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※SKEBにてご依頼を頂きました!

 オリジナル作品にして、TF作品……そしてレズものではこれまでで最大ボリュームの一作!

 そして、これまでも何度か書いてきた“匂い責め”を自分なりに極限まで究めた一作です!

 屋根が高いの匂い責め描写がお好きな方は、是非ご覧ください!





 ──遠い遠い昔、歴史の彼方に忘れられてしまい、今となっては誰も信仰していない教え。

 そこにおいて狼は……“勝利”を象徴していたという。



「──すまない、本当に。この傷と、そしてかけられた呪いは、必ずや私が消し去ってみせる……!」


 ストイが何処か悲壮にそう告げた時、ルゥはなんだか大げさだなと、他人事のように思っていた。

 ルゥにとってというよりも、前衛を務める冒険者にとって後衛のパーティーメンバーを守ることは当然だし、つまりはストイを守ることはルゥにとって当然のことだった。

 屈強、頑丈、堅牢。女性冒険者相手にはあまり投げられない賛辞も、ルゥからすれば慣れたもの。

 幼馴染のストイが強力な魔法で魔物たちを仕留めるまでの盾役。それが己に課された仕事だと理解していたし、ストイと共に過ごす正当性を与えてくれる行いということで感謝すらしていた。

 だから……ストイの治癒魔法でも傷を消し去ることが出来ず、そこからじわじわと皮膚に獣の毛が侵食している状況も、何処か他人事のように遠く感じる。ストイが怪我をする方が、ルゥにとっては大事で現実感があった。

 でも、そのことを告げるとストイは喜んでくれず、それどころか悲しそうな目で見つめてくることが多かったので、あまり頭のよくないルゥも思いついたことをすぐ口にすることは、流石にもうやめていた。


「何か、食べたいものや飲みたいもの無いか?しばらくは、この研究所で暮らしてもらうことになる。気晴らしに位は、気を砕きたい」

「……それじゃあ、厚めのステーキが食べたい」


 精一杯の贅沢を言ってしまい、申し訳ないなあとルゥは思ったのに、ストイは「ささやかだな」と苦笑することしかしなかった。

 痛みはほとんど感じないが、腹の傷を撫でてみる。

 まるで洗っていない獣を撫でているような、奇妙な脂っぽさをそこに生える毛に感じた。



 ──その獣人型の魔物は、既に近くの村を一つ滅ぼしているという話であり、何人か冒険者が返り討ちにあったとも聞かされていた。

 ストイはあまり気乗りしていないようだったが、魔法研究を何よりの趣味としており、冒険者の許可証を得てルゥを誘いに来るまでの修行の日々の中で、遠近に“研究所”を立てて隠れ家にしていることも知っていたので、彼女の資金の為にルゥが積極的に受けた。

 ……考えてみれば、幼い時分からストイは隠れ家とかアジトとか秘密基地とか、そういうものを作るのが得意だった。

 田舎の村だけあって、とっくの昔に滅びてしまい、時どき人間の中に種の特徴が反映される……そんなエルフ種の外観を受け継いでおり、白い肌の上に配列よく散らばる顔のパーツも、金色の太陽の光を浴びて輝く髪の毛も、ぴんと横に跳ねてストイの感情を伝えてくれることの耳も、子供達には奇異に映っていたらしい。

 男の子も女の子も区別なく、田舎では子供の頃は駆けっこや木登りが唯一といってもよい娯楽であり、これらに参加せずに黙々と本を読んだり、植物の成長を早めるなどのささやかなものだが魔法に没頭しているストイはお世辞にも馴染んでいるとは言い難かった。

 そんなストイは村のあちこちに枯れ木や葉っぱなどを組み合わせた秘密基地をこさえ、そこに籠って魔法研究をしていることが多かった。

 ヤンチャな子供たちが基地を見つけては壊そうとするのを、当時から一回りは体の大きかったルゥが身を挺して守る……そんな関係が今の二人にも繋がっていると思うと、少し面白い。

 そうルゥが告げると、ストイは何とも不満げな表情を整った顔の上に浮かべて見せる。


「それではまるで、私が子供のころからルゥに頼りきりのようじゃないか」

「そんなことないよ。ストイはあたしよりもずっと賢かった。賢い人は賢くない人にできることをすべきだって、そう思ったから守ってただけ。だから、あたしがストイに頼りきりなんだよ」

「それは依存対象だとか、行動目的だとかそういう意味合いなのか?むぅ……いや、いい。ルゥは鈍いのは昔からだからな」

「えへへ、ごめん」


 だからこそ頭の出来が少し良すぎて、田舎の村の育ちにも関わらず、魔法使いとしての才能を見出されることになった訳で、やっかみの対象にもなりがたいなストイ相手にずっと仲良くできたのは、ルゥの鈍さゆえだろうと思う。

 とは言え、こと戦闘においてはルゥは決して鈍感ではなく、女には珍しい重戦士でありながら非常に機転と注意が利いた。

 獣人が潜むという森に立ち入った時、既に周囲から強烈な殺気が叩きつけられていることを察して、全方位からの攻撃に対応してストイを守れるよう、盾とメイスを構える。

 いくつかの冒険者パーティが壊滅してから呼ばれることからも分かる通り、ルゥとストイのパーティは……ルゥはストイの魔術の才能のお陰と信じているが……なかなかに高名であり、幾つか大きな事件を解決した実績もあるし、経験に関しても多種のものを積んできているという自覚がある。

 だからこそ……その獣人の攻撃が、樹上から行われたことに少しだけ驚きがあった。

 初撃を盾で捌き、再びふわりと樹上に飛び移った獣人を眼で追うことを諦めたルゥに、ストイが驚いたような言葉を放つ。


「流石は村一つを平らげた後だけはあるな。奴は、人の急所が何処か分かっているらしい」

「まあ……盾で受けた衝撃的に、どこに食らっても大変なことになりそうだけどね」


 魔物と野生動物を分ける最大の差異は、魔物はすべて雑食であるのと同時に、同種族内の共喰いを除くと、あらゆる食性を示すという点。肉食と草食の差異くらいはあるが、この草を好んで食べるとか、この虫だけを標的とするとか、そういうことが魔物には無い。

 “呪い”とか“呪縛”と呼ばれている、あらゆる命が消滅する瞬間に思う「死にたくない」という想念に、何か余分なものが混ざりこみ……それこそ魔物に残忍な形で食われるなどが起こることで歪んだものが取り憑き、正常な生命が突然変異的に魔物へと変わる。

 魔物が一体発生すれば、周囲の生命は食い荒らされ、生物の円環から外れる形で貪られた命の嘆きが、また別の魔物を発生される……そうやって増殖を繰り返せば、やがてはとてつもない数の魔物が生態系そのもの侵食し、新たな餌場を求めて大量侵攻が起こる……これが所謂スタンピードと呼ばれる現象だ。

