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「──パティシエに店番と接客やらせるとか、ちょっと過重労働じゃないのぉ?」


 金髪のショートヘアに、何処か淫靡な雰囲気の目つきで碧眼をすがめる美女──ミキータは勤め先であるNEWスパイダーズカフェに立ちながら、小さな不満を漏らしていた。

 そんなことを言いながら、店内には客の姿は無い……そういう暇な時間だからこそ、他の店員たちも買い出しやデリバリーにそれぞれ向かっているのだから。

 本来はこの店でパティシエをやっているミキータも、こうなると接客や給仕もしないといけない。

 いっそミキータも何かしら用事を作って外出して臨時休業という手もあるのだが、チョコ菓子の内の幾つかは発酵時間を気にしなければいけないので、あんまり遠出は出来ない。

 仕方なくニュース・クーから受け取った世界経済新聞を開いてみると、ミキータの表情がなんとも言い難い戦慄を浮かべて固まった。

 そこには昨今巷を騒がせている海賊の中でも、『最悪の世代』だの『十一人の超新星』だのと呼ばれる新進気鋭の悪党たちの中で、筆頭と言われることも多い麦わら帽子をかぶった青年の写真が、デカデカと一面に載っていた。


「キャハハ……まさか今や『五皇』とか言われる大悪党とはね。わたしとジェムが瞬殺されたのも、これじゃあ順当って話じゃない」


 ひきつった苦笑と共に、その大人びた容姿と似合わぬ子どもっぽい笑い声を上げるミキータ。

 写真の青年……“麦わらのルフィ”と言えば、司法の島エニエスロビーや大監獄インペルダウンの襲撃と言った、イカれた凶行を繰り返している大悪党である。

 もはやルーキーの括りには収まらない大物相手に、カフェのパティシエが交戦経験があるかのような謎めいたセリフ……実はミキータはかつて秘密犯罪会社“バロックワークス”のオフィサーエージェント──ミス・バレンタインとして活動していた過去があるのだ。

 現在は億超えの賞金首であるルフィが、まだ3000万ベリーの懸賞金だったころ、ミキータはとある任務の為に相棒のMR.5ことジェムと共に麦わらの一味と交戦……だが仲間割れの喧嘩に巻き込まれる形で、一撃で敗北した苦い記憶があった。

 そんな彼女自身も、“運び屋ミキータ”として今も750万ベリーという決して低くはない賞金がかかったままであるが、今のところNEWスパイダーズカフェの平穏が乱されたことは無い……何しろ全ての店員が、元オフィサーエージェントなのだから。


「まあ、あんたはそのまま地獄じみた“新世界”で好きなことしてればいいわ。わたしはここで、みんなと仲良く夢をかなえて暮らすから。最終的に幸せになった方が勝ちよ、キャハハハハッ!」


 実は思いっきり敗北したことを引きずっているミキータだが、敢えて哄笑を挙げることで自分がちっとも悔しくないと、今は充実しているのだとアピールして見せる。

 実際のところミキータは、NEWスパイダーズカフェでの生活には満足しており、パティシエ……というより“チョコ屋さん”……という夢を踏み外し、ズルズルと犯罪者に堕ちていった過去を想えば、今は正に理想の生活である。

 これであとは、理解のある……当然、前科にだ……彼氏でもいれば完璧なのだけれど──そんなことを考えながら新聞を畳むと、いつの間にか席に女が座っていた。


「(──!? え、どこから聞かれてた!? 変なこと口走ってないわよね!?)」


 流石にカフェの美人パティシエが、かつて“五番目の海の皇帝”にぶっ飛ばされたことがあるなんて聞いても、信じる者はいないはずだ……しかしベルも鳴らなかったし、どのタイミングで入店してきたかが分からず、ミキータは首を傾げる。


