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三蔵side  お弟子が最近、あたしになんだか冷たい気がする。  最初にそう思ったきっかけは、いつものようにトレーニングを終えた後だった。  カルデアには様々な時代の英霊が集まっていて、そのトレーニング方法も多種多様。「瞑想修行をする時間があれば、その分、一振りでも多く槍を突いた方が良い」とスパルタ的な主張をする人もいれば「いや、そもそも修行をするという発想自体が軟弱。好き勝手に自由気ままに生きて、欲望を強めることこそが、自分を強くするために必要だから――好きなだけヤりまくって、飲みまくって、絢爛豪華な宴に耽ろう」と海賊的な主張をする人もいて――  あたしには、彼らが間違っていると傲慢に振る舞うことは出来なかった。  いや、内心で思うところはあったけれども!  仏の御心に置いては絶対に間違っているとは思ったけれども!  それでも──  歴史に名を残すほどの偉業を成した彼らのそれが、間違っていると言う権利は誰にもないと、あたしは知っていたのだ。  だけど――  だけど、カルデア最後のマスターはどうだろうか?  彼が強い信仰を持って、既に、仕えるべき神様を持っているのならば何も言うつもりはなかったけど――「クリスマスを祝って、初詣に行って、バレンタインデーを楽しむ」という――典型的な無宗教論者。「結婚式は和風と洋風のどっちがいいかな」程度の価値観しか持っていないマスターを――  仏教の道に引き込むことは、別に、悪くないはずです。  わ、わかっているわよ!勿論、マスターが嫌がればすぐに辞めました。彼が「いいや、自分は『無宗教』を信仰しているのだ」とあたしに毅然とした態度で告げてきたのならば、無理にそれを押しつける気はなかったのですけど―― 「あっ……え、えっと……さ、三蔵ちゃん……か、顔……近い……もちょっと……は、離れ……ひいっ!?」  と――  彼は、どこか煮え切らない態度をあたしに見せてきたのです。   誰がどう見ても「合意」じゃない!?  マスターとトレーニングをするようになったのも、それがきっかけ。  あたしは生憎、戦闘技術について教えられる内容は大して持っていません。天竺までの長旅で学んだ作法はあっても、それは現代技術では使う場面が少ないですし――何より、そういったサバイバルの知識はあたしよりも、本職が教える方が生存確率が高いと思っていたので――  トレーニング室では、主に、精神面を鍛える瞑想ばかり  どんな状況でも心を揺らがないように。火を焚かなくても、高温高湿を保てるというのは幸い。汗だくになるからと、あたしはいつも、この時代のタンクトップとホットパンツの姿だったんだけど――マスターは、それに対してもやらしい感情を抱かずに、ちゃんと、あたしの服装から目を逸らしてくれていた。  煩悩を丸出しにしたカルデアの職員が、あたしの胸や秘部を、下着越しにジロジロ見てくるのとはまるで違う――顔をまるごと背けるような、マスターの態度。  素晴らしい!と、あたしは心底から彼を褒めてあげたの。   煩悩退散というのは、勿論理想だけど、簡単に出来ることじゃない。あたしだって、未だに道半ば。マスターみたいな、日本では普通の高校生で、いっぱいの誘惑と戦ってきた男の子が――そうして、瞑想の末に、あたしの胸の谷間に男の子らしく、鼻の下を伸ばさないというのはとてもいいことで、だから、いっぱい褒めてあげたんだけど――  最近は――  マスターは、あたしの胸を見るようになってきたの。  それが――「冷たくなった」と思った理由。  マスターのあの視線の背け方は、尋常じゃなかったわ。あたしと正面から向き合うと、即座に、首をまるごと横に向けて話すような彼の態度。