Home Artists Posts Import Register

Content

 支援者限定作品です。

 『軽率に身体を入れ替えるテーマパーク』(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16942165)に似た作品です。お話は完全に独立しており、ギミックも一部異なっています。

 有り体に言ってR○UND1版です。

 『テーマパーク』はおいしいギミックなのでまた書きたいな~という思いがあって、色々考えて『年齢によって遊べるところが異なる』『体躯でも違いが出る』という点で、大人の遊びであるダーツやビリヤードと子供向けプレイスペース、それにスポーツなどが遊べるあそこがぴったりだなとなったものです。

 他はプールリゾートなども候補にあり、こっちもいずれ書きたいと思っています。

 また、当初は集団入れ替わりと常識書き換えに絞ってそれらを観察するような話にするつもりだったのですが、素直に続編っぽい形になりました。


 では、以下本編をどうぞ。ちょっと長いです。




==============================================================




 ここは、最近出来たばかりのアミューズメントパーク。

 スポーツやアトラクション、ゲームセンターやカラオケなど色々な遊びを楽しむことができる、若者向けの娯楽施設だ。

 俺自身はさして興味がないのだが、小学生の弟が行きたいと言い出したので一緒に訪れることとなり、俺は高校の部活が終わってから現地で落ち合う予定となっていた。

 しかし『待ちきれないから先に行っちゃうね』とのメッセージを寄越して以降、連絡が取れなくなってしまっていた。

 そんなわけでちょっとした不安を抱えながらにやって来たのだが、駐車場とンチがあるだけの一階で昇りエスカレーターに乗った時点で、何か違和感があった。全くもって判然としないものの、嫌な予感がする。

 ロビーに到着すると他の客の姿はない。もちろん、弟の姿も。まっすぐ入場手続きをしようとしたのだが、総合利用受付カウンターに立っている人を見て瞠目する。制服姿ではないどころか――セーラー服姿の高校生ほどの女の子や、シャツにジーンズの高校生らしき男の子だった。

 職業体験やバイトにしたっておかしい。いよいよ不気味になってきた俺は、早めに弟を見つけて帰ることにした。

「一名様ご利用ですね……はい、ありがとうございます」

 先に目があったのが女子高生の方だったので、仕方がなく応対してもらう。それもごく丁寧で、滞りがないことすら異様に映った。

 今日はオープン記念ということで、全ての施設が遊べるプランが格安で提供されていた。ビリヤードやダーツ、カラオケなんかは部屋や台をフロントで案内してもらう必要があるがそれも別途の料金はかからないらしい。

「こちら、利用証のリストバンドです。こちら装着していない場合、お声掛けさせて頂く場合がございますので、絶対に外さないようご注意下さい。また――他のお客様やスタッフと入れ替われますので、ご自由にお楽しみくださいませ」

「……は?」

 入れ替わり? 何か人数制限のある施設での話だろうか。だとしても、スタッフも対象に含まれているのはどういうことだろうか――


『えー本日は、にお越し下さり誠にありがとうございます。現在当店では、一生に一度のお祭り、身体入れ替えデーを開催しております――』


 あまりワクワクしない、抑揚に欠けたスタッフのアナウンス。しかしそれを聞いた直後、急に頭痛がする。まるで耳の中で嫌な金切り音が鳴り響いたようになって、五感がおかしくなった。

 しかしそれは、ふらつく間もない一瞬。気がつけば、頭はすっきりしていた。

 目の前には、ニコニコとしている女子高生。ええと……入れ替わり、だったか。さっきは怪しんでしまったが、どこかで聞いたことがある。他者と身体を自由に交換して楽しめる施設があると。

 ――そうだ。別に何が異常だということはない。そういう場所なのだから当たり前じゃないか。俺は納得して、リストバンドを腕に巻いた。

「ええと……どうすればいいんでしたっけ?」

「同意した方と、リストバンドをこすり合わせるだけです。私とやってみましょうか?」

「はい」

 そう言って、俺と女子高生は手首を交差させるようにリストバンドをぶつけ合った。


「――お、ほんとだ」

 ぐらりと世界が滲んだかと思えば、俺自身を見つめ返している。俺は……女子高生になってカウンターの中に入っていたのだった。

「問題ございませんね。当施設では大人のお客様……いえ、大人のお体であればアルコールの提供がございますし、お子様限定のアトラクションやゲームもございますので、他のお客様と積極的に身体を交換してみて下さい!」

 俺はなめらかな説明を聞きながらカウンターを出る。さっきまで女子高生だった俺からバッグだけ受け取ってから、俺は中へと進んでいった。


「おー」

 まず入ってすぐはゲームコーナー。クレーンゲームやメダルゲーム、音ゲーや対戦ゲームがエリア分けして詰め込まれている。ここだけは入場料がかからないのだが、全員が一様にリストバンドを着用していた。人もたくさんいて、とても賑わっていた。

 もっとも、入れ替わりのシステムによってその光景はややちぐはぐ。

 メダルゲームでジャックポットを引き当て大喜びする母親風の女性、クレーンゲームに失敗し本気で悔しがる学生風の男。これらはまだ、まあそういう人も居るだろうといえる範囲だ。

