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「じゃあカラダ、触ってくからね~♡♡♡」


 有馬宗介は耳元で囁かれた、ひどく不快なやや低い女の声に眉をひそめた。

多く吐き出される息を避けるため続けて顔を背け、抵抗が許されていないなかでも嫌がっていることは示す。


「っ……」


「ぐひひっ♡♡♡すごいスベスベだねぇ♡♡♡ちゃんと手入れしてるのかな?♡♡♡」


 すると背後から伸びてきた二本の手は無遠慮に、それぞれ何も纏っていない裸の右腿と左胸をさすり始めた。

声同様に、触れ方はやたら粘っこい。

虫でも這うように指はのたくり、「堪能」という言葉が適切に思えるほど手のひらは仄かに乗った脂肪を味わっていく。

とにかく嫌悪感を催す、知覚さえしたくない動きだ。

男性であれば喜ぶ、柔らかくしなやかな女性の白い手からという事実があったとしても。


 しかし、何故だか普段よりもずっと敏感さを増した身体は、肌と肌の擦れ合いをやけにはっきり伝えてくる。

仄かに自分より高い体温や、早くも滲んだ汗による湿り気、微細な動きの一つ一つを。


 そんな中で唯一救いがあるとすれば、足を延ばし座っているベッドとそこに敷かれたシーツの触り心地くらいだ。

よほど上等なものなのだろう。嫌な感情を慰めてくれるみたく、身じろぎの度滑らかに尻や腿裏を癒してくれる。


「ぅ……」


「これからじっくり焦らして、宗介くんのカラダをえっちにしてくからね♡♡♡」


 だがそうしたせめてもの反抗をあざ笑うかのように、動作は変化した。

五指の先端が、皮膚と接触するかしないかギリギリの位置で揺らめいていく。

すると不思議なことに意識はその愛撫へと集中してしまい、与えられる悩ましく妖しい心地に思わず息が漏れた。


 喘ぎとも取れる音を出してしまった事が、背後から宗介を抱えてくるような体勢のふたなり、銀沢星華にバレてしまわないか不安になる。

彼女に、両親を何かしらの方法で嵌めて脅し、金に物を言わせて自分を言いなりにする彼女に、そんな反応は見せてはならない。

だからこの場は絶対に、何が何でも耐えなければならないのだ。




 彼がこんな状況へ陥った原因は、少し前に遡る。







「会長!先生からの承認とれました!」


「うん、じゃあ判子おしとくね。そしたら教室割り当てに回して」


「宗介、これって流石に……」


「あ~……そうだね、再検討してもらおうか」


「有馬先輩、暫定ですが今の予算割り当てはこんな感じです」


「ん……うん。これで大丈夫だと思う。いつもありがとう、伊集院さん」


 放課後、文化祭を一週間後に控えた私立桜華学園の生徒会室は、相当に慌ただしかった。

中でも全校生徒の代表たる生徒会長として、殆どの責任を担う宗介の仕事量は著しく多い。

十人ほどいる生徒会役員たちへの指示や、それぞれのクラス、部活動から提出された書類の処理など多岐に渡る。


 しかもそもそもとして、生徒たちの文化祭への思いは凄まじい。

上流階級出身の彼ら彼女らは、ここを卒業すれば本格的に実家を継ぐ準備をし、あるいはそれを目指しより勉学に励む必要があるため、自由な時間が失われることを分かっているのだ。