勿論、「相手の顔を見て話をしないと、失礼なのよお弟子」とあたしは説法をしましたけど――彼はしっかりと煩悩と戦って「胸を見るという欲望から逃れるためには、顔ごと背けなければいけない」と頑張っていたので――説諭も、ちょっとした小言程度で済ませていたのに――  最近のマスターは、ちらちらとあたしの胸を見てくるの。   バレてないと思ってるのか。バレててもいいと思っているのか。それが、普通の男の子なら「あら?性欲が芽生える時期なのかしら?」とも思うけれど、マスターくらいの年齢ならばそれは不釣り合いだし――何より、彼は「私のこの、大きすぎて、無意味な煩悩を男の子に抱かせてしまって――旅をするには邪魔なだけの脂肪の塊」を相手に、慌てて顔を逸らせる男の子なの。  煩悩は存在するけど、それを制御しようとする立派な彼が――  と、考えると――辿り着く結論は一つ。  これは――  噂の、反抗期というやつじゃないかしら……!?  あたしの胸を見て煩悩を膨らませてはダメ、というのはあたしの教え。あたしが何か、お弟子の地雷を踏んでしまったのならば。「ちっ、うっせーな!ぎゃーてーぎゃーてーうるせえんだよ!」とマスターが、私に反抗をして――そのためにわざわざ、私の胸を見て「僕は不機嫌です」とアピールをしているならば――  お弟子の師匠として、あたしにはやるべきことがあるんじゃないかしら……!?  そう思っていた矢先に、食堂で声を掛けられたのは美少女。  産まれた時代も国も違うので、話すことは滅多になかったけれど――  あたしが、思わず見惚れてしまうくらいの――清楚な美少女だった。 「――えっ?」  彼女が提案した言葉に、あたしは最初、意味がわからなかった。  いや、わかるのだ。わかっているけど――  一番大きな疑問は―― 「なんであたし?」――だ。  彼女が生きた時代のフランス。カルデアにもお友達はいっぱいいるはず。言ってしまえばなんだが、あたしと彼女は全くの縁がなかったはずなので―― 「……三蔵さん?  もしよろしければ……マスターと三人で……旅行に行きませんか?」  という言葉の意味が、わからなかったのだ。  だけど――  お弟子との関係を修復して、互いの間に生じたすれ違いの距離を縮めたいあたしには、まさしく渡りに舟だ。  いや、違うのよ?そこにあるのが「閻魔亭」だとか「源泉垂れ流しの温泉」であるとか「滋味の深い山菜に舌鼓を打てる」とか――それは、別に関係ないのよ?でもまあ、その、ね?お弟子の誤解を解いて、機嫌を直してもらって、元通りになるためには、ほらっ、ずっと鞭ばっかりじゃ、お弟子も辛いじゃない?  だから――  あたしは、二つ返事で彼女に――  シャルロット・コルデーちゃんに、旅行に行くことを告げたの。  あたしが「マシュちゃんは誘わないの?」って聞くと、彼女は、少し困ったような顔で―― 「……マシュさんは、今のカルデアの業務においては必要不可欠な存在ですから……ああっ、勿論、マシュさんにも慰安旅行は用意しますよ?でも……マスターと、マシュさんが二人同時にカルデア不在というわけには……」  と――  すごく、すらすらと彼女はあたしに述べたの。  最初は一瞬「この返答を、事前に用意していたのかしら」とも思ったけど――考えてみると、マシュちゃんだけを誘わない理由は思いつかなかったし――目の前にいるのがBBちゃんならば悪意の匂いを感じるけど――どこからどう見ても(まあ、お弟子が興奮しそうな胸部だけど)清純派美少女の彼女が、あたしを謀る理由もないと思って――  だから、疑問はそれで終わりにして、コルデーちゃんは立ち去って、あたしは閻魔亭の過ごし方を考えてたんだけど――    ――で  終わり、じゃなかったのよね。 「ほう……先ほどは、面白そうな話をしていたな……?」  あたしに、声をかけてくるのは――  ケルトの伝説の女武人。  先ほどのコルデーちゃんと同じくらい、普段のあたしとは接点が薄いんだけど――でもまあ、昔っからカルデアにいるし、知らない仲でもない相手。