけなら、まだなんとかなったかもしれないが、下腹部から伝わる不快感はもう一つあった。
人間なら誰でも持っている生理的欲求の一つ。
——尿意。
今すぐ漏らしてしまうというほどでもないが、もうその限界は近い。この病室にはナースコールも存在せず、身体をベッドに拘束されている以上麻乃が自らトイレに行くことは不可能。
このままベッドの上でおしっこを漏らしてしまうような醜態を二十代にも到達していない麻乃が晒せるわけもなく、ひたすらに「おしっこしたい」という欲求を耐え続けるしかない。
もしも、新井さんが間に合わなかったら、ベッドの上で寝小便をしてしまうことになる。という最悪の展開が脳裏に浮かぶが、それだけは、絶対に避けたい。
ならば、麻乃にできることは一つだけ。
このまま新井さんが来るまでずっとおしっこを我慢する。
それしかない。
そう考えた瞬間にブーッ。と高いブザー音が室内に鳴り響いた。
「んぅ!?」
警報のような耳障りな音に驚いて、頭を起こした麻乃が入口の扉に視線を向けるとガチャンッ。と鍵が開き、ガラガラ音を立てながら、重厚な扉が開かれる。
「川嶋さん、おまたせしました。お昼ごはんの時間ですよ」
扉から顔を見せたのは麻乃に拘束衣を装着し、この病室のベッドへ抑制帯で磔にした張本人である新井さんだった。
明るく染めたセミロングの髪をポニーテールに結って、白いナース服に身を包んだ三十路ほどの女性看護師。
ガラガラとキャスターを転がしながら、ホテルの個室サービスのように学校の給食で使われているような銀色のワゴンカートを押して、病室へ入ってくる。
そのワゴンカートの上には、シリンジ――注射器型の大きな容器――と他にもいくつかの道具が揃えられていた。
「んぅうう!」
待ち望んでいた人物の登場に麻乃は興奮気味にくぐもった声を何度も上げて頭を右往左往に振りながら、尿意の存在を知らせるべく腕を小刻みに動かした。
どちらかというと、これ以上研修を続けたくない。という意思のほうが強めだったが、言葉を発せられない以上、身体の使える部位を全力で使って、緊急であることをアピールする。
「あら、嬉しそうに喜んでどうしたの? 何かいいことでもあったのかしら? って、こんなに汗をかいて……よほど拘束に抵抗していたのね。可愛い子」
新井さんは、汗ばんだ麻乃の前髪を軽く掻き分け、化粧で整えた唇を吊り上げてニコリと微笑む。
その様子からして、麻乃が伝えたい内容は何一つ届いていないようだった。
「ん、んんッ!」
「大丈夫よ。ちゃんとあとで綺麗に清拭してあげるから、心配しないで。先にお昼ごはんにしましょう」
たまらず、首を大きく振ってそれどころではないことを麻乃は伝えようとするが、あっさりと流されてしまう。
「ンンッ!? ンムゥ!!」
ラテックスの黒い手袋を穿いた手で、フェイスクラッチマスクの中心部――麻乃の口を塞いでる部位――に付属された銀色の金具をネジのように捻り、新井さんはパカリとマスクの蓋を外す。
「んふう!?」
蓋が外れると同時に、口内のシリコンの中心部――舌が押し込められていた筒状の空洞――が露わになり、その穴を通して麻乃は呼吸をすることができるようになった。
「これからお口に流動食を流し込むから鼻で呼吸しててね」
「あえッ!? えうう!? ――ん!?」
新井さんは、カートの上から長いチューブを持ち出し、もともと装着されていた銀色の金具と同じようにチューブの先端をネジのように捻り、フェイスクラッチマスクと連結してしまう。麻乃はその間も、必死に声を荒げて訴え続けるが、一向にとりあってもらえない。
「川嶋さんの年齢的に、500ミリリットルもあれば十分ね」
新井さんは、手元に収まっているシリンジへ、真空保存されている流動食を吸引していく。