「えっと、キャハハッ! NEWスパイダーズカフェへようこそ!」


 照れ隠しとごまかしも込めたミキータの言葉に、女が反応してこちらに顔を向ける。

 金色の目と碧眼、それ落ち着いた表情。地味なスカートルックの、少女といってよい外見の持ち主だ。

 なかなかの美人だが、これといって目立つ特徴は無い……頭の上を見なければ。

 そこには偽物と一目で分かる、ウサギの耳を装着されており、この手のパーティグッズを装着する者にありがちな陽気さが、少女からはまるで感じられない。

 かといって別に陰気という訳でもなく、ごくごく普通に「ウサギの耳ですが何か?」みたいな様子なのが、却って奇妙だった。


「(まあ妙な格好で言えば、このカフェの店員も人のことは言えないしねえ。正統派の美女はわたしくらいだし)」


 割と失礼なことを仲間に思いながら、ミキータは笑顔で少女を見つめる。

 少女はまるで表情を変えることなく、下手すれば瞬きしているかも怪しい顔のままで……妙に店内によく通る声で告げた。


「あなたを注文した場合、幾らになりますか?」

「……はぁ?」

「私は、アナイと言います。一目惚れなのですが、あなたを注文すればお幾らになるでしょうか、“運び屋”ミキータさん」


 賞金首としての名前を出され、ミキータの顔に殺気が走る。

 彼女は紆余曲折あって現在の平和な生活を営んでいるが、別に改心したという訳ではないので、殺傷という選択肢は今でもかなり上位に残っている。

 即座に攻撃に移らなかったのは、アナイと名乗った少女からまるで敵意を感じなかったのと、その眼が澄み切っていて邪気がまったく無かったからだ。

 人殺しも含めた犯罪に幾つも関わってきただけに、ミキータは善人と悪人の見極めくらいはできるのだが……この少女は善人の割合のが大きい気がする。


「……なるほどね。そうやって、私たちの自首を促してるつもり? キャハハ、平和な市井のお嬢さんらしい行動ね」

「いえ、本当に、あなたが欲しいのです。注文すれば、お幾らですか?」

「ふざけないでよっ! だったら750万べりーよ!」


 意味の分からない悪戯を継続してくるアナイにキレて、自分の懸賞金を口にするミキータ。

 少女はやはり表情を変える様子の無いまま……どんっ! と机の上に、750万にはあきらかに“多い”ベリーを置いてきた。


「(なっ……!? こ、こいつ、何処からベリーを出したの!?)」

「1500万ベリーあります。『結婚は人生の墓場』と世に言いますので、あなたの人生と死後、二回分の代金をお払いします。これで死んでしまった後も、他の誰かを好きにならないでくれますか?」


 不可解な行動に、不可解な言動。

 どうやら本気で自分を“買う”つもりだと気付いたミキータは、“職業安定所”などと欺瞞めいた表現をされるヒューマンショップなどの存在が頭をよぎり、瞬間的に頭に血が上った。


「馬鹿にして! 金なんかじゃ埋まらない、私との格の差を教えてあげるわ!」


 アナイが差し出していた金を置く手の上に掌を重ねる。

 何を考えたのか、アナイは照れたように顔を伏せて見せたが、当然ここから行われるのは心温まる交歓等ではない。


「“強くなる石(クレッシェンドストーン)”──!」


 ミキータがかつて口にした“悪魔の実”は、超人系“キロキロの実”。体重を自在に変化させることができる凶悪な能力を与えるものだ。

 このままじわじわと腕に過重していけば、忽ちに泣きじゃくって命乞いをしてくると、ミキータは考えていた。

 ……しかし、何も起こらない。


「なっ……!?」


 単にアナイが耐えているとか、そういうことですらない。

 そもそも“キロキロの実”の能力が発動しておらず、ゆっくりとミキータの掌の下から、アナイに手を引き抜かれてしまう。


「(海楼石!? けれど、わたしの体に触れてきた様子は無かった!? それじゃあ“覇気”!? そちらも、何も感じなかった! じゃあ、一体……!)」

「手を握るなんて、積極的ですね。つまり、これはお金よりも……力で、あなたを魅了した方がいいということでしょうか」


 ゆっくりとアナイが立ち上がる。背はミキータより低いはずなのに、不気味さに圧倒されているせいか、アナイの体が凄まじく大きく見えた。

 ミキータを距離を離そうとしたが、足が動かなくなっていることに気付く。

 いや、違う……足が動かないのではなく“キロキロの実”の能力で、足だけが重くなっているのだ。

 ミキータは筋力自体はそれほど強いものではなく、高く飛ぶにもMR.5の爆風が必要であり、重くなった自らの体を動かせないという弱点がある。故に彼女が攻撃を行う際には、重くなった手足を叩きつけるという方法は使えず、落下か拘束を必要とするのだ。