 しかし、むちっとした女性が股を開いて座り込み『お願い、もう一回』と駄々をこね、特撮ヒーローのTシャツを着た男の子が呆れ顔でフェミニンな長財布から小銭を取り出し『ほんとに最後よ!?』と折れる様はここでしか見られないだろう。

 他にも、大きなリュックを背負った金髪の少年と、おじさん臭いセカンドバッグ10歳くらいに見える女の子がリストバンドを交差させた後、バッグを交換し会釈して離れていくなど。

 そんな景色が右にも左にも溢れていた。

「さすがだなー……お、鏡……これが今の俺かぁ」

 うろついていると、鏡張りとなっている壁があった。きらびやかなゲーム機の光をバックに、俺の姿が映っている。

 肩につかない程度の黒髪ショートヘアにセーラー服。童顔は抜け大人びた顔立ちになっており、体型も子どもとは言えないほどに成長している女の子だ。

「悪くない……けど、スカートってほんとに頼りないな……」

 くるりと回ってみれば、短めのスカートからは薄紫のショーツ。女の子になっていると自覚すれば、胸元の締め付けも気になってくる。

「……うっ」

 自分が女の子になっている――その事実にどきりとしたが、それをハウリングのような館内放送、そして瞬間的な頭痛が打ち消した。

 別に、女の子と入れ替わったんだから当たり前じゃないか。やましいことは何もない。

 俺は自分の身体への関心を失い、またゲームコーナーを巡っていく。


「おかーさーん!」

 ゲームで遊んでいると、30代くらいのセクシーな女性が泣きながら通り抜けていく。化粧は崩れ、靴擦れが痛々しい脚は裸足。

 迷子だろうか。係の人が応対してくれるだろうと俺はゲームを続けていたのだが、自分が女の子になっていることを忘れておりパンチングマシーンは奮わない。なぜかほうっておくことも出来なかったので、女性のほうに近づいていった。

「……君、お母さんとはぐれちゃったのかな?」

「えぐっ……うん……」

「そっかそっか。じゃあえっと……お店の人に探してもらおうね」

「……ありがとう、お兄ちゃん」

「大丈夫だからねー」

 俺はほっそりした手を掴み、従業員を探そうとして――困惑する。

 どうやって?

 ここでは身体を入れ替える。服だけ戻すということはないので、外見から店員かどうかは判別できない。あそこにユニフォームらしきベストを着た女性は居るが、ゲームに夢中だ。

 鍵束や通信機らしきものを持った人は見かけたような気もする。挙動でもなんとなくわかるか。

「ゆうくん!」

 女性と一緒に店員らしい人を探していると、背後から声。バッグを持った中学生くらいの男の子が駆け寄ってきた。女性も応じるように飛び込んでいき、軽く挨拶をした後二人は手をつないで遠ざかっていった。

「……っ!?」

 きいんとした頭痛。痛みは引いたが、頭の中に立ち込めたモヤは消えない。

「……いや、おかしくないか」

 さっきの女性が子ども、男の子が母親。ただの迷子で間違いはない。

 しかし、どうしてあの母親はあの女性が我が子だと判別できたのか。入れ替わる時となりに居た、単純に迷子だから声をかけてみたなど可能性はあるものの、どうも腑に落ちない。

「そういやさっき……俺をお兄ちゃんって……!」

 さっきの迷子もそうだ。女子高生でしかない俺を指してお兄ちゃんと呼んだ。

「……待て待て、そもそも何だよ身体を入れ替えるって……!」

 なぜ俺は疑念を抱かなかったのか。なぜ受け入れたのか。

 洗脳や催眠が解けた。まさにそんな気分だった。

「そうだ、礼斗《らいと》はどこだ……?」

 そしてなぜか忘れていた、ここにやって来た目的も思い出す。弟である、礼斗。

 その場で辺りを見回すが、礼斗は見当たらない。

 さっきの親子の反応からすると、他の人間には肉体ではなく精神でその人物を捉えられる模様。俺がそうではなかったのは、洗脳が浅かったことが理由なのかもしれない。だからこそ、今正気に戻ったのだとしたら。

 礼斗も洗脳を受けているだろう。俺を見つけて、声をかけてくるのを待つしかないだろうか。

 案外近くに居るかもしれない。もっと小さな子と入れ替わって子ども限定のアトラクションを遊んでいるかも。大人の身体を借りてダーツやビリヤードに興じるのもあり得る。

「そうだ」

 こんなアミューズメントパーク、ネットでもうわさになっているだろう。俺はそう考え、スマホを取り出――そうとしたが、ズボンに入れっぱなしだったので手元にない。礼斗はあまり鞄を持ち歩く習慣がないので、おそらくはポケットに入れたまま入れ替わったのだろう。

 慌ててフロントに戻るが、受付に立っていたのは俺の肉体ではなかった。

「……くそっ」

 もし、身体が戻らなかったら。考えるだけでも恐ろしい。だが、事態は深刻なものの、まだ最悪ではないはず。理屈や仕組み、誰が何の意図を持ってこの狂宴を催しているのかは一度頭の隅に追いやる。