シリンジの中は瞬く間に白く濁った流動食で満たされていき、麻乃にはそれが何から作られたものなのか見当もつかず、さらに激しく声を上げた。
「そんなに怖がらなくても大丈夫よ。栄養ドリンクのようなものだから」
「んむぅぅぅううう!」
シリンジの先端部がチューブに連結される。
「残さずきれいに呑み込むのよ」
「ングゥう!!」
身体を暴れさせても、拘束から抜け出せるはずもなく、強制的にそれを受け入れるしかない。
新井さんがシリンジのポンプを圧すと、口と繋がるチューブが白く染まり、麻乃の口の中へ液体が注がれていく。
「――んぁっ!? んむっ、ん、んんッ!? ――っ、んっんぐッ、んむぅ!」
シリコンの先端からドロっとした生温かいものが染み出し、強烈な甘味を含んだとろみが、口内を満たしてくる。
風味は感じず、ただ甘い。
それでいて、マシュマロを溶かした原液を直接流し込まれているように喉に絡まる濃厚さが、後味を引き延ばす。
「――っ」
喉を鳴らしてゴクゴクと呑み込むたびに頭の奥がクラクラしてぼーっとしてくる。
麻乃は流動食を授業の一環で一度だけ飲んだことがあるが、このような形で強制的に摂取させられたことはない。
それに、麻乃が飲んだことのある流動食は缶ジュースのような感じでここまで甘さを含んでいなかったし、これほど喉に絡みつくような呑み込みにくさのある液体ではなかった。
「そうそう、その調子よ」
「んッ、ングッ……っ、ん、んぐッ、んむっん」
次から次に注がれてくる流動食を処理するために、麻乃は全ての神経を一か所へ集中するしかない。
拘束に抵抗することもやめ、口の中を満たす液体をただただ、喉を動かして呑み込んでいく。
それは、飲めば飲むほど麻乃の胃袋を膨らませてくる。
「あと、もう少し」
「んぁっ、んむっ……ん、んんッ!」
ポンプの圧力によって、口腔内へ注がれ続ける液体。
有無を言わさず、強制的に流動食を摂取させられていく背徳感。
あまりにも現実離れした状況のせいなのか、先ほどよりも麻乃の身体は高ぶり、熱をさらに放出していく。
歪な高揚感が芽生えていく自分の身体に疑問を抱きながら、抽出された流動食すべてを麻乃は飲み干した。
「はい、ご苦労さま」
シリンジの中身が空になったのを確認し、麻乃の口枷に接続されたチューブが抜き取られる。
「んふぅッ……っ!?」
膨らんだお腹が拘束衣と抑制帯で締めつけられる苦しさに息を漏らす間もなく、すぐさま銀色の金具が口枷にねじ込まれ、わずかな空気の穴に蓋が施された。
「……ッ」
流動食を摂取してから、頭がクラクラして、思考が定まらない感覚に襲われる。
ぼーっとしたような、熱に浮かれたような感覚が麻乃を包み込んでいる。
「んッ……ぅぅ……ッ」
火照った身体を脱力させて、ふぅーッ、ふすぅーっ。と鼻息を乱しながら、新井さんの後ろ姿に目を向ける。
シリンジやチューブなどの道具を片付けながら、今度は別の道具を手に取っている。
「さて、次は下の処理ね。そろそろ催してきたころでしょうし、たくさん出してもらおうかしら」
「んぅ!? ん~~ッ!?」
いったい何をするつもりなのか、麻乃が疑問に思っていると新井さんは麻乃の股間に密着している黒いゴムパンツのファスナーを摘まみ、ジジジッとクロッチ部分を開いてしまった。
「あらあら、これは……なかなかすごいことになってるわね……?」
産毛一つない若々しい割れ目の膨らみが露出し、むわっと熱が溢れるように、アンモニア臭と混じった独特の匂いを室内へ充満させていく。
「――ンムッ!?」
麻乃の視点からは、自分の恥部がどうなっているのか見ることはできない。
頭を起こしても、拘束された両腕が自分の胸を圧し上げているせいで視野が届かないのだ。
だが、自分の股に空気が触れて、スースーするのはわかる。
「ふふ、綺麗なピンク色をしている割には、川嶋さんっておませちゃんなのね」