 スタンピードが一たび起きれば、まともな外壁の無い村や町を飲み込んで、致命的な“災害”へと発展していく……。

 冒険者とは個別に魔物を撃破することで、人々から日常を奪い去り危険な状況へと陥らせるスタンピードの発生を封殺することが役目。別に非日常に身を置いている訳では無いのに“冒険者”と呼ばれるのはここに由来する。

 そんなスタンピードが起こる理由の一つは、一種の魔物が移動を開始すれば、それよりも強力な魔物が餌の追跡を開始する、その連鎖だと言われており……魔物の主食は、人間は早々に避難するし、動植物は途中で魔物化し始めるので、自然と正常な生命よりも魔物同士の共食が主となるのだ。


「故に、ほとんど魔物は人間の急所を狙うような真似をしない。そんな狩りの方法が癖になってしまったら、多種多少な魔物とのシノギの削り合いの中で不利になるからな」

「それじゃあ、あの獣人は?」

「……単に、人の味を覚えただけだと思いたいな」


 野生動物の場合ならば、最悪を意味する言葉を“次善”という意味合いで使いながら、ストイは魔法の詠唱を開始する。

 ……結果として、この時に薄々ストイの想定していたことは当たっており、そしてルゥを蝕むことになっていく。



 ──最初に気付いた変化は、体臭が変わったことだった。

 元からルゥは匂いに敏感なところがあり、地黒で骨の丈夫な子供だったことから、幼少期はストイがエルフ族の特徴を持っているのになぞらえて、ドワーフ族みたいだと言われた。

 彼らは地中を主な住居にした鍛冶師の一族であり、光よりも匂いを頼りに他人を分別したと言われていた。

 ルゥとしては重戦士となった今も、伝承の中の女ドワーフのような姿をしているのだと勝手に考えているのだが、褐色の健康的な肌と豊満な体躯を持つ赤髪の美姫戦士を、ドワーフ扱いする者など居はしない。彼女が周囲から女性扱いされないのは、単にストイがその美貌から“圧”を放って周囲をけん制しているからだ。

 そんなルゥの体から漂う匂いに、獣めいたものが混じり始めた……田舎育ちで、冒険者としての経験も長いルゥが間違うはずもない。それは獣人型の魔物が放つ、通常の動物の獣臭を煮詰めて花などの香料を足したような、不快なはずなのに嗅覚を捉えて離さないものだ。


「私は、まだ強く変化を感じ取っていないが……くそ、よりにもよって“大呪”持ちがあんな場所にいるなんて!」


 状況を改善してくれようと必死なストイに変化を申告すると、彼女は苛立たし気に頭を掻き見出し、自らの魔法で焼いた獣人に呪いの言葉を吐いていた。

 通常、人間は魔物化することはない。人間の“呪い”も魔物発生の原因になるのに、何故か魔物化を逃れることが可能で、これがエルフ種やドワーフ種は滅び去ったのに、人間は生き延びた理由の一つだと言われている。

 それこそ獣人など、人間と形状の似ている魔物などはいるが、それらは魔物同士の対立の中で姿勢を高く保つことに優位を見出したり、人間の真似事として道具使用で他種を圧倒しようとしたりという、生存戦略の一環に過ぎない。

 だが……時にはスタンピード以上に恐れられる例外。多くに歪んだ死の累積によって、積もり積もった“呪い”が変質した“大呪”と呼ばれる呪詛を纏っている魔物が、ごく稀に存在する。

 多少は他の個体と比べて強力な戦闘力を持つことも多い“大呪”持ちの魔物だが、その恐るべき特性……呪いの影響を人間にも届かせるという一点を考えれば、この危険度は単なる殺傷力を遥かに上回る。

 徹底的に首や頭、心臓を狙っての一撃死を狙い続けてきた獣人が、ストイの魔法で半死半生になった時に放った、胴狙いの鋭い一撃。

 緩急に反応することが出来ず、危うく引き裂かれかけたストイを守る為に、ルゥは手傷を負ってでも身を挺すことを選び……“大呪”を身に受けることになってしまった。


「私が、治す。必ず、治療して見せる。だから、絶対に妙な気は起こすなよ、ルゥ?」

「大丈夫だよ。あたしはストイの言うこと、いつでも聞いてきたでしょ?」

「……いい子だ、ルゥ。もう少しの辛抱だからな」


 ストイの柔らかくて、優しい香りと温もりに身を包まれて、ルゥは自分の体からする獣臭が逆に気になってしまい、少しだけ居心地が悪くなった。

 ……本来ならば、冒険者は“大呪”を受けた時点で自害することが望ましいとされる。何故ならば、その解除方法については何の研究も進んでいないからだ。

 もしも、そんな方法が見つけ出されれば、魔物を通常の生命に戻すことだって出来るだろう。研究を進めれば、スタンピードにだって正面から対応できるようになるかも知れない。

 しかし、実際に人類が魔物へ取っている対策は、冒険者を差し向ける形の殺傷……つまり王都などの専門機関でも、その対策が進んでいないか、最悪の場合は不可能として破棄されているということだ。

 ましてや、通常よりも強力で人間を蝕む“大呪”。ストイが如何に“村の秀才”であるとは言っても、あまりにも相手が悪いと言わざるを得ない。

 それでも、ストイは懸命に“大呪”に立ち向かう……それは彼女のエゴであると同時に、すべてを失うかも知れない可能性を負ってすら挑む献身であった。

 ルゥにはストイを信じる……という感覚は、特に無い。信じるというのは、失敗する可能性を片側に置いて初めて成り立つ概念であり、幼い日からストイを中心にした世界で生きてきたルゥにとっては、ストイは信じる以前に万能で全能の存在だった。

 ただ、この研究所は冒険者としての修行中に、ストイが一人で使っていた場所だ。

 ルゥと共に過ごしていなかった頃の、ただ一人だった頃のストイの気配が、匂いと言う形で何故か強く鼻腔に届き……己自身から漂う獣臭以上に、ルゥの心を騒がせた。



 ストイという少女は、とかくルゥ以外の存在に対しての扱いが異常に軽く、ルゥがストイを世界の中心に据えているのだとしたら、ストイはルゥこそを世界と定めているタイプだった。

 ルゥはストイの体臭をとても気に入っており、最近は他者からの好機の視線にルゥが晒されるのが嫌でやらないが、幼い頃はよく抱っこされて匂いを嗅がれることを楽しみにしていた。

 その度に「ストイはとってもいい匂い」とルゥに言われるのが心地よくて、彼女の為に身だしなみの類を整えている部分が多いにある。

 その為、ルゥと離れていた頃のストイはかなりのズボラであり、なんなら研究に没頭すると寝食はまだしも、湯あみや洗濯の類を忘れることも多く、自分の体臭がかなりキツくなってから「これではルゥに嫌がられる」と思って身を清める……という、自堕落な生活を送っていた過去がある。


