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この解剖図どこを見ているか分かりにくいなと思ったことはありませんか?


同じように見える解剖図にも難易度があります。読み解きやすい図は難易度が低く、読み解きにくい図は難易度が高いと言えます。難易度について少し解説してみましょう。


例えば表層の筋肉図は、体表との対応関係がつけやすく、分かりやすい解剖図と言えます。表層の筋肉図は「エコルシェ」という名称で呼ばれるほどポピュラーな図の一つです。これに対して、体表に現れにくい深部の筋になると推測しにくいので難しくなります。そもそも深層の筋を教科書に記載していないことも多いです。


斜めから見た図やアオリ、フカンといった中間視点の解剖図も、難しくなります。短縮法や遠近感のついた図も同様で、奥行きやパースという、初心者が習得するのに時間がかかる技法が加わっているものは難しいと言えます。


絵を描く人であれば、自分が絵を学んだ過程を思い出してみましょう。最初から見下ろし視点や見上げ視点、遠近法がきっちり合っている絵を描けたでしょうか?


意外と思われるかもしれませんが女性の解剖図も難しい図の部類に入ります。これは鑑賞者だけでなく図を描く人にとっても難しい。皮下脂肪で表層の筋肉が見えにくく、筋のボリュームも少なく、溝も現れにくいため、体表と対応関係がつけにくいのです。その結果、図の形がずれてしまいます。


そのほか姿勢もあります。解剖学では手のひらを前に向けてまっすぐ立っている姿勢を基準にしていますが、基準なのでこれが一番簡単です。次に水平垂直などの単純動作が分かりやすい。全身を使ってポーズを取ったり、大幅に動いている姿勢になると遠近感や短縮方が含まれてしまうため、難しくなります。


他に教科書の掲載順序による難易度もあります。

教科書の掲載順序は主に骨や筋など系統ごとに解説する「系統解剖学」という方法と、部分ごとに骨や筋肉を一緒に解説していく「局所解剖学」という方法があります。細かくいうとその中間や目的ごとの分類もあるんですが主にこの2種類があります。


骨や筋肉を別々に扱う系統解剖学の方が、骨や筋の情報が混在しにくく、初心者にとってやや難易度が低いと言えます。例えていうなら建物のフロアーをくまなく見てから次のフロアーに上がる感じです。

局所解剖学では骨も筋肉もいっぺんに扱わないといけないので、情報量が多くなり、隣接した部分とのつながりが希薄になります。こちらは階段を使って違うフロアーを行ったり来たりする感じです。

個人的な意見ですが、局所解剖学は一通り骨と筋を知っている人には効果的ですが、初心者にはお勧めしません。


まとめると見慣れた視点や静かな姿勢で体表と対応関係がつけやすい解剖図は難易度が低く、処理する情報が多くなれば難しいといえます。実は、書籍の依頼を受ける際に、内容の難易度の設定は編集者さんとある程度共有しなければなりません。こうした話題を重ねて内容を共有したり、内容を選定していきます。

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