動揺する麻乃の表情と露出している恥部を交互に見比べて、新井さんは苦笑いをしながらそう言って、麻乃の桜色の割れ目を黒いラテックスに包まれた指でそっとなぞる。
「ふぐぅ……ッ!?」
愛撫のようなくすぐったい刺激がデリケートな部分をかすめ取り、麻乃はびっくりして声を上げた。
「中もこんなにいっぱい濡らしちゃって……よほど、お楽しみだったのねぇ」
黒いラテックスの指先に透明の蜜が絡まっている様子を麻乃にも見えるように、新井さんは指先をネチャネチャと動かして、銀色の糸をねっとりと絡ませて遊ぶ。
「んむッ!? んぐう!!」
局部の不快な源を汗だと思っていた麻乃にとって、目の前で見せつけられた粘液は衝撃的だった。
自分の局部。
おしっこの穴とは違う別の穴からあふれ出している粘液。
性的な刺激を受けることによって分泌されるであろう女の蜜。
それが自分の膣口からあふれ出しているなんて、信じたくなかった。
「そんなに焦らなくていいのよ? 拘束されることに興奮しちゃって、こういうふうに濡らすのは川嶋さんだけじゃないから、慣れてるわ」
「ンンッ!? んむぅぅうううう!?」
大きく首を振る麻乃だが、桜色の割れ目から滴る蜜は今もなお顕在している。
拘束衣を着せられ、ベッドに磔にされただけで、麻乃は性的な興奮を示し、さらには欲情してしまっていた。
その事実が目の前に形となって露見するということは、新井さんの言うとおり、麻乃が拘束されたことに対して邪な感情を抱いていた証に他ならない。
「ふふ、もっと満足できるように直接気持ちよくしてあげてもいいけれど……まずはおしっこしちゃいましょうか」
ドクドクと心臓が跳ね回り、ふぅーーっ、ふすぅーーッ、と恥ずかしさに息を荒げる麻乃を気に掛けず、新井さんが持ち出してきたのはガラス製の尿瓶。
蛇の口のように開かれたシリコン部を麻乃の尿道にあたるように密着させ、尿が外へ漏れないように設置する。
通常の尿瓶と違って、尿を溜める器が縦に細長いため、股を大きく開かなくても簡単にセッティングされてしまった。
「さぁ、川嶋さん。おしっこしていいわよ」
「~~~~ッ」
拘束されて発情してしまう女の子という痴態を晒したばかりだというのに、次はおしっこをする瞬間さえも見せろという状況に、麻乃の頭は爆発しそうなくらい混乱していた。
研修に来ただけのはずなのに、自分は何をされているのだろう。
ベッドに拘束されていることも、今、おしっこをするように強制されていることも、何もかもが意味不明で、混乱をまとめようとしていた思考はみるみると消え去り、頭が真っ白になっていく。
「ちゃんとおしっこしないと、あとで漏らしちゃうわよ? それでもいいの?」
「~~ッ!」
新井さんから告げられた言葉に麻乃の中で一つだけ確かな答えが生まれる。
漏らしてしまうくらいなら、見られるくらいどうだっていい。
麻乃は思考を放棄するように、尿の開放だけに意識を向ける。
流動食を摂取したせいで尿意も限界に達していた。
「……ッ、んッ」
なのに、おしっこしようと意識すればするほどうまく排尿されてくれない。
いうことを聞かない自分の身体。
はやく、恥ずかしい想いから解放されたいのに、どうしてこんな時に限っておしっこがでないんだろう。
――ちょろ、ちょろろ。
「ンんッ!」
数滴だけ、おしっこがやっと出てきた。
麻乃がそう思ったら、膀胱に蓄積した黄色い体液がシャーーッと音を立てて、勢いよく尿瓶の中へ排泄されていく。
「んふぁ……ッ、ん……ッ、んぅ……ッ、ん~~ッ」
解放されていく尿意がもたらす解放感に包まれながら、ごちゃまぜになった感情を抑え込むように口の中のシリコンを噛みしめる。
「うふふ、ちゃんと言うとおりにおしっこ出来るなんて、川嶋さんはとってもいい子ね」