「はぁ……んっ、はぁぁ……ふぅー……ふぅー……」


 この研究所においても、ストイはそんな生活を送っていた為、少しずつ自分の獣臭を感じ取るようになり、敏感になっていくルゥの嗅覚は、ストイの据えた匂いも感じ取るようになっていた。

 現在のストイは流石に匂う程では無いのだが、それでも自分の身だしなみよりも“大呪”の解除を優先している面があり、研究を開始してから三日は湯あみ水浴びの類は一切していない。

 少しずつ敏感……いや、過敏になっていくルゥの嗅覚は、そんなストイの甘臭い体臭を感じ取ってしまう。

 エルフ族の容姿を受け継いでいるというだけで、ストイの食性は普通の人間と同じ雑食である為、その体臭が薄いということは特にない。

 ルゥにとって、離れていた頃にはストイからもらったハンカチや、あるいは生家の掃除を任されていたので中に入った時の枕など、彼女の匂いが染みついた部分に顔を埋めて、興奮を覚えることが多かった。

 初めて自慰をしたのも、ストイの枕に顔を埋めながらのことだ。実践することは無かったし、そういう“対象”になる頃には男性を拒否するようになり、その為の力も持っていたルゥだが、田舎暮らしなのも手伝って性の知識はそれなりにあった。

 娯楽と言えばこれくらいという面はあったので、水仕事や畑仕事の際、男女で姿を消している者は少なくなく、一人で黙々と仕事をこなしていたルゥは、逢引の場面……もっと言えば交情の場を目撃することも少なくなかった。

 ストイの枕に顔を埋め、大切な場所をぐちゅぐちゅと掻き混ぜた時、頭の中に浮かんでいたのは、股間に男性器など備わっていないのに、四つん這いにしたストイの体に覆いかぶさり、その柔らかな臀部に腰を打ちつけて、髪に顔を埋めながら達するという妄想だった。

 今はもう少し洗練されているが、ルゥにとってストイを想ってする時の定番妄想であり……ストイの体臭に淫らな意味合いが付加された今、ルゥにとってこの研究所での日々はあまりにも刺激が強いものへと変わりつつある。


「ちょ、ちょっとだけ……ストイもきっと、研究で気付かないし」


 自分の為に研究をしてくれている。ストイを疑うことのないルゥだが、感謝の思いはある為に、彼女を想っての自慰行為は控えていた。すぐ隣の部屋にはストイが居るという、緊張感も手伝ってのことだ。

 それでも、体を動かすこと当たり前だったルゥにとって、ここ数日の軟禁生活はやはりストレスが強いものだったんだろう。

 そろそろと股間に手を伸ばして、ストイの体臭を特に意識して嗅ぎながら……。

 いつもと指の食感が違うことに気付き、そっと下着に触れたそこを眼前に持ち上げる。

 爪が、ありえない程に伸びていた。指先が、女性であるルゥにとっては未曽有の勢いで毛に覆われている。

 ストイを中心に生きているルゥにとって、近くにいながら基本は別々の生活を送る現在の状況はイレギュラーであり、この時になって初めて、ルゥは自らの体が変貌を始めていることに気付いた。

 少しずつ強くなる獣臭が、早くも自身の本来の体臭よりも衣服に纏わりつつあるのに戦慄しながら、ルゥは脱衣して部屋の隅に置かれていた鏡の前に立つ。本当にそれを覗く理由がルゥにはなくこの部屋に鏡があるのを認識しながら、こうして覗き込むのは初めてだった。

 そこには、イメージの中のルゥよりも随分と華奢というか、女の子らしい見た目のルゥが居たのだが……そんなギャップなど吹き飛ぶほど、ルゥの体は彼女の想像からかけ離れつつあった。

 腹に付いた傷周りは、もうふさふさと毛皮でも取れそうなほどに体毛が覆っており、それに近い位置から少しずつ毛が濃くなっていた。

 裸の少女を見る機会も少なからずあったルゥは、己の裸体が尋常な状態にないことを悟らざるを得ない。

 そっと、腕を持ち上げてみる。

 むわぁぁぁぁっ……♥ とまるで封印でも解かれたかのように、あの獣臭が腋から解き放たれて、思わずルゥは「くほぉぉぉっ!?」と奇妙な声を上げてしまったほどだ。


「ど、どうした、ルゥ! なにか異変があったのか!?」

「な、なんでもない! 大きな虫が出ただけ!」


 ルゥは虫を怖がるタイプではないが、ストイが足の多い生き物を徹底的に嫌っているのは知っていた。

 ストイは迷ったようだが「……刺されないようにすること」とだけ告げて、部屋の中には入ってこなかった。

 ルゥは改めて、鏡に映し出された己の姿を顧みる。

 腋や秘所などは特に毛が濃く、生い茂っており、傷口周りと変わらないほどに“獣の部位”と言われてもわからない変化を終えていた。

 意識すると、それらからはむんむんと甘臭さ……ストイの匂いに時おり感じる饐えたそれと同じものが混じって、自身の体臭であるにも関わらず意識してしまいそうになり、酷い嫌悪感に襲われる。

 手の爪だけではなく、犬歯も鋭くなっていることにもようやく気付いた。道理でステーキ肉が食い千切りやすいはずだ。


「わ、わた、私……こ、これをストイの前で晒してたの!?」


 明確に、人でないものに近づいていく、その悍ましい過程。

 獣人……魔物へと変わっていく恐怖は確かにあったが、ルゥが感じ取ったのはまず真っ先に「懸命に“大呪”を解く為に努力していた最愛の親友に、残酷な進捗を無自覚で見せつけていたのか」という、あまりにも深い絶望だった。

 ストイのことを絶対視するが故に、ルゥは彼女が高い知性に見合った繊細な部分を持つ少女であることを失念するところがあった。これまではストイの方が「ルゥらしく、好ましい」と放置してきたのだが、今この段になって、自分の無神経さをまざまざと見せつけられてしまった形になる。

 ……ルゥはこの日から部屋に引きこもり、ストイが起きている間は出てこなくなってしまった。

 ストイが眠っている……というより、この段になると研究を続けるのが限界になって“落ちている”間に、部屋から出て食事や排泄などは済ませているようで、部屋の外から話しかける分には普通に応対するのだが、姿を見せることは無くなってしまった。


「(無理もない、か。変化は外見に強く及びつつある……私も、もしかしたら表情などに出してしまっていたかもしれない。時間は、まだあるんだ。私が方法さえみつければ、また何時もの二人に戻れる……)」


 ストイもまた、ルゥをそっとしておくという方向に考えた為、ルゥは変わりゆく体に怯えながら、唯一の他者からの視線を失った形になる。

 ……“大呪”に感染した人間は、最終的に魔物になること以外はほとんど分かっていない。感染した時点で絶望したり、あるいは周囲を気遣って死を選んだ者、蓄電してその後に死にきれずに魔物化してしまった者などが特に多く、変化のプロセスについては未だに多くの部分が謎に包まれている。