 整理すると、まずは礼斗と会うためパークの中をうろつきながら、元の俺と礼斗の身体も探す。

 決意を固めた俺は、ぐっと拳を握りしめた。

「……」

 しかし、その手の白さと細さに出鼻をくじかれ――自分が今、女の子になっていたことを自覚する。

 改めて、凄まじい状況だ。異性の身体体験がエンターテイメントであるのは間違いないといえるのだが。

「……っ」

 身体を見下ろすと、確かな胸の膨らみ、どこかの高校の制服、そして平らな股間にぴったり貼り付く下着。

 女の子。急に身体が熱くなってくる。お腹がむずむずする。

「……ち、ちがう……トイレに……トイレに行きたいだけだから」

 きっとそうだ。見ず知らずの女の子に欲情したわけじゃない。

 俺はローファーを踏み出して、トイレへと向かう。少しだけ様子を見ていたが、男女は身体に合わせているみたいなので、気恥ずかしいが女子トイレへと入った。

 先客の声が聞こえてくる。

「すごーい、女の子って本当におちんちんなーい。それに毛むくじゃらだ」

「こら、やめなさい」

「パパももじゃもじゃ……へー、こういう風におしっこ出るんだね」

 艶っぽい女性の声と、クールな女性の声。

 使用中の個室は一つだけ。狭い個室の中で大人の女性がふたり、おしっこの仕方を教えている親子なのだろう。

 ドキドキしながら個室へ入り、鍵を締めた。

「……ふう」

 俺は逡巡ののち、プリーツスカートの中に手を入れる。

「あっ」

 ショーツに指をかけると、もっちりとしたお尻が触れて驚いてしまった。同時に、ぴくんと股間が唸る。俺はそのときめきを精一杯無視して、ショーツを下ろし便座に座った。

「……まずいって」

 膝に引っかかっているのは、薄紫の生地を黒いレースで彩ったショーツ。

 空気にさらされた股間はすうと涼しく、風が駆け抜ける。たくし上げられたスカートに隠れているが、そこに男のモノがないことが触れずともわかった。それでいて、ごく小さい敏感な器官がひくひくとしているのも。

 意を決した俺は、スカートを手繰り寄せ前かがみになり、ついに股間を直視した。

 しっかりと茂った陰毛、しかし隠しきれずほんのりとピンクに染まった割れ目。どこからどう見ても、女の子の股間だ。

「……う、あ……」

 緊張か興奮か、一気に脱力する。しかしおしっこは出て来ない。それは分かっていたことだった。

「……はぁ、はぁ……」

 もう我慢できない。赤の他人だろうが、興味は抑えられなかった。

 俺は勢いのまま、割れ目を開く。

「んっ」

 くぱ、と顔を覗かせのは鮮やかな桃色の粘膜。懸命に身体を屈めると、ひくついているごく小さな穴が見えた。これがきっとおしっこが出てくる穴。ややグロテスクな造形に、少しだけ俺は僅かに正気を取り戻した。

 このまま、情欲と好奇心に流されてはいけない。冷静さがアラートを鳴らしている。だがそれを無視し、俺は指で股間をいじり始めた。

「あ……んっ……くすぐったい……だけじゃない……ぁ」

 恥丘をくにくにと揉み、閉じたり開いたりしてみる。この歳だと経験済みだろうか。

「やぁっ……こっちは膣で……んぁっ!」

 手探りで別な穴を探り当てたが、そのまま指が滑り込んできゅっと窄まる。より慎重に触れてみると、尿道口よりは大きく柔らかいがそれでも狭いことがわかった。

「……ん――きゃっ!」

 甲高く女の子のような悲鳴が漏れ、背筋を甘く切ない悪寒が貫く。

 俺はクリトリスを摘んだのである。大事に大事に包んだ厚い皮を優しく剥いて、ちょっとだけひねっただけなのに。

「んっ、んぁっ、っひぃっ!」

 身体が痺れる。この身体が敏感なのか、俺の情欲が作用しているのか。どっちでもいい。俺は小さなクリトリスを転がし、青い快楽に翻弄されていた。

「……あっ、なにかっ、やっ――んぁぁあっ!」

 身体がきゅうっと縮こまり、目の前でバチバチと電気が流れる。短く叫んで、喉が締まる。口をぱくぱくとさせながら――俺は、曖昧な感覚に身を委ねた。

 気づけば、俺は便器の蓋にもたれかかり股間に指を這わせていた。指先はどろりとした粘性の液体で濡れており、全身は熱い。

 俺、オナニーしちゃったのか。女の子の、見ず知らずの女子高生の身体で。

「……はぁ」

 感情がぐるぐると回る。嫌悪、羨望、感動、愉悦。

 ――仕方がない。こんな状況だ。

 しばらく経ってから俺は開き直り、後処理を始める。

 トイレットペーパーで指や股間周りを拭う。ショーツを穿き直して身だしなみを整え、物音が無いことを確かめてから個室を出た。

「……」

 蛇口で手を洗うと、鏡には赤らんだ女の子の顔。後ろ指をさされているような気分だったが、俺は振り切ってトイレを後にした。


 先程も十分歩き回ったが、ゲームコーナーに礼斗は居ない。そう断定した俺は、次にダーツやビリヤードのフロアに行くこととした。

 礼斗とも一緒に遊びたい、と話していたのでまだ可能性がありそうだ。

「……いやいや」

 俺は通りがかったセクシーな女性を目で追って、首を振る。

 確かにダーツやビリヤードは大人なスポーツのイメージはある。だがわざわざ身体を変えずとも、ここはそういう敷居なんかない大衆施設なのだ。女子高生が遊んでいても全く問題はない。

