【支援者限定】ファンタジー的世界で魔術師の老爺がロリになって発情する話(書きかけボツ作) (Pixiv Fanbox)
Content
ファンタジー的世界でつよい魔術師のおじいちゃんが、ダンジョンで手に入れたアイテムによってロリになり、なんやかんや発情して介抱した男とえっちしたりする話です。ぼくには少し珍しい、他者変身などでもない純粋な女体化の話です。
本作は少し前に書いていたもののちょっと長くなったり話の落とし所が分からなくなり頓挫していたもので、途中までです。とはいえ16000文字近くあり第一話として読める感じではあり、それらしいエピローグつければ終わりでもいいくらいではあります。
プロフィールに書いてあるところの③、その他枠での公開です。
一応、ちゃんと書ききって通常投稿する可能性はありますが、その場合でも設定やプロットがまた変わってくる可能性が多いにあること、また、本作品のシーン、ネタ、文章等が流用されPixivに投稿されるかもしれないことご了承ください。
投稿前にバーっと眺めはしましたが、細かい推敲はしていないこともご承知おきください。
では、以下本文です。
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「……これか」
ある森の深奥、モンスターが蔓延るダンジョンの最下層。ローブ姿の老爺――シルヴェルは、目の前の台座に安置された指輪を観察し、腕を組みながら呟いた。
シルヴェルは70歳という高齢ながら爛々と耀く瞳を持ち、長い経験で洗練された魔術を操る魔術師である。並の冒険者ならば決してただでは済まない、強力なモンスター達を退けここに到達した。
だが、シルヴェルは幾分かの衰えも自覚していた。現に、ここまで来るのにも予想以上の消耗だった。そのため、次の世代へ力を引き継ぐため"継承の指輪"なる秘宝を求めこのダンジョンにやってきたのだ。
それは己の力をすべて次の世代に受け継ぐことが出来る力を持つという。さる王国では、女王から姫へ力を引き継いだことで大国に発展したという伝説も残されている。シルヴェルには弟子や子供などいないが、今から選ぶでも遅くはない。
そして、目の前にある指輪が"継承の指輪"に違いない。金の石座に無色透明の宝石がはめられた外見は、伝え聞いていた"継承の指輪"そのものであり、シルヴェルは確信していた。
周囲へ探査魔術を走らせ、指輪本体も鑑定魔術で怪しい点がないことを見極めてから、シルヴェルはローブの袖越しに指輪を持ち上げた。
「これか……む」
指輪を大切にしまい込むと、ダンジョンが轟音と共に揺れ始めた。シルヴェルは急いで来た道を引き返し、出口へ向かう。シルヴェルが脱出して間もなく、ダンジョンは崩落してしまったのだった。
「ふう……死ぬかと思ったわい」
無事の帰還を祝福するように、外は黄金色にかやが居ている。シルヴェルは戦利品を陽光に掲げようと袋に手を入れて、指輪に触れる。
しかし、その瞬間だった。
「ぬ……ぅっ!?」
指輪から放たれた眩い魔力は、シルヴェルに襲いかかる。抵抗らしい抵抗も出来ないまま、シルヴェルは魔力の奔流に飲み込まれていった。
(一体……これは――)
シルヴェルが意識を失った後――変容は始まった。
上等な黒いローブの中、色がくすみ皺だらけとなっていた肌は白く瑞々しく。老いてなお精悍な顔立ちは、若く可憐な少女のものへ。禿げ上がっていた頭からは、長くしなやかな桃色がかった銀髪が伸びていく。胸元では僅かに乳房が膨らみ、男性器としての役割はとうに終えたペニスは無毛の割れ目へ。
瞬く間に、シルヴェルは年端も行かぬ少女の姿となってしまったのだった。
変化が終わっても、シルヴェルは目を覚まさない。どさり、と森の腐葉土の上へと伏した。
「……ダンジョンが……? いや、それより女の子……まだ息はありますね」
そこに、一人の青年が現れた。青年は倒れている少女を見つけると、すぐに背負って立ち去っていった。
「……う」
どれほど経っただろうか。シルヴェルの瞼は開いた。視覚から得られたのは、そう広くない屋内、かなり大きめのベッドに寝かされており、ダンジョン内部ではなく安全な場所だろうということ。
痛みはない。いや――老齢になり、不調を訴えていた身体の各所の痛みでさえ消え失せている。シルヴェルはゆっくりと身を起こし、体に怪我や異常がないか確かめて――言葉を失った。
「おなご、になった……? む、声も……」
思わず口にした感嘆。それも威厳があるシルヴェルのバリトンボイスではなく、鍛えられた剣を弾いたような凛とした女の声だった。シルヴェルはベッドを出て、視界の隅にあった鏡へ駆け寄る。映し出されたのは、本来のシルヴェルとは似ても似つかない10代半ばほどの少女だった。覚えがないが"継承の指輪"も指にはめられている。
「……」
どきり、とシルヴェルの胸が高鳴る。性欲など、数十年前に枯れ果てた。まだ年端も行かぬ少女、それも自分を見て妙な気分になるなどあり得ない。
シルヴェルは自分に言い聞かせながら、目を逸した。