また上手くやれば、親族が経営する会社や、その関係各所へのアピールになることも。


 そのせいか少しやんちゃな出し物も多いが、とはいえそうした暴走を諫め、再検討を促すことも役目の一つだった。


 しかし宗介は、そんな生徒たちとは少し立場の違う人間だ。

なにぶん彼は、この学園には珍しい中流階級の出身である。

確かに実家が会社を経営しているものの規模はかなり小さく、平均よりも収入はあるのだろうが、この学園の父兄たちほどではない。

それにここのやたら高い学費も、両親曰く特待生制度で殆ど免除されたからこそ払えているらしかった。


 とはいえそうした生まれの違いによって、差別されたことは数えるほどしかない。

入学当初こそある特定の数人から心無い言葉を言われ、趣味の悪いいたずらをされた事こそあったが、大抵の人は尊重してくれた。

生徒会長になったのだって、自分を受け容れてくれた彼ら彼女らへの恩返しをしたいという理由があるほどだ。

もちろん、将来のためになるというやや利己的な思いもあったが、大半は感謝の気持ちに過ぎなかった。




「先生、こちら確認お願いします」


「はい……うん、問題ないでしょう。全部通してしまって大丈夫です」


「ありがとうございます」


 宗介はキリのいいタイミングで職員室へ向かい、文化祭を取り仕切る穏やかな初老の教員から、出し物の確認を貰う。

こうして生徒と教員間での連絡も、仕事の一つだ。


「あ、あとこれ、生徒会の皆で飲んでください」


「わ、ありがとうございます!これでもう少し頑張れます」


「いやいや、若い人ががんばってるんだから、これぐらいはね。期待してますよ、生徒会長」


「あはは……」


 それもあってか、彼は桜華学園に勤める大人たちからの信頼も厚かった。

職員室へと赴くたび、こうして温かい言葉や「気持ち」を貰うことが珍しくない。

学生としての生活は、まさしく順風満帆と言えるだろう。


「そういえば、あれから親御さんの方はどうですか?」


「あ、えっと……」


 だが、そんな生徒会長にも抱えているものがあった。

それは家の事だ。

会社の経営で忙しいながらも常に余裕を持ち、勉学や生徒会の仕事に励む宗介を日頃気にかけてくれていた両親は、近頃ずっと浮かない顔をしているのだ。

本人たちは隠しているつもりなのかもしれないが、明らかに家庭内の空気は暗く、察しのいい彼はすぐ分かってしまった。


 この教員には、その関係で少し落ち込んでいたことを見抜かれ、親身になって話を聞いてもらったという経緯がある。

問題が解決したわけではないが、気分が楽になったことは記憶に新しい。


「まだあまり良くなってないみたいなんですよね……。それどころかもっと悪化してるような気がして……」


「そうか……。では、一度有馬くんの方から話してみてもいいかもしれないですね」


「僕から……ですか?」


「あぁ。子供から心配されてると思えば、何か理由を言ってくださるかもしれないし。それに何より、そうした気持ちは親にとって嬉しいものだからね」


「なるほど……」


 続く言葉は宗介に、自分からも何か返したい、と強く思わせた。

もちろん学生の身ではやれることに制限があるものの、だからといって何もできないわけではない。

彼の言う通り少なくとも苦しみに寄り添ったり、ともすれば些細な事を手伝ったりはできるはずだ。


「先生、ありがとうございます。ちょっと頑張ってみます」


「うん。ただ、あまり無理しすぎないようにね。有馬くんも同じように、苦しくなったら人を頼るようにしてください」


「はい!……では、失礼します」


「は~い」


 優しく導いてくれる教師に感謝を覚えながら、職員室を後にする。

できることがあると考えられれば、心持ちは相当楽になった。


「ん……」


 そうしてしばらく廊下を歩いていると、ポケットに入れていたスマホが震える。

取り出してみれば、そこには両親からの連絡が表示されていた。







「うわ……」


 話があるから、と呼び出されたのは、明らかにドレスコードがありそうな都内のレストランだった。

普段こういった場所へは全く来ないため、前に立つと気圧され、自然と声が出てしまう。

事前にそういった店だと調べており、制服をしっかり整えていたとしても。


 モダンな門のような入口は白と黒で統一されて品があり、同時に威圧感も放っている。

しかも入ってすぐの所には、ベストとワイシャツを流麗に着こなしたウェイトレスが立っているのが見え、生半可な人物が入ってくるのを抑制するかのようだ。


 だが、親を待たせているのだと考え、意を決して中へと向かう。

名前を言えば、彼女は落ち着いた笑顔と共に中へ通してくれた。




「父さん、急にこんなところに呼び出し、て……」


 案内されたやや奥まった場所にある個室へ入ると、そこに居たのは長いテーブルに隣り合って座る父と母、そして、父の対面に居る見たことの無い30代ほどの女性だった。

両親の会社に関係した人とは何度か会っているため怪訝に思い、驚いた視線を向けてしまっていると、女性はこちらに笑いかけてくる。

しかしその笑顔はどこか含みがあり、着ている明らかに高級そうなチェック柄の紺スーツと相まって、うさんくさいという第一印象を抱いてしまう。

ジェルで固められた耳元ぐらいまでのやたら清潔な髪型、それにしてはやや暗そうな釣り目も相まってなおさらだ。


「こんばんは、宗介くん」


「あ……はい、初めまして」


「そっちに座ってもらえるかな?」


「はい」


 さらに女性の声は、なんとなく粘っこさを感じる低いものだった。

身体に纏わりついてくるようで、どこか感覚的に嫌なものが走っていく。


 求められるまま座れば、彼女の明るい顔とは裏腹に、隣にいる父から発される重苦しい空気が嫌でも分かった。


「じゃあ有馬さん、彼に説明を」


「はっ、はい。宗介、あのな……」


 そのことを証明するかのように、呼びかけへ応じる彼には緊張が見て取れる。

宗介は、両親が直面する問題の陰惨さをすぐ理解した。




「そういうことなんだ。どうかな、宗介くん?」


「な……えっと」


 あまりの事に、開いた口が塞がらない。

父親の言う事は要するに、「経営が不振になった所をこの女性、銀沢星華に助けてもらったが、その見返りとして宗介が二日間、彼女の元で働く必要がある」とのことだった。


 もちろん、言っている事自体が難しいと感じたわけでは無かった。

自分のどこにそんな価値を見出したのかは分からないが、たった二日時間を取られるだけだ。

さらに働く日はなるべく早くであればいいものの、こちらが指定できるらしい。

なんなら、一週間後の文化祭を終えた後でも良いとのことだった。

それだけで、両親の仕事はひとまずの安定を得るのだ。


「……」


 だが、それほど簡単なことにしては、やたら父親の歯切れが悪い。

例えるなら、まるで愛する息子を戦場にでも送る、あるいは無理矢理送らされるかのようだ。

話している間、時折言葉を詰まらせては、苦々しい顔で視線を送ってきていた。


 さらにそんな様子と正反対なのが、対面に座る「銀沢星華」だ。

彼女は人がそうして話をしている間中、ずっとにやついた顔でこちらを見てきていた。

しかも目つきは明らかに下品なものが混ざっていて、言外にその性格すらも表れている。

底意地が悪く、他人をいくらでも思い通りに出来ると考え、そうやって誰かを陥れ、弄ぶことに愉悦を覚える、創作ですら今日日描かれないような「成金」。

最悪な人物像は、驚くほど自然に想起された。


 そういえば、ここまで案内してくれた受付の女性も緊張していたような覚えがある。

銀沢星華とは、それほど何か曰く付きの人物なのかもしれない。


「できればこの場で返答をくれると助かるんだけど……」


「はい」


 本来であれば両親は、そこまで危険だと分かっている相手に子供を売るような真似はしない。

恐らく何か脅され、そうせざるを得ない状況に追い込まれているのだろう。

もしかすると、非合法な手段によって。


「もし断ったらどうなりますか?」


「さぁ?私にはちょっと分からないなぁ」


「っ……」


 父親が、息を呑む音が聞こえる。

きっと自分の推測は間違っていないのだろう。


「それでその条件を呑めば……」


「うん。ちゃんと約束を守ってもらえれば、私はそれで満足だよ♡♡……あと、金輪際君たちに手を出さないことも誓おう」


「嘘じゃないですね?」


「もちろん。契約書だって書いてもいいよ」


 やたら余裕そうな星華の態度と、ニヤけた厭らしい顔はただただ不快だった。

普段であればこんな提案は、考える事さえしない。


 しかし、家族の仕事が、有馬家の平和な日常が関わっているとなれば話は別だった。

これは、普段から受けに受け続けた恩を返す絶好の機会だ。

宗介は提案を呑むことに決めた。


「分かりました。文化祭があるので、その後で良ければ」


「うん♡♡愉しみにしてるね♡♡」


 当然、無策で得体の知れない相手の懐へ飛び込む気は無い。

出来うる限りの備えをしておくつもりだった。

そうして何か恐ろしい事をしている証拠が掴めずとも、弱みを握って二日間を無事に過ごせれば御の字だ。

最終的に、親の会社が立て直せるのであれば。


 彼はそうやって、どんなことをされたのか心を折られてしまった両親に代わり、確かな反抗心を芽生えさせる。


 だがそんなことを、これまで何人もの若者を毒牙にかけてきた星華は端から分かっていた。

これから自分がどんな目に遭うのか、銀沢星華とはいったいどれほど危険な人物なのか、宗介はまだ知らない。







 二週間後、都内某駅から学友がよく送り迎えされているような運転手付きの高級車に乗り、そして十分ほどすると目的地にたどり着いた。

外からドアを開けるミニスカートのメイド服で身を包む女性に促されるまま、車を降りる。


「うわ……」


 すると見えた星華の自宅らしき建物に、思わず驚嘆の声が出てしまう。

その理由は、異様なまでのサイズからだ。

都心から少し離れた場所とは言え、学校や何かの施設ではないかと考えてしまうほどに大きい。

とはいえ外装は土地の広い国に建てられる贅沢な豪邸そのままで、ここが住居なのだと嫌でも伝えてくる。


 しかも後ろを振り返れば、中世ヨーロッパの貴族を題材とした映画やアニメに出てくるような庭まであった。

どこも手入れが行き届き、素直に美しいと感じる。

これが銀沢星華の所有物でなければ、と惜しいほどに。


「さぁ。ここが私の自宅兼オフィスだよ。この二日間は自分の家だと思ってくつろいでいいからねぇ♡♡」


「……はい」


 そう考えていれば、ちょうど車を降りたらしき、すぐ隣から聞こえてくるどこか含みのある下卑た声に気分を害される。

「彼女」は、あの時と同じ服装で宗介を迎えに来ていた。

粘っこい視線も変わらずに。

こうして立ったまま並ぶと、以外にも自分よりそこそこ背が低い。

165センチほどだろうか。


 どうにか苛立つ内心を見せないよう返事するが、意思に反して口から出た言葉はかなり刺々しかった。