 しかし――またも館内アナウンスと、きいんとした頭痛。

「あの……」

「ん、なんスか?」

 俺はさっきとは別の、とにかく胸の大きな女性に声をかけていた。

「えっと……入れ替え、してもらえないかなって」

「ああ、いいっスよ」

 軽いノリで女性は腕を構えてくれる。

 もう引けない。俺は震える腕を差し出し、重ね合わせた。


「あ、おけっスね」

「……は、はい」

 転瞬。セーラー服姿の女子高生が前に。

「ああ、その身体おっぱいでかいんで脚元気をつけた方がいいっスね。きししっ」

 女子高生はそう笑い、バッグを取り替えて大股で立ち去っていった。

「……でっか」

 言葉通り、この女性の胸はでかかった。下を向くとリブニットに包まれた谷間しか見えない。ロングスカートはその裾がちらちらと見える程度。普通のスニーカーを履いているので楽ではあるが、油断すると転んでしまいそうだ。

「ってか、巨乳なのは自覚あるのか……」

 さっきまでこの女性の身体だった人物はおそらく男。自慰に及ぶほどでもなく、身体的特徴とちょっとした好奇心でもって注意をくれたのだろうか。

「……いや、待て待て」

 俺は、自分から進んで身体を入れ替えた? そういえば、さっきもまた頭痛がして……それが原因か?

 ……わからん。深く考えても答え合わせはできない。俺は諦めてその場を離れた。

「くそ……」

 一歩踏み出す度、たぷんたぷんとおっぱいが揺れる。ブラジャーはしっかり着けているはずなのに、ニットの中で上下していた。かと言って両手で支えながら、というのも怪しすぎる。

 俺は弾む胸を我慢しながら、ダーツ・ビリヤードフロアに到着した。

 やや薄暗い照明、バーカウンターがあるなど大人っぽい空気を醸し出しているものの、禁煙だし年齢制限が設けられているわけでもなかった。

 もっともこの場に子どもの姿はない。姿は。野太いおっさんの声で『ママー』などと言っていたり、めちゃくちゃなフォームでダーツを放っている女性が居るので、やはり大人の身体を得てここを訪れた子どもは居るようだった。

 目を逸らしフロアを回っていると、より異様な一角があった。

「おしゃけって、こんな味なんだね……」

「頭痛いよー、お母さーん」

「すぅ……ふにゃぁ……」

 子どもが大人になったらやりたいことは何か。その一つは飲酒に違いない。テーブル席では、強そうな酒をどんどん飲んでゆらゆらとしている男や、酔いつぶれたおばさんなどひどい有様だった。

 辺りには水のシミがある。酒の匂いが立ち込めている。それに若干のアンモニア臭。よく見れば、ジーンズの股間が変色している女性も。スタッフらしき幼稚園児ほどの男の子は懸命に対処していたが、身長も力も足りない。雑巾で床を拭くのが関の山のようだった。

 俺も、なんだかくらくらとしてきてしまう。気化したアルコールにあてられたか。

「……」

 俺は高校生なので酒は飲んだことはない。今の身体なら許される。この身体はアルコールに弱そうだが、せっかくの機会だ。バチは当たらない……はず。

 とはいえよくわからないので、俺はカウンター席に座ってビールを注文してみる。家でもよく両親が飲んでいるし、一番手軽で一番うまいのだろう。

 すぐに注がれたコップを見ると、ふんわりとした白銀の泡と弾ける黄金色の液体。俺は迷わずぐいっとあおった。

「……んー……」

 思っていたよりはうまくない。それでも、喉越しがどうたらというCMの宣伝文句はその通りで、味よりかは炭酸やアルコールの香り、冷たさを楽しむものなのだろうと思った。

 喉の乾きもあったのか、俺はすぐに全て飲み干しすぐにコップを返却する。たくさん飲むようなものではないものの、まあこれが友人と和気あいあいとした空気で楽しむのなら悪くない。それが俺の人生初飲酒、ビールの感想だった。

「……ふぅ……っと?」

 席を立ち少し歩いたところで、ふらりと脚元がおぼつかなくなる。めまいか、すわ地震か。身構えたが、そんなことはない。少し考えればわかる。

 酔っ払った、というやつだろう。

「うー……」

 目の前が回り、まっすぐ歩けなくなる。こんなに早く症状が出るなんて知らなかった俺は、観念してソファに腰掛けた。

 隣では、20代後半ほどのレディススーツの女性が丸まっている。指をしゃぶりながら半分眠っていた。

「……んー……?」

 ふわふわとした感覚の中、おっぱいが熱くなってくる。さっき、女子高生の身体で感じた欲情ともまた違う。芯から苦しくなり、何かが出口を求めているような、男ならありえない感覚だった。