(ともかく……じゃ。魔術で危険は察知されなかったのじゃから、罠ではなかったはずだのう。なれば指輪の効果なのは間違いない……まさか)
冷静になったシルヴェルは、ひとつの仮説に至る。"継承の指輪"は知識や経験、力を他者へ引き渡すのではなく、若返ることで自分を次の世代の若者へ変貌させるものだったとしたら。
「ふむ……とんちのようじゃが……なるほどのう」
外見通りなら、数十年寿命が永らえたことと同義。女性になったのは謎だが、瑞々しく健康な身体と引き換えなら、あまりに些細なことだった。
しかし少々気になるのが、魔力が使い果たされていることだった。どことなく、回復したそばから指輪に吸い取られている気さえする。指輪を外そうとしてみたが、びくともしない。そこだけみれば、まるで呪いのアイテムだが事前の鑑定では問題なかった。
「このまま回復せんかったら困るが……むぅ」
自分の身に起きた変化に一旦の結論をつけたシルヴェルは、続いて周囲を見回す。
狭い山小屋のようで、扉は外に続くものだけ。いくつかの武具や宝石といった高価な品が重なっており、それとは別にシルヴェルが持っていた杖や袋も置いてあった。中身を改めると、金が盗まれているようでもなかった。
そこで、扉が開く。
「お、起きてますね……って」
入ってきたのは、剣を持ち頑丈な服という冒険者の格好をした青年だった。だがシルヴェルを見るとすぐに顔をそむけてしまう。
それもそのはず、実のところシルヴェルのローブはベッドに取り残されていたので全裸だった。引きずりそうで鬱陶しかったので、放置していたのだ。
「お嬢さん! 服! 服!」
「ぬ……そうか」
青年の台詞から、シルヴェルは客観的に察する。年頃の娘が裸でいたら、男は照れてしまうものだと。シルヴェルは袖も裾も余らせながら、ベッドから引っ張り出したローブを纏う。
(……ぅっ?)
布が胸の先端を撫でると同時、身体に痺れが走る。シルヴェルはごく小さく甘い声を漏らしてしまう。数秒放心した後、ローブの上からでもぷっくりと存在を主張する乳首を見つめる。
(おなごの身体は敏感……じゃのう……)
「服、着られましたか?」
「う、うむ……」
男はおそるおそるシルヴェルの方を向き直すが、まだ襟口から鎖骨が覗いており危なっかしいし、乳首も浮いてしまっていた。どうにも気を取られながら、青年は握っていた剣を壁に立て掛けた。
「ええと……僕はブロンと申します。この森に住んでいる者なのですが、ものすごい音がしたのでダンジョンのところに向かったところ……あなたが倒れてたからとりあえず僕の家に連れてきました。怪我はありませんか?」
「大丈夫じゃ」
「それはなにより。あなたのお名前は?」
「シルヴェルという。もしかしたら聞いたことがあるかもしれんな」
「……あの? シルヴェルさん程の魔術師なら僕でも知っています。あの人はもうおじいさんなのですが」
ブロンは疑いの目を向ける。
シルヴェルといえば、この森から最も近い街の出身にして、高名な魔術師だ。直接口を利いたことはないが、その街にはブロンもよく出入りしているので名前と風貌は知っていた。
「そんなこと言われてものう……あのダンジョンの奥にある"継承の指輪"を手に入れ、外に出た後取り出そうと触れたらこうなっていたのじゃ。これじゃよ」
「……確かに、あのダンジョンにはとんでもない秘宝が隠されていたらしいですが」
老爺を少女の姿に変えるアイテムがあるのかブロンは半信半疑だったが、この森は強大なモンスターが多く生息しており、それこそブロンが聞き及んでいたシルヴェルのような傑物でなければ単独突破は難しい。それに騙そうという悪意も感じられなかった。
ブロンはひとまず、シルヴェルの主張を受け入れることにしたのだった。
「話も進みませんし、そういうことにしておきます」
「何か魔術の一つでも見せられればよいのじゃが、どういうわけか魔力が尽きてしまっていてな」
「わかりましたって」
「むぅ……」
まるで、子供の嘘を生暖かい目で信じるようなブロンの態度。シルヴェルは不服だったが、今はどうすることも出来ない。
「魔力がないということは、今自力で帰るのは無理そうですかね?」
「……いや、魔力回復のポーションがあれば大丈夫じゃ。手元のものは使い切ってしまったが、そう珍しい素材を使うわけでもなし、精製すればよい……はず」
そうは言ったものの、シルヴェルにあまり自信はなかった。身体を流れる魔力の動きが妙だからだ。
しかし、もし魔力が戻らなければ、シルヴェルとてそこらの老爺――もとい、少女と大差ない。モンスターに立ち向かう力など持ち合わせてはいないだろう。ここは一旦、魔力の回復を試みる他ない。
「素材はこういうのと――青い草と――あとはこれがあればよい。特徴的だし森でも見かけたから、集めてきてくれぬか?」
「わかりました。しかしもう暗く、今から森に入るのは少々危険です。明日でもよろしいでしょうか?」
「構わぬが……なら、一晩泊めてはくれぬか?」