「……ッ」
新井さんに褒められて、麻乃は自分が一体何をしているのか、理解したくなかった。
人として大切なものを失っている。それだけは今の麻乃にもわかる。
なのに、疼くようなむず痒さが下腹部の奥で木霊して、何かを求めてしまっている。
「これでおしっこは終りね」
排尿が途切れたのを確認され、局部に収まっていた尿瓶が外される。
「少し冷たいけれど、清拭するから我慢しててね」
アンモニア臭を漂わせる尿瓶に蓋をし、新井さんは、濡れたシートで恥部の残尿をふき取りつつ、粘り気を含んでいる透明な蜜も一緒に拭き取っていく。
その動作は手慣れており、どこからどうみてもただの介護行為に他ならない。
「んっ、んふッ……んぁ、んぅッ!」
なのに、冷たい湿気が恥部の不快感を拭うたびに、麻乃は甘い声を漏らしてしまっていた。
シートが擦れるたびに、何とも言えないくすぐったさが腰に伝番して、気持ちいいのだ。
ソフトなタッチが触れるだけで、腰が浮かんでしまう。
もう少し。
もう少しだけこのまま触っててほしい。
「あら、こんなにお股をヒクヒクさせちゃって……もっとおまんこ触ってほしいの?」
「ンッ!? ンンッ!?」
新井さんの問いかけに麻乃は目を見開き、すぐさま首を左右に振る。
いくら何でも、こんなのはおかしい。
他人に清拭されて気持ちいいと感じて、自らデリケートなところ触ってほしいとおねだりするなんてどうかしている。
一体自分は何を考えているのだろう。
「大げさに首を振るなんて、図星かしら」
「んぐうううッ!? んむううう!」
激しく身体を暴れさせ、麻乃は拘束に抗うように「違う」と意思表示をする。
たしかに清拭されたときは気持ちよかった。
だが、アソコを気持ち良くしてほしいなどと麻乃は思っていない。
だから、麻乃は否定し続けた。
「ふふ、冗談よ。触ってあげてもいいんだけれど、他にも回らなくちゃいけない病室があるから、ゆっくりしてる暇はないの。ごめんなさいね。でも、川嶋さんが退屈しないようにステキな玩具を用意してあるの」
「んむうう!?」
玩具というワードに疑問の声を荒げる麻乃の割れ目を新井さんはぱっくりと広げる。
「って――あら、もう濡れてる」
先ほど清拭されたばかりだというのに麻乃の恥部は何かを待ち望むように、透明の蜜をふんだんに溢れさせていた。
新井さんは、ちょっと残念そうな顔をしてから、小さなピンク色の道具――クリキャップ――を麻乃の身体に馴染むように恥部から溢れる蜜と絡ませる。
「――ンッ!?」
そして、麻乃の割れ目の頂上で包皮に隠れている小さな突起を外気に触れさせるように指先でつまんで露出させた。
「クリちゃんもこれだけ大きく勃起してるなら、簡単に装着出来ちゃいそうね」
新井さんは蜜で銀色に潤ったクリキャップを紅く実る麻乃の可愛らしいクリトリスへ円を描くように馴染ませながら、クチュッ、クチュッ、と突起を何度か吸上げて、馴染ませていく。
「んっ、んふぁッ……!? んぁ、んッ!?」
内ももをビクビクと震えさせて、なんだがわからない熱い刺激から逃れようと麻乃は下腹部に力を込めて抵抗する。
だが、抑制帯による拘束のせいで、その抵抗は意味を成していなかった。
麻乃の足が真っすぐにこわばり、骨盤に力が集中する。
クリキャップから伝わるこそばゆいその刺激が頂点に達した刹那――
「――んぐうッ!!?」
キュッとクリキャップの中へクリトリスが完全に吸いこまれ、麻乃の腰が大きく跳ねた。
一番敏感な下腹部の神経が摘ままれて、強引に引っ張られているような、意味の分からない刺激が背筋を通って脳に電撃を与えてきたのだ。
「ン、んぐぅう!?」
だが、刹那に与えられるだけの刺激だと思っていたそれは、一向に消える気配がない。
「ングッ、んっ!? んむぅうッ!? んぐぅうう!?」