 俺は何の気なしに、リブニット服の上から軽く触ってみた。

 すると――じわり、と胸の先がぬるい液体で濡れた気がした。

「……まさか」

 その可能性は十分にある。俺は確かめるべくトイレへと……行けない。立ち上がることすら、俺は出来なかった。アルコールのせいだ。

「けど気持ち悪いなー……」

 周囲を確かめてみる。さっきカウンターに立っていた人は消え、さっきから幼い男の子が客の応対と後処理でてんやわんや。こんなところを一人に任せるわけもないとすると、泥酔した身体を押し付けられたスタッフはが倒れているのかもしれない。

 だが好都合。ここで、多少変なことをしても手が回らないだろう。

 俺はためらいなく、リブニットをずりあげた。インナータンクトップも脱ぐと、前がボタンで留まっている構造の青いブラジャー。

 なんとなく見たことがある。ボタンを外すと、やや黒ずんだ乳首が露出して――薄い白色の液体がにじみ出ていた。

「……ははっ」

 母乳だ。おっぱいが突っ張った感じがしていたのは、母乳が溜まってきたのが原因だったのだ。

 はっきり言ってショックだった。男の俺が母乳を出すなど。つまり俺は、この身体は男と中出しセックスをして妊娠し、お腹を大きくした後子どもを出産した身体になってしまったのだ。左手の薬指には、結婚指輪もついている。

 この入れ替わり現象の下では起こり得ることなのだが、今一度その混沌さを突きつけられてしまった。

「……うぅっ」

 しかし、放っておくと母乳がぽたぽたと垂れてきてしまっている。それにおっぱいも辛い。俺は、そうしなければならなかった。

 不可抗力。そうだ。

「……んっ……ぁっ」

 俺はどこか言い訳するように、乳首をつまむ。乳首からは想像していたより勢いよく母乳が撒き散らされる。ホースのような一直線ではなく、シャワーのようにいくつかの孔からぴゅっぴゅと噴出していった。

「んっ、ふぁっ……」

 乳首がじんじんとしてくる。排泄が多少なりとも心地よさを伴うように、搾乳もまたそれだけで得られるものがあるのだろう。情欲もある。

 もっと。俺の手は止まらず、すっかり勃起した乳首をこりこりと転がして母乳を出しまくり、服や床を汚していった。

「……ん、ママ……じゃない、けどおっぱい……」

 横で寝ていたスーツ姿の女性が目を覚ます。顔には母乳がかかっていた。それを指で拭い、ちゅぱちゅぱとしゃぶる。その後、物足りなさそうに俺のおっぱいをじっと見つめていた。

「えっ……んっ」

 スーツ女性は身を乗り出し、俺の乳首にむしゃぶりついてきた。振りほどくことはできない。しない。

 今の俺が母親なら、おっぱいを上げるのに理由はなかった。

 スーツ女性は懸命におっぱいをねぶる。白い肌には口紅が付着し、いやらしい。次第に、俺の下半身もうずいてくる。しかしこれも、女子高生で感じた欲情とは違っていた。

 これは身に覚えがある。尿意だ。急激に膨らんできた緊張に、俺は焦る。さすがに漏らすのは良くない。尊厳もある。

「あんっ……ひぅっ……ねえ、ぼく……お兄さん……んぁっ!」

 止めてもらおうとするが、ちゅうちゅうとしゃぶられる乳首が、胸の中から母乳が吸われる感覚が気持ちいい。喘ぎ声が出てしまい、言葉にならない。このスーツ女性も酔っているのか、中断はしてくれなかった。

「あ……っ、まず、やっ……あぁんっ!」

 そして――スーツ女性が乳首を甘噛みしたとき。弱い痛みと鋭い快楽から、俺の下半身は弛んでしまった。

「あぁ……っ、もらっ……だめっ……」

 じょわあ、とおしっこが流れ出ていく。ショーツから溢れ、スカートを汚し、ソファに垂れる。排泄の心地よさは男女共通なのだろうが、俺の情欲が何倍にも増幅した。

 酒に飲まれて公衆の場で着衣のままおもらし、それが母乳の出る母親の身体で、しかも授乳しながら、しかしそれは赤子などではないスーツの女性。ひたすらに倒錯感が俺の中で渦巻いた。

「あっ……ああぁっ、イっ、あぁっ!」

 あっけなく、俺は絶頂した。おしっこではない液体が股間から噴き出す。フリーだったおっぱいからはおっぱいが勢いよく大量に噴出してスーツ女性や服を白く染める。アルコールもあってか身体の浮遊感は凄まじく、上下左右もわからなくなっていた。

「……ぁ……あ……」

 ぐったりとして、ソファに身を預ける。気づけばスーツ女性はおっぱいを離して眠っていた。

「……うぅ……」

 余韻も収まり座り直すと、服はおしっこや愛液、母乳でびしょびしょ。気持ち悪い。着替えたかったが、そんなものは――

「そっか……ごめんね、身体もらうよ」

 俺は控えめに謝罪した後、すやすやと眠っているスーツ女性とリストバンドを交差させた。

「――お、あ……頭すっきりしてるな」

 俺は、スーツ女性になっていた。この子は……精神のほうが単純に疲れたか飽きて眠っていたようで、アルコールの酔いは全くない。服は少々汚れているし、口の中には甘ったるい味が広がっているもののまだマシだ。