「ぐふふ……♡♡♡じゃあ、立ってるのもなんだし早速中にはいろっか」


「はい」


 それの何がおかしいのか笑いつつ、やたら大きな入口へと向かう彼女に続く。

今度は、いくらか品のある音が出せた。


「星華様。おかえりなさいませ」


「うん。みんなただいま~」


「……」


 開いたドアを通ると、中には「エントランス」という言葉で想像されるような大理石張りの空間が広がる。

さらに正面には、二階へと繋がる横長の階段があった。


 そして、その階段へ向かって道を作るように、先ほど車を開けてくれた女性と同じ服装の女性達が並び立つ。

少なくとも二十人ほどは居るだろうか。

口々に決まった言葉を喋る異様な光景に言葉を失う。


 しかし、彼女らの雇用主にとってそんな様子は日常でしかないらしい。

軽く反応すると周囲にはやや不釣り合いな玄関框で乱雑に靴を脱ぎ、一回の右奥へと進んでいく。

宗介はあてつけのようにきっちりと履物を揃えてから、後ろへとついていった。


「地下に仕事場があってね。とりあえず先にどんな場所で働くか見てもらおうと思うんだ」


「……分かりました」


 星華の言う通り、向かう先にはエレベーターがある。

このまま行けば、何をしてくるか分からない相手の地下室へと入ってしまう。

もしかしたら、かなり危険かもしれない。

うっすらそうした考えがよぎったものの、状況の異様さで呆気にとられ、また、後ろから付いてくるメイド三人が発する無言の圧によって、回避する方法が思いつかなかった。

何せ彼女らは皆、180センチ弱ある彼よりも背が高いのだ。

抵抗すれば痛めつけられてしまうのではないかという小さな恐怖が、とりあえず言われたことに従う選択をとらせた。


「~♪」


 上機嫌そうな家主に続いて鉄の箱へ乗ると、背後に居たメイドたちも乗ってくる。

中は意外に広く窮屈では無かったが、全員が入ってすぐ扉が閉まり、下へと降り始めるとどこか居心地の悪さを感じた。

しかも向かう先がどれほど深いところにあるのか、落ち着かない時間はしばらく続く。

あまり上手くない鼻歌が、その間中ずっと密閉空間に響いていた。


「お」


「……」


 やがて、エレベーターは止まり、重苦しい金属扉についたガラス窓からは暗闇だけが見える。

最初は黒い何かがついているのかと思ったが、ドアが開くと同時にただ照明が一つも点いていないだけだと分かった。

全く抵抗無く中へ進んでいく星華に続き、呑み込まれそうな漆黒へ宗介も入っていく。

内部を照らすのは、「入口」からの微かな光だけだ。

他に知覚できる情報と言えば、うっすら漂ってくる何か嗅ぎ慣れたような匂い程度しかない。


「あの、銀沢さん?」


 不安になり質問すると、声は少し反響して聞こえる。

どんな用途があるのか、建造物内部にしては中々広い場所らしかった。

だが、答えは返ってこない。


 すると、星華が少し上を向くのが見えた。


「つけて」


「わっ」


 そして、彼女が言葉を発するとほぼ同時に、部屋を一気にまばゆい光が満たす。


「え……」


 驚いて一瞬目を閉じ、恐る恐る再び開くと、視界にバスケットボールコートほど広い地下室の全貌が飛び込んできた。

それぞれ用途が違うのか、床材や壁の色で四つに分けられている。

白を基調とした清楚な区画、殆ど赤一色に染められた見ていると心がざわつく区画。

ガラスの壁で仕切られ、中に数種類の浴槽らしきものが置かれている区画、シックな色使いの落ち着いた区画だ。


 傍から見れば何かテーマパークのようにも思えるが、しかし浴室を除くそれぞれの場所には巨大なベッドが置かれている。

さらに赤い場所には、恐らくSMプレイに使うのだろう様々な器具があった。

性経験の無い宗介でも、ここがラブホテルを模しており、「仕事をする部屋」などでは全く無いのだと分かる。

であれば、これからどんなことが起こるのかも。


 向けられる視線や含みのある物言いから少なからず予想はしていたが、いざ目の当たりにすると流石に驚く。

ただ、これは弱みを握るチャンスだ。

ポケットに手を入れ、あらかじめ準備しておいたボイスレコーダーアプリを起動する。


「ふ~♡♡♡やっぱりスーツは息が詰まるね♡♡♡」


「っ!?」


 すると聞こえた粘つく声の方を見れば、こちらに背を向けながら何の遠慮も無く服を脱ぎ、側にいるメイドへ渡していく女。

既に下着姿となっており、全体的にむちむちとしていてかなり柔らかそうな、加えて手入れが行き届いて瑞々しい肌艶の、しかし成金らしくだらしなさもある純白の肢体が殆ど晒されていた。


 中でも腰回りは特に豊かで、巨大な尻たぶが身体の反りと共に大きく後方へ張り出す。

それは内側へも同様で、二つの柔肉がぴったり美乳さながらに閉じ、奥にある秘密の花園を覆い隠している。

しかも彼女が履いている黒いレースのショーツは、Tバックよりは微かに広い程度しか布面積が無く、臀部をただただ可憐且ついやらしく飾った。

半分から下など、まるで包むものが無い。


 そこから下方へ伸びる太腿も負けず劣らずで、明らかに星華自身の頭より太い。

とはいえ皮膚がたるんでいるという事は無く滑らかで、また、より下にあるふくらはぎは半分ほどの細さだ。

少しあるくびれと相まってメリハリがつき、ひどく劣情をそそる下半身は宗介にとって腹立たしい。

星華に興奮を覚えるなど、あってはならないのだから。

だが変なことをされないよう動向を探るため、視線を逸らすことはあまりしたくなかった。


「それにブラもパンツも……♡♡♡やっぱり私は裸で居るのが一番だな~♡♡♡」


 そうしているうちにブラジャーが外され、うなじから腹にかけてのラインも露わになる。

もう一つの下着を脱ぐため全身が左へと捻られると、艶めかしい腰が振られ、上半身もくねった。

浮き出す肩甲骨、背中の中央にある窪み、対して脂肪がつき膨らみのある胸裏、脇腹が、互いを引き立て合う。

固そうな直線と見るからに柔らかな曲線のマリアージュに、股間への血流が増していく。

撫でくり回せば、骨と肉、筋肉と脂肪という複数の感触でどう手を愉しませてくれるか、生殖本能が思わず想像してしまった。


「~~っ……」


「ね、宗介くんもそう思うよね?♡♡♡」


「いや……えっ」


 そんな風に堪え性の無いオスの性に苛立ちを覚え、不機嫌な息を吐いていると、視線の先に居る「メス」は振り向く。

すると星華の肉体正面には、日常ではそれほど見ない爆乳、膨らんで触り心地が良さそうな腹部、そして、女性には存在するはずの無いモノがあった。

勃起しきった男性器、チンポが。


 さらにソレは、異様なまでに大きい。

30センチ前後で、竿の直径は6、7センチほどあるだろうか。

また、カリはそこからきのこを想起させるほど大きく開き、既に半透明の液体を滴らせている。

加えて根本からは握り拳を膨らませたような金玉もぶら下がり、脚と脚の間で威厳を放っていた。

複数のメスを同時に支配し、子供をいくらでも仕込むオスとしての威厳を。


「ぐふふ♡♡♡」


「あっ」


 物珍しさからか思わずまじまじと観察してしまっていれば、持ち主の視線と笑い声に気づき、咄嗟に顔を逸らす。


「あれ、もっと見てもいいのに♡♡♡どうせこれからいくらでも見ることになるんだしさ♡♡♡」


「なっ……っ!」


 しかし続いた言葉に反抗心が激しく再燃し、彼女を睨みつけた。

暗さのある釣り目は楽しそうに垂れ、厚みのある唇もだらしなく緩んだ相当なにやけ面をしていて、もはやその下卑た欲望は隠れていない。

やはりこの成金は、自分を性的に扱うためここへ連れ込んだのだ。


「そうだ♡♡♡宗介くんにはまだここに連れてきた本当の理由を話してなかったよね♡♡♡」


「……はい」


 そのままきつい目つきを浴びせかけていれば、星華は自分の悪事を自ら話そうとしているようだった。

音声を録られているとも知らずに。

宗介は内心「しめた」と思いながらも、気取られないよう態度は決して崩さず相槌を打って次を促す。


「頭のいい宗介くんなら気づいていると思うけど、実は仕事を手伝ってほしいなんて嘘でね♡♡♡」


「……」


「ぐひひっ♡♡♡私は君みたいな優秀でかわいい子を誘い込んでは、従順なメスに変えちゃう悪い金持ちなんだ♡♡♡」


 黙って聞いていれば、罪の告白はスラスラと出てくる。

きっと毎回こんな風に喋り、己のしたことを相手に見せつけて気持ちよくなっているのだろう。

浅ましさに辟易するが、とはいえそんな愚かしさは好都合だった。


「ほら、おいで♡♡♡」


「はい……♡♡♡」


「星華さま……♡♡♡」


 彼女は両側に控えていたメイドをそれぞれ抱き寄せ、こちらへ背中を向けさせて腰を躊躇なく抱く。

身長の高い人物に挟まれたが、そうして挟む二人のへりくだりようは著しく、また厭らしい手つきへ一切の抵抗は無い。

むしろ触れられることに喜んでいるらしく、いちいち甘い吐息を漏らしているのが静かな地下室の中に響く。

そんな光景は、三人の立場の差を痛いくらい表すようだ。


「この子たちみたいに、ね♡♡♡」


「うっ……え」


 そして星華は、メイドたちが履くスカートをめくる。

露わになったのは、雇用主よりももしかすると大きなデカ尻と、その谷間から少し顔を出す、恐らく肛門に挿しこまれているだろうプラスチックかシリコン製の何かだ。

何かは肉が揉まれる度もぞもぞと蠢き、また黄白色の粘々した液体を時折垂らす。

また当然のように、二人とも下着は履いていない。


 さらにメイドの片方は女性器でなく、睾丸らしきものを携えている。

怪訝に思っていれば「彼」は、ミニスカートをたくし上げたままこちらへ向き直り、すると哀れな格好となった男性器が見えた。

ソレには硬貨みたいな形状の金属がつけられ、股間から目立たないほどしか出っ張らない形に押し込められている。

最早棒状だった頃の面影など無く、あれでは自慰や勃起どころか、女性器へ挿入することさえできない。

むしろ平らな股間の姿は、その女性器すらも連想させる。


 並び立つ禍々しいチンポと、ソレを入れるためなのだろう穴、逆転し倒錯した性にたじろぐ。

加えて見ているだけで恥ずかしくなるぐらい卑猥な姿だというにも関わらず、これまで一切の恥じらいを感じさせなかったメイドたちにも。

今まで星華の趣味で無理矢理着させられているのかと思っていたが、もしかすると「彼女たち」は自ら進んでしているのかもしれないと考えが浮かぶ。


「ちなみにどれぐらい従順かって言うと……そうだな、私の事業とかは全部この子たちが運営してるんだ。しかも、ほぼ無給でね♡♡♡」


「なっ……」


「もちろんご飯とか生活に必要なものはあげてるけど、それ以外にお金を渡したことは無いね♡♡♡」


 彼女は続けて、現代では聞かないような奴隷同然の扱いを高らかに告げる。

あまりに驕り高ぶった物言いは、これを録音し、自ら破滅へ向かわせているという優越があっても不快なほどだ。


「でもその代わりに、日頃からいっぱい抱いてあげてるんだ♡♡♡このチンポで、気絶しちゃうぐらい……♡♡♡だから不満そうにしてる子なんていないんだよ♡♡♡ねぇ?♡♡♡」