 ルゥとストイのように、大切な相手を救うために間近において治療を行った例などもあるが、魔物化したパートナーの手にかかって死んだり、変化を親しい相手に見られることを恥じて発狂したりと、臨床記録すらほとんど残っていないのだ。

 故に、こうしてルゥがストイからの視線を失い、密閉空間に身を置いたことが、致命的な結果につながってしまうなど……想定できない二人を責めることは、きっと出来ないのだろう。



「ふぅぅっ……うぐるるるっ……ぐぅぅぅっ……んっ……んっ……♥」


 ルゥの体をこんもりと覆うシーツは、この研究所に辿り着いた際に二人で掃除と洗濯を行った為、彼女が使い始めた際には真っ白な清潔の色を湛えていた。

 しかし、ストイの視線を失い、どんどんと人間の域を超えて鋭くなる五感を駆使し、パートナーが意識を失っている間以外は部屋の中でシーツに包まって過ごすようになってから、その色合いはどんどんと薄汚れていき、異様なほどの新陳代謝と発汗によって、今や薄く黄ばんでしまっていた。

 “色”に出るほどの汗や老廃物は、当然ながらルゥの体臭を更に強烈に強め、もはやその体は水浴び程度では弱まることもしないほどの、凶悪なまでの獣臭に包まれていた。

 ストイを渇望する気持ち、不安ですがりたくなってしまう想い、それらを懸命に誤魔化そうと、ルゥは意図的に彼女の匂いを嗅ぎ分けるようにしていた。この研究所は、ストイがズボラな日々を過ごしてきた場所……そんな場所で親友の匂いから逃避する方法は、多くない。

 ルゥが選んだのは、自分自身の獣臭に溺れることだった。その悪臭が激臭に変わっていく中、懸命に友への依存心を誤魔化すべく自分の匂いと向き合い続けたルゥは……少しずつ、少しずつ性質を変貌させていった。

 元よりストイの体臭に対して匂いフェチ的な一面のあったルゥは、その匂いが断たれて取って代わった匂いを、性的に興奮する要素だと頭の中で組み替えてしまったのだ。


「ふんごっ……ふぅぅぅぅっ……♥ くっさぁぁぁ……あ、あたしの腋、腋ぃぃぃ……♥ く、くさいのぉぉぉっ……♥ は、鼻、曲がっちゃいそう……うひっ……♥」


 シーツからぽこりと覗いたルゥの顔は、既に獣人化がかなり進行してしまい、特徴的な赤毛は体毛との共存してこそいるが、その骨格自体が獣……襲い掛かってきた獣人と同じで、真っ黒な狼のものへと変化している。

 だが、ルゥの野性的でかつ何処か穏やかさも感じさせる面影自体は残っており、まだルゥやストイの住む世界には存在していない文化だが、まるで動物の擬人化……アニメーションなどにおける中間存在を思わせる、奇妙な調和がそこにあった。

 襲ってきた獣人は完全に理性を喪失し、単に二足歩行できる狼といった容貌だったが、ルゥは違う……ルゥとしての性質がその面立ちには残っていて……だからこそ及んでいる行為の淫靡さや、その堕落ぶりも強調されていた。

 獣の顔に備わるマズル……人間とは異なる形状の鼻先を自分の腋に押し付けると、それだけで生い茂った腋毛……体毛の中でもひと際濃く茂るそこからは、ぐじゅぅぅっ……♥ と汗がしみだしてくる。

 それが何倍にも強化された嗅覚を持つ鼻腔に入り込めば、ルゥのこれまでの人生で得てきた快感、良きものだと受け止めてきた刺激、それらの悉くが駆逐され、あれほど嫌い怯えていた獣臭に溺れながらの自慰が、堂々と人生において価値あるものとして輝くに至っていた。


「ふごぉぉぉぉっ……♥ 嗅ぐのとまんないぃぃっ……♥ ぐぅぅっ♥ がぅぅっ……♥ おぉっ♥ くせっ♥ 臭いのにぃぃぃっ……♥ ぴちゃっ♥ ぴちゃぁぁっ……♥ 舐めるのも、やめられないよぉ……♥」


 まるで、自分自身で腋臭の腋毛を育てるかのように、ぴちゃぴちゃと丁寧に舐めまわし、汚濁の味を啜り上げる。味覚もまた鋭くなっており、こちらは肉や動物の臓物をより好むようになると同時に、自身の腋汗の味もまた好ましいと感じるようになっていた。

 匂いと、味……その二つを掌握されてしまった今、ルゥの意識はじわじわと変貌して、獣人化することをそこまで悪いことだと考えなくなりつつある。ストイが懸命に治そうとしているのだし、ストイは正しいのだからという二段論法であり、彼女の中の嫌悪感は消え去っていた。

 ぐじゅっ♥ ぷじゅっ♥ じゅこっ♥ じゅこっ♥

 激臭腋と汚泥めいた腋汗の匂いに興奮し、今や簡単に人間の体程度なら解体してしまえそうなほど伸びた爪を使って自慰を繰り返した結果、ルゥの秘所はビラの広がる黒ずんだグロテスクなものへと変貌しており、腋汗に決して負けていない、刺激では上回っているかも知れないマン汁を垂れ流している。

 人間には困難だが、元よりルゥはその頑強な体にしなやかさを備えていたのもあって、簡単に体を曲げて秘所へと顔を突っ込むことが可能であり、ぴちゃぴちゃと自分の長い舌で奥まで舐め回し、剛毛の中でぷくりと膨れている陰核をがじゅがじゅと噛んで刺激を得ることもしていた。

 ぷしゃぁぁぁぁっ♥ と噴き出した愛液で顔を濡らし、マンカス塗れになった顔を上げたルゥは、また腋にマズルをぐりぐりと押し付け、じゅるるるるるっ♥ と激しく汗をすする時間に戻っていく。

 ルゥの精力は底なしだった。元より魔獣は人間よりも体力的に優れる者が多いが、それが体力お化けのルゥとなればどれほどの活力がその身の中に内蔵されていることか。

 ストイが声をかけてきた時だけは、決して今の状況を悟られないように返答し、それ以外のほぼすべての時間を自慰に費やす。

 狼の乳房も複乳なのかをルゥはよく知らないが、少なくとも彼女の胸は二つのままであり、そこだけは不思議と体毛が薄めで、人間だった時よりも大きくなった威容を晒すそこを、ぐりぐりと指先で押しつぶし、爪で丁寧に中をほじって見せながら……ルゥは何処かで満たされないものも感じていた。


「分かってる……理由は、わかるよ。ぐるるっ……ストイ……あたしのストイ……ぐぅぅ……♥」


 変態的な性欲を自らの肢体にぶつけ、ストイを想って股間を弄るだけだった日々とは、比べ物にならないほど淫蕩で堕落した自慰を繰り返しているルゥだが……それでもなお、信じがたいことだがストイを想ってのささやかな自慰の方が、今の倒錯したオナニーライフよりも上に位置している。