 俺は寝息を立てている母親――母乳まみれの乳首を丸出しにして、痴態を隠そうともしない母親を見下ろし、ダーツ・ビリヤードフロアを去った。


「あのー、すみません」

 フロアガイドを眺めていると、下から声。まんまるな目をした小学校低学年くらいの女の子が渋い革のショルダーバッグを引きずっていた。

「ダーツとか遊びたいのですけど、身体入れ替えていただけませんかね?」

「……はい」

 二つ返事で了承した後、俺はしゃがみ込んでから腕を重ねた。

 すぐ、目の前にはスーツ女性の大きな顔。幼女になったからか、世界が大きくなる。

「……はい、ありがとうございます。それでは、失礼しますね」

 スーツ女性は何度か咳払いをしてから立ち去っていく。宣言通り、ダーツエリアに向かったようだった。

「ちっちゃ」

 フロアガイドを見上げてもまともに読めない。もっとも、次に目指す場所は決めていた。

 小さな歩幅をちょこまかと動かしてたどり着いたのは、子ども専用エリア。ボールプールや滑り台、迷路のように組まれた階段と足場などといったアスレチックが設置されたキッズコーナーだった。

 ここに入れるのは小学校低学年以下の子どもだけなので、まさに渡りに船だった。それに、これだけ幼ければ性欲に振り回されることもなく冷静でいられるだろうという目論見もあった。

「……」

 小さな手を開閉させる。袖も裾もふんわりと広がったピンクのワンピース、白いタイツにはリボンもついていた。本当にランドセルが似合いそうな、愛くるしい女の子。

「……ダメだって」

 俺はぎくしゃくとした足取りで、靴を脱ぎキッズコーナーへと入っていく。

 あまり人は多くない。子どもは大人の身体で遊び、子どもになった大人はわざわざ幼稚な遊びをしないということだろうか。

 夫婦だろうか。ジャングルジムに登る女の子は、くまさんパンツを丸出しにして苦笑いしている。

「へー……こんな感じなんだ。絶対これ子ども達は楽しいだろうな」

「そうね。私たちの時よりすごい……あらあなた、パンツが見えてるわよ」

「え? ああ……スカートなんてあってないようなもんだな、こりゃ」

 元気にはしゃぐ子どもはゼロで、耳をそばだてるとそんな落ち着いた会話ばかり聞こえてきた。

「……さて、礼斗はいるか」

 俺からは誰が誰だか分からない。度重なる頭痛によって危機感が出てきた俺は、舌足らずの声で礼斗の名前を呼びながらうろつく。

 ゆるやかな階段を昇り、すべり台を滑って、ボールプールを渡る。

 マップで見た限りキッズコーナーは限られた一角だったはずだが、幼女の身体だからかとても広く感じられた。見渡せる視界も狭く、高いところに上がってみたり壁からひょこっと顔を出したりと、一見遊んでいるような仕草にはなってしまった。

 そして――

「あれ……兄ちゃん?」

 色とりどりの大きなブロックエリアで出会ったのは、今の俺よりひと回りふた回り大きい、キッズコーナーにぎりぎり入れるか入れないかという背丈の元気そうな少年だった。

「なんだ遅かったじゃん。結構色々遊んじゃってるよ」

「……礼斗なのか?」

「見ての通りだよ。にしても兄ちゃん可愛くなったね」

 そう言って俺に近づき、勝ち誇った顔で見下ろして頭をなでてきた。

 この言動は間違いなく、俺が探していた弟の礼斗だ。年齢差もあるから当たり前ながらも、礼斗は俺より小柄なのを気にしている。このなめた態度はその表れなのだが……この異常にあっては、変に酒を飲んだりおかしくなっていないだけ少しだけ安心出来た。礼斗自身の身体でないのは残念なものの、無事見つかっただけでよしとしておこう。