「んっ♡♡♡はいっ……♡♡♡あっ♡♡♡」


 しかし実際、この場ではそれがまかり通っているらしい。

問いかけられた女性は腰を痙攣させ、甘ったるい吐息を出しながら深く首肯する。

同時に尻穴へ挿入されたモノも頷くみたく動いた。


 一体どれほどの行為がなされれば、あんな人間へ付き従うようになるのだろうか。

少しずつ、銀沢星華に対する恐怖が芽生え始める。

もしかすると自分は、相当強大な人物を相手にしているのかもしれない、と。


「ちなみにここはそうやってえっちするための場所でさ♡♡♡あと……♡♡♡」


 瞬間背中に嫌な汗が伝う。

今までただ性格の歪んだ成金だと考えていた人物が、大口を開け、狙った獲物、有馬宗介を食らわんとしている怪物に見えた。


「ぐひひっ♡♡♡君をこの子たちみたいに調教する場所でもあるんだ♡♡♡だから、もう逃げられないよ♡♡♡助けも呼べないし、ね♡♡♡」


「っ……」


 そうして、勝ち誇るように告げられた言葉で咄嗟にポケットから携帯を取り出せば、言葉通り圏外になっている。

これではせっかく用意した「弱み」を誰かへ託すことも、それどころかこの危機から脱することもできない。

さらに背後を振り返ると、降りてきたエレベーターは既に上階へと移動しており、周辺には呼び出すためのボタンも無かった。


「それと、私に乱暴しようなんて思わないでね?♡♡♡そんなことしたらメイドさんたちが怒って、何するか分からないよ~♡♡♡」


「ひっ……」


 加えて視界の端に居る背が高いメイドは、鋭く冷たい目つきで殺気らしきものを送ってくる。

すると動物的な本能が、人生で味わったことの無い生命の危機を感知し、全身を竦ませた。


 よくよく考えてみれば、ここまでの自分の行動など容易く予測できただろう。

それも、少なく見積もっても何十人と陥れてきた星華なら。

両親を半ば人質にとられ、冷静さを欠いていたとはいえ、気づけなかった己の浅はかさを後悔する。


「ってことで、もう君は私のものになるしかないって分かったかな?♡♡♡ぐふっ♡♡♡」


「……はい」


 正面へと向き直れば、先ほどよりもずっと下卑た笑みを深めている「オス」が立っていた。

吊り上がりきった口角、ヘドロのような劣情が湧き出る目は、欲望を隠すことなくあけすけにしている。

相変わらず不愉快だが、そうしてけだものだと軽んじた結果八方ふさがりの状況まで追い込まれたことは事実であり、あまり直視できない。


 彼女はそんな宗介のことなどつゆ知らず、気分の高揚を表すみたく左右に並ぶ尻を揉みしだく。

広い地下室には、堪能されるメスたちの嬌声がやけに響いていた。


 そして目に入れたくも無いが、やけに存在感がある黒チンポは跳ねながら半透明の我慢汁を迸らせ、美しい白い床を相当に穢す。

このままアレに、成すすべなく犯されてしまうのだろうか。


「でも大丈夫、明日になったらちゃんと家に帰してあげるからね♡♡♡」


「えっ」


「私はちゃんと約束を守る質なんだ♡♡♡もし私を告発したいのなら、その時にすればいいよ♡♡♡もちろんスマホだって持って帰って良いし♡♡♡」


 だが、決して希望が無いわけではないらしかった。

本当に星華の言葉通りであれば、これから始まるのだろう調教をただ耐え抜けばいいのだ。


「まぁでも明日ここから出る時、きっと宗介くんは私の事がだ~いすきなスケベでえっろいメスになってるだろうけど♡♡♡おうち帰りたくないよ~って媚びちゃう、ね♡♡♡」


「そんな、こと……」


 しかしやるべきことが単純になったとはいえ、それが簡単であるかは別の話だろう。

何せ視線の先に居るオスはこれまで、自分と同じように嫌がる男女を幾度も手籠めにしているのだ。

二日という時間制限だって、勝算があっての事だと考えられる。


 セクハラじみた言動に嫌悪感を覚え背筋へと怖気が走るものの、そうした彼女という怪物への恐れは、これまでのような勢いがある反論を許さなかった。


「あれ、もしかしてもう期待しちゃってるかな?♡♡♡それとも、この子たちが羨ましくなってきちゃったとか♡♡♡」


「っ!違います……!」


「ぐふふ♡♡♡ほんとかな~♡♡♡さっきだって私のチンポじろじろ見てたくせに♡♡♡」


「それは驚いたからっ……!」


 すると来る都合の良すぎる曲解で、精神が乱され思わず声を荒げてしまう。

言っている事、不愉快な笑い方、へらへらとした口調。

その全てが癇に障り、心を掻き乱してくる。

これから心を平静に保ち、断固として責めをいなし続けなければならないというのに。


 途中で我に返るが、全身には血が巡りやたら熱くなっていた。

きっとこれも、人を捻じ曲げ、我が物とするための策なのだ。

宗介は一筋縄ではいかない相手に、より一層の注意を固めた。




 そうして彼は全裸に剥かれ、逃げることも許されないまま、星華との性行為へ至ったのだった。







「ぐひひっ♡♡♡私の指、気持ちいいでしょ?♡♡♡」


「そんなこと、無いです……」


「その割には身体、さっきからぴくぴく動いてるけどな~♡♡♡」


「それは嫌だから、ですっ……」


「ふぅ~ん……♡♡♡」


 ベッドの上で座らされ、本来なら触れられたくもない相手に後ろから密着され、そして胸や真っすぐ伸ばした脚へと指を這わされている。

動きは当たるか当たらないかの位置から掠めるようで、するとくすぐったいような心地になった。


 そうした愛撫を先ほどからしばらく続ける星華は、尻に何か敷いているのか同じ高さから、耳に息がかかるほどの距離で喋ってくる。

加えて肩甲骨辺りには柔らかく巨大で、さらに滑らかさも存分に携えた胸と、硬く屹立した乳首が、背中の中央へはそれ以上に勃起したひどく硬いチンポがべったりくっ付いていた。

背筋は既に大量の我慢汁で穢されており、時折纏まった雫が滴り舐めていくのは不快の一言だ。


 しかし漂う甘い女の香りのせいなのか、それとも地下室に充満し、この壁も床も真っ赤な一角へ入り込んだ途端濃密になった臭気のせいなのか、身体は少しずつ火照ってきていた。