「あら?もしかして、一緒に行きたかったのかしら?」と思って、あたしは「じゃあ、コルデーちゃんに、一緒に連れてってもらうように聞いてみる?」と尋ねると―― 「いや……直接話しても、あの娘御は……なに、なんでもないさ」  ――と、ブツブツ何かを呟いて立ち去っていって、変なの、と思いながら――今のあたしは何か、モテ期のようなものが来ているんじゃないかしらと思ったんだけど――  その後は、特に何もなくて――  だから、あれはなんだったんだろうと思って――  その意味を理解したのは、当日になってからだったわ。 ────────  スカサハside 「あらっ?結局来たのね?」 「な、なんで……あなたまでここに……!?」  玄奘三蔵はケロッとして、シャルロット・コルデーは見るも鮮やかな狼狽を示している。  たったそれだけで、私は状況を理解してしまうのだ。  予定を掴めば、後は閻魔亭の入り口で先回りをしておくだけ。女将足る紅閻魔が、普段はカルデアで活動をしているのも都合が良かった。「女将、予約が一人増えてもいいかな?」と聞けば、それで済む話。「ちゅんちゅん!わかりまちた!」と彼女は、台帳に私の名前を簡単に刻み込んでくれたのだ。(ついでに、マスターと同室にしてほしいと言ったが、それは拒まれた上に小一時間ほど説教をくらった。何故だ)  二人の少女と違い――  マスターは、こちらに視線を合わせてはくれない。  普段のトレーニングルームでは、最近、どうにか視線を合わせてくれるようになったのだ。いや――「敵を眼前に、相手の乳がデカいからという理由で目を逸らして油断すれば、どんなに痛い目を見るのか」というのを、その身体に、厳しく刻み込んだからであるのだが――  今は、完全にリラックスして、オフを満喫するつもりだったのだ。  本当ならば「コンマ一秒、平時であっても気を抜けば、次のコンマ二秒目には首が刎ねられても文句言えないのだぞ」と、本気の殺意を込めた実戦でマスターに教育するのだが――今は、閻魔亭で休息を楽しむための時間なのだ。勿論、彼が生まれついてのケルトの勇士であれば、その油断は自らの命を代償に償ってもらうのだが――未だ、発展途上中の彼にそこまでの罰を背負わせるのはかわいそうだし――  何より――  私が、本気でマスターの首を刎ねようとしても――  隣にいる二人は、その「コンマ一秒」で、私の殺気を感じ取ってマスターを護るだろう。  ならば、「その強き護衛二人を隣に侍らせてきたこと」を、マスターの実力として――今日は特別に、認めてやることにする。槍を降ろすのだが、実際に殺気を飛ばしはしなかったので、三蔵の方は「スカサハも温泉入りたかったの?」と、あっけらかんと尋ねてくるばかり。一度は手合わせをしたい実力者だと思っていたのだが――なに、敵意の介在しない状況での彼女は、竹を割ったような性格で非常に好ましい相手だ。  しかし――もう一方―― 「……スカサハさんを、誘ったつもりはなかったんですよ……マスター……  い、いえ……嫌というわけではなくて……  ……そ、その……スカサハさんがいると……リラックス出来ないじゃないかって……」  シャルロット・コルデーの方は、どうも、腹の虫が落ち着かなくなる。  元々、彼女はただの一市民。逸話によりサーヴァントの身を得たとは言え――血なまぐさい戦場で命を賭けていた奴らと覚悟が違うのは、わかるのだが――  気にくわないのは、その態度だ。 「悪い女」というのは、嫌いではない。メイヴが良い例だ。不満が100個あれば、褒めるべき点が1000はある。玉藻の前や楊貴妃も同じであり――傾城や傾国と呼ばれる彼女達は、それはそれで、一本の芯が通っているのだ。  だが、私が思うに――  シャルロット・コルデーは、必死になって、悪い子を演じようとしているのだ。  