それはもちろん。ブロンは言いかけるが、シルヴェルの可憐な顔や華奢な身体が目に映る。中身がどうであれ、見た目は美しい少女であるシルヴェルと一晩を過ごす。それは女性経験のないブロンにとって十分刺激的だった。
ブロンはごくりとつばを飲み込んでから、頷いた。
「わ、わかりました」
「すまんな。もろもろ後でまとめて礼はしよう」
その返事に、シルヴェルは優しく微笑んだ。
ブロンの家はダンジョンがあった森の中、やや小高い丘に佇んでいる。すぐ隣には小川が流れ、森に生息するモンスターの縄張りからも外れた、奇跡的ともいえる平和でのどかなロケーションにあった。
「――僕の仕事はモンスターの狩り、命を落とした冒険者の遺品の回収が中心です。あなたみたいに助けられることもありますが……稀ですね」
やや薄暗くなった家の中、ブロンは夕食の準備をしつつシルヴェルへ身の上話をしていた。シルヴェルはずり落ちそうなローブを支えながら、耳を傾けている。
「立派だのう。この森は希少なモンスターが結構おるし、ダンジョンもあった。無謀な冒険者は多いじゃろうな」
「ええ。それでたまに街へ降りていって、集まった素材を売ったり、遺品をギルドに引き渡して報酬をもらう。そのお金で、必要な装備や食べ物を買う。そういう暮らしですね」
シルヴェルはちらりと部屋の隅を見やる。そこには集めたモンスターの素材が積まれていた。
「……そういえば、あなたにぴったりの服があったかも」
ブロンは手を止め、チェストから服を取り出した。それは女性用とおぼしき衣類だった。
顔をしかめるシルヴェル。
「前、ここで一緒に住んでいた妹が嫁に行き家を出ていった時に忘れていったものです。どうせここに来ることはないでしょうから、差し上げます」
「それをわしに着ろとな。言ったとおり、見た目はこうじゃが爺なのだぞ」
「見たところ、その服はかなり大きいみたいですし」
ブロンの指摘のとおり、シルヴェルは腕まくりをしてなお下がってくる袖を邪魔そうにしている。それだけではなく、実のところ頑丈に作られたローブは目が荒く、シルヴェルの柔肌を常に擦っていて少々痛い。
「背に腹は変えられぬか……」
ブロンから衣類を受け取り、広げてみるシルヴェル。上等な生地を丁寧な縫製で仕立てられた白いワンピース、そして肌触りがとてもよい白の下着。
(この歳になってこれか……情けないのう)
ふんわりとしたドロワーズをつまみ上げ、なんともいえない顔をしたシルヴェルだったが、どうせこの先は女性として生きていくのだからと腹を括った。
シルヴェルはその場で、ローブを脱いでしまった。もちろん、ブロンの目の前で。全力で回れ右をするブロン。
「シルヴェルさん……!」
「男同士じゃろうに」
渋々シルヴェルはブロンに背中を向けて、服を身に着けていく。
(上は……どうつけるんじゃ? ああ、こうして……背中側で金具をつければ……いや難しいな。前で装着して回して、その後に腕を入れればいいのか。下は男とそう変わらんか)
シルヴェルはもはや謎解きのように下着を身に着けてから、ワンピースに袖を通した。胸周りの締め付けだけ少々気になり、胸元や裾に縫い付けられた赤いリボンが少々気になるが、ローブと基本的な構造は同じなのでシルヴェルも違和感はなかった。
「着たぞ。サイズはぴったりじゃ」
「ありがとうございます……って、なぜ僕がお礼を……」
ブロンはぶつくさ言いながらも、後ろへ振り返り、目を奪われた。
真っ白いワンピースは、透き通る肌と腰まで伸びた淡い金髪によく似合っていた。先程までごくシンプルで飾り気のないローブ姿だったのもあるが、まさに美少女と呼ぶにふさわしい出で立ちだとブロンは見惚れてしまった。
「案外しっくりくるのう……む? やはりどこか変か?」
「あ、いや……そ、それでいいと思いますけど……本当に、あのシルヴェルさんなのですか? いえ、疑っているわけではないのですが……」
「みなまで言うな……ううむ、魔力さえ戻ればのう」
間もなく、食事が出来上がる。
ブロンが作っていたたのは、獣肉や野菜、香辛料を入れて煮込んだスープ。二人は取り分けて食卓を囲む。
「なんだか、人とご飯を食べるのは久しぶりです」
ブロンは咀嚼の合間にしみじみとこぼす。妹と暮らしていた頃はそれが当たり前の光景だった。それも2年前程なのだが、ずっと昔のように感じられていた。
「む……この菜っ葉、渋くないか?」
「こんなものだと思いますが。野菜、嫌いなのですか?」
「そんなことはないが……」
スープに浮いていたセロリの茎を噛んだシルヴェルは、口の中に広がった苦味に顔をしかめる。以前は気にせずよく食べていたはずなのに、妙なほど忌避感を覚えた。
(もしや、味覚も変わったのかのう……ぬう)
もう一度口に含んで、やはりシルヴェルは眉をひそめた。飲み込めないほどではないが、じゃがいもの甘さや獣肉の力強さまで、台無しになるようだった。
「無理はしなくて構いませんよ」
「……いや、食う」
半ば意地になって、セロリを食べるシルヴェル。彼女の辛そうな表情に、ブロンは幼い頃は自分も野菜を我慢して食べていたことを懐かしむのだった。
やがて二人が食事を終え後片付けも済ませた頃には、外は星が輝く時分となっていた。
