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いま(執筆時は2022年末)日本は美術解剖学ブームで、国内外の教科書が多数出版されています。どの書籍もそこそこ売れるので、出版社はこぞってライセンスを取得して翻訳しています。たまに私のように日本の著者が執筆した本が出る感じです。読者としては選択肢が多すぎてどれを選んだら良いかわからなくなる方もいるのではないかと思います。以下に入手できる「美術解剖学」とタイトルに入っている本、または美術解剖学の教員が執筆した本を羅列してみます。順番は出版社ごとに調べたもので、優劣などの意図はありません。


海外翻訳

やさしい美術解剖図(以下マール社、1980、224p)

人体デッサンのための 美術解剖学ノート(2014、88p)

シェパードの人体ポーズと美術解剖学(2017、144p)

アーティストのための美術解剖学(2013、304p)

モーションを描くための美術解剖学(2018、304p)

レイの美術解剖学 躍動する人体を描くための実践的なアプローチ(2022、208p)

スカルプターのための美術解剖学: Anatomy For Sculptors日本語版(以下ボーンデジタル、2016、224p)

スカルプターのための美術解剖学 2 表情編(2016、218p)

アーティストのための人体解剖学ビジュアルリファレンス(2021、304p)

ゴットフリード・バメスの美術解剖学(2020、508p)

目で覚える美術解剖学(以下パイインターナショナル、2017、304p)

目で覚える 動きの美術解剖学(2022、352p)

定本 基本の人体デッサン(2018、312p)

リシェの美術解剖学(ライフサイエンス出版、2020、280p)

ソッカの美術解剖学ノート(以下オーム社、2018、653p)

キム・ラッキの人体ドローイング(2020、392p)

芸術家のための人体解剖図鑑(エクスナレッジ、2018、256p)

モルフォ人体デッサン 新装コデックス版(以下グラフィック社、2019、320p)

服のシワを描く モルフォ人体デッサン ミニシリーズ(2022、96p)

脂肪とシワを描く モルフォ人体デッサン ミニシリーズ(2019、96p)

骨から描く モルフォ人体デッサン ミニシリーズ(2018、96p)

箱と円筒で描く モルフォ人体デッサン ミニシリーズ(2018、96p)

究極の筋肉ボディを描く モルフォ人体デッサン ミニシリーズ(2021、96p)

手と足を描く モルフォ人体デッサン ミニシリーズ(2019、96p)

関節と筋肉の働き モルフォ人体デッサン ミニシリーズ(2019、96p)

アナトミア 描くための人体の構造(2021、184p)

アナトミア 動く人体を描く(2021、264p)

イマジンFXの描くための解剖学(グラフィック社、2021、168p)

人体表現に生命を吹き込む アーティストのための形態学ノート(青幻舎、2017、200p)


国内

人物を描く基本 使える美術解剖図(ホビージャパン、2012、190p)

立体像で理解する美術解剖(技術評論社、2016、256p)

人体を描きたい人のための「美術解剖学」(講談社、2020、128p)

うつくしい美術解剖図(以下玄光社、2018、143p)

片桐裕司のアナトミー・スカルプティング 完全版(2019、172p)

スケッチで学ぶ美術解剖学(2020、160p)

名画・名彫刻の美術解剖学 名作の起伏から内部構造を判別する(SBクリエイティブ、2021、352p)


 上記以外にもあるかもしれませんが、ざっと並べるだけで30冊以上あります。美術解剖学の教科書は、基本的には似たような内容ですが、どのような読者を想定しているかによって編集が異なります。

 例えば『スカルプターのための美術解剖学』(ボーンデジタル)は、もともとCGクリエイターや造形師など立体的な造形のために編集されました。こうした背景には、ディズニーやピクサーが手描きアニメを廃止し、3DCGに舵を切ったという背景もあるかもしれません。『スカルプターのための美術解剖学』はラトビア人のアルディス・ザリンスさんらがキックスターターで支援を募って完成させた本です。1ページ完結の記事形式になっていて、必要な箇所が探しやすい体裁になっています。日本語に出版された後、ネットなどの口コミをきっかけに大ブレイクし、いまではイラストレーターなどさまざまなクリエイターが持っているスタンダードブックになっています。

 もう一冊人気の本、『ソッカの美術解剖学ノート』(オーム社)は、イラストレーター向けに執筆された本です。マーベルコミックでも仕事をしている韓国のイラストレーター、ソク・ジョンヒョンさんが9年かけてまとめた美術解剖学の本です。著者が学んだ体験が挿絵として描かれているので親しみやすく、お絵かき初心者の方々に人気を博しています。

 このほかにシリーズ本で人気を博しているのが、『モルフォ 人体デッサン』シリーズです。日本語版は網羅的な本が1冊、分冊が現在7冊出ています。著者のミシェル・ローリセラさんは、フランスの美術解剖学の教員で、直感的なドローイングで構造を図示するのが特徴的です。イラスト、CG全盛の時代にアカデミックな描画スキルを使って成功している例です。

 日本では上記の3冊がトップシェアでしょうか。個人的にはさまざまな本を読んで知識を補完していくことをお勧めします。図書館に置いてあることもしばしばあります。とりあえず手にとってパラパラと眺めてみるだけでも、気になるところが出てきたりして、知識が増えていきます。

 解剖学には「簡単」や「難しい」はありません。「大まか」か「詳細」かのどちらかです。「大まか」に解説することを「簡単」、「詳細」に解説することを「難しい」と言い換えているだけです

 最後に、教科書はどれがいいかとよく聞かれます。自分が読んでいる本が正しいかどうか不安なのかもしれません。それぞれ特徴があって出版されているものなので優劣はつけ難いです。どの本にもメリットデメリットがあります。じゃぁどうやって選べば良いか。これは私の中で簡単な指針があります。読んでいて面白ければ自分に合っているといえます。自分の感性と照らし合わせてみましょう。




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Comments

ららら

ここで質問をしても良いのか迷ったのですが参考書を買う上で気になった箇所があったので答えて頂けたら嬉しいです。 ソッカの美術解剖学ノートなのですがAmazonのレビューやTwitterでの感想を見てみると誤植が多いという意見が多く寄せられていました。現在は誤植が直って出版されていたり、ホームページの方に正誤表が掲載されているとのことですが、自分は解剖学の知識に乏しい為、間違って覚えてしまわないか少し気になってしまって… 加藤先生から見てソッカは購入しても特に問題はない本でしょうか。よろしくお願いします。