自分の秘所が延々と吸引されている歪な感覚は、麻乃がどれだけ腰を左右に揺らしても離れてくれない。
それどころか、腰を振るという僅かな行動一つだけで、遠心力にクリトリスが引っ張られてしまい、経験したことのない甘美な刺激が麻乃の呼吸を慌ただしく侵していく。
「このクリキャップはね、川嶋さんのような拘束に悦びを覚える患者さんを慰めるために開発された特別製のものなの。微弱な電気を含んでいる特別なラバーを使用していて、吸引したクリトリスに全自動で一定の刺激を送り続けてくれる便利な代物だから、きっと退屈することはないと思うわ」
「――んッ、ンぐッ……ッ!? ん、ン~~ッ!?」
今まで感じていたむず痒さよりも数段階迫り上がった終わらない刺激に、新井さんの言葉など麻乃の耳には入ってこない。
ただ、股間に延々と刺激を与えてくる異物を外そうと腰をビクビクと震えさせるだけだ。
なのに、新井さんはクリキャップがパンツの中に収まるように股間のファスナーをジジジッと閉じてしまう。
「ふふ、とっても気持ちいいでしょ?」
「んぐうっ、うぅうッ!」
新井さんは微笑みながら、頭を左右に振る麻乃の黒髪を撫でて自分の子どもをあやすように慈愛の満ちた目で見つめてくる。
「ンッ、んんっ! んむぅう!」
しかし、その間も麻乃のクリトリスを吸引し続ける刺激は残ったまま、元には戻らない。
「それじゃあ、私は他の患者さんのところへ行ってくるから、川嶋さんは好きなだけその玩具を楽しんで頂戴ね」
「んっぐッ!? ンンーーーーッ! んむうううううッ!?」
麻乃は、拘束衣の中で激しく身体を暴れさせ、抑制帯に抗いながら、ワゴンカートと一緒に病室から去っていこうとする新井さんを必死に引き止めた。
しかし、閉じられた扉からガチャリッと施錠音が響き渡り、病室は静寂に包まれる。
麻乃の局部に装着された玩具を外してくれる人は、もういない。
「~~~~ッ」
あまりにも無情な行いに麻乃の身体から力が抜け落ちていくのもつかの間。
「んむぅぅぅうう!? ん、ン~~ッ、んぐぅぅうう!?」
静まり返る病室の中で、ベッドに磔にされている麻乃は、クリトリスへ伝わってくる刺激から逃れるために、躍起になっていた。
手も足も出せない完全拘束の中で、一方的にクリトリスを虐められ続ける。
この時間があとどれくらい続くのか。
いつになったら終わるのか。
麻乃は、想像したくなかった。
三日間の内の一日さえ、麻乃は通過していない。
研修が終わるまでこんな玩具に自分の身体を好き勝手に弄ばれ続けるなんて絶対に嫌だった。
「――ッ、ん!? ン~~~ッ!」
だが、玩具を外さない限り、クリトリスから伝わってくる灼けるようなむず痒さは消えてくれない。
しかし、拘束されて身動きが取れない麻乃が自分で玩具を外すことなど到底かなわない願いだ。
もう、何もかも絶望的で、自分が何をさせられているのかも意味が分からなくなる。
いったいこの研修は何のために行われているのだろう。
そんなことを考える余裕さえ消えていく。
「――ンッ!? ンゴッ、ゴフッ……!?」
むやみやたらに激しく拘束に抵抗し続けたせいで、喉の奥へ入り込んできた唾液で大きくむせてしまう。
忌々しい口枷のせいだ。
——ヴィッ、ヴィッ、ヴィヴィッ。
「ングッ!? ングぅぅうううッ!!?」
——ヴィィィィィィイイイッッ。
すると、シリコンを強く噛みしめたところへ、ローターのような微弱な振動が動き出し、敏感なままのクリトリスを突然責め立ててきた。
今まで感じなかった新しい刺激。
新井さんの言っていた一定の刺激を与える全自動の玩具が動き出してしまったのだ。
「ンゥッ、ンンッ!? ん……ッ! んッ、ングぅ!?」
強制的に享受させられる微弱な振動のせいで下腹部が小刻みに震え、内股を力強く締めつけ、腰が勝手にビクビクと動いてしまう。
