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「(──あれ……? なにが、あったんだっけ……?)」


 浅倉透は、なんだかぼんやりと濁る意識の中で目を覚ました。

 かと言って、殴られたとか病気で朦朧としているとか、そういう不快な感覚では無くて、どちらかと言えばそう……プロデューサーのことを考えながら、幼馴染で親友の樋口円香とオナニーを見せ合って、狂ったようにイキあった後のような感覚。

 普段はクールというか、感情的になることを厭うている節がある円香が、歯を食いしばって口の端に涎を垂らしながら、秘所を弄り回す時の、あの様子……それがなんとも面白くて、プロデューサーを想って自慰をしているのか、円香をオカズにしているのかが分からなくなる……あの曖昧な感覚が下半身にじんわりとあった。


「(樋口……どこ……?)」


 無意識でオナニーをしていたんだろうと思い込み、きょときょとと幼馴染の姿を探す。

 居た。すぐ側。というか、目の前。


「あぁぁっ♥ あはぁぁぁっ♥ あんっ♥ あんっ♥ あぁぁんっ♥ う、はぁぁぁっ♥ あ、おぉぉぉぉっ♥ はうぅぅぅんっ♥」


 こう、扉がウィーンと両側同時に開く車。

 ガルウィング? というのだろうか、あれみたいな感じ。

 あんな感じで円香は両手を後ろからがっしりと拘束されて、背後から思い切りピストンされていた。

 相互自慰、オナニーのみせっこ、それをしていた時よりもずっと、ずっと気持ちよさそうな円香。

 もうほとんど、プロデュサーが持ち込んでいた猥雑な雑誌に載っていた、悪趣味なデフォルメな感じで舌を突き出して、ケダモノみたいに喘ぐ、樋口円香。

 知らない。こんな表情、見たことない。

 ゆっくりと円香から視線を外し、背後で突いている相手を見る。

 プロデューサー……ではない。長い髪の毛を背中に流し、腰のあたりでお団子にまとめている珍妙な髪形の、少しだけ大人っぽい……透や円香よりも年嵩に見える女性。

 その人は笑って、円香の細い腰を掴んだままピストンしている。

 女の人のはずなのに、ずっちゅずっちゅと淫らな水音がして……まるで女の子の使う玩具を突っ込んだ時のような……肉竿が股間についているのが、分かった。それどころか睾丸まで突いていて、このままでは円香は妊娠させられてしまうかも知れない。

 オカマさん? シーメール? そんなことを胡乱に考えたが、睾丸の裏側には女の子の部分も見えて。

 アンドロギュノス……両性具有。つまり、ふたなり。

 なんとかというアイドルがデビューしてから、カミングアウトする人が増えたという、両方ついてる体質。

 透は、今更になってどうして自分が動けないのか、こんなに心地よい倦怠の中にいるのか、疑問に思う。

 ゆっくりと視界を巡らしていくと……自分が鏡台の前に突っ伏していて、下半身からは“びゅくっ♥ びゅるるっ♥”と精液を逆流させているのに気づく。

 覗いた鏡の中には、円香と同じように「あへぇ~♥」と喘ぎそうな、蕩けて幸せそうな女の顔。

 それを浮かべているのは、透自身だった。


「(そうだった……二人とも、この人にパコられたんだ……♥)」


 もう、そのことを悲しいとか屈辱とか思えず、何処か誇らしさすら感じる甘さに溺れながら、透は鏡の中の自分と見つめ合った。



 ──二時間ほど前のこと。

 収録が急にキャンセルになり、透と円香はプロデューサーが迎えに来るまでの間は、用意された控室でひたすらボーッと待つ羽目になっていた。


「今更だけれど、あの人数をプロデューサー一人で回してるのは無理があるし、そのせいでこうなってるんじゃないの?」

「それはまあ、そうかもね」

「まったく、私と浅倉は放っておいても大丈夫とか、そんなことを想ってるのかしら、あのミスター・ノーデリカシーは」


 そんなことを言いながら、円香の苛立ちはプロデューサーが迎えに来ないこと自体ではなく、彼がこの場におらず別のアイドルの仕事に同行していることの方へと向けられていると、透は思う。