コヤンスカヤやBBが「私たちは善人ですよ~」と、醜悪な血と肉の匂いを口から撒き散らして、演技をしていれば腹が立つのと同じ。そこに善人と悪人の差はあれど、擬態という意味では何も変わらずに――  だからこそ、私はコルデーのことが直感的に気にくわないのだが――  しかし――  そうして、予想外の出来事に狼狽をして――  ただの町娘のように、言い訳をしている姿は――さながら子供のようで、少し、好意を抱く。  マスターの耳元に囁くひそひそ話でも、私の耳には簡単に届く。「温泉~、温泉~♪」と、遥か先を行きながら、小唄を奏でて上機嫌の三蔵だけが、知らぬ話。  なので―― 「簡単な話だ、マスター……  私は、あの女を喰うことを……手伝いにきただけだ……っ♥」  私は、自分の本心を包み隠さずに、二人に告げてやる。  どこかで拾った枝を、まるで男子のように振り回しながら上機嫌な三蔵だが――その臀部は、十分に大きい。天竺までの長旅で歩き続けて、下半身が十分に鍛えられたのだろう。安産型というその臀部は、大きな胸と同様に、雄の興奮を煽るもの。私のように筋肉で引き締まっていたり、あるいはコルデーのように惰肉で大きく膨らんでいるのとは違い――「めちゃくちゃに脚を使って、歩き続けた女特有の、むっちりとした太腿に支えられた大きな臀部」というのは、彼ら曰く「最も男ウケするもの」らしい。  マスターの視線が、先ほどからそちらに釘付けなのは気がついている。 「ふむっ……初めて契約を結んだときから、随分と情けない雄だと思っていたが……  女を知って……一歩、逞しくなったようだな……っ♥」 ”むんずっ♥” 「ひゃあっ……!?ス、スカサハさん……!?」  私は、マスターの股間をむぎゅっ♥と鷲掴みにしてやる。   クーフーリンやフェルグスなどでは、挨拶のようにする代物だが――「女が男に」であると、意味合いが途端に変わるものだ。マスターは、びくっと肩を弾ませて――歯を食いしばり――なので、射精こそしていないが絶頂をしたのだと察する。男子が尿道の根元を必死に締めて、射精をキャンセルして絶頂するそれは――私にとって、嗜虐心をそそるもの。多分、小学生男子のような情緒の三蔵には気がつかれないだろうが――念には念を、と、ルーンで消音と気配遮断をしてやる。 「コルデー……  先に……こいつを狙っていたのは、私なんだぞ?」 「……ふぇっ?」 「体躯は貧相だし、なりも大したことはないが……初めて私と契約を結んだときから、いい瞳をしていたんだ……♥絶対絶命の盤上から……それでも、勝利を信じて疑わない……強い瞳を……  だから、しっかりと雄として育てて……逞しくなり……  この逸物が、雄として熟してから食べてやろうと思っていたんだが……  ……まさか、先に食べられてしまうとはな……っ♥」  私がコルデーを責める言葉は、敢えて、マスターの耳元で捧げてやる。  彼は、私が好感を抱くに値する雄だ。  ケルトの勇士とは異なり、平和ボケした国に生まれて育った男。だが――産まれてくる時代が違えば、そこではひとかどの雄として育ち、英雄か、支配者か――あるいは、世界の王者として君臨したかもしれない才能を持っているのだ。  一年にも満たない僅かな期間で、ぐんぐんと成長をして――最後は、人理を救った男。  熟れた果実に齧り付くその瞬間を、今か今かと待ちわびていたのだが――  横から、あっさりとコルデーにかっ攫われたのだ。  あるいは私がコルデーを気にくわないのは、そうしてトンビに油揚げを奪われたからかもしれない。マスターの初物は私がもらうはずだったのに。私に押し倒された彼が、どんな声で鳴くのかを楽しみにしていたのに――  然らば、それは八つ当たりだな――と、考えてから――  私は――  まるで、頭の悪い女のような嫉妬を、無意識で彼女に抱いていたのだと気がついた。  