胸の下にある両腕が、拘束衣の中でギシギシと虚しい音を立てながら軋む。
だが、縛めは緩む気配はなく、完全な拘束のみが麻乃を縛りつけたままだった。
「ンッ、んんっ!? んむぅう!」
自分の身体が自分のコントロール下から離れていくような歪な感覚に口枷の内側で麻乃は悲鳴をあげることしかできない。
「——ンッ!? ゴホッ、おッ!? ――ンゴッ!?」
口内に分泌される唾液の量が増えて、飲み込むことを忘れた途端気道に唾液が入り込み咽る。
——ヴィッ、ヴィッヴィッ、ヴィィィィィィッ。
「ん、ン~~~ッ!? んぐッ、う~~~ッ!」
咽せているところへも容赦なくクリトリスへ振動が襲いかかり、麻乃の呼吸はますます乱れ、あまりの刺激に耐えきれず、枷に封じられた華奢な両足を激しくバタつかせた。
「んむぅぅうッ! ングぅぅうッ!」
だが、意味はない。
ベッドの四方八方へ張りめぐらされた抑制帯に無残にも力が抑え込まれ、枷が肌に食い込むだけだ。
「ングッ、んッ……ッ、ぅぅ!」
上半身も激しくバタつかせ、拘束衣そのものを破いてしまうかのごとく、縛めに抗ってもそれは変わらない。
麻乃を磔にしている拘束は、そんな簡単には緩まない。
なぜなら、麻乃が身につけている拘束衣は、屈強な男さえも容易に拘束することができるように開発された拘束衣。
それも、麻乃の体格に合わせ、緻密に計算されつくした設計になっている完全なオーダーメイド製。
この拘束衣は麻乃を拘束するためだけに編み出された専用の入院服であり、たとえ麻乃が拘束衣を脱げたとしても、すぐに担当の看護師が病室にやってきて、拘束衣を着せる規則になっている。そのことを麻乃は知らない。知らされていない。
「ングッ……ッ!」
それでも麻乃は、拘束から逃れようと躍起になって抵抗し続ける。
延々と与えられる刺激から逃げ出したかったのだ。
しかし、秘所から伝わる熱い刺激が、指先にまで伝達してきて、握っていた拳からも力が抜ける。
「ンンッ、んッ……! ンゥッ、ん、ンンッッ!」
さらに額には汗が滲み、黒いショートヘアは乱雑に散りながら、フェイスクラッチマスクのベルトに抑えつけられ、黒い瞳からは涙が溢れ出してきた。
「――――」
どうして、涙があふれだしてきたのか。
なぜ、麻乃はこんなところに閉じ込められているのか。
すべてが、わからなくなってくる。
誕生日にわざわざこんな山奥にまでやってきて、訳の分からない書類にサインをして、挙句に拘束衣を着せられたのちに、ベッドに磔にされて、今は玩具でクリトリスを弄ばれている。
十八歳になったばかりの女の子である麻乃に、こんな現実、到底受け入れられるはずがない。
いっそのこと、全部諦めてしまえばいい。
何もかも諦めて、ここで起きること全部受け入れて、身も心もすべて捨てて、何も考えない。
そうやって、過ごしていれば、終わりは必ずやってくるはずだ。
どうせ、麻乃は拘束からは抜け出せない。
研修だって、まだまだ終わらない。
玩具がいつ止まるのかもわからない。
だからもう、この快楽の波にすべてを投げ出してしまえばいい。
そうすればきっと、楽になれる。
「——んぎッ!? んぐッ!? ン、んんッ、ん~~~ッ!?」
そう思った瞬間。持続的に送られてくるクリトリスへの刺激が、今まで以上に甘美なものへと昇華していく。
無慈悲な拘束。
成すすべなく玩具に弄ばれる身体。
自分ではどうすることもできない現実が、麻乃の心をある一点の方向へ傾けはじめる。
「ンゥッ、ンンッ、ん……ッ! んぁッ! ん、んんっ、ングぅ~~~ッ!」
息は乱れ、身体はマグマの中に放り込まれたみたいに熱くなったまま、昂るばかり。
ヴヴッ、ヴヴッ――ヴィイイイイイイッ。
無暗に拘束に抗うのをやめて、クリトリスから伝わってくる刺激だけに麻乃は意識を集中する。