 つまり、性欲の溺れてケダモノのような自慰を繰り返しながら、実質的にルゥは欲求不満状態にあるということだ。ストイを想っての自慰を禁じたが故に、彼女の性欲は危険な方向へ捻じ曲がり、遂に守べき親友へと吹き出そうとしていた。


「ダメ……んぐぅぅぅっ♥ そんなの、絶対にダメ、だからぁぁ……んおぉっ♥ ほぉぉっ……♥ ストイ……んっ、ストイぃぃっ……♥」


 部屋から抜け出した後、ストイの方を直視しないように気を付けてはいるが、あの美貌の幼馴染もまた寝食だけでなく身を整えることを忘れ、薄汚れた研究衣姿で椅子に寄りかかっていることが多かった。

 ストイの甘い匂い、あんなに可愛くて美人で怜悧なのに、時おり饐えたような匂いを漂わせていた、幼馴染の体臭は……今は、どれほど煮詰まっていることだろう。

 そんなものを嗅いでしまったら、自分の獣臭で埋め尽くして感じないようにしているそれを一たびでも吸い込んでしまえば、きっとあの日の妄想のように、最初にした四つん這いになったストイを犯す妄想のように、ルゥは完全に人間としての理性を失い、ストイの体を貪り尽くすことだろう。

 それだけは絶対に防がなければならない。絶対に、絶対にいけないのだ。阻止しないといけない……!


「(……でも、やめなきゃいけない理由って、なに?)」


 純粋な性格を持つルゥは「ダメなものはダメ」でこれまで納得できた。ルゥの世界の中心はストイなのだから、それを崇拝するかのように清らかな位置に置いておくことも、これまでは得心していた。

 けれど今は、ルゥは変態的な性欲にその身を焼かれ、徹底的に自分の獣臭で理性を破壊し、激臭腋とグロ処女マンを湛える魔物の体になりつつある……そして、もうそのことを悲劇だとは考えていない。

 それなのに……ああ、それなのに。あの臭くて魅力的な体臭をしていたストイを、清らかな地位に置いておくことに、どれほどの意味があると言うのか。あんなに愛しく、側にありたいと願い続ける美女と、距離を置き続けて、ルゥは幸せと言えるのか。

 魔獣になりきってしまえば、ルゥはあるいは元の純粋さを残し、部屋を破壊して逃亡して、ストイから永遠に距離を置くといった行動も取れたかもしない。

 しかし、ルゥはルゥのままで堕落してしまっており、彼女の狂った理性と確かな恋心が癒着しあい、ストイを己のモノにしろ、汚濁に沈めて貪ってしまえと囁きかけるのだ。

 それでも、最後の一押しが無ければ……耐える方向を選んでいただろう。ルゥとは、そういう乙女だった。

 そして、その一押しは……体の内側から訪れた。


「うっ、がっ……な、なにっ……!? あっ、あぁぁっ……あ、そこがぁぁ……ふぐっ、ひいぃぃぃっ……く、クリっ……お大事の中心……お豆さんが、熱いよぉぉぉぉぉぉぉっ……!」


 先まで甘噛みしていた陰核が強烈な熱を孕み始め、そこに全身の血が集中していくような感覚があった。

 それは恐らく、ルゥがルゥのままで魔獣化を迎えたことが原因だろう。本来ならば理性や感情も失い、反射と本能だけの不浄の命に成り果てるところに、冒険者としての心と幼馴染への恋情を抱き続けた結果、その本能的な衝動が脳に居場所を失い、本来は女性に備わっていない器官として顕現しようとしているのだ。


「うっ、がぁぁぁぁぁぁぁっ……ああ、ストイぃぃっ……ぎ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!」


 押し殺した悲鳴がシーツの中で爆発し……そして、汗の溜まった腋や、酸っぱいマ〇コすらも及ばない、凶悪な獣臭がルゥの体から噴き出した。



 ──ルゥの咆哮を聞いたわけではないのだが、虫の知らせてきなものだったのだろうか。

 机に突っ伏していたストイはハッと目を覚まし、己の体たらくに怒りをぶつけていた。


「──っは……! く、くそ、また眠っていたのか……! ふざけるなよ、私……! ルゥは、どれほどの不安にさいなまされ、恐怖に怯えているのか分かっているだろうに……! 私を、庇って……私を庇って傷を負ったんだぞ……! 例え、心臓が麻痺を起こそうと、私はルゥに向き合い続ける義務が……!」

「──ストイ」



 背後から聞こえる声。

 親友の声だと気付き、ストイは慌てて背後を振り返る。

 ルゥが姿を見せなくなったのが、“大呪”を受けてから四日目のこと。それから更に三日が過ぎて、魔物化が完成すると言われているのが一週間から十日の期間とされる。

 そんなルゥの声が、確かな彼女の理性と共に放たれていることに、ストイは最初の期限を乗り越えたのだという感動を抑えきれず、振り返ってしまった。


「んぐぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」


 ふわぁぁ……という柔らかい羽毛や、上質な毛皮に包まれるような感触に対して、顔を覆ってきた“それ”の放つ匂いはすさまじいものであり、一撃でストイの体の自由を奪い、彼女の体の機能とまったく関係しないまま、じょぼぼぼぼっ……♥ と勢いよく愛液を噴出させるに至らせた。

 それは、恐らくは正常なる生命である人間の本能……嗅がされているのが、正しき命の敵である魔獣のそれだと、脳の片隅が理解してしまったからだ。生命の危機を感じ、排卵の準備を終えてしまったのだろう。


「(う、あぁぁぁっ……く、臭いぃぃぃっ……鼻がとうに潰れているのに、まだ頭が激臭を勝手に受容している……! こ、これは鼻で感じているんじゃない! 脳が、臭がって……ほぎょぉっぉぉぉっ! め、目が痛いぃぃぃぃっ……! じ、じぬっ……死んでしまうぅぅ……な、なのにっ……なのにぃっ、んへぇぇっ♥)」


 くんっ、と鼻が一度動いた。とっくに嗅覚は人間の限界を超えてしまっているのに、それでもその部分が動いて、明確に注がれている悪臭を“嗅いでしまっている”ことをストイの体に教えてくる。

 こんな生命の危機すら感じる獣臭、脳の一部が支配・掌握されてしまうほどの激臭を、自らの意思で吸い込もうとしている……それは紛れもなく、ひきこもる前に嗅いでいた、愛しいルゥの匂いをその最奥に嗅ぎ取ってしまったからだ。


「あはぁぁ……♥ ストイ、ストイぃ……♥ 嬉しい……♥ 本当は、嗅いだ瞬間に死んでしまったらどうしようって、少し心配してた……あたしはストイが死体でも愛せるし、アンデッドに変えることも今なら出来そうだけど、やっぱりストイには生きててほしいから……♥」

