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 支援者様向けアンケートによる作品です。アンケート抽出の結果、ランダムで選択された回答は『夫婦の入れ替わり』でした。

 平和な夫婦の入れ替わりって書いたことないなぁ……とか思ってその方向性にしたのですが、導入に悩みまくった結果全部喋らせてそういう変わり者にするという発想が出てきました。

 ダーク要素はかけらもない、イチャイチャしてえっちするお話です。


 それでは、以下本編です。


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「――その夫婦、七子《ななこ》と勇太《ゆうた》は今年で結婚5年目になる。両親達が友人同士で物心付いた頃から交流があり気心は知れていた。少々変わり者の七子を勇太が放っておけず、やがて庇護欲、幼き恋心へと移ろっていく。七子はこれを受け入れ、高校生になった頃に交際を開始。そのままお互いが他を知らないまま、25歳の時に結婚と相成った。

 現在はふたりとも30歳を控え、子供を作ることを決めたのだが、二人の絆と心は固く繋がっていることと信じている傍ら、やはり妊娠出産となると不安がある。

 そんな折、七子がある日街で買い物をしている最中に奇妙なものを発見する。真に愛する夫婦同士が、精神と肉体を入れ替えられるという代物である。なんでもそれは一枚の紙で、二人の手で挟めばよいとの説明。

 七子はとんだ霊感商法だと思った。しかし高価でもない。面白半分で購入した七子は勇太に二人の愛を確かめるため、この紙を使用してみようと提案。勇太はやはり七子は不思議な人物だなと再認識しつつも、これを二つ返事で快諾したのだった……」


 都内のマンション、秋の昼下がり。買い物から帰宅した七子の語りを、勇太は胡乱げな目を向けながらも黙って聞き届けた。

 むふん、と鼻を鳴らし、七子は一枚の紙を取り出す。

「だから、やろう」

「俺が快諾するのは決まってのかい」

 勇太はひとまずツッコミを入れた。


 ――この二人が歩んできた経緯と背景は、おおむね七子が述べた通りだった。勇太が指摘した通り、いくらか事実と違っている箇所はあるのだが、ともかく二人は幼馴染から恋人、そして夫婦と関係を変えていったこと、お互いを強く信頼し愛し合っていることは事実だった。

 なにより七子が変わり者なのは、先のセリフが全てを物語っている。


 七子は眼鏡越しに切れ長の目を勇太へ向けつつ、改めて紙を突き出す。

「いいじゃないか。三連休の初日だというのに予定もない。これからだらだらとゲームをしたり夫婦の仲を深めるのもいいが、ちょっとした刺激だと思ってな」

 やはり半目の勇太。七子が怪しげなものを購入してきたり、突拍子もないことを言い出すのはいつものこと。今回も付き合うこととした。

「……まあ、いいけど」

 勇太はそもそも信じてなどいなかった。要は子を成すのが心細い七子は自分との愛を確かめたいだけ。少しばかりアクが強いが七子なりの愛情表現であり、いつもの彼女であることもよく理解していた。

 仮に愛し合っていなければならないのが本当だったとして、後ろめたいことはなにもない。七子が裏切るとも思えないので、全く問題はなかったのだった。

「じゃあさっそく」

 出かけるでもなくスウェット姿だった勇太と、黒いストッキングにニットワンピース姿の七子は立ち姿勢で正対する。

 七子はめいっぱいに手を広げ、勇太はそこそこに手を開く。まずは手を合わせてから、一瞬だけ離してその隙間に紙が差し込まれた。


 数秒。紙越しに体温を感じながら、二人は手を見つめていた。

 しかし――紙が突如としてすり抜けたように舞い落ちた。

 七子は仰天しがら、勇太は落ち着き払ったまま呟いた。

「……あ、ああっ? あれ、声……!?」

「ふむ……成功、のようだね」

 勇太は――勇太の肉体を手に入れた七子は、おもむろに自分のごつごつした手、太い腕、逞しい胸板を見下ろす。両手をズボンの中に入れ、さらに頷いた。

 一方七子は――七子の身体となった勇太は、たちまち挙動不審となった。マニキュアが塗られたネイルで、ほっそりとした肢体と標準的なサイズの胸を撫で回し、果てはワンピースの裾から手を入れる。

