『別式』で描いたこと、描けなかったこと(10) (Pixiv Fanbox)
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〈第4巻・第弐拾参話〉
・デコハゲ
九十九は危ういです。ハゲ散らかす前に逝っちゃったけど。
・一輪
椿の花が一輪落ちたのは、刀萌の死と類の片眼が失われたことへのメタファー。
・アスカ
『E.O.E.』のラストのアスカをちょっと思い出しながら描いた。
・求心力
この時は類の自己中心性が功を奏している。
その熱量とカリスマが一部違う形で切鵺に流れ込んだ瞬間でもある。
〈第弐拾四話〉
・狐面
特に意味はないがすべて意匠が異なる。
こんな幽玄なシーンを本作で挿入するとは思ってなかった。
・津重
切鵺からのフィードバックでデザインした。というか髪型以外ほぼそのまんまだが。
・幻想と具現
源内はまやかしや美化された想い出など必要としていない。
確実に在ったものをもう一度具に見たいだけ。
そこへ津重の具現化と思える瓜二つの切鵺が現れてしまい動揺している。
・偽名
源内が過去に使ってきたと思われる偽名の数々。
・眼帯
この後魁に貰う物とはデザインにもう少し差異をつけるべきだったなと少し後悔している。
魁に貰う方は白地に黒紋でも良かったかなーと今思った。類は髪が黒いので眼帯も黒いと同化してしまうのがちょっと気になっていた。なので鮫肌のような表面にして少し浮き上がらせてはいる。あと魁のセンスとして白はアリだと思う。
なんにせよ冒頭シーンで黒くしてしまったのでどうにもならなかったわけだが。一般的な眼帯のイメージで描いてしまった。あと類のイメージカラーが黒なので。
・九十九の実力
この時は類に見せようとしていた。が、邪魔が入ってしまう。
・だけど、涙が出ちゃう
女の子だもん。
・昔の刀萌
髪型がちょっと違う。
・検死…
前回の記事で「立ち会っていない」と書いたが…これは主観イメージとも取れる…。
ここを描いた時はやはり立ち会ったことにしたのか、ただのイメージとして描いたのかちょっと覚えていない。
ので、今冷静に考え直し……「やはり立ち会ってはいません」。
そのつもりだったので検死のシーンには九十九の姿を描かなかった筈。
・十郎
こんな時に十郎を思い出してしまうほど、あの時の十郎の言葉は九十九の心をバッサリ斬っていた。
・闇堕ちの始まり
僕はツライことがあってもあまり酒に逃げたいと思ったことはない。形で飲み始めはしてもそんな時の酒は美味しくないのですぐ止まる。飲めて酔ったとしても暴れたりクダを巻くような酔い方にはならない。
ツライ時は人と話すのが一番かな。むしろこっちは愚痴だらけになるんだけど。愚痴を聞いてくれる人はありがたいです。
・クシャナ
こんな時にオタネタを突っ込んでくる類。この時は余裕というより強がりも入ってる。自分の術の低下に対しての。
〈第弐拾五話〉
・刀萌の訪問
二ヶ月に一度くらいは咲の顔を見に来てはいたようだ。
・咲のフェードアウト
本編ではこれを最後に咲は退場する。
同じ雪を見ているのにこの時の源内は咲でなく切鵺を想っている。
・山くじら
猪肉のこと。この時代、獣肉を食べることは禁忌とされたので隠語としてそう呼ばれていた。鯨は魚扱いで禁忌とされなかった。
猪肉には牡丹という隠語もある。他に、鹿肉=椛・馬肉=桜など。兎肉は月夜(げつよ)という隠語があるが、兎を「1羽2羽」と数えるのは長い耳を鳥の羽に見立てて鳥肉として食していたため。鳥肉を食べることは禁忌に当たらなかった。
・柳生んとこのナントカ
登場させてみたかった。柳生九兵衛二厳。
・九十九への嫉妬
切鵺の男性化が始まっている。
・髪型を変える魁
前述したように、それまでの魁の髪型を僕があまり好きでなくとても描きづらかった。
何処かでイメチェンさせたいとずっと思ってきて、このタイミングを逃す手はなかった。
・狙われた街
『狙われた街』とは、『ウルトラセブン』第8話のサブタイトル。ウルトラセブンことモロボシ・ダンがメトロン星人と卓袱台を挟んで会話するという、実相寺昭雄監督の演出が冴え渡る、なかなかシュールにして有名なシーンが登場する。それへのオマージュ。
また、このシーンの双方の刀の位置だが、お互いに抜きにくい位置と向きに置いている。
「今ここで斬り合うつもりはない」という意思表示。
〈第弐拾六話〉
・紋付き
島田は普段は紋の付いていない羽織を着ているが、この時は紋付きで九十九を訪れている。
隠し立てをしていない態度を見せるため。
・同情
九十九の心に刀萌がいたことを察知した魁にとって、類はもう嫉妬の対象ではなく同じ女として同情の相手と変わった。
・ではあの眼差しは…
この台詞は失敗したかなと思っている。
源内が切鵺に密かに向けていた恋い焦がれるような眼差しを、「源内が切鵺の母親を犯した仇」と聞いただけで「源内が切鵺に対しても同じような劣情を抱いている」と瞬時に理解している。
恋愛感情に敏い魁ちゃんならあり得るかもしれないが。
「刀萌を殺した男」と直接源内から聞き、「どうやら切鵺にとっても仇らしい」ことを差し置いて「本当に源内は悪人なの?」と言っちゃってるくらい、源内の言葉の合理性や切鵺への眼差しの熱っぽさに肩入れしてしまってるくらいだから。
・ごめん刀萌…許してくれ…
源内を「禍ツ」と表現しているのと同じオカルトレベルでだが、すべての凶事が運命的でその発端は自分にあったのではと必要以上に思い悩み、涙してしまった。
・女衒と斬九郎
これが残された尺で咲の顛末を描く精一杯の逸話でした。
・運命(オカルト)の逆振りとハグ
刀萌が死んだことも自分のせいと思えてしまうネガティヴなオカルトで悩んだ直後に類と遭遇するというポジティヴなオカルトに縋って明るく振る舞っている。
そして類と抱き合うと落ち着く自分が既にあり、それに甘える。
・よんきゅー
「さんきゅー」の上位語。完全におっさん用語。
・エモいキモい
韻を踏んでる。
・あの男
十郎のこと。
・赤と黒
この設定は考えてあったが、どこで使うか出しあぐねていた。
類の常人を逸した天才性を巡る過去の逸話が描ければそこで出すつもりだったが、その余裕もなく、ちょうどいいタイミングがここだった。
・しかし必ずお前を笑わせられる男になってみせる
その言葉に嘘はないかもしれないが、九十九は女の気持ちを翻らせる難しさをわかってない。それが出来てたら刀萌もモノにできていたであろう。モテ男の甘さ。
・割れるかな
割れたんだよ。
〈つづく〉