下腹部と内ももが連動するように靡いて、下腹部の奥でゆっくり大きく高まっていく感覚をただひたすらに受け入れてみた。
「~~~~ッ!?」
なのに——
足りない。
刺激が足りない。
あと少し。あとほんのひと握りの刺激が足りなくて、高みに届かないじれったい気持ちよさだけがずっと身体の芯で緩慢している。
「ンンッ、んぅッ……ンッ、んんっ、ンぐッッ!」
なんでもいい。あと少し。あと少しの刺激が加わればそれでいい。
麻乃はその一心でクリトリスに刺激を与えられる何かを求めてよがるように腰を上下に動かした。
――ヴィヴィッ、ヴィヴィッ、ヴィンヴィンヴィンヴィィィィィィィィィィイイイ。
「んんッ!? んむう~~~ッ!?」
振動のパターンが変わった刹那に一気に快楽のボルテージが駆け上る。
「~~~~ッ!?」
しかし、昇りかけていた熱量は、沸点にまで届かず、頂きに到達しない。
「んぐッ、ンっ!? んむうッ! ん、んんっ、ン~~ッ!」
拘束衣に封じられた両手を麻乃は激しく動かした。
今すぐにでもアソコに手を伸ばしたくて仕方がなかったのだ。
「――――ッ」
だが、触れない。触りたいのに触れない。
あと少しでイケるのに。
ギリギリのところを維持したまま玩具は振動を与えてくる。
イキたくてもいけないギリギリの刺激だけが、ずっと麻乃を虐め続けている。
「んぐううううううううううううううううううううッ!」
口枷を強く噛みしめながら、麻乃はめいっぱい叫んだ。
それで何かが変わるわけじゃないが、そうしないと耐えられなかったのだ。
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――
ブーッ。
不快な警報音が室内に鳴り響く。
ガラガララッ。と扉が開いて昼間のときと同じように、新井さんが銀色のワゴンカートを押して入ってきた。
「川嶋さん。夕食の時間ですよ」
「―――っ、―――ッ」
玩具をクリトリスに装着されてから数時間。
ベッドの上に磔にされている麻乃の身体からは艶めかしいほどに汗が滴り、ひたすらに甘い刺激をため込んでしまった黒いパンツの内側は愛液を滴らせたままびちゃびちゃに濡れそぼっていた。
しかしながら、麻乃のクリトスを吸い上げている玩具は、今もなお、ヴヴヴと僅かな振動音を鳴らして動き続けている。
「うふふ……どうやら、玩具はお気に召したみたいね?」
「ン……ッ、んぅ……ッ!? ン~~ッ!」
股間のファスナーが開かれ、大きく膨れ上がったクリトリスから、クリキャップがキュポっと外され、むず痒さを残すような切なさが麻乃の全身に込み上がってくる。
――もっと、触ってほしい。
――もっと強い刺激がほしい。
頭の中で考えてはいけない言葉が浮かんでは消える。
「蕩けた顔しちゃって、可愛い子ね。でも、まずはご飯にしましょう」
新井さんは、そんな麻乃の汗にまみれえた黒髪ショートを整えるようにそっと頭を撫でてから、ワゴンカートの上で夕食の準備を済ませていく。
新井さんがここに来たのは麻乃を気持ちよくするためではない。
麻乃に食事をさせるために訪れたのだ。
「残さずきれいに飲み干すのよ」
ふすぅー、ふすぅー、と鼻で呼吸をする麻乃の口を塞いでいる革マスクから新井さんは銀色の蓋を取り外し、シリンジに吸い上げた流動食を口の中へ注入する。
「ン……ッ、ん……ッ、んんッ……、んぐ、うっ……ッ」
麻乃は口の中に送り込まれてくるその液体を喉を動かして、ひたすらに飲み込んでいく。
「う、んぅ……ッ、ん……ッ、んむ……ッ」
飲めば飲むほどに甘い液体が喉の奥に絡みついて、お腹が満たされると同時に頭がぼーっとしてくる。
全身の肌という肌が疼いていくような感覚に襲われてきたような気がしたころには、シリンジのチューブが抜き取られ、革マスクに銀色の蓋が戻される。