 まさか本物だったとは。呆けた勇太だったが、七子がぱんぱんと手を叩いて引き戻した。

「ははは。私も半信半疑だったのは否定しない。勇太が応じてくれただけでも嬉しいのだけど……よもや嘘偽りのない魔法がかけられていたようだ」

「かけられていたようだ、じゃないって! ていうか……ええ!?」

「なんだ。うちの旦那は妻にがに股をさせたり、ワンピースをめくりあげたりとはしたない格好をさせる趣味があったのかな? 言ってくれればいくらでもしたのに」

「そうじゃなくて……ああもう、俺の声だから違和感あるなぁ……自分の声もだし……! これ、戻れるの!?」

 ひたすらに慌てている勇太を笑って眺める七子。

「説明では約一時間で効果が切れて、自然と元に戻ると書いてあった。どこまで信用できるかは不明だが、精神が入れ替わったのは本当だったのだし信じる他ない」

「一時間かあ……ならいいけど……」

 そう長い時間ではないことに安堵した勇太。七子に言いたいこと、この紙そのものへの疑問はあるものの、じたばたしても事態が好転しないところまでは理解に届いたのだった。

「私は――」

 しかし、ようやく冷静になった勇太を七子は後ろから抱きすくめる。細い肩を、いつも彼女がそうされているように拘束した。

「一時間、短いと思うがね」

「ひっ……ぅ」

 背後から回した手で勇太の――自分自身のものだった胸を触る七子。ニットの生地が伸縮して、中に隠された乳房の柔らかさを伝えていた。

 初めての感覚。勇太の脚が震え、七子はたやすく支える。

「真に愛し合っている夫婦同士がすることといったら一つしかあるまい。異性の身体を……外から中から味わうのに、一時間では大したことができない」

「……ぅぁっ、ちょっ……んっ」

「仕組みは気になるところだが……まあ大丈夫だろう。それに万が一、私は戻れなくとも困らない。愛する夫の身体だからね」

「ちょ、ぉんっ!」

 七子はストッキングの上から勇太の股間を撫でる。

「……勇太。セックスをしよう。気持ちがいいぞ」

「んっ……っふ……わかった、わかったから……っ」

 どうにか七子を引き離した勇太。どちらともなく手を繋ぎ、寝室へ移動した二人だったが、すぐさま勇太はベッドに押し倒される。

「ふあっ」

「……こうして私の顔が情けなくも扇情的な表情を浮かべているのは、少し恥ずかしいな」

「煽情的って」

「隠さずともいいじゃないか。多少なりとも私の身体を体験したのだろう。女性の快楽は男性のそれの何倍とも聞くし……私も、男性の性欲の強さを体験しているところだ」

 七子はゆっくりと身を沈めていき、口づけを交わした。

 キス。それはずっと恋人同士で現在は夫婦となった二人にとって、幾度となく繰り返した行為のはず。

 しかし、勇太は半ば無理やり唇を奪われたことに目を白黒させていた。七子の性格の通り普段は彼女がリードすることも多いのだが、それにしたって勇太は身を任せるのではなく寄り添っていくもの。腕力でもって従わされるのは勇太にとって初めてであった。

 七子にも、全く正反対の理由で普段とはまた違った愉悦が生まれていた。

「……っぷ……なんだか、不思議だな。自分なのに」

「うぅ……少し、落ち着かないか……?」

「なる……ほど。ひょっとして、私は普段そんな顔で勇太を誘っているのか? だとしたら……なるほど」

「あっ」

 一度は離した唇が、再び重ね合わせられる。

 今度はよりいやらしく、舌を絡め口内を探索するような舌使いだった。もちろんそれは、七子の一方的な蹂躙ではない。先程までは戸惑ってばかりだった勇太も自らの意思で求めていくようになった。

 ぴちゃぴちゃという水音と僅かな衣擦れ、そして甘い吐息が満ちていく。それぞれ相手は同性となる格好となるが、全く気にならなかった。

「っぷ……っふ……どうだ、勇太?」

「……」

「ふふ……遠慮はないな、お互い」

 無言のままに勇太を抱き寄せた七子は、ニットワンピースを脱がせていく。インナーとストッキングも脱がせると、勇太はあっという間に下着姿となった。

 烏を想起させる、構造色のような輝きと漆黒のブラジャーとショーツ。勇太もよく見ているものだが、さすがに身に着けたことはない。真上からの視点で眺むことで肌色の谷間も眼前に広がり、改めて妻の肉体になったことを自覚した。

「わ……胸、ある……」

「そりゃあるだろう。私の身体なんだ」

「それに……ないんだもんな、こっちには……ひぅ」

 寂しげ股間をつついた勇太。しかしやぶ蛇で、刹那に流れた甘い痺れに眉をひくつかせた。薄いショーツの向こう、勇太にとっても大切な七子の女性が反応していた。

「……さて、私は自分自身の股間を第三者視点で観察することに興味がある。見させてもらうよ」

「あ、こら……っ」

「……もう濡らしているのか。べっとりだ」

 勇太のショーツを剥ぎ取った七子はにやりと笑うと、それを放り投げて勇太の脚を開く。

 そこはショーツが示していたとおり、愛液で潤んでいた。手入れされた陰毛と襞から顔を出す粘膜部分は糸を引いており、口を脈動させている。

「ふむ……勇太以外の男は知らないから綺麗なのではないだろうか。我ながら、鮮やかなピンクを保っているかと思っていたが、客観的にもそう映るな」

「……ふぅ、ふぅ」

「ここまで垂れ流していたのは……ふふ、照れるが」

「んっ!」

 指で開いた七子は、指先を潜り込ませる。といっても膣に突っ込むのではなく、周辺を優しくなぞるように愛撫していた。自分の身体だけあってか、手付きに迷いはなかった。

 勇太は目を瞑り、その至福を享受する。

「……んぅっ、っふぁっ……声、出ちゃう……女のカラダ……すごっ――んっ!」

「そうだろう。勇太はいつも、今感じているだけの快楽をくれているんだぞ。肉体的ではない……ふふ、やはり勇太に触られると、気持ちいいんだ……今の勇太だって同じだろう?」