厭らしい言動から来る苛立ちも相まって感覚が鋭敏になり、指先による引っ掻きから痒さとは違うモノを覚え始める。

実際のところ、彼女の手によって全身が反応してしまっているのは事実だ。

快楽からでは、恐らく無いはずだが。


「強がってるの、かわいいよ……♡♡♡」


「ひっ……」


 すると来た怖気だつほどの下卑た囁きで、肉体の芯が緊張する。

力が入った全身は、微細な刺激すら見逃さないかのようだ。


「でも、嘘は良くないな~♡♡♡」


「んぁっ♡……えっ」


「ぐふふっ♡♡♡宗介くんのえろ~い喘ぎ声、聞いちゃった♡♡♡」


 そこへ襲った左乳頭の先端、平らになっている部分への素早い一擦りで、思わず喉から声が飛び出した。

発された音色は明らかに気持ちいい時のものであり、自分でも驚いてしまう。

確かに、心の底から嫌なはずなのに、と。


「どうして気持ちいいか、不思議かな?♡♡♡」


「っ……気持ちよくなってなんか、いません……」


「だから嘘ついちゃだめだってば♡♡♡」


「ふあっ……♡」


 だが、再び同じように触れられれば、その事実は認めざるを得なかった。

普段自慰する際とは異なったじんわり広がるような感覚であるが、愛撫によって味わわされたのは紛れもなく肉の悦びだ。


 とはいえこれまで弄ったことの無い乳首で、少しとはいえ喘いでしまうのは明らかにおかしい。

もしかしたら何か、星華の手つき以外に原因があるのかもしれないと考えつく。


「ぐひっ♡♡♡どうして宗介くんが気持ちよくなっちゃうかって言うとね♡♡♡」


「……」


「昨日ここで、私が君の事を想いながら何回も何回もオナニーしてぇ……♡♡♡」


「なっ……!」


「精子の匂い、た~っぷりつけちゃったからなんだよねぇ……♡♡♡」


「ひっ……」


 そんな疑問へ答えるように、耳元で、やたらねっちょりとへばりつくような囁きがなされた。

自分をそこまで性的に見て、自慰のオカズとした彼女が気色悪くて、全身へ一気に鳥肌が立っていく。

冗談であってくれと願うが、しかし周囲に漂う、濃密すぎてそれと気づけなかった精液の匂いが、決して嘘ではない事を証明してくる。

この周辺には実際、大量の種付け汁がぶちまけられていたのだ。

地下室中にすら、その臭気が漂ってしまうほどに。


「で、実は私の体液って君たち男の子と女の子には媚薬みたいなものでさ♡♡♡匂いを嗅ぐだけでもえっちな気分になっちゃうんだ♡♡♡例えば今の宗介くんみたいに、ね……♡♡♡」


「ふうっ♡」


「さっきからムラムラして止まらないでしょ?♡♡♡まぁ、君が元々えっちなだけかもしれないけどねぇ……♡♡♡嫌な相手にカラダ触られて、気持ちよくなっちゃうぐらい……♡♡♡」


「そんなことっ、ありません……んっ♡」


「ぐひひっ♡♡♡そうかな~?♡♡♡」


 そしてその行為の意味、その効果を、身をもって体験させられる。

実際、嗅げば嗅ぐほど身体の芯が熱くなってきていた。

さらに、反論の度される乳頭責めによる感覚も、少しずつではあるが確かかつ強いものへと変化していく。

今や反応は声だけでなく、指先や足先が跳ねるなど多少分かりやすいものも出た。


 本来そうした「弱み」は隠さなければいけないのに、まるで自分の身体が自分の物ではないかのようだ。

全く言う事を聞いてくれない。


「これまで何人も宗介くんみたいな嫌がる相手を調教してきたから分かるけど、君みたいな子ほど気持ちよくなっちゃってるんだよね~♡♡♡」


「ちがぅっ♡」


 こうしてペースを握られるなどあってはならないと、頭では確かに理解している。

しかし星華の挑発と責め手のタイミングはあまりに巧みであり、自然と心が掻き乱され、抗う意志を潰されてしまう。


「ふぅ~ん?♡♡♡じゃあ、おちんちん『勃起』、なんかしちゃダメだよ?♡♡♡」


「っ……」


 そうして徐々に弱っていく宗介を、彼女は見逃さない。


 言葉によって、意識は自らの男性器へと誘導される。

勃起すればそれはつまり、嫌悪感を抱く相手からの愛撫によって、快楽を感じている証拠であると、情けない事だと摺り込まれていく。

男性である以上、生理反応故仕方ない部分もあるというのに。


「ほら、宗介くんの人よりビンカンなとこ触られたってダメ……♡♡♡『勃起』、我慢だよ~♡♡♡」


「ひあぁっ……♡」


 しかし彼は今まで己が知らなかった弱い場所、内ももをこの短時間で見つけられたという事実で、冷静さを取り戻すことなどできなかった。

手つきは言動の下品さに反して、品の良さすら覚えるほど丁寧だ。

相変わらず当たるか当たらないかの位置で、決して強く触れずもどかしいくすぐったさだけを与えてくる。

同時に、開発されつつある胸の突起もギリギリで引っ掻き、気持ちよさを繋げるのも忘れてくれない。


 一見優しくも苛烈な責めに、脳のリソースは感じてはいけないという思いと、股間への集中だけに割かれていく。

とはいえそんな風に考えてしまえば、血が優先的に巡っていくのは必然だった。

意に反して、背中に当たるモノよりもずっと弱弱しいペニスが鎌首をもたげ始める。


「あれぇ?段々おっきくなってないかなぁ?♡♡♡ねぇ♡♡♡ちゃんと私なんかに触られても『勃起』、しないってとこ、見せてほしいな♡♡♡」


「っ……♡はぁっ……♡」


「ほらほら、耐えて耐えて♡♡♡『勃起』したら恥ずかしい……♡♡♡『勃起』したらカッコ悪い……♡♡♡」


 一度そうなってしまえば、後は張り詰めていく際の快感で我慢することなど不可能に近かった。

加えて幾度も同じ語句を強調して言われると、頭の中にこびりついてしまう。

ガチガチに硬くなりきった、肥大化後の性器が。


「あぁっ……」


「あ~あ♡♡♡私に触られて、しかも直接触られてもいないのに勃起しちゃったね?♡♡♡」


 するとやがて、その様子を再現するみたく彼のモノは完全に勃起した。

さらにより膨らまんとばかりに、縦に痙攣して脈打っている。

背中に押し付けられている「チンポ」とは、比べるまでもない大きさ、硬度ではあったが。


 その瞬間、深い羞恥心と落胆が押し寄せた。

女であれば誰でもいいのか、しかもあんなに敵意を抱いていた相手だぞ、と自らを責めたてる言葉がいくつも浮かぶ。

有馬宗介とはそこまで節操のない人間だったのだろうかと、自己嫌悪に陥る。


「ぐひひっ♡♡♡まぁでも男の子なら触られて勃起するぐらい普通の事だよね~♡♡♡私だって、宗介くんの事考えただけでチンポフル勃起するし♡♡♡」


「なっ……」


「それに、今まで調教してきた子たちだって、私が上手いのもあるけどすぐ勃ってたしね♡♡♡なのに精いっぱい我慢してた宗介くん、可愛かったよ……♡♡♡」


「っ!」


 だが、続く星華の声でそれは仕方のないことだとようやく気づかされた。

普段何も無くても張り詰めてしまうほどなのだから、触れられたりすれば猶更なのだ。


 そうしてペニスの反応は正常だったのだと理解するが、同時に、自分は彼女の掌の上でまんまと踊らされた事に気づく。

先ほどの深い感情すら、恣意的に味わわされたものにすぎないということも。


 それは、強い屈辱だった。

存在を、尊厳を軽んじられ、踏みにじられたのだ。

ただ踊らされる姿を愉しむためだけに。

ろくに面識のないどころか、嫌いな相手から程度の低いドッキリを仕掛けられたような怒りがこみ上げてくる。


「貴女は……!」


「……♡♡♡そんな怒んないでよ♡♡♡これからもっと気持ちよくしてあげるからさ♡♡♡ほら、四つん這いになって?♡♡♡」


「……はい」


 しかし宗介は、冷静さを保てなかった過ちが繰り返されないよう、その気持ちを心の中に収めて反抗心をより燃やした。

確かに苛立ちはあるが、思いを胸に二日間耐えればいいだけだ。

これまでのようにいくら身体が反応しようとも、心まで奪われなければいい。

そうすれば、いくらでもこの「成金」へ意趣返しをすることができる。


 彼は、再度強く決意を固めて言われた通り四つん這いになった。







「ふぅっ♡♡あっ♡♡はぁっ♡♡」


「ぐふふっ♡♡♡さっきからず~っとメス声漏れちゃってるね?♡♡♡そんなにお尻の穴弄られるの気持ちいいのかな~?♡♡♡」


 約十分後、そこには先ほどより上擦った声を断続的に漏らす、四つん這いになった宗介の情けない姿があった。

彼は今、真左に座る星華から、アナルへゴム手袋をつけローションで粘々になった中指を挿入されている。


 これまで通り彼女の手つきは正確無比であり、数秒に一度のペースで前立腺を優しく、だが的確に圧迫していく。

その丁寧さに、最初こそきつく締まり異物の侵入を拒んでいた処女穴はすっかり解れきった。

先ほどから小さく鳴りだした水音は、開通による悦びを表すかのようだ。

また初めてのことだというのに疲労は一切無く、あるのは純粋な気持ちよさだけ。


「これじゃあもう、お尻の穴じゃなくておまんこだね♡♡♡排泄するためじゃなくて、チンポ入れられて気持ちよくなるためのえっちな穴……♡♡♡」


「そんなっ♡♡ことっ……♡♡んぅっ♡♡」


「今まで何回か弄ったことあるのかな?♡♡♡あ、私のためにこの一週間、ずっと開発しててくれたとか♡♡♡もしかしてぇ……♡♡♡この前会った時一目惚れさせちゃったかな?♡♡♡」