「じゃあ兄ちゃん、ダーツしようよ。待ってる間に結構練習したんだ」

「……ちょっと待て。あのさ、この……身体を入れ替えてるのに違和感はないのか?」

 俺はまず異常を認識してもらおうと、説得を試みる。

「え? だって……ここそういうところじゃん? 何いってんの」

「だって、常識的に考えておかしいだろ。身体を取り替えるって」

「うーん……ピンとこないけど、なんでそんなこと気にするの?」

 礼斗は俺の話を真面目に聞いてくれてはいるものの、全くピンときていない様子。

「そのままじゃ帰れないし……っていうか……帰る時の説明も受けてなかったな。まさかこのままか?」

「え――」

 その瞬間――強烈な頭痛。この建物内で幾度か襲ってきたものより、ずっと強い。五感が麻痺して――


『えー本日、は一生に一度の身体入れ替えデーです。ここからはさらに秘密のイベント。さらに盛り上がっていきましょう』


 気づけば俺は立ち尽くしていた。正面には少年姿の礼斗。

「えっと……何の話をしてたんだっけ?」

「身体を入れ替えるのはおかしいとか言ってたけど」

「そうだ。思い出してきた。だから……」

「……」

 なんだか、手足やお腹が熱い。この衝動は……女子高生や母親の身体で知っているような気もするが、こんな幼い身体に似つかわしくないもの。

 ジュースでも飲もう。そうすれば火照った身体も収まる。それから続きを話そう。

「一旦中断だ。なあ礼斗、おごってやるからジュースでも――うぁっ!?」

「……兄ちゃん、可愛いね」

「ちょ、ちょっと……離せ」

 俺は柔らかい床へと押し倒された。もちろん礼斗だ。だいぶ体格差があり、掴まれた手首はびくともしない。礼斗の鼻息は荒く、瞳孔も開ききっている。

「……やっば。兄ちゃん可愛い……」

「なあ……やめろって」

 気味の悪いことを言う礼斗。俺の抵抗の言葉も弱々しく、まるで覇気がない。

 さっきの頭痛。痛みはもうないが、怪しい音波か何かをまた館内放送で流した。これまでは洗脳のため。そして最後に聞こえたのはおそらく、強制的な発情だろう。

 そうでなきゃ――

「……ひぁっ!」

 ぷにぷにですべすべのほっぺをなぞられただけで、身体が跳ねるわけない。こんな幼い女の子の身体で。

「――ふむ……これが……あっ、女の子の……やぁんっ!」

「あなたのおまた、もうとろとろ……」

 さっきジャングルジムに居た夫婦は、もう全裸になって抱き合っていた。つるぺたな女の子のお腹に、まだ皮かむっているのに勃起させたチンポをこすりつけている。

 他も同じ。幼稚園児くらいにしか見えない男の子と女の子のペアが、ディープキスをしたり性器を舐め合ったり、あるいは……セックスをしたりと、大人顔負けの行為に没頭していた。

 無論そこまで成熟しているはずもなかろうが、音波の効果はただの洗脳や発情にとどまらないのだろう。

 それは俺の身体で証明できる。タイツのお子様パンツの中はしっとりとしていて、お腹の奥が切ない悲鳴をあげている。

「兄ちゃん……」

「……くそ」

 俺はあっという間に服を脱がされていく。くびれのない胴体と小さいおしりを晒し、ドット柄ショーツごとタイツも膝まで下ろされた。風が当たってやけに涼しい股間が、どうなっているかを物語っている。

「んっ」

「すげ……濡れてる」

 礼斗の指が股間に触れて、無遠慮に這い回る。おっかなびっくりといった手つき。しかしそれでも、身体は反応してしまっていた。

 頭がぼんやりとして、心臓は早鐘を打つ。子どもの身体なのに。肉体は違っても弟相手なのに。俺は下半身から送られてくる快楽にねじ伏せられ、痺れていった。

「なあ礼斗……俺も、してやる」

「……うん」

 それだけで察したのか、礼斗はズボンを脱いだ。まだ小さいながらも立派に勃起したチンポが顔を出して、こちらへと狙いを定めている。

 俺はそれにしゃぶりついた。

「うっ……」

 小便臭いし汗臭い。匂いも味もいいものではなかった。しかし、どうにもやめられず、俺は頭を前後に動かしたり舌先でちろちろと裏筋を舐めたり、いやらしい奉仕を繰り返した。

 次第に濃厚な雄臭さが口の中に広がってくる。まだ射精はしていないので、これは先走り汁だ。俺はストローのように吸い上げ、身体に媚薬を吸収していく。

「……はむっ……れろっ……っぱ、あ」

「……入れる」

 腰を引いてチンポを抜いた礼斗は、包み隠さず欲望を表した。俺はマットに寝かされ、足を開かれる。とろり、と愛液がお尻の穴に垂れたのがわかった。

「……こいよ」

 無理やりだが、嫌ではない。女としてのセックスには興味があった。この身体がいかに幼かろうが、誰のものだろうが関係がない。

 ともすれば、洗脳が作用しているのかも。俺は洗脳を破ったつもりになっていたが、他にもある程度自覚して楽しんでいる人間がいたとしてもおかしくはない。自分にいいわけをして、すじを自ら開いた。

「……んうっ!」

 ずぶり、と小さな小さな穴にチンポがねじ込まれる。血は出たようだが痛みはない。子ども同士でぴったりなのか、にゅるりと奥まで潜り込んでいく。

 膣は一杯になった。神経は快楽だけを伝達し、他の情報を退ける。

「んっ、んっ、ああぁっ!」

「っく……気持ち、いい……!」

 礼斗は必死で腰を振って、みずみずしい肌と局部が触れては離れのループで水音を奏でる。蕾ですらないおしべとめしべだったが、一丁前にセックスをして、お互いよがっていた。