だとすれば、謝罪をするしかないのだが――  口先でペラペラと紡いだ言葉に、説得力があるはずもなく―― 「なぁ……マスター……  私はな、本当に邪魔はする気ないし……  それどころか……手伝いにきたんだぞ……っ♡  あの……どっすけべなくせに……自分のエロスに無頓着な女を喰うには……  下拵えの人手が多くて困るということはないだろ……?」  私は――  マスターの股間を、優しく撫で回しながら尋ねる。  私の手袋は、肌の露出を避けることで余計な傷を負わないようにするためのものだが――そのすべすべな触り心地は、意図せぬところでマスターの性的興奮を煽っていたらしい。彼のズボン越しの股間。逸物の形はまだ、見たことがなかったが――それでも、槍を交わしている最中、鼻腔をくすぐる香りで、一流の雄であることは既に察していた。全く――ケルトの勇士として、私が育て上げるつもりだったのにと思いながら――コルデーに睨まれて―― 「取引だ、コルデー……」  私は、閻魔亭までの道のり――  マスターをからかい、彼の欲情を煽り――  遥か前方を歩く極上の雌へと、獣欲をぶつけさせるために、様々な言葉を弄した。 ──────── マスターside  閻魔亭というところは、食材の調達も自分達で任されている。  スカサハが山に住み着いた魔猪を退治しにいくことになり、コルデーは紅閻魔の地獄の花嫁修業に(強制的に)参加させられることになっていた。だから、あなたと彼女の役割は山菜採り。「老人の趣味」だとあなたは思っていたので、当然、食べられる野草の知識は少ないのだが―― 「ふっふっふ~……お弟子、任せて!あたしを誰だと思ってるの?……野営のプロよ!プロ!」  彼女は、ここぞとばかりに自分の有能さをアピールしてくる。  背中に背負ったカゴに、ひょいひょいと野草を入れていく彼女。少しだけ――「彼女の体質上、多少の毒草は耐性が付いて平気なのではないか」と失礼な発想が浮かんだが――考えてから、それが事実であるように感じて、あなたは怯える。  彼女は、あなたの先を行く。  野山を駆けまわる姿が、やけに似合うなと感じる。  そんな彼女の背中を見ていると、思うことがある。  あなたは勿論――  最初は、三蔵を襲うつもりなどなかった。  元々は童貞の平凡な男子高校生の身。大学に進学して、新歓コンパでも特に彼女は出来ず――親からもらった仕送りを握りしめて、ソープに向かい、親よりも年上の老婆で初体験を済ませるような――日本人の平々凡々な童貞卒業を迎えるはずだったのに――  コルデーの最上級の誘いウケに、あなたの人生は狂わされてしまったのだ。 「俺は世界を一度救って、その後、もう一度救おうとしている勇者様だぞ。世界中の極上の雌をつまみ食いして何が悪い。世界で俺よりも優れた英雄は、神話を遡ってもいないんだから――歴史に名を残した英霊達とハーレムを作っても、誰に文句を言う権利があるんだ。世界を救ってから言ってみやがれ――」と──  傲慢に思ったこと自体は、幾度もある。  だがそれは、マイルームのベッドの上で――  自身の逸物を握りしめて、シゴき上げている瞬間だ。  普段からそんな傲岸で不遜な態度を取ることが、出来るはずもない。自分はただ、偶然、その場にハマった歯車というだけ。自分よりももっと、スマートな解決を導ける人間は大勢いただろうし――自分はそんな特別ではなく――ただ、全てが終わった後は、一生働かなくてもいいくらいのお給料はもらってもバチが当たらないんじゃないかな~……くらいにしか考えていない、小市民なのだ。  だから――  コルデーの身体を、自由に貪れるだけで、あなたの幸運はオーバーキルなのだ。  一生涯遊べる金を費やしても、コルデーのような美女を抱くことは出来ないし――更には、彼女から愛情たっぷりの、金銭関係では絶対に得られない唾液たっぷりのキスを受けられるというのは――最早、世界を救った英雄にのみ許されるご褒美なのだ。  