「さて。じゃあシルヴェルさんはベッドを使ってください」
そう言いながら、ブロンはモンスターの毛皮を床に敷き、横たわる。元々この小屋はブロンと妹で二人暮らしをしていたのだが、その時は大きなベッド一つで済ませていたのだ。
「ふむ、悪いのう」
老体に気を使ってくれたのだとシルヴェルは受け取り、遠慮せず厚意に従うこととした。しかし、寝そべったベッドの広さと余り具合から、シルヴェルは自分が少女になっていることを思い出す。
「ブロンよ、わしはこの通り小柄だし、無理なく二人で寝られそうじゃ」
「気にしないでください。それは来客や救助した人のため用意しているもので、いつも床で寝ていますから」
「……ならよいが」
無論、ブロンの嘘だった。
中身がどうであれ、少なくとも同衾や添い寝をすることに関して言えば普通の少女が相手であるのと変わらない。
ならばと遠慮なく、とシルヴェルはベッドの上で脱力する。
(む……ベッドは心地よいのじゃが……なんだか……)
しかし鼻がむずむずとして、身体の芯から熱くなっていくような感覚に襲われ寝付けないシルヴェル。それは、少女となったシルヴェルの嗅覚がベッドに染み付いたブロンの匂いを強く感じ取り、身体が反応してしまっていたのである。
それでも体力のない少女となったシルヴェルは、すぐに寝付いてしまたのだった。
闇も深まってきた中、シルヴェルは起き上がる。寝ぼけ気味のシルヴェルは、小屋の中をふらふらとうろつき――床で寝ていたブロンに、足を引っ掛ける。
「むっ……」
「ぐうっ」
もつれて片足で飛び、それでもどうにかバランスを保ったシルヴェルだったが、ブロンは目を覚ます。
「ん……あ、シルヴェル……さんか」
「踏んでしまいそうじゃ、お主もベッドで寝ろ」
「あ、はい……あれ、どちらへ」
「小便じゃ」
ばたんと扉が閉まった後、ブロンは一気に覚醒する。頭が回っておらず反射的に返事をしたが、同じベッドで寝ろ、だって?
(……はぁ)
とはいえ、ブロンもカーペットなどを下敷きにしたが身体が痛くて仕方がない。明日にも支障が出そうなので、シルヴェルの頼みに従いベッドに入った。
しかし間もなく、夜風が走る音に紛れて微かな水音、そして『む、この辺から出とるのか……おなごは面倒じゃ……んっ』というシルヴェルの独り言が聞こえてしまい、一人気まずくなる。
程なくしてシルヴェルはベッドに戻ってきて、ブロンの隣に横たわった。
(……やっぱり……)
胸を上下させる穏やかな寝息、ぶつかる手足の高い体温、髪や全身から漂う甘い香り。
自分は至って健康な若い女であり、あなたの手が届く距離で、無防備に眠っている。シルヴェルは、そうブロンに全身で伝えているようだった。
瞬時に、ブロンの瞼の裏には焼き付いてしまっていたシルヴェルの裸体が浮かんでしまう。あの服の下には、成熟しきっていないながらも蠱惑的で美しい肢体が秘められているのだと。
(……まずい)
ブロンの心臓の鼓動は一気に加速し、眠気は完全にどこかへ消えた。おまけに、本懐を果たしたことのない雄も反応してしまった。
そして――シルヴェルも似たようなものだった。
(……うう)
未知の感覚だが、シルヴェルはよく似たものを知っていた。
紛れもない、発情。
シルヴェルは若い頃に魔術に打ち込むために他のすべてを遠ざけたが、その前には恋人がおりセックスの経験もあった。女性と肌を寄せ合い愛の言葉をささやいた時、気持ちが高ぶる。今、シルヴェルの理性を揺るがしているのはまさにそれだった。
(いかん、なぜこれほどまでに……若いおなごは皆こうなのか? 指輪も怪しいが……魔力が全く回復しとらんし)
老爺から少女へ、まるきり変わったとはいえ性欲すらも復活するのだろうか。シルヴェルはあれこれと考え、身を苛む切なさを無視しようとする。
理性を削り衝動を抑えながら、二人は眠るのだった。
ブロンを深い眠りから引き上げたのは、香ばしい匂いだった。
「ぬ、起きたか」
「……おはようございます」
ベッドから這い出たブロンは、シルヴェルの後ろ姿を寝ぼけ眼で見つめていた。立ち上る湯気や小気味の良い包丁の音から、先に目覚めたシルヴェルが料理をしているのは考えるまでもない。
「ふむ……こんなところかの」
「……朝ごはんですか」
「勝手にやるのもなんだと思ったんじゃがな、中々お主が起きんかったし、身体が動くのが嬉しくてのう」
「はあ……」
筋肉こそ男には及ばないが、軋まない身体というだけでシルヴェルは嬉しかったのである。
シルヴェルはくるりと回って微笑む。若返った喜びを表しただけなのだが、そのチャーミングな仕草にブロンは見惚れてしまった。
「まあよい。ほれ、飯にするぞ」
シルヴェルは甲斐甲斐しく食事を並べる。よく言えば素朴、悪く言えばただ材料を煮込んだだけの雑なスープとは異なり、炙った肉やふかし芋など、ひと手間かかった料理だった。
ブロンは席に着く。少しだけ毒を警戒したが、目の前でシルヴェルがばくばくと食べ始めたので、まあ大丈夫だろうと肉の切れ端を口に運んでみた。