「そ、そんな……んぅっ!」

 それを言われ、男としての優越と夫としての喜びが頭を出した勇太。しかし次の瞬間には、クリトリスをつままれる。女性にしか持ち得ない快感を叩きつけられ、プライドはどこかに飛んでいってしまった。

「ふぁ、っ、なあっ!」

「はぁ……はぁ、私のここ……やらしい、な」

「……ちょ、すと……ふぁ……あ」

「なんだ?」

 愛液を撒き散らし、喘ぎまくっていた勇太だったが七子の愛撫する手を止める。息も絶え絶えながら、七子の肩を掴んだ。

「……たぶん、イきそうだった」

「いいじゃないか。あまりにの気持ちよさに怖気づいたか?」

「……違う。お前も……」

 勇太はそう言って、七子のズボンを指差す。スウェットの生地は大きく隆起して山を形作っており、男性の欲情を示していた。

 その意図を察した七子はやや顔を赤らめ、不意を突かれたように口を開けたがすぐに納得した。

「いいだろう」

「ん」

 勇太は七子のズボンとボクサーパンツを下ろすと、血管が浮き出るほどに勃起したペニスが姿を表した。包皮は剥け、赤黒い亀頭が露出し少しだけ汚れが付着している。

 ごく柔らかなタッチでペニスを包み込んだ勇太は、そのまま手を上下させた。夫のものをごしごしとしごく妻という光景だけなら夫婦の営みでしかないのだが、その実中身は逆転している。

「ふ……っふ……どうだ?」

「……うっ……これは、鋭敏だな。確かに女性よりも快感そのものは小さいかもしれない。ただし……」

 七子は上目遣いで見つめてくる勇太の頭を撫でる。

「……男の性欲がどういうものか、分かった気がする。女を傅かせ、侍り、支配する。それは女とはまた違った欲望だな」

「……ふうん」

「……だから、女を犯したくなる。性犯罪がなくならないわけだ」

「え――あっ!」

 はあはあと鼻息を荒らげた七子は、勇太を押し倒す。垂直に、視線が交差した。

 もちろん、何をするかは勇太も分かっていた。その行為に、避妊が必要ないことも。それでも勇太はもじもじとしていた。

「……えっと、その……」

「大丈夫だ。何かが入ってくる感覚は未知だろうが……痛くはない。保証するよ」

「……お願い、します」

 七子は腰を進めていき、狙いを定める。今か今かと待ち構えていた入り口に熱が触れると、ぴっとりと吸い付いた。

 勇太の眉がひくつく。お互い、深呼吸をしてから――男女は、繋がった。

「んっ……っふぁ……」

「すごい……私の中、こんなに熱いんだ……」

「んっ、あっ!」

 ともすれば、七子が女を征服する歓喜を得ることも、勇太が男を体内へ受け入れる官能も手に入れられるかもしれない。しかしそれは同性としてである。

 真に異性として重なり、与え合うのは今しか出来ない。それでいて、二人は心でも結ばれている。

 七子はオスとして女をよがらせながら、夫をいたわり快楽へ導く。

 勇太はメスとして荒ぶる劣情を受け止めてつつも、妻を尊重する。

「ななっ……んぁあっ!」

「ふ、っふっ、ああっ!」

 小気味よくピストンを繰り返していた七子だったが、そのペースが上がっていく。

 まもなく――二人は絶頂した。

「あっ、あっ、やっ、あぁああっ!」

「っう、あ、ああああっ!」

 二人の目は固く閉じられ、絡めあった指先の境界が曖昧になる。熟れて本懐を果たさんとする子宮は蠕動して、吐き出された精子を歓迎する。

 生まれもった性とは違う肉体ながらも、そこにあったのは夫婦の愛でしかなかった。



「――ふぅ、あ、あれ……」

 積み重なるように倒れていた二人だったが、先に動き出したのは七子――時間切れで元の身体に戻った七子だった。股間からあふれる白濁液を指ですくい、これが自分が発射したものだと感慨にふける。

 勇太の方はといえば、肉体的にはすぐクールダウンしたのだが精神が追いついていない。女性の快楽はあまりに強すぎた。

 そんな勇太を見下ろしていた七子だったが、ダッシュボードにおいていた例の紙を手に取る。

「……これ――あっ」

 そして、間もなく七子がくずおれ勇太が立ち上がる。

「……何回でも使えるのだな、これ」

 そうつぶやいた七子は――再び勇太の肉体となった七子は、魅惑的な肢体でぐったりとしている勇太の腰を掴んだのだった。

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