「ほっ、ほぎょっ……へげぇぇぇ……る、ルゥ……ルゥ、なのかぁぁ……こ、こんな、匂いぃぃ……んげっ♥ ぴぎょっ♥」

「賢くて格好いいストイが、まともに喋れなくなってるぅぅ……♥ ふふ、見て、ストイ……今のあたしの姿、見てぇぇ……♥」


 まともに動かなくなり、愛液の匂いまでこびり付いた状態で、まるで子供がお人形遊びをするように、丁寧に椅子の上へと座らされたストイ。

 ひくっ、ひくっと痙攣を繰り返し、目に染みていた匂いのダメージが少し軽減したところで……ストイはルゥの全身を見た。

 頭の後ろで手を組み、腰を突き出すような姿勢でいるルゥ……自分の体のすべてを露わにしている彼女は、完璧な黒狼の獣人に変貌しきっており……しかし、同時に間違いなくルゥであった。

 完全にマズルまで備えた黒狼のものとなってしまった顔立ちには、ルゥに生来的に備わった人を落ち着かせる母性めいた穏やかさが備わっており、ただ反射で生きている動物以下の魔物のような野蛮さがそこには丸でない。

 ふさふさかつ激臭の体毛に覆われ、押し付けられたわけでもないのに嗅覚の復活を阻止し続け、特にじわぁぁっ……と液体の染みだし続ける腋と秘所は、その滴りに合わせてストイを軽イキさせて潮を噴かせてしまうほどだが、幾度も抱きしめてすっぽりと覆ってくれた体躯を、忘れるはずもない。

 完全な魔獣化を終えて、しかしルゥはルゥであるらしかった……そのことはストイにとって恐ろしいほどの敗北感と虚脱感を産み、涙が出るほどの喜びと感動も喚起させ、五感が狂っているのも相まって、感情として表出することがあまりにも困難だった。


「あ、あぁぁ……ルゥ……私の、ルゥ……間に合わなかった、のか……」

「みたいだね。でも、こうしてあたしが“魔獣”で“ルゥ”のままなのは、きっとストイのお陰……ストイが、あたしを“ルゥ”に保ってくれたのは間違いないこと……やっぱり、ストイは最高だよ♥」


 ルゥは魔物に成り果ててしまったのに、くすくすと笑いながらストイへと体を寄せてくる。視覚で捉えられるほどの“匂い”がむわり……と立ち昇り、その色に触れたストイは「おほぉぉっ……♥」と呻いて、また潮を噴いた。まるで、この生命の危機を感じさせるほどの悪臭に……惹かれてしまっているかのようだ。


「あたし、いっぱい我慢したよ♥ ストイの機嫌を損ねちゃうと思って、部屋の中に引きこもって♥ ずっと一人で慰めてたんだ……♥ ぐるぅ、がるるるっ……♥ だから、いいよね♥ もう、ストイは頑張らなくていいんだから……あたしとあなたは、ルゥとストイに戻れたんだからぁ……ご褒美、ちょうだい♥」

「ひっ……な、なにを……あぁぁっ♥ いやぁぁぁぁっ……♥」


 まだ自分の意思では動けないストイの腋を持ち上げて、ルゥは人間の表情を狼の顔に浮かべながら、マズルをエルフの美貌を持つ乙女の腋に突っ込む。手入れも湯あみも後回しにして、友のために奔走していた才女のそこには、金色の腋毛がふっさりと茂っていた。


「ふうぅぅぅぅっ♥ ふごっ、ふんごぉぉぉっ♥ ぐるるるっ♥ さ、さいこほぉぉぉっ♥ ストイの腋、腋ぃぃぃぃっ♥ え、えへへへっ♥ すごい♥ 臭いだけのあたしの腋なんて、相手にならないっ♥ ふ、二人で、東方を冒険したの覚えてる? あの時、ストイは嫌がったけどぉ……食べさせてもらった“オツケモノ”だっけ♥ あの発酵食品と似た匂いがするよぉぉっ♥」

「や、やめっ、やめろぉぉっ……やめてぇぇぇっ……♥ じ、実況しないで……♥ わ、私の匂いの話なんて、聞きたくないぃぃっ……んおぉっ♥」

「味もしゅごいぃっ♥ ふぅー♥ んふぅぅっ♥ 美味しいっ♥ ストイの腋汗♥ 可愛い顔して匂いため込んだふさふさ腋毛♥ 美味しいぃぃっ♥ 好きっ♥ 好きだよ、ストイ♥ 可愛くて、賢くて、綺麗で、何でもできてぇぇっ♥ ちょっと臭いストイが大好きぃぃぃぃぃっ♥」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ♥」


 人間のそれなど相手にならないほどに、むわぁぁぁぁっ……と粘つくような臭気を放つマン汁をぶっかけられ、ストイの下半身は一瞬にしてルゥにマーキングされてしまった。

 しかし、ルゥとしては自分の匂いよりもずっとストイの体臭が刺激的で好きらしく、腋を舐めまわし、器用に舌と牙で腋毛を搾って、しみだす汗をごくごくと飲みながら。鼻先で敏感なそこを刺激してくる。ぷしゅっ♥ ぴしゅっ♥ と腋マ〇コが刺激される度にストイも絶頂し、二人の愛液が激臭と共に混ざっていく。


「あっ、あぁぁぁ~……♥ も、やめてぇぇぇ……恥ずかしい、よ、ルゥ……♥」

「はぁぁ……はぁぁ……♥ ストイ、さっきから何度もイッてるね……♥ あたしの匂いでイッてるの……こんな臭い匂いが好きなんだね、ストイは♥ だから、こんなかわいいのに饐えたような匂いさせてるんだ♥ ストイは変態だね♥ ぐるるるるっ……あたしと、最高の相性だよ……♥」

「あぁぁっ……やっ、それはダメ……し、死ぬっ♥ 絶対に、死んじゃう……いやぁぁぁぁっ♥ ふんごぉぉぉぉぉぉぉぉっ♥ むおっ♥ むあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♥ んおぉっ♥ ぷっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ♥ ふぐっ♥ ぴぃぃぃぃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっ♥」


 ストイの匂いを絶賛しつつ詰りながら、ルゥは自分の獣腋マン……過酷なオナニーとマンカスを混ぜ込む強烈な“飼育”で育て上げたそこに、ストイの美しい顔を突っ込み、挟み込む。

 僅かでも圧力がかかった瞬間、ぶじゅっ♥ とまるで達した女性器のように腋汗が噴き出し、ストイの顔を濡らしていく。美しき魔法使いの少女の体は、ぴーんと足の先まで伸びて張り詰め、へこ♥ へこ♥ と腰を突き上げるような卑猥な動きを始めた。それは意図したものというより、ほとんど反射に近い運動だ。


「(んあぁぁぁぁぁぁぁぁっ♥ くさっ、くっさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♥ お、おげぇぇぇぇぇぇぇぇっ♥ じぬぅぅぅぅぅぅぅっ♥ のうみそ、ごわれるぅぅぅぅぅぅぅぅっ♥ わたしの、のうみしょっ、こわれるよぉぉぉぉぉっ♥ 人生で一番くさいのぉぉぉぉぉぉぉっ♥ ほぉぉぉぉぉぉぉぉっ♥ ほぉぉぉぉぉぉっ♥)」