「ちがいますっ♡♡ぁひっ……♡♡」


 ここまで容易く喘がされている事に自分ですら驚いているというのに、下卑た声は身勝手な言い分を押し付けてくる。

本当に尻を弄ったことなど無いのだ。

だというのにもたらされる感覚は強い。


 指が動くたび、先ほど皮膚を愛撫された時の数倍に達しようかという快楽が下腹部から全身へ広がっていく。

しかも普段ペニスで自慰をする時とは違い甘さがやたら激しくて、嫌であるはずがある種の幸せや感動すら覚えた。

このままこれが高まっていけば、あるいは心まで支配されてしまうのではないかというほどに。


「だってそうじゃなきゃ、こんなに感じやすいわけないよね?♡♡♡私が今まで調教してきた処女の子だって、こんなすぐすけべ声出さなかったし……♡♡♡」


「それはっ♡♡匂いを嗅がされてるからでっ♡♡んんんっ♡♡」


「あ~♡♡♡ごめんね宗介くん♡♡♡新しい子を調教する時、前日にたっぷりオナニーするのはいつものことなんだ♡♡♡だからそれは理由にならないんだよ♡♡♡」


「そんなのっ……♡♡うそですっ……♡♡」


「ぐひひっ♡♡♡どうだろうねぇ?♡♡♡」


 さらに、いちいち聞こえてくる厭らしい嘲りも厄介だ。

もちろん星華が話すことなど十中八九嘘に決まっているのだが、僅かに残る可能性は自尊心を蝕んでくる。

自分は、親を苦しめる相手であっても欲情する浅ましい性格なのではと。

また、そうした嘘の正誤を判断する余裕など、今の宗介は持ち合わせていない。

下半身から来る、本来入口でない場所へ物が挿入される圧迫感と、身体を脱力させる屈辱的な気持ちよさでいっぱいいっぱいだった。


「それじゃ、もっと気持ちよくしてあげるね♡♡♡」


「あっ♡♡くぅっ♡♡」


 そんな宗介をより責めたてる、胸元へと這い寄る白い手。

左乳輪の外周を人差し指先端でこそばゆくなぞり、全身をぞわつかせてくる。

中心にある突起がやたら疼き、硬くしこっていく淫猥な愛撫だ。

しかも身体の上下二か所から与えられるものは丹田辺りで結びつき、より濃密になって末端までを覆い尽くしていく。


「チンポの匂い嗅ぎながら触られるの、たまらないでしょ♡♡♡そうだ♡♡♡この後たっぷりチン嗅ぎもさせてあげるからね♡♡♡私のチンポ臭、好きだろうし♡♡♡」


「っ♡♡好きっ♡♡なんかじゃっ♡♡んはぁっ♡♡」


「ん?♡♡♡好きって言った?♡♡♡ふ~♡♡♡そうだよねぇ♡♡♡この匂い嗅いでるとどんどんえっちな気分になっちゃうもんねぇ♡♡♡」


「なっ♡♡ちがっ……♡♡」


 こうしてただでさえ少しずつ確実に追いつめられていっているのに、加えて媚薬らしい性臭まであるのだ。

それも「彼女」の相当昂りやすい興奮に呼応し、どんどんと強くなっていくものが。


 周囲に充満する青臭さは最早劇物と言っていい。

鼻腔が認識すると同時に視界は揺れ、思考が纏まらなくなっていく。

代わりに頭の中を支配するのは、激しい劣情だった。


「ぐひっ♡♡♡じゃあ身体にもたっぷりつけてあげよっか♡♡♡」


「ふあぁっ……♡♡」


 するとそうした欲望へ応じるみたく、星華は脇腹へ亀頭らしき弾力のあるモノを擦り付けてきた。

うっすらとついた脂肪に握り拳大の巨大な、我慢汁によってひどくヌメついた熱い物体が食い込む。

上下左右に蠢かせ念入りに摺り込まれると、くすぐられている時と同じむず痒さを感じる。

おまけにやたら滑りが良く、粘膜なのもあってか舌で舐められているような気分になった。

少し響くぬちぬちという水音も相まってなおさらだ。


「おへその中にも塗りたくってあげようね♡♡♡」


「っ♡♡やめっ……♡♡♡」


「ん~♡♡♡宗介くんのへそ穴、気持ちいいよ~♡♡♡」


 そのままチンポは器用にへそへと移動し、持ち主の宣言通り狭い穴を念入りにねちっこくほじっていく。

しかも平たかった肌より引っ掛かりや当たる面積が増えて気持ちいいのか、長く執拗に行われる。

となれば当然迸る粘液の量、そして勢いも増加し、肉棒では太すぎて入れない奥地までオスの証が穢していった。


 汁はやけに暖かく、また経皮でも少なからず催淫効果があるのか、腹部が次第に疼く。

そんなじくじくとした不快な心地は、否が応でも皮膚を刺激へ敏感にした。


「あっ……♡♡♡はふっ♡♡んぃっ……♡♡♡」


「また声甘くなってきたね♡♡♡それに身体も、さっきよりぴくぴく動くようになってきた♡♡♡」


「ふぅっ……♡♡♡そんなことはっ……♡♡んんんっ……♡♡♡」


「否定したって駄目だよ~♡♡♡だって私はずっと宗介くんのこと見てるんだから♡♡♡乳輪弄られて逃げようとするお胸も、前立腺弄られてくねくね誘惑してくるお尻もね♡♡♡」