 だから今、この場で足を重くする理由は一つもない……つまり“キロキロの実”の能力は今、ミキータ以外に掌握されているのだ。


「あ、あんた、まさか“悪魔の実”を……!?」

「はい。“ナビナビの実”のコモン・アナイ──あなたを魅了して見せます」


 初めてアナイが笑みを浮かべる。

 それはとても無邪気で美しいものだったが……ミキータの心を隅々まで寒からしめるには充分であった。



「んっ……あ゛ぁぁぁっ♥ ち、ちぎれるっ♥ ちぎれ、ちゃうぅぅぅっ……♥」

「ミキータさんの胸、レモンの匂いがします……とても香しくて、可愛らしい。このまま母乳が出たら、レモン牛乳になるのでしょうか」


 ミキータはNEWスパイダーズカフェの制服をたくし上げられ、胸を露わにした状態で乳首をアナイから摘ままれて、じわじわと体を降下させつつあった。

 超人系“ナビナビの実”──本来は他の悪魔の実の能力を誘導・操作するという力を持つ実であり、それ単体では単に金づちになるだけの“最弱の実”であるとされる。

 しかし相対するのが“悪魔の実”の能力者である場合、強制的なナビゲートは謂わば相手の能力を“支配”しているのと同じ……ミキータは各部の体重を絶妙に操作されることで、腋を見せつけるように両腕を頭の後ろで組み合わせ、ガニ股で腰を突き出しているという姿勢を取らされてしまっており、その状態でじわじわと尻だけを重くされているのだ。

 自らの臀部が重量を増していくという、羞恥を伴うシチュエーションの中、ぷちぷちと下着が尻肉に悲鳴を上げる中、ミキータの乳首はゆっくりゆっくりと引き延ばされていく。

 アナイは少女らしからぬ慣れた手つきで以て、こすこすとミキータの乳首を指でこすり上げ、挟みながら重力に逆らい続けていいる。これによってじわじわと乳首を引っ張られ、手先の巧みさもあって仰け反ったような姿勢を取ってしまうミキータ。


「うひぃぃぃっ♥ ち、乳首いじめるのやめてぇぇっ♥ わ、わたしの“キロキロの実”、返してぇぇぇっ♥」

「安心してください、このままミキータさんが私のモノになってくれるなら、それは共有財産ということになります。つまり、ずっと操られっぱなしの操作されっぱなしでも、何の問題も無くなります」

「め、メチャクチャなことを言ってるんじゃなっ……あ゛ひぃぃぃっ♥」


 ぎゅぅぅっ♥ と力強く指で乳首を押しつぶされ、まるでゴムのように引き延ばされてしまった乳首全体から、激しい快楽の波が押し寄せる。

 こんな扱いを受けているにも関わらず、ミキータの体は興奮と発情を覚えてしまっており、それは自分の能力が支配されて攻めに悪用されるという、背徳的な状況への興奮が多分に混ざっていた。


「お゛っ♥ お゛ぉぉっ♥ も、やめてぇぇっ♥ 胸、これ以上いじめないでぇぇぇっ♥ ほ、他だったら、なんでもするからぁっ♥」

「……なんでも、ですか?」


 ぱちんっ♥ と乳首が離されたことで、乳房が元の位置に戻り、ばるんばるんと上下に揺れる。

 乳首が少しだけ伸びてしまったように見えてミキータは動揺するが、事態は既に別の方向へと動き出していた。


「それじゃあ、次はこちらを可愛がらせてもらいますね……」

「えっ……う、後ろの、あにゃぁぁぁっ♥」


 ぱちんっ! と下着がはじけ飛び、だるんと重量を増された尻肉が垂れる。

 そんなミキータの割れ目は、組み合わせて印を結んで見せる、アナイの指を柔らかく挟み込み、先端が菊門に触れた。

 既に延々と乳首いじめをされたせいだろうか、尻穴からは腸液が滴っており、ミキータは顔を真っ赤にしながらアナイの恐ろしい意図に気付く。


「前の穴は、婚姻する時まで残しておく必要がありますから。こちらの後ろの穴を奪うのを、交際の証とさせて頂きますね?」

「ひぃぃぃっ……♥ やめてぇぇぇっ♥ そ、そんなの嫌ぁぁぁぁっ♥ お、お尻は嫌なのぉぉぉっ♥」

「お胸をいじめる以外なら、何でも受け入れると言ったはずですよ、ミキータさん。嫌よ嫌よも、好きの内……良いとさせるのが、乙女の技巧というものです。ほら、少しずつ入っていきます」

「ん゛おぉぉっ♥ ふほぉぉぉぉぉっ♥」


 それはすさまじい光景だった。

 乳首を延々苛められたせいで、勃起した乳首を称えた乳房と、ぐっしょり濡れた秘所を晒した美しい女が、ゆっくりとガニ股を下ろして少女の指先を尻穴に迎え入れていくのだ……実際には、それは強制されたものなのだが。

 ミキータは「ゆるして♥」「やめて♥」と何度も訴えたものの、自らの“キロキロの実”の力で降下していく体は止められず、第一関節が入った辺りで、喘ぎ声しか漏らせなくなっていた。