「……おいしい」
「そうじゃろう」
肉自体は昨晩スープに使ったものと同じ獣のものだが、細かく筋を切り塩や香辛料を擦り込んであり、見た目よりも味が濃い。ふかし芋には特別な工夫こそないが、肉汁したたる肉と共に食べることで芋のパサつきがほどよく中和された。そして脂っこくなった唇と口は、野菜で拭う。
ブロンは感心しきりだった。
「ごちそうさまでした」
食事を終えると『片付けもわしがやる』とシルヴェルが言うので、ブロンは異論を唱えず任せ、剣を握り外に出る準備を始めた。
「さて……僕は森の見回りと昨日教えて頂いたポーションの素材集めに行きます。シルヴェルさんは危険なので家から出ないでください。小屋が丘にあるのでほとんどモンスターは近寄ってこないのですが、なるべく」
「わかっておる。いつごろ戻るのじゃ?」
「昼に一回戻ります。状況によっては夕方になるかもしれませんが。食事は好きにしてください」
「悪いのう。お主も、油断するでないぞ」
シルヴェルは自分が高名な魔術師なのだから歓待を受けて当然、などと驕っていない。ただ、無礼の詫びも含めて謝礼を渡すつもりだったので、お互い恐縮しすぎない程度の関係が出来れば十分だろうと考えていた。
(……にしても、馴染み過ぎている気がするがな)
シルヴェルがブロンと同年代の頃には既に一人だった反動かもしれない。孤高を気取っていたつもりはなく、慕う者も少なくはなかったのだが、シルヴェルの情熱はただただ己の研鑽に向いていた。しかし、人生の一区切りとして"継承の指輪"を入手できたことで、気が緩んでいるのだろうとシルヴェルは分析した。
(さて……と)
朝食の片付けも済んだシルヴェルは、使えそうなモンスター素材がないか、小屋の棚や自分の荷物から漁るが、やはり足りない。
大人しく、ブロンの帰宅を待つのであった。
森はまだざわついている。ブロンは警戒を怠らず、森を進んでいった。
(いつ戻るか……ですか)
誰かに見送られ家を出るのも、妹が嫁入りで移り住んでからは初めて。恋人や妻が出来れば、これが日常となる。あるいはシルヴェルならば――そこまでブロンは想像して、首を振った。
ここまでの言動や振る舞いで、どうやら助けた少女が本当にシルヴェルその人であると信じ始めていたブロン。あの人は男性なのだから、自分とそういう関係になることはあり得ない。
(……はぁ)
一方で、シルヴェルが老爺だった頃をろくに知らないブロンにとって、女性の羞恥心を持ち合わせておらず、年寄りのような喋り方をして魔術などに造詣の深い少女でしかないのもまた事実だった。
そんな事を考え浮き沈みしながらも、ブロンはシルヴェルに指定された素材を集めながら無事森の巡回を終えた。小屋に戻ると、中では料理をしているシルヴェルの姿があった。
「ただいま戻りました」
「お、帰ったか」
「もしや、また食事を?」
「うむ。後で礼をするとはいえ、何もせんのは居心地が悪いからのう」
「ありがとうございます。素材も集まりましたよ」
「すまんのう。では飯にしよう」
シルヴェルが手早く用意をすると、朝と同様にふたりは食卓を囲んだ。
食事も終えると、ブロンはダンジョン崩落の影響を確認すると言ってまた小屋を発つ。
シルヴェルは、持ち歩いている小型の精製台などの道具、それにブロンから渡された素材などポーション精製の準備を始めた。
「……こうして、っと……」
何百回、何千回と繰り返してきた作業。あっという間に、シルヴェルは魔力回復ポーションを精製したのだった。
「……ふむ」
青い液体を眺めながら、シルヴェルは逡巡する。一晩経ったが、魔力はちっとも回復していなかった。指輪がなにか作用しているのは間違いない。果たして、飲んでしまって大丈夫なのだろうか。
ブロンが戻ってきてから、ともシルヴェルは考えたが、彼はあまりポーションに詳しい風でもなかったし、頼りにはできない。最悪、毒や麻痺などに効く万能のポーションは残されていた。
「よし……」
意を決したシルヴェルは、魔力回復ポーションに口を付ける。
味は悪い。いつもよりさらにまずい気がしたが、一気に流し込んだ。
「……う――っ!?」
急激に顔が紅潮し、身体が火照る。下半身の奥が唸り、刺激を欲しがっている。胸の先端に一度だけ覚えた甘い痺れが繰り返し襲い来る。
ワンピースの下で、成長途上の瑞々しい肉体が雌へと変貌していくのがわかった。
「……くそっ♡」
調合を誤ったか、ブロンから受け取った素材がよく似た別物だったか。いずれにせよ、自分の身に何が起きているかは考えるまでもない。
「いかん……♡」
ブロンはおらず、小屋に一人きり。女性の自慰の仕方も朧げながら知っている。だがシルヴェルは、欲望に流されオナニーすることを良しとしなかった。何かが、警鐘を鳴らしていた。
「は……ぁっ♡」
シルヴェルはよろよろとベッドに倒れ込む。丸まって、身体を刺激しないよう衝動にひたすら耐えるのだった。
しかし、この時シルヴェルは気がついていなかった。魔力を性欲に変換しているため、黙っていても収まらないことを。