「あはっ……♥ ストイって、やっぱり変態なんだぁ……♥ 拒絶されたどうしようって思ってた♥ いっそ、この匂いで壊してお人形さんみたいにしちゃおうかなって……それくらい思いつめたよ♥ なのに、実際はどう♥ ストイったら、あたしの獣腋マ〇コ、ぺろぺろしちゃってるじゃない……♥ 臭いの、好きなんだ♥」

「(ち、がっ……おごぉぉぉぉぉっ……♥ か、体の中に、入って……んぎゅぅぅぅぅぅぅぅっ♥ なんでぇぇぇぇぇぇっ♥ 全身が拒絶してる、はずなのにぃぃぃぃぃっ♥ 命の危険感じてるのにぃぃぃぃぃっ♥ ひ、あぁぁぁぁっ♥ 子宮が熱くなってるぅぅぅっ♥ わ、私の体♥ 私の命ぃっ♥ ルゥの臭いの求めてるぅっ♥)」


 ストイはルゥのようにゆっくりと受け止める時間はなかったものの、そもそもルゥの体に包まれることをよしとし、受け入れてきた積み重ねがある。確かに、獣の匂いと油臭さが混じった、一般人なら失神しそうな激臭も、ストイは一度受け入れてしまえば、幼き日の抱擁を何倍も濃くして体験しているようなものだ。

 それは謂わば、愛しのルゥに全身を抱擁されているようなイメージ……そのあまりにも甘美な境地は、嗅覚が伝える生命の危機すらも振り切って、ルゥの激臭を良きものとして受け止めてしまい、魔物化や体臭の激化すらも飛び越えてストイの体を支配・掌握してしまった。

 もはや彼女にとって、命の危険を伴う腋臭攻めは、ルゥからの抱擁……下らない他者の目を理由に投げ捨てた、至高の時間への回帰の手段であり、舌は勝手にルゥの腋を舐めまわし、その両手は愛し気にふかふかの体毛を抱きしめていた。


「ルゥ……おえっ♥ ルゥぅ……♥ わ、私、変なんだぁ……くしゃいのにぃぃ……もっと、もっとルゥは欲しいうよぉ……♥ 好き、好きなんだ、ルゥ♥ 私もルゥが好きだぁぁっ♥ この匂い、好きっ♥ 好きになりゅっ♥ もっとルゥを教えてっ♥ 私もふわふかでくっさいルゥの虜にして♥ ルゥのお嫁さんになりゅぅっ♥」


 女性同士で、生殖など叶わないのに、その優秀な頭脳や魔法の才能をなげうち、魔物と化した存在の子種を欲する。この上なく無様で、人間としては最低レベルの尊厳放棄。

 だが、ルゥとストイという二人が、ようやく親友などという世界の枷から飛び出し、互いの執着に正しい名前を付けた瞬間がここだった。片方はすべての生きとし生ける者の敵、魔物となり果て、片方はそれに魅了されてしまったというのに……ようやっと、ルゥとストイとハッピーエンドへと到達したのだ。


「ストイっ♥ ストイぃっ♥ その言葉、絶対に引っ込めさせないよっ♥ ぐるるるっ♥ 裏切ったら殺してやるっ♥ た、食べちゃうからね、ストイのこと♥ そうやって一つになるんだから♥ 裏切っても、もうストイはあたしから逃げられないんだぁっ♥」

「逃げないし、裏切らないぃぃっ……ほぉぉっ♥ 腋臭が目に染みるぅぅぅっ♥ 私の鼻の奥にルゥの匂いが住み着いて、もう二度と忘れられないぃぃっ……♥」

「ストイぃぃっ♥ ここ、舐めてぇぇぇぇっ♥」


 腋からぬちゃっ……と引き離されて、ストイの頭は軽々と持ち上げられ、ルゥの股間へと押し付けられる。

 自分自身でグロいビラマンへと改造されたそこに鼻先を埋められ、びくびくとストイの体が震え、とめどなく愛液が股間からあふれ出た。

 腋以上の体臭、獣の匂いと女の匂いが混ざりあった、ここにしかない悪臭。ストイはそれを胸いっぱいに吸い込み、肺腑が腐りそうなほどの甘臭さと酸味を感じ取りながら、ぴちゃぴちゃと力なくそこをクンニし始めた。

 しかし、あれほど濃厚な匂い責めを受けて、完全にルゥの獣臭に支配されたストイにとっては、匂いの多寡程度ではもう、新たな刺激とまでは言えない。マンカスを美味しそうにちゅばちゅば舐めていたストイだが……ふと、自分の眉間の辺りが何かに押されているのに気づく。

 そこには、ルゥの激しい変態オナニーによって、ちょっとした子供チ〇ポ程度の大きさにまで勃起した陰核があったのだが……それが、膨らんでいる。

 クンニで感じて勃起しているという、そういう状況を超えた膨張率であり、ストイが驚愕の表情を浮かべた瞬間……乙女の体は弾き飛ばし、宙に浮かせるほどの勢いで、陰核が変貌を遂げた。


「ぎゃっ!? なっ、ななななな、なんっ……!?」

「ふぅぅぅぅっ……♥ ストイ、言ってくれたよね……♥ あたしのお嫁さんになるって、言ったよねぇぇぇ……♥ がうぅぅっ……♥ こ、これねぇ……ストイを想ってたら、生えたんだよ……♥ これって、ストイをブチ犯して孕ませろっていう、そういう意味だよね……♥ はぁぁぁぁっ♥」


 真っ白な蒸気のような息を吐き出し、これまでで一番魔物めいた表情を浮かべながら、ルゥは股間から突き出した肉竿……それも睾丸まで備わった悪臭を放つ逸物を晒し、ストイに向かって笑いかけた。

 流線型を思わせる“貫く”のにもっとも適した形状、恐らく挿入したが最後、ストイの子宮はおろか卵巣を直接貫いてしまい、そこを精液漬けにすることが確定している遠大な竿、ぼこぼこと精液を作り続けグロマンを隠すほどに膨張している睾丸、包皮の向けた先端にこびり付くたっぷりと黄ばんだ恥垢。

 ストイはこれまで、ルゥの匂いに魅了され、慣れてきたのだと勘違いしていた。甘かった。このチ〇ポの小さな面積だけで、黒狼獣人となったルゥの全身からしみだす激臭を上回り程の匂いが放たれている。下手に耐性を付けていたせいで、ストイの体は全力で匂いに媚び、ぽこぽこと卵子の増産に取り掛かっている。