「あ゛お゛ぉぉぉぉっ♥ んへぇぇぇぇぇぇっ♥ か、カンチョー決まっちゃう゛のぉ゛ぉぉぉぉぉぉっ♥ たず、たずけてぇぇぇ……いひぃぃぃぃぃぃっ♥」

「助けて、やめてと言いながら、気持ちよさそうですよ、ミキータさん。尻穴で感じるのですね、とても淫靡で愛らしいです──『1万キロプレス』」


 ぽつりとアナイが呟いた、その言葉。

 それはミキータがわざとして磨き上げた、落下攻撃。最大重量である1万キログラム(10トン)に体重を調節し、全てを粉砕し地面に陥没させる必殺技──。

 直後、ミキータの尻肉の重量は、ミキータが一切制御できないレベルまで増し、どちゅんっ♥ と尾てい骨に衝撃が伝わるほどの勢いで、アナイの指が根元まで飲み込まれた。


「あ゛へぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ♥ ひ、ひう゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ♥ おじりっ♥ おじりダメぇぇぇぇぇっ♥ ひぎゅっ、ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ♥」

「泣き声も可愛いです、ミキータさん。やはり750万べりーは安過ぎます……破格の分は、こうして気持ちよくして返してあげますから、ね?」


 ぐりっと指を捩じられて、失禁と共に潮吹きしながらミキータは絶頂し、ヘコ♥ ヘコ♥ ヘコ♥ と全力で腰を打ちあげながら、イキ狂ってしまった。


「ミキータさん、私の勝ちでいいですね? あなたは私のモノ……納得していただけたでしょうか?」

「は、へぇぇぇぇ……は、ひぃっ♥ わ、わたしはぁぁ……あ、アナイちゃんの、モノれしゅぅぅぅぅぅっっ♥」


 脳天を貫いた肛虐の快楽に、ミキータはカンチョー一発で魅了されてしまい、ケツ穴狂いのレズ嫁としての好意を植え付けられてしまった。

 ……その後、ミキータは何故か一人で留守番することに非常に前向きになった上、仕事が終わると一直線に還っていくようになってしまった。

 店主のザラ……かつてはミスダブルフィンガーと呼ばれた殺し屋……が偶然にもその背中を見かけた時、ミキータは家とは逆方向に向かっていたが──まるで自分の能力で体重を極限まで軽くしたようにスキップしていたので、生暖かくスルーしたという……。




今回の攻め役

※コモン・アナイ

・“悪魔の実”の能力者。単体ならば最弱、しかし悪魔の実の能力者がひしめている“偉大な航路”においては最強となり得る超人系“ナビナビの実”の能力者である全身誘導人間。

・金色の目と碧眼、落ち着いた表情と、地味なスカートルック、しかしそれらの調和をぶっ壊す様なウサギの耳のカチューシャを常に付けている、奇体なファッションをしている。

・“ナビナビの実”は距離の制限(目視範囲)はあるものの、悪魔の実の能力を誘導・操作できるという能力であり、対悪魔の実の能力者戦闘においては無敵にも等しい性能を誇る(相対する能力を利用している為、覇気での無効果も出来ない)。恐らく“覚醒”を意図的に引き起こすことすらできるだろう。

・ただし複数の悪魔の実の能力者が射程範囲にいる場合、それらの情報が一斉に流れ込んで発狂する危険性もある。アナイが頭に付けているウサ耳は、能力に指向性を与えるために装着しているらしい。

・繁忙時は裏方に回ることが多いため、ミキータは彼女を覚えていなかったが、友人と共にNEWスパイダーズカフェを訪れたことがあり、その時にチョコ菓子の味に感動し、チラ見したミキータに一目ぼれ。

・彼女が賞金首だと後に知り、理解のあるカノジョちゃんとなるべく、海賊や賞金首を襲撃してコツコツと1500万ベリー貯めていた。あくまでもこの金がミキータへの“対価”であり、彼女を買う意図は無かったようだ。

・作中では披露しなかったが“覚醒”に至っており、悪魔の実を操作できる理由である“悪魔の力の流れ”を“真っ黒な指先”として具現化させ、サイファーポールの“指銃”のように撃ちこむという戦い方も出来る。数少ない“ヤミヤミの実”の吸引に抵抗できる可能性がある能力の一つ。

・カンチョーでミキータを魅了したので勘違いされがちだが、名前の由来はコモン=扉門=英語でゲートゲート=ナビナビとゲートゲートでナビゲート×2である。アナイは案内の古語読み。

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