そして――何も知らない、ブロンが帰ってくる。昼食で一度戻ったとはいえ一日歩き詰め、額の汗を拭いながら小屋の扉を開いた。
すぐ目に飛び込んでくるのは、ベッドで震えるシルヴェルの姿。息を切らしながらうずくまるその様子は、ただごとではないことを窺わせる。
「戻りました……シルヴェルさん、体調が――」
「く、くるな……ぁ♡」
あまりに弱々しいシルヴェルの声。ブロンは駆け寄り、細い肩に触れた。顔は真っ赤でよだれを垂らしており、風邪や発熱の症状としか見えない。
「――くそっ♡」
ブロンの鍛え上げられた肉体から漂う、むわりとした男の匂い。それらは、シルヴェルがやっとの思いで手繰り寄せていた正気をあざ笑うかのように霧散させた。
「お主が……悪いのじゃからな……♡」
シルヴェルはブロンに抱きつき、背中へ腕を回す。全く状況を把握できていないブロンに構わず、問答無用でキスをしてしまう。
「んっ……♡」
あまりの急展開に、ブロンは脳の処理が追いつかない。自分の口に柔らかく小さい唇が密着し、あまつさえ舌が中に侵入しようとしてくる。
ただ、シルヴェルの様子がおかしい。ブロンは口元に残る温かな感触に戸惑いながらも、筋力でもって彼女を引き離しベッドに抑え込んだ。
「シルヴェル……さんってば! 一体どうしたんですか!?」
「い、いいからぁ……もう我慢できぬのじゃ……♡」
シルヴェルは蕩けた瞳で懇願する。その顔や声の艶から、ブロンはようやくシルヴェルが情欲に支配されていると理解した。
ポーションの精製を行った形跡もあることから、調合を誤り媚薬の類が出来上がってしまったのだと推測するブロン。いくら本人の責であっても乞われるがままシルヴェルに手を出すのは憚られた。
そんな生真面目さを裏切るように、ブロンのペニスへは血が集まっている。動悸も誤魔化すことなどできない。
「……し、しかし……」
「お願い……ほれっ」
豹変ぶりに動揺したブロンの拘束は緩み、シルヴェルの逆転を許してしまう。今度は、ブロンがベッドに押し倒されシルヴェルが馬乗りとなった。
「悪いようにはせぬ……♡」
男性かつ同性愛の趣味がなかったシルヴェルにとって、欲情する相手は女性だった。しかし女となった身体は男性としての思考や精神を容易く上回っていた。とにかく男が欲しい、自分の手ではだめだと本能が告げていたのだった。
シルヴェルはブロンのズボンを脱がし、ペニスも露出させてしまった。
「よいではないか……お主も我慢は身体に毒じゃぞ♡」
「シルヴェル……さん……うっ」
「ほれっ♡ あっ……んっ♡」
ワンピースと下着も脱いで放り投げたシルヴェルは、手探りでペニスの根本を掴み先端を自らの割れ目へあてがう。亀頭にぬるりと絡みついた愛液の熱さと女陰の柔らかさ、真白い肌をピンクに染め見下ろしてくる少女という光景に、ブロンも理性を投げ出してしまった。
「これ以上は……っ」
「よい、よい♡ 全てはわしの――あがぁっ♡」
そしてあっさりと――シルヴェルとブロンは一つになった。体重のまま腰を下ろしたことで、男を受け入れるには段階を要するはずだったシルヴェルの狭い膣は、ペニスを一気に咥え込む。もはや、刺し貫いたといっても過言ではない。処女膜すら形成されていたのだが、それすらも難なく破られた。
「んあぁあっ♡ おぅっ♡ よいっ♡」
凄まじい快楽がシルヴェルのすべてを塗りつぶしていた。腰を一生懸命に振ると、ペニスが膣壁を削り取るかのようにゴリゴリとえぐる。
「っふ、ぅ……っ!」
対してブロンは受け身。なにしろ女性とのセックスは初めてであり勝手がわからないというのはあったが、あくまでシルヴェルの意思であると、最後の言い訳のつもりだった。それでいて、自分の上で乱れ小気味よく喘ぐ少女に優越を感じているのも否定はできない。ペニスがぎちぎちと締め付けられ敏感な亀頭が奥をノックする感覚は、大人では味わえない。
ブロンは限界が近づいていることを自覚し、どこかでペニスを抜く意思がまだあった。だがそんな知性すらも灼き切れてしまった。
一秒でも長く快楽を味わいたい。どうせシルヴェルが襲ってきたのだから、こちらが気を遣う必要などない。ブロンは力を入れれば折れそうなほど細いシルヴェルの腰を掴み、膂力でもって上下させる。
「おが……っ♡ あっ、ブロ……んっ♡」
「もう……知りませんよ……っ」
「そう……じゃっ♡ なんでもよいからっ♡」
「っく――うっ!」
そして、ついにブロンはシルヴェルの中で――初めて女性の中で己の遺伝子を爆発させた。最奥に密着したペニスは、極めて小さな部屋へと精子を流し込む。ペニスは脈動し二度三度と発射しても衰えない。
あまつさえ、射精が収まってなおブロンのペニスはガチガチに膨らんだまま、シルヴェルを蹂躙していた。
「あぁっ……中にぃ♡」
「はぁ……はぁ……いいんですね、シルヴェルさん!」
ブロンは繋がったまま起き上がり、シルヴェルを寝かせる。正常位の体位だ。
「あ……っ♡」
ぽふんとベッドに倒されたシルヴェルは、真上から見下ろしてくるブロンと目が合う。