「はい、次はおしっこしてね」
「――――ッ!? ん、んふぅ……ッ!?」
次の瞬間には、当たり前のように股間へ尿瓶が当てられ、排尿するように指示される。
おしっこなんかより、アソコを気持ち良くしてほしいと考えてしまう麻乃だったが、お昼から長いことおしっこはしていなかったこともあり、尿意は溜まっている。
――ちょろ、ちょろろッ。
だから、麻乃は昼間のときと同じように恥ずかしさを堪えながらも尿瓶に向かっておしっこを排出した。
そうしなきゃ、ベッドの上に漏らしてしまうと思ったからだ。
「ふふ、言うこと聞けていい子ね」
排尿を終えた麻乃にそう告げながら、新井さんはアンモニアの匂いと一緒に愛液を滴らせた麻乃の割れ目を湿らせた白い布で綺麗に清拭していく。
「ん……ッ、ん、ンッ……ッ!? ん、んふッ、うッ……ッ!?」
冷たい布巾で丁寧にアソコが清拭されるたびに麻乃の内ももが震える。
だが、震えているのは清拭されてるアソコだけじゃない。
拘束衣が擦れる僅かな衣擦れの刺激だけでも麻乃の身体は、そのくすぐったさに身じろぎしてしまっていた。
肌に触れる一つ一つの感触が煩わしいほどに心地よいのだ。
「ん、ンッ……ッ、んむぅ……ッ!」
麻乃は少しでもその刺激に満たされたくて、押しつけるように浅ましく腰を持ち上げて、アソコへの清拭を受け入れる。
新井さんもそれに合わせるように割れ目の外から内側までを綺麗に清拭してくれて、布がアソコに擦れるたびに何とも言えない快感がゾクゾクと麻乃の背筋に伝わってくる。
「ンッ、ん、んッ……ッ! ンぅッ、んッ……ッ!」
それがすごく気持ち良くて、麻乃は内ももを震えさせながら、さらに腰を擦りつけるように動かす。
「はい、綺麗になったわ」
しかし、その心地よさも、清拭が終わるとすぐに途切れてしまう。
「ん~~ッ、ん、ン~ッ!」
切なさを感じて、もっと触ってほしい。と麻乃は猫のように喉を鳴らしておねだりする。
「あらあら……、まぁまぁ……、あなたって本当に淫乱なのね……? でも、ダメよ。これから消灯時間になるから、玩具はお預け。数分後には部屋の照明が暗くなるから、朝になるまでゆっくり休むこと。いい?」
「んむッ!? ん、ン~~ッ!」
淫乱。という言葉に麻乃は正気を取り戻す。
一体自分は、研修中に何を求めてしまっていたのだろうか?
想像すれば想像するほど、麻乃が求めていたものが性的な欲求の塊としか思えなくて、淫らに腰を振っていた事実に顔が茹だっていく。
「~~ッ、ん……ッ」
だというのに、麻乃の身体は意思に反してクネクネと動き続けてしまっている。
新井さんはそんな麻乃の股間のファスナーを締めてから「おやすみなさい」と一言だけ告げるとワゴンカートを押して病室から出て行ってしまった。
暫くすると天井の照明が一度消えて、薄暗い照明に切り替わる。
薄暗いと言っても天井から降り注ぐ明かりは麻乃が寝転がる場所まで行き届いていないのか、ほとんど真っ暗だ。
「ン、んぅ……っ、ん……ッ!」
暗闇の中。麻乃は小さく身じろぎしながら、拘束に抗い始めていた。
無意味なことだと知りながらも、そうしていたのは身体が疼いて仕方がないからだ。
敏感になっているアソコを誰かに触ってもらいたくて上下にゆする。
すると、鼠蹊部を締めつける拘束衣のベルトが少しだけ股に擦れて微かな刺激をアソコにもたらしてくれた。
「ンゥ……ッ、ん、ンッ……ッ、んむッ……」
麻乃はその調子でしばらく腰を上下左右に動かし、延々とアソコに残り続ける切なさをどうにかしようと躍起になる。
だが、それも束の間。不意に強い眠気に襲われ始め、麻乃はすぐに意識を失うのだった。
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