 段々と、そうやって責め続けられる全身は気怠くも浮き上がるような甘ったるさに満たされてきている。

さらに上から聞こえる言葉は嘘でも何でもなく、少し前から身体が痙攣し言う事を聞かなくなる瞬間は相当多い。

そこへ視線も意識させられると、脳裏には彼女の鋭くも薄暗い、性欲に満ち満ちた釣り目がありありと蘇る。

実際目の当たりにしたわけではないが、想像すると羞恥心で激しい熱が湧き上がった。


「あぁぁっ……♡♡♡やめっ♡♡」


「あと、あん♡♡♡あんっ♡♡♡って女の子みたいに高くて可愛い喘ぎ声もちゃんと聞いてるからね♡♡♡」


「っ♡♡……んひっ♡♡♡」


「駄目だよ我慢なんかしちゃ♡♡♡せっかく気持ちよくなってるんだから、いっぱい声出さなきゃ♡♡♡私のメスとして、ね……♡♡♡」


 加えて、追い打ちをかけるように発された喘ぎの真似はより恥ずかしい。

悔しくてどうにか声を抑えようとするものの、これまで焦らされ続けていた乳首が爪先で弾かれれば容易く喘がされる。

触ってもらう事を期待して張り詰め、肥大化して存在をいじらしく主張していたそこは、望みが叶えられるとまた一段肉体が沈み込む深い快楽をもたらした。

だが貪欲なことに一度だけでは飽き足らず、次を求めて再び耐えがたい疼きを生んだ。

反射的に上体を艶めかしく捩ってしまう。


「ぐひひっ♡♡♡まぁでも無理強いはしないよ♡♡♡急に喘ぎ声出せって言われても恥ずかしいもんね♡♡♡」


「あっ……♡♡♡」


 ただそんな宗介の思いを知ってか知らずか、星華の指は突起へ決して当たらないよう乳輪を沿うようになぞり始める。

ごく近い場所への愛撫は、あわよくば触れてくれないかという浅ましい欲望を掻き立てた。


 ただ下品な笑い声、続く半笑いの言葉からして、彼女の行動は確実に故意だ。

であれば触れて欲しいなど思うだけ無駄であり、自らを追い詰める考えに過ぎない。

だというのに、頭の中で乳首を虐められる想像は消えてくれなかった。


 そう考えてしまうほど、今や肉体の昂りは凄まじい。

徐々に、濃密な何かが近づいてくるのを感じ取れた。


「だから、とりあえず一回メスイキさせて、私のメスになるのがどれくらい気持ちいい事なのか教えてあげるよ♡♡♡」


「ひっ……♡♡♡ふあぁっ……♡♡♡」


 そうした彼へ、この先、絶頂を期待させてくる嗜虐的な低い声。

瞬間前立腺を圧迫する指はもう少しだけ力が入り、限界へ向けてスパートをかけられていく。

これまでが甘やかしであったなら、今度は快楽を与え啼かせるための責めだ。

潰される度、自然に腰が痙攣し、逃げようともしてしまう。

とはいえ弱点は執拗につけ回されて愛撫され続け、できることといえばとにかく喘がされることだけ。


「段々気持ちいいの全身に回ってきたでしょ?♡♡♡口で呼吸しながらそれに集中しててね♡♡♡」


「ふぅっ……♡♡♡いやですっ……♡♡んはぁっ……♡♡♡」


「ふぅ~ん?♡♡♡まぁそれでもイかせちゃうけどね♡♡♡宗介くんがどれだけ抗っても私には勝てないって事、たっぷり教えてあげるよ♡♡♡」


「ぅあっ……♡♡♡」


 せめてもの抵抗として言われた事に反して鼻呼吸をするものの、襲い掛かる気持ちよさはそれほど減ってくれない。

するとどう抗っても勝てない事をより深く分からせられるようで、ひどく屈辱的だった。

加えて心の奥底では、星華の手練手管に打ち克つことなど不可能なのではないか、という弱気な思いが生まれてしまう。

恐らく彼女の目論見通り、彼女のメスとなるための芽が根付く。


「私のチンポもちゃんと感じてね♡♡♡あと、これがお尻に入っちゃうことも想像しよっか♡♡♡」


「っ……♡♡♡」


 言葉の意味と共に脳内で再生されようとする映像を、頭を振って外へと追い出す。

ただ同時にへそへ当たっていた亀頭がまた動き、先走りで粘々の穴を蹂躙していく。

たっぷりと媚薬汁を吸わされたそこは、濡れそぼった粘膜の存在をいやにはっきり伝えてくる。


「お腹の内側、ぎゅうぎゅうに満たされて、挿入するだけで前立腺潰されて……♡♡♡」


「うぅっ……♡♡♡」


「そのままぱんっ♡♡♡ぱんっ♡♡♡って腰打ち付けられて……♡♡♡そしたらこれまで他の子たちがそうだったように、宗介くんもすぐチンポ狂いになっちゃうかもね?♡♡♡」