暴力的なまでの快楽に晒されたシルヴェルは、もうこの男に逆らえないことを本能で理解した。今、シルヴェルは一匹の雌として雄に屈服させられたのである。
「うぁ――んああぁあ、あぁあっ♡♡♡」
見た目通りの小娘に堕ちた――そう自覚した瞬間、シルヴェルの快感も極点に達する。ただでさえ窮屈な膣は、それでも精一杯に締め上げる。目の前がチカチカと光って、何が起きているのか、どうされているのかさえ分からなくなる。シルヴェルにあったのは、多大な幸福感だけだった。
突然叫び痙攣したシルヴェルを見て、ブロンは彼女も絶頂したのだと察した。しかし、腰は止まらない。ほとんど気を失ったシルヴェルを、欲望を満たす道具にしてしまった。
それも落ち着いた頃には、もう外は暗くなっていた。あまりに激しいセックスによって、シルヴェルもブロンも、そのまま寝入ってしまったのだった。
翌朝――先に起きたのは、シルヴェルだった。
ひとつベッドの中、全裸で抱き合いながら寝ていたシルヴェルとブロン。股間のジクジクとした痛み、掛けたタオルケットの汚れと臭い、乾燥した体液の跡、乱れた長髪。
シルヴェルは何があったのかをすぐに思い出す。
「……ぬぅ……お?」
シルヴェルの発情は完全に収まっていたが、ブロンの方を見ると自然とペニスに視線が行ってしまう。暴走するほどではないものの、未だ性欲は吐き出しきっていないようだった。
「うぅ……」
それにしても、昨晩はあまりにひどかった。このまま、ブロンが起きる前に逃げ出してしまいたい衝動に駆られるシルヴェル。しかし単独では森を抜けられない。
諦めたシルヴェルはタオルケットをブロンに被せ、ベッドを出る。服を着て外の小川で顔を洗ってから、椅子にぼんやりと座っていた。
間もなくブロンも目を覚ます。そしてブロンも、まもなく昨晩の出来事がフラッシュバックした。
「……起きたか」
「おはよう……ございます」
「……すまんかった」
ブロンが言葉に詰まり、返事を選んでいると察したシルヴェルは先に頭を下げる。
「昨晩はひどい醜態を晒してしまったのう……本当に迷惑をかけた」
「……いえ、その……何か、あったのですか?」
「わからん。魔力回復のポーションを作ったつもりだったのじゃが、素材が違ったのやもしれぬし、わしの体質がおかしくなっただけかも」
「僕の素材が間違っていたなら、すみません」
「お主のせいではない。わしとて渡されたものを確かめず使いはせんからのう」
シルヴェルが検分した限りでは、素材に誤りはなかった。この森特有の全く同じ外見の薬草、などの可能性が高いと踏んでいた。
「とにかく、見た目はこうじゃが、爺にあんなことをされて気持ち悪かったじゃろう……重ねてすまぬ……」
「それは……ええと」
自分を爺だと言い張るが、ブロンにとってシルヴェルとは少女だった。昨晩の件も、ブロンにとっては役得でしかなかった。
しかし気にしないと告げたとして、逆にシルヴェルのほうが嫌がるかもしれない。向こうからすれば男色なのだ。
少し悩んだブロンが選んだのは、話題を変えることだった。
「魔力が回復していないのであれば、もう少し逗留されるのですか?」
「う……うむ……じゃが、よいのか?」
ブロンからすれば、自分は見た目が少女とはいえ強姦を仕掛けてきたおぞましいとしか言いようのない爺。そんな相手を自宅に置きたい奇特な人間はいないだろうとシルヴェルは考えていた。
そして仮に滞在するとして、シルヴェルも抑えが効くか自信がなかった。ポーションの効果は切れたが、巻いたタオルケットの隙間から覗くブロンの素肌を見ると、昨晩抱かれた時の悦びが身体に蘇ってしまう。
シルヴェルは、己がペニスを欲しがる小娘になったのだと強烈に刻み込まれてしまっていたのである。
「? なにがですか?」
「お主は嫌ではないのか? 見た目がこうとはいえ、爺にあんなことをされて……気持ち悪いじゃろう?」
先日の気丈さは失われ、すっかり弱々しくなってしまったシルヴェルに、ブロンもまた胸が高鳴る。それは庇護欲であり、ささやかな恋ですらあるとも分かっていた。
やはり、ブロンの目にシルヴェルはか弱い少女としか映らない。正直に話すこととした。
「いえ。ここにとどまって頂いて構いませんよ」
「そ……それは助かるが……」
「はっきりいいましょう。実は、あなたのことをおじいさんだと、男だと思ったことは一度もありません。そうだった頃のあなたはよく知りませんし、少なくとも出会った時から女性だったので。嘘はつけないので正直に言いますが……昨晩のことも、少しも嫌ではないです。それどころか――」
「わ、わかった。もうよい」
顔を赤らめブロンの話を遮るシルヴェル。嫌悪感を抱かれていないというのは安堵する一方、完全に女性として見られているのは少々複雑だった。
「すまぬ……恩に着るぞ、ブロン」
その後朝食を済ませると、ブロンは森の様子を確かめに出かけ、シルヴェルが家に残る。先日と同じ構図だったが、シルヴェルは暇を持て余していた。
昨日は魔力が戻らない理由を検討し、あれこれと魔術の発動を試みたり考察していたのだが、"継承の指輪"と見立てたあまりその気にもならない。ブロンの家に娯楽もなく、多少安全な立地とはいえ無闇に外へ出るのも危険。