 俺が手に入れていたのは、女子高生や母親の時とは別種の快感。自ら慰める好奇心や、酔いつぶれた堕落ではない、男女として求め合う満足感。

「あっ、やっ、ひぁっ……!」

「うう……っ!」

 礼斗のペースが早まってくる。ふたりとも絶頂も精通も人生で一度も迎えていなさそうなのに。一直線に、そこに向かっていた。

「あっ――ぁあっ、ああっ!」

「っう、あぁっ……!」

 そして――本来許されない領域に、手が届いてしまった。

 びくびくとチンポが震え、奥へと何か熱い液体を送り出す。俺の腹はそれを受け止め促すように拡張と収縮を繰り返し、赤ちゃんの部屋にまで迎え入れる。

「……はぁ……はぁ……」

「んっ」

 目がちかちかとしていたが、礼斗がチンポを抜いて色が戻る。起き上がってみると、毛の一本も生えていないつるつるのおまんこからは、僅かな血とそれを洗い流す大量の精液がこぽこぽと溢れていた。

 してしまった。異状に弄ばれ、抗うことなく弟としてしまった。肉体は違うのだが、あまりいい気分ではなかった。

「ねえ、兄ちゃん。今度俺が女側になるから、別な大人のペア探してしようよ」

「……ヒイヒイ言わせてやるよ!」

 もう洗脳でもなんでもいい。楽しまなければ損だ。正気をかなぐり捨てた俺は、立ち上がった。

 やはり、他人の身体は最高のエンターテイメントだからだ。


 それから――俺と礼斗は適当に身体を入れ替えながら館内をうろつく。若者向けの施設だけあって老人は全く見当たらないが、どこもかしこも乱交パーティだった。

 お淑やかそうな女子高生が男の子を逆レイプしている。中学生くらいの線の細い男子同士がディープキスをしている。スポーティな女の子が妖艶な女性とレズセックスをしている。マッチョなおっさんが幼稚園児くらいの女の子をオナホにしている。

 男女も年齢差も、倫理も何もあったものではない。ひどいものだった。

 だが、ある意味では俺が一番邪悪かもしれない。この光景が地獄だと認識しながら、遊び場にして天国のように楽しんだ。

 しかし――その時は訪れた。

「んっ、あぁっ、あああっ!」

 若い男となった礼斗にバックから突かれ、喘ぎ声をあげる俺は中学生くらいの女の子。お互いイって余韻に浸っていると、またも館内放送が聞こえてきた。


『本日はにご来店いただき、まことにありがとうございました。本日の営業はまもなく終了致します。新しいお体は不慣れと存じますが、お気をつけてお帰りください――』


 またも頭痛――しかし正気が打ち勝った。

 新しいお体? まさか、元に戻らないというのか?

 ぐったりしていると、周囲の人間は軽く身体を拭ったりしながら服を着ていく。

 こんな子どもになれてラッキーだとか、もっと若い身体がよかっただの、一様に新しい身体を受け入れているかのような会話。

「……ふぅ、僕らも帰ろうか、兄ちゃん」

「ま、待てって。このままの身体でいいのか?」

「だから兄ちゃん何言ってるんだって……もういいよ、帰ろう」

 礼斗はうんざりしたように俺の腕を掴む。すごい力で、振りほどけない。体格が逆転してしまっており、勝ち目がない。俺は結局無理やり出口へと引きずられていき――そのまま、女子中学生のままを後にした。



 あれから一ヶ月。

 結論から言えば――身体を入れ替えっぱなしだったのは、大きな問題にはならなかった。

 まず、あの入れ替えの力はリストバンドの方に備わっていた。また、単純に肉体を交換するだけのものではなかった。当人も周囲もそれが当然だとして受け入れ、社会的な立場も変わらない。それもそのはず、どうやらその肉体をもって産まれてきたということになっているようだった。俺の部屋にあった衣類は全部女性のものになり、唯一鞄だけ男の時のもの。

 次に、なぜリストバンドのほうが鍵だとわかったか。最後を出る時、みんなは出口付近にあったゴミ箱へリストバンドを捨てていたのだが、これが鍵だと踏んだ俺は可能な限りポケットや鞄に入れてきた。

 これを他人に見せると、何の疑問も抱かず装着し、そして軽率に身体を差し出してくれるのである。あの頭痛がする館内アナウンスがないからか、少々手間取ることもあるが基本的には問題がない。リストバンドも返してくれるので、俺は好きな身体を手に入れられるようになってしまった。

 それは礼斗も同じで――

「んっ、あぁっ、にゃああっ!」

「っふ、あぁ……兄……ちゃん!」

 その日、地味ながらも可愛らしいクラスメイトから身体を入れ替えてもらった俺は、礼斗を逆レイプしていた。礼斗はまた別な美人クラスメイトの身体。うまいこと身体の交換をすれば難しいことではなかった。

「っふ……ぁ……」

「うう……兄ちゃん、激しいって」

 女体の快楽にとりつかれた俺は、とにかく色々な女性の身体を試す。礼斗にはリストバンドを必要な時だけ渡すことで、身体のキープ役になってもらっていた。

 もっとも礼斗も楽しんでいる。自分で選ぶより間違いないから、と俺に任せてくれていた。

「ふぅ……じゃあもう一回するぞ」

「……うん」

 俺は、目の中にハートを浮かべる礼斗に抱きつき――身体を重ねるのだった。


Files

Comments

No comments found for this post.