 透と円香は、親友同士で、幼馴染だ。

 アイドルユニット“noctchill”自体がそうで、福丸小糸と市川雛菜もそうなのだが、お隣さんの距離感なのは透と円香だけである。

 そして最近、アイドルになって少し経って、そこに新しい関係性が足された。

 曰く、ライバル。それも、恋の。

 円香にとってプロデューサーは、大人を何処かで軽蔑している節がある彼女にとって信頼できる数少ない対象だし、透にとってのプロデューサーは円香も知らない“約束”の相手だ。

 けれど、担当アイドルのほぼ全員から“女”の感情を向けられているプロデューサー相手となると、まずは自分たちが抜きんでることが重要で。だからnoctchillのメンバーは恋愛に関しては助け合って、今のところは仲良くやれている。

 円香はこういう時「くだらない、欺瞞だわ」とか言い出しそうな印象を他人は持つだろうが、一番この状況にホッとしているのが円香だと、透には分かっている。彼女は身内を傷つけることを極端に嫌う為、もしもここから更にプロデューサーに恋を深めて、最後の候補に選ばれた時に他の三人と競ることになったら……ひどく傷つくだろうと思う。

 透なんかはその点、それはそれこれはこれで割り切れるタイプなのだが、それでも円香が泣くのは嫌だと思う。そう考えている時点で、自分たちはどちらかと言えば小糸と雛菜に乗っかっていて、あまりこのレースに真剣になれていないのかも知れない。


「樋口、あのさ──」


 コンコンと、部屋に響くノックの音。

 円香は人見知りの為に動かない為、こちらも無精であっても極端ではない透は、ふらりと立ち上がって「はぁい」と扉を開ける。

 控室の入り口には、透と円香よりも……二人は同い年だ……少し大人っぽい見た目の、背の高い女の人が立っていた。

 ものすごい美人という訳では無いのだけれど、なんというか……バランスが良い。悪いところが一つも無くて、最終的な評価点が誰よりも高くなるというか、そんな印象。

 失礼ながら、プロデューサーを廻ってよーいドンしたら、円香はまだしも透は途中で競り負けそうだなと……そんな風に思う程度には、その人は美人だった。雰囲気美人というのを、良い意味で使うと彼女のような外見になるのかも知れない。


「こんにちは、浅倉透さん、それに樋口円香さん。今日は、お仕事キャンセルになって残念だったわ。しっかり挨拶して、仲良くなりたかったのに」

「ああ、共演者の……矢代夢莉さん」

「そ、女優業の時はユーリ名義でやってます。わあ、生で見ると二人とも超可愛いね」

「……ちょっと」


 円香の声のトーンが一段下がる。

 勝手に控室に入ってきて、扉を閉めた。正直、プロデューサーの不在で苛立っている円香にとって、このタイプの距離を詰めてくる相手は地雷だ。普段は、結構こういうタイプと上手くやれるのに。

 しかし、最初は苛立ちだった表情が、ユーリが後ろ手に“かちんっ”と扉を施錠したのを見て、円香の表情が一気に警戒を帯びる。透も同様で、なんだか……ユーリの様子は少しおかしかった。


「やっぱり、すごい可愛いなあ……二人で付き合ったりしたら、すごく素敵だと思うんだけど、どう?」

「な、何を言い出すの、この人?」

「あの、私たちはほら、恋人はファンの皆様という感じのアイドルだから……?」


 じゅんっ♥

 自分の股間が、一瞬で湿ったのが分かった。プロデューサーを前にしても、今はそんな風にはならないくらい、体が反応している。きゅうきゅうと子宮が熱く鳴いて、体が言うこと効かないくらいに荒れている。


「な、なんで……」

「浅倉……透、これ、なんかおかしい……」


 透の居ない時だけ自分を名前で呼ぶ円香が、震えるような声音で透を呼んだ。なにか、ヤバい。


「そっか、二人はお似合いだけど、恋人じゃないんだね……それじゃあ、お姉さんがいただいちゃってもいいよねぇ♥」


 スカートをたくし上げた中から、ほとんどの男性が見ただけで憤死しそうなサイズの肉竿が姿を現す。

 本当に“すとーん”という勢いで腰が抜けて、ぶしゅっ、ぷしゅっと意味不明の潮吹きをしてしまう透の眼前に、ぴとりと肉竿が寄せられる。

 視界をおおわれる、いわゆる“見せ槍”の姿勢……ここだけの話、透の口元はその時──笑みを型作っていた。



 ぱぁんっ♥ ぱぁんっ♥ ぱぁんっ♥


「あはぁぁっ♥ あひっ、あぁぁんっ♥ お尻、ダメぇぇ……♥ お尻ぺんぺんダメなのぉぉぉっ♥」

「ダメ、じゃないでしょう? 悪いことしたんだから、お仕置きしないと♥ 口にするならごめんなさいだよね♥ 円香ちゃんはお馬鹿で可愛いなぁ……それで、透ちゃんはどうかなぁ♥」