森を抜ける時のため治癒のポーションも精製しておいたが、手持ち素材だけでは幾つも作れない。魔力回復のポーションは不要。断じて。
今日は昼時にもブロンは戻らず、昼食も済ませたシルヴェルはやることがなくなったのだった。
「うー……む」
昼寝もしたシルヴェルは、鏡の前に立ち手慰みで髪をいじっていた。桃色がかった銀髪は腰辺りまで伸びており、さらさらとした手触りが心地よい。少々鬱陶しくまとめたいのだが、紐で結んでもうまくいかず三つ編みとやらもやり方が不明。
諦めたシルヴェルは、なんとなく自分の姿を観察してみる。
(改めて見ると、やっぱり子供じゃが……)
歳は十代半ばほど、顔のパーツは左右対称で肌は真っ白、髪も美しい。どこかの国のお姫様と言われたら十人が十人疑わない、という表現が当てはまると浮かんだことで、シルヴェルは自身が可憐な少女だという結論に至った。
少しずつ視線が下りていき、ワンピースに包まれた細い身体が気になりだす。鏡で見ながらだとうら若き少女を剥くような罪悪感があったが、自分だと言い聞かせてシルヴェルは服を脱いで裸になった。
きれいな素肌、尖るように盛り上がった胸と、ピンクの乳首。腰ははっきりとくびれがある反面、お尻はまだ小さい。それに、つるりとした筋。
少女として見ているとブロンからきっぱり言われたが、この少女を爺として扱う者が居たら相当な変人だろう。シルヴェルもブロンに同意見だった。
「むむ……変な感じだのう」
背中を見てみたり、何度か回ってみてからシルヴェルの感心は股間に移る。ペニスがないというの存外にすっきりしているが、小便の時に手間取る。
「どれどれ、中は……ひぅっ♡」
中はどうなっているのか。あくまで自分のものとなった身体を把握するための行動だったのだが、割れ目に指を入れようとした瞬間、手前側にある器官にこすれてぴりりとした感覚が走った。
無理なセックスのせいで傷ついたのかと恐れた、シルヴェルは意識的に触れてみる。小さな豆のような、鞘に包まれた器官。
「……こ、ここは……んっ♡」
ここでようやく、それはクリトリスであると想像がついた。好奇心のまま、くにくにとこねたシルヴェル。その軽率な行動は、一気に腰が砕けるほどの快感という代償を払うこととなった。
全身の力が抜けたシルヴェルは、膝を合わせるようにぺたんとへたり込んでしまった。
完全にスイッチが入ってしまった。昨日のように気が狂うほどの衝動ではないが、腹の中が激しく疼く。
「……また、ブロンに迷惑をかけるくらいなら……自分で処理……せねばのう……♡」
ブロンを煩わせるわけにはいかない。自慰に及ぶ自分への言い訳は、すぐ手元にあった。
瞬時に躊躇がなくなったシルヴェルはM字に脚を開き、その破廉恥な格好にすぐ閉じてしまった。あまりに恥ずかしい。さらに、照れて顔を俯かせた様は余計シルヴェルを苛む。まるで、本当の女の子のようだと。
「……うう……♡」
しかし、羞恥と興味で揺れ動いていた天秤は興味へ傾く。再びゆっくりと脚を開いた後、ぴったりと閉じていた股間を指で引っ張った。
中は一点の染みや色あせもない、鮮やかな桜色の粘膜。上からクリトリス、小さな穴、中のひだが覗く穴、そして肛門が一直線に並んでいる。
穴のひとつは小便を出すための穴とわかる。その下の穴は子宮へと続く入り口。
「ここに……男の、ブロンのものが……?」
ごくりと喉を鳴らすシルヴェル。たまたま近くにあった小さめのすりこぎ棒を手に取る。よく覚えていないが、長さも太さもこれくらいだったはず。
しかしこの小さな穴に、本当に入ったのだろうか。下腹部にあてがってみると、へその下にまで届いてしまう。
「……た、試し……じゃよ……っん♡」
誰ともなくつぶやきつつ、シルヴェルは指を突き立ててみる。人差し指の第二関節まで入れて、びくりと身体を震わせた。
きつく狭い。たったの指一本だというのに、しなやかな筋肉がそれ以上の侵入を阻んでいた。
「……くぅ……んっふぅ……限界……ではないかぁ♡」
意を決したシルヴェルは、さらに力を込めて指を押し込む。どうにか指の根本まで入ったのだが、それだけで中は一杯となってしまう。もう一本指を増やすのも恐ろしいぐらいだった。
自分で触るものではない。シルヴェルはすぐに指を抜いた。
「はぁ……はぁ……♡ こっちか……♡」
肩を上下させていたシルヴェルだったが、胸元に走る生暖かい呼吸に乳首がくすぐられる。
乳房と呼べるほど実ってはいないが、男のそれではない。シルヴェルは、ぬめった指先のままぴんと立った先端をつまんだ。
「んぁっ……っき♡」
ぴりっとした鋭い心地よさ。だが痛みもまだある。シルヴェルはまたも手を引いた。
結局のところ、下手に触っては壊しそうで、そして狂おしいほどの快楽に怖気づいているのだとシルヴェルは分からせられる。
「……難儀じゃのう……♡」
結局手を止めたシルヴェルは、火照った身体を服に押し込める。悶々としたまま、日が傾きかけて着た頃に夕食の準備を始め、ブロンを出迎えたのだった。