「あ、あぁぁぁっ……♥」

「犯してあげる♥ 孕ませてあげる♥ ストイは、あたしのものだ……♥」

「あ、おぉぉっ……くさぁぁぁぁぁ……♥」


 ずりっ……と擦り付けられたチンカスだけで、麻痺しかけていた嗅覚が無理やり覚醒させられ、体を完全にチ〇ポ受け入れ態勢しろと匂いで躾けられる。ルゥの匂いに慣れたなどと調子をこいた自分への罰なのだと、円満な夫婦関係の為にわからせてもらえるのだと、ストイの体の中の雌が全力で歓喜していた。

 ルゥのあの日の妄想のように、ストイは四つん這いになり、ふりふりとその美尻を振って誘惑する。腋だけでなく、ストイのマ〇コも大概匂いが籠っており、ルゥの興奮を更に高め、フル勃起していたはずのチ〇ポに更なる青筋を走らせる。

 ずりゅっ♥ ずりゅぅんっ♥ と大きなストロークでチ〇ポを擦り付けるのは、何も挿入しやすいようにマン汁をからめるばかりではなく、チンカスとチン臭を擦り付け、二度と男だろうが女だろうが魔物だろうが、ルゥのオンナに手を出さないようにと言うマーキングの意味合いが強い。

 自身の体がルゥの悪臭に染まっていくのに、ストイはもう感動しか覚えない。むちぃぃっ……♥ と濃いマン臭の漂う秘所を両手で開くと、ストイは普段の賢ぶった言葉ではなく、ただ短く「来て……♥」とねだった。

 どじゅっ♥ どちゅんっ♥ じゅぼぉぉぉぉっ♥


「んぎひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ♥ おぉぉぉぉぉおんっおほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ♥」


 一息に半分ほどが挿入されて、それだけでもストイの体は宙に浮かび上がり、串刺し状態で腹ボコファックされた。その体をしっかりとルゥがホールドし、まるで己の穴だと主張するように、その全身を上下に擦り上げて、使い潰す。


「あぎゃはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♥ いんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♥」

「うぉぅっ♥ うぉんっ、がうぅぅぅぅっ♥ うがぁぁぁっ♥ あう、あうぅぅぅぅぅぅぅっ♥」


 もはや人の言葉の態すらなさぬ、咆哮と絶叫。

 しかし、二人の気持ちは疾うに通じ合っており、今はただ互いの関係を完璧に格付けることだけが必要だった。そのうえに、言葉など大して意味はない。

 ルゥがストイの腋に顔を突っ込んだまま、腹にぽっこりと浮かんだ子宮を掴み取り、ぐりゅぐりゅと刺激して自分の肉竿に更なる快感を送り込む。完全に張り型のような扱いをされるストイは、げぼっと何処を経由してきたものか分からない、とてつもなく臭いザーメンを吐き出し、体の中もルゥのモノになったのを感じた。

 ぶちぶちとルゥによってストイの腋毛が食い千切られ「あへぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ♥」とストイが絶頂する。その唇に、これまでの変態オナニーの日々で獣臭が染みついたマズルが押し付けられる。

 ストイはほんの僅かな時間も迷わず、ケダモノのそれとなった口とキスを交わし……食らわれるような口づけを交わしながら、臨月を迎えたような見た目となるまで、くっさい精液を体内に注がれた。

 もはやストイの体も、ルゥのそれと変わらないほどの悪臭を放っている。

 しかし、ルゥにとってはストイの匂いをかぎ分けることなど容易だし、ストイからすればそれは完璧な支配の証であり、全身を歓喜が包んでいく。

 じゅるじゅると獣臭い唾液を注がれながら、ストイを貫いたまま、ルゥは研究所を出ていく。

 そうして、婦婦の営みを続行しながら、人の目の届かぬ森の奥へと駆け去って行った。



「──す、スタンピードだぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 “滅び”と同義の言葉が響き渡り、小さな村に百を超えるほどの多種多少な魔物の群れが襲い掛かる。

 その村には、冒険者もいなければ領主の軍もいない。

 スタンピードが人知れず発生した時、最初に犠牲となることで領内に危機を知らせる……そういう役割の場所だった。

 今よりもずっと昔に、重戦士と魔法使いの冒険者パーティーを輩出したことはあるが、それが何だというのだろう。迫りくる滅びの疾走を、過去は決して留めてくれない。

 ……だが、その先陣に極大魔法の輝きが突如として襲い掛かり、かなりの数を巻き込んで塵に変えつつ、爆風で魔物の群れを押しとどめた。

 無論、それすらも一時しのぎ。スタンピードを完全に制圧する為には、様々な大規模兵装を組み合わせた上で、数百人の魔法使いが極大魔法を連射する必要があるとされる。

 恐らくは、こことは異なる地……あなたがこれを読んでいるであろう科学の世界であっても、核兵器や燃料気化爆弾の使用が必要になる危機だ。

 だが、迫りくるスタンピードの群れに、黒い疾風が襲い掛かっていく。それは、魔物たちのどれよりも早く、どれよりも剛く、どれよりも強かった。

 大型の巨人種や火吹き蜥蜴などが変貌した竜種ですらも、黒の一閃が吹き抜ければ両断され、臓物を噴き出して転倒する。その間にも、まるで魔力は無尽蔵だとでも言わんばかりに、極大魔法の輝きが叩き込まれ続け、スタンピードの規模自体を圧縮していく。

 狙いなど定められるはずもない、広域破壊は何故か黒い疾風だけは巻き込むことがなく、遂には通常の魔物の群れと変わらない規模にまで削り取られたスタンピードは、漆黒の力の前に捻り潰された。

 ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ! と魔物たちを構成していた“呪い”が悲鳴のような音を立て、村の前に広がる草原へと飛散していく。

 恐るべき殺戮が終焉を迎えた先、村の人々が恐る恐る見つめた先には、奇妙な光景があった。

 古のエルフ種を思わせる美しい裸体の女と、黒い狼の獣人が見つめ合い、抱きしめ合い、そして獣人が乙女を抱えて風のように走り去っていったのだ。

 人間と魔物が手を取り合い、スタンピードを殲滅した……そうとしか思えない光景だが、村人たちは自分たちの見たものを噛み砕くまでに相当の時間がかかり、魔物の死骸から資源を取ることすらもしばらくは思いつかなかったそうだ。

 “黒風”と“エルフの乙女”は、その後もそこそこの時が流れる間“スタンピード”が襲い掛かる度に現れ、圧倒的な形で災厄を祓い続けたが、やがて村が他の大きな集落と統合されると、それきり姿を現さなかったそうだ。

 ……遠い昔、偏屈な少女をいじめて、その度に体の大きな女の子にたしなめられていたという村の古老だけは、救世主たちに幼馴染の面影を見ていたそうだが、誰もそんな与太話など信じるはずもなく、村の統合前に老人が病気で亡くなった後は、誰もその正体を詮索しなかったということだ。

  ──遠い遠い昔、歴史の彼方に忘れられてしまい、今となっては誰も信仰していない教え。

 そこにおいて狼は……“勝利”を象徴していたという──。



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