「ひぃぃんっ♥ あ、へぇぇぇぇっ♥ ご、ごめんなさいぃっ……♥ も、生意気な真似とかしませんっ♥」


 円香がハメられている姿に興奮してしまった透は、ぷらぷらと膣口から中出し精液垂らしたままで腰をヘコつかせて、お尻を振ってユーリを誘惑した。自分も気持ちよくしてほしかったのかも知れないし、円香を取られた気分でムカ付いたのかもしれない。

 結果、何故か円香ともどもお仕置きを受ける羽目になり、尻肉を打擲されると女の子は気持ちよくなるんだと、どうしようもない情報がまた一つ、透の中に刻まれた。


「はい、よくできました♥ 円香ちゃんもついでに許してあげるね♥ 透ちゃんが、ちゃんとできたことに感謝すること♥」

「は、ひぃぃっ……♥ あ、浅倉、ありがとぉ………♥」

「……いいんだよ、樋口♥」


 二人はおもらし寸前になるまで尻を叩かれたせいでぺたんと座り込んでおり、ちょうど眼前にユーリの肉竿がある形になる。

 ものすごく自然な動きで、透は服をたくし上げて、自分の胸で肉竿を挟み込む。ユーリという相手に一度ハメられたことで、彼女に対する媚び方が分かった様な気がしていた。少し遅れてだが、円香も追随するようにその胸を露わにして挟み、そしてこちらは透よりも先にぴちゃぴちゃと舌を鳴らし始めたから、きっと彼女も分かっていたのだろう。


「よしよし、お仕置きの後は媚び媚び奉仕しようねぇ♥ もう二度と、浮気禁止だから♥ 思い出すのもダメ♥」


 ぴちゃぴちゃと左右からユーリの肉竿を舐めながら、透はぼんやりと思い出すなと言われたことを意識の表層に上らせる。

 気付いていた、本当はずっと前から。

 仕事の時に、こんな風に円香と二人で放り出されたり。他のアイドルのことを優先されたり。そもそも、仕事がキャンセルされたのに新しく動く必要が無いくらい……放置されていたり。


「(……私は思い出が、樋口は初恋が枷になってたんだろうけど……あの大人、あんまり“イイ人”じゃないよね)」


 より正確に言えば、親しくなると途端に嫌な面を見せてくる、油断の多い人……というのが正しいだろうか。

 思考が嫌な方向に振り切れそうになった瞬間、精液が透と円香の顔にはねて、幼馴染の顔を青臭く白く染めていく。

 それを最後にプロデューサーの顔を忘却し、ちゅっちゅっと仲良くチ〇ポなめ合いながら、二人は身を寄せ合った。

 二人で精液まみれの顔でアヘってみせてば、ライバルなんて不穏な空気は、そこにはまるで存在していなかった。




今回の攻め役

※矢代夢莉(やしろ ゆうり)

・女優。大学生と女優業を兼業しており、目を見張ったり他を陰らせたりするタイプの美人では無いのだが、平均的にすべて美しいといった特殊なタイプの美貌の持ち主。第一印象で夢莉よりも綺麗に見えた相手の、大抵よりも最終的な評価が高くなるタイプ。女優業の際は“ユーリ”という名義を使う。

・何処からかは不明だが、noctchillのプロデューサーが自分への恋心を利用して透と円香を仲たがいさせ、さらなる成長()を遂げさせようとしているのに気づき、楽屋挨拶を装って乱入。二人の絆を結びなおした上で、自分の彼女にした。

・彼女の基本的な価値観は“責任を取ること”であり、今回の収録のメインがユーリだったのも、行動にかかわっているようだ。プロデューサーの色んな意味で無責任な対応は、彼女にとっては許しがたいものだったのだろう。

・ちなみに透と円香が驚いていたことからも分かる通り、ふたなりなのを隠して仕事をしているタイプである。

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