「んぁぁっ……♡♡♡」


 そして倒錯した行為の様子を描写されると、否応なく光景は想起された。

しかも、味わわされている硬く勃起した熱いチンポの感触をあてはめながら。

後背位で無遠慮に犯される自分はまるで物であり、一切人間らしさが無い。

そのため羨ましいなどとは全く思わないはずだが、何故だか興奮は覚えてしまう。


「ねぇ宗介くん♡♡♡そろそろイきそうになってきたでしょ?♡♡♡」


「そんなことはっ……♡♡くぁぁっ……♡♡♡」


「嘘ついても駄目だよ♡♡♡お尻の穴……ううん。おまんこがさっきから私の指ぎゅうぎゅう咥えこんでるからね♡♡♡あと、えっちな音も大きくなってるでしょ?♡♡♡」


「なっ……♡♡」


 問いかけ通り、未知のモノが近づいてきてるのは事実だった。

全身は幸せな快楽で満ち、このまま行けば膨らみきったそれが爆発を起こすことも自然と理解できる。

射精直前の切なくも抑えきれない性衝動と似た感覚だ。

とはいえ気持ちよさのレベルは違うが。


 また尻穴が狭まっているらしく、水音が煩くなってきているのも事実だった。

排泄用の場所から出ているとは思えないほど、あるいは本当に女性器へと変わってしまったのではと考えるほど、発される響きはいやらしい。


「ちがっ……♡♡♡」


「じゃあこ・こ♡♡♡」


「んひゃぁっ……♡♡♡」


 反論しようとすると、乳首の先端が指先でノックされる。


「もまた弄ってあげるから、このまま気持ちよくメスイキ、しちゃおうね♡♡♡」


「はぁぁっ……♡♡♡だめっ……♡♡♡」


 続けて、爪は立てず素早く何度も引っ掻かれていく。

これまで存分に高め性感帯となった部位を虐め抜く、容赦のない手つきだ。

刺激へ従順になるよう、最早持ち主よりも先に調教されているような突起は、膨大な悦びを生む。

身体の一部に裏切られては、絶頂を耐えることなどできそうもなかった。


「ぐひひっ♡♡♡宗介くんの乳首、ぷっくり膨らんでてすごくえっちだねぇ♡♡♡しかも相当敏感みたいだし♡♡♡弄ってて愉しいよ♡♡♡」


「あぁぁっ……♡♡♡ちがいますっ……♡♡♡」


「私のメスになったらもっとおっきく敏感にして……♡♡♡服に擦れただけで勃起して、メイド服の上からでも分かっちゃうエロ乳首にしちゃおうねぇ♡♡♡」


「っ……♡♡♡んぁぁっ♡♡♡」


 さらに下品な妄想が告げられると意識は集中し、愛撫による法悦はより一層増す。


 強くも疲れは感じないよう延々と圧迫され続けている前立腺、チンポによって犯され体液で穢されているへそ穴、焦らし続けられ敵の手に堕ちてしまった肉芯。

それら全てから生まれる甘みは、宗介の抵抗を嘲笑うようだった。


「それじゃあ……♡♡♡」


「ひあぁっ♡♡♡これっ♡♡♡なにかっ……♡♡♡」


 背筋が震え、思考力は著しく低下し、嫌だという感情さえも襲い来るものに塗りつぶされていく。


「ほら、宗介くん♡♡♡イきなさい♡♡♡」


「ぁっ♡♡♡――♡♡♡♡」


 そして最後に少しだけ強く三か所を弄られ、命令された瞬間、彼の世界は純白で幸福溢れる場所へと落ちていった。

あらゆることが全く自由にならない状態で、今まで生きてきて味わったことが無いほど激しい性的快楽を無理矢理堪能させられる。

だが、一切の不快感が無い。

むしろ嬉しいと心の底から思ってしまうほどだ。

顔すら見たくない相手にもたらされているというのに。


 そこまでメスアクメとは、ふたなりチンポの匂いを嗅いだ肉体での絶頂とは凄まじかった。

価値観すら書き換えてしまいそうな麻薬じみた心地に、全てを忘れ酔い痴れる。

銀沢星華の爪痕が、有馬宗介という存在に深く刻み付けられていく。







「はぁ……♡♡はぁ……♡♡」


「それじゃ宗介くん♡♡♡メスイキの余韻に浸ってるとこ悪いんだけど、そろそろ二回戦始めよっか♡♡♡」


「っ、浸ってなんかいません……」


 数分後、どこかで手を洗い戻ってきた星華は、宗介が仰向けで寝転がるベッドの横に立ち言う。

依然として露わになったままのチンポは勃起を維持しており、その姿は禍々しいの一言だった。

黒い砲身がおびただしい量の我慢汁を纏っててらつき、または滴らせ、ヌメつく海棲生物を誇張したかのようだ。

しかも表面にはいくつかの血管が浮き出して、脈打ちながら怒張を維持するための血液を全体へと送っている。


 さらににやついた顔から注がれる、暗い釣り目からの下品な視線は相変わらずで、全身を舐り回していく。

彼女が支配するメイドたちのように、この目つきや厭らしさで興奮するようになるとは想像すらできないほど不愉快だ。


 とはいえ、全身が激しい快楽の余韻で未だ気怠いのは紛れもない事実だった。

咄嗟に反論するものの、自分を見透かされている事に軽く気圧されてしまう。

抵抗むなしく一度イかされたことで、少し弱気になってしまっている。


「……ぐひひっ♡♡♡じゃあ次はベッドの端に軽く座ってくれるかな?♡♡♡」


「……分かりました」


「それでそのまま寝そべってちょっと腰上げて……そう、言う事聞けて偉いよ~宗介くん♡♡♡」


 それすらも分かっているような笑いに顔をしかめながらも、言われたことに従った。

両脚の付け根から下だけが、ベッドの外へ投げ出されるような恰好になる。

また、尻穴を差し出すようでもあった。


「それじゃ、お願いね春乃ちゃん♡♡♡」


「はい、星華様」


 これから何をされるのかと思っていれば、主から指示を出され、低い声で静かに応え宗介の脚の間へと座るメイド。

彼女は少し体温の感じられる手を内腿に添え開かせてくると、そのまま股座の中央を見据えた。

そして別のメイドが、その隣へ様々な太さの棒が乗ったカートを押してくる。

金属製の棚の上には、男性器を模したディルドや、先端が丸っこい物など様々な太さの棒とローションが並べられていた。


 きっとアレのいずれかで、今から尻を貫かれるのだろうと理解する。

だがそれにしてはこのままだとおよそ入らないであろう、「ふたなりチンポ」に引けを取らない太さのモノまであった。


「さてと♡♡♡」


「わっ……」


 怪訝に思っているとその持ち主たる星華が向かい合うように、宗介の鳩尾あたりを跨ぎ膝立ちになってくる。

股間のあたりで行われる光景は見えなくなり、代わりにだらしないカラダが嫌でも目に入った。


 波打つように豊かなラインの表面は汗でやや艶めき、憎たらしいが先ほどよりも色気を増している。

また、普段は見えない爆乳の底面がはっきり見えた。

多少垂れつつもふっくらとした丸みを帯び、頂点に桜色の清楚な突起を備えた姿はただただいやらしい。

一人のオスとして本能には逆らえず、不覚にも軽くペニスが反応した。


「次は宗介くんに、私の、ご主人様になる人間のチンポを覚えてもらおうと思うんだ♡♡♡匂いも、カタチもね♡♡♡」


「なっ……」


 気づかれたくないと思っていたが、それはなんとか杞憂に終わる。

ただ、新しく告げられたことには少し驚いた。

なぜならば、もっと直接的に責められると思っていたためだ。


「よい、しょっ♡♡♡」


「わっ……♡♡♡」


 しかし、彼女が四つん這いになった瞬間、浅い考えだったとすぐに気づく。

目前へと突きつけられた亀頭の裏側は、周囲に充満しているものよりも想像以上にひどい性臭を放っていた。

全体を濡らすほど分泌されている先走りは、乾かずとも鼻を刺すようなオス臭い匂いを振り撒く。

またよほどそのもの自体の香りが強すぎるためか、あるいは金玉の中で煮え滾りすぎているせいか、未だ射精していないというのに磯臭い精液の香りまでした。


 普通の男性がさせているのであればただただ不快なだけだが、相手は体液が媚薬であるらしい星華だ。

間近で嗅がされると身体が強制的に発情させられ、心臓が鼓動を早める。


 おまけにヌメついて煌めく暗い紫色の粘膜は、宗介を妖しく誘惑した。

その巨大さか、やけにハリのある表面か、それともある種造形美すら感じさせる二つの山のせいかは分からないが、とにかく劣情が掻き立てられてしまう。


「っ……♡♡♡」


 危険に思い、顔を反らして目を閉じる。


「ぐひひっ♡♡♡……じゃあ春乃ちゃん、お尻責めてあげて♡♡♡」


「はい」


「っあ……♡♡」


 すると尻穴へ、徐々に太くなっていく異物が侵入してきた。

先ほどの指よりも冷たくて、少し驚く。

恐らくカートに乗っていた棒状の物体の一つだろう。


「宗介くん♡♡♡これから春乃ちゃんにはね、色んな道具を使って君のお尻の穴を拡げてもらうんだ♡♡♡一回イって解れてると思うけど、それだけじゃまだ私のチンポは入れられないからね♡♡♡」


「なっ……んっ♡♡」


 続けて告げられた、自分の身体を変化させようとしている事実に憤りを覚えるが、それに反して下半身から押し寄せる感覚は甘い。

肛門が押し広げられ息が詰まる心地はするものの、本来閉じた場所を無理矢理こじ開けられているというのに痛みも無かった。

自然と声を出してしまったのが何よりの証拠だ。

悔しくて、顔をベッドへ擦り付けんばかりに逸らす。


「ん~♡♡♡そうやって顔逸らされてたら私のチンポ覚えてもらえないなぁ♡♡♡……あ、そうだ♡♡♡百合ちゃん、こっちおいで♡♡♡」


「は~い♡♡♡なんですか、星華様♡♡♡」


 そうしていると、星華はにやけた声色でまた別のメイドを傍へと呼ぶ。

少し待つと、真横から朗らかで可愛らしく、だが相当に媚びた女性の声が聞こえてきた。

響きは甘く可憐で、「雇用主」とはあまり釣り合わないとすら考えてしまうほどだ。


「この子に、私のチンポの事を教えてあげて欲しいんだ♡♡♡いいかな?♡♡♡」


「もちろんです♡♡♡えっとぉ……♡♡♡」


 彼女はあまりにセクハラじみたお願いを快く了承する。

というかむしろ、いくらでもそうしたいと願ってさえいるようだった。


「星華様のおチンポはすっごく長くて、私の顔ぐらいあります♡♡♡それにすっごく太くて、指じゃ回りきりません♡♡♡だから手でさせて頂く時はいつも両手を使ってしこしこするんですよ♡♡♡」


「ぐひひっ♡♡♡」


「あ、あとおツユも多くて、扱いてるとすぐ手が粘々になっちゃいます♡♡♡それに匂いもたっぷりついちゃって……♡♡♡その後いっぱいオナニーして、何回もイっちゃうのは秘密です♡♡♡」


 通りの良い美声は容易く想像を掻き立ててくる。

黒々とした太長マラと、それに相対する美少女、その美少女の淫猥な痴態を。

脳裏で代わる代わる移り変わっていく映像は、一体自らが誰に感情移入して興奮しているのかを分からなくした。


「じゃあ、えっちの時はどうかな♡♡♡」


「えっちの時は、すごく幸せ~ってなっちゃいます♡♡♡おチンポ様がおまんこの中をぎゅうぎゅうに満たして、気持ちいいところ全部擦ってくれますから♡♡♡それでいつも私、何も考えられなくなるぐらいイっちゃいますよね♡♡♡すっごく下品な声出しながら……♡♡♡」


「ぐふふっ♡♡♡百合ちゃんのオホ声凄いんだよ?♡♡♡今からは想像つかないぐらい汚い声出すんだから♡♡♡」


「ふふっ♡♡♡も~♡♡♡星華様のえっち♡♡♡そういう声出させてるのは星華様じゃないですか♡♡♡」


 頭の中で、綺麗な肌が、整った顔立ちが、滑らかな身体つきが、だらしない肉体のふたなりとチンポに蹂躙され、幾度も痙攣し、力を無くし穢れていく。

膣穴、あるいは尻穴からおびただしい量の精液が逆流し、周囲を汚していく。

やがて百合と呼ばれた彼女から這い出てくる肉の棒は、様々な体液がこびりついていた。

メスを屈服させ、勝ち誇るように勃起を維持して、勲章を纏うその姿はひどくいやらしい。


 そんな光景に興奮は高まり、すると尻穴は緩んで順調に拡張され、快楽が増えていく。

また、荒くなった息が間近から香るオス臭をたっぷり吸ってしまう。


「っ……!」


 そして少女の顔が一瞬自分のものに見えた時、宗介は思わず目を開いた。


「なっ……♡♡」


 だが、そうして開いた視界へいつの間にか突きつけられている、想像よりもずっとリアルな星華のモノ。

なだらかな亀頭先端から中盤に反して、カリは反るように高く広がり、幹との間に女をハメ殺すための段差を作っている。

普段からよほど大量の淫水を吸っているのだろう。カリ裏は他よりも色が暗い。

前立腺などの弱い場所がソコで嬲られれば、けだものじみた嬌声が出るのも頷けた。

眺めていると、へそ下が甘く疼く。


「もっと見ていいよぉ♡♡♡」


「ふあ……♡♡」


 さらにチンポは、竿部分も見せつけるようにゆっくり上方へ動いた。

やや肉づきが良く脂肪の目立つ肢体な「持ち主」と違って、ソレはまるで隆々と筋肉が浮き出しているかのようだ。

尿道、側面、天面とそれぞれに歪な円柱が組み合わさったみたいで、とにかく力強い。

明らかに重たそうだが、決して自重に負けずそそり立っているのも相まってそう感じられる。


 きっと精力も相応に強烈で、留まることなど知らないのだろう。

おまけに、放出口も太くて一度の射精量が多そうだ。

改めて観察すれば、自らのペニスとの差異はいくらでも発見できた。


 本来であれば屈辱を覚えなければいけないはずだが、しかし尻穴の快楽がまた増加する。

身体も、より火照っていく。


「あっ……♡♡」


 するとやがて、星華が再び膝立ちになったらしく肉の柱は目前から離れていった。


「ぐひひっ♡♡♡もっと私のチンポ見たかったかな?♡♡♡」


「っ……♡♡違いますっ……」


 煽る言葉に反論する。

確かに釘付けにはなっていたが、見惚れていたわけではないはずだ。

ただ、驚いて見てしまっただけ。


「しょっ……」


 そう己を納得させていると、彼女は身体を180度その場で回転させた。

そのまま少し後退し、宗介の顔を跨ぐような体勢になる。


「んむっ……」


 すると、重たく