なろう小説のハーレムよりも、たった一人で遥かに、魅力が上回っているシャルロット・コルデーという美少女。  彼女一人だけでも、十分だったはず、なのに―― 「お弟子~!なにぼーっとしてるのよ~?」  気がつけば――  あなたの鼻先二センチの位置に、美女の顔があり―― ”バッ”と、あなたは飛び跳ねて、尻餅をつく。 「な、なによぉ……そんなに、驚かなくてもいいでしょ……」と、彼女は子供のように唇を尖らせて、拗ねた態度を取る。  彼女は――  玄奘三蔵は、自分の美しさを理解していない。  小学生男子と同じような情緒でこちらに接してくるのだが――それは、たまったものではない。美女や美少女は、その声色――どころか、「あっ、近くにいるのだな」という、鼻をくすぐる香りだけで、健全な男の子の身体を麻痺させるのだ。童貞丸出しで、おっぱいから視線を逸らしたときに「あらっ!お弟子はちゃんと煩悩を制御できてるのね!えらいえらい!」と抱きしめて、頭を撫でてくる女。メイヴやニトクリスのように、オイルや香油で保湿などは特にしていない三蔵なのに――  彼女の乳の谷間からは、甘ったるく糖度の高い、桃のような香りがしているのだ。  地下空間のアガルタで食べた、桃源郷の桃を彷彿とさせるような香り。他の女の子のように、肌のケアなどは特に行っておらず、自由奔放に生きているのに――生まれついての絶世の美女、極上の雌は、その乳の間から――雄を誘惑する濃厚なフェロモンを、ぷんぷん、むわむわと放っていくのだ。  腹立たしい、と思うのは、彼女の胸の谷間からは、甘酸っぱい汗の匂いも漂ってくるからだ。  彼女が頻繁に話してくる「悟空」という存在。あなたもまさか、日本で産まれて育って知らないはずもないのだが――彼は凄いなと、あなたは、心底から尊敬してしまう。  これほどまでに無防備で、雄を誘蛾する甘いフェロモンを放ちながら、尻をフリフリと振る女。比喩表現ではない。今、あなたの目の前で、キノコを採るために前屈みになり――尻を突き出しているのは、極上の雌にして絶世の美女なのだ。  尻が大きすぎるが故に、布地が引っ張られて――彼女の尻の谷間までくっきりと、形が露わになる。三蔵はいつも、内側にはビキニのような布面積の下着を履いている。現代日本においてはありえない価値観だが――天竺までの長旅では、その軽装が最も適していたのかもしれないが――  故に――  彼女の下着は、Tバックのように尻に食い込んで――  形を、くっきりと露わにするのだ。  男の子の理性を保つのにも、限度があるのだ。  高校時代、同じクラスの、容姿が最悪な女子であっても――尻を突き出せば、それを視線で追ってしまうのが男という生き物なのだ。尻をふりふりと振り――  更には、樹になった果実を取るために肩車を要求してくる彼女。  あなたの首筋に、彼女の股間が触れている状況で「んっ……お弟子~……もっと、ちゃんと背筋伸ばしてよぉ~……」と、鼻息が混ざった声色を奏でて来る女が相手であれば――裁判長と裁判官の過半数が男である限りは、情状酌量の末に無罪の判決を下すことだろう。  あなたの股間は、既に、これ以上ないほどバッキバキに膨らんでいる。  最早、我慢をすることは出来ない。  コルデーがどんな計画を立てて、あなたと三蔵が同衾するのかは聞いていないが――おそらくは、酒に何か薬でも盛るのだろう。しかし――三蔵にそれが効くのだろうか。効いたとしても――眠りこけて、マグロになった彼女を犯して、果たして自分は最高の興奮を抱けるのだろうか。それならば――最初から、コルデーの身体を貪れば良いのではないか――なぞと、様々考えていると―― 「きゃっ!?」  脚を滑らせて、あなたはその場に転倒して――”むっぎゅ~~~っ♡♥♡♥♡♥”と、三蔵の尻に顔面を押し潰された。

Comments

谷澤晴夫

女性側の視点と男性側の視点があって、その対比が良いですよ。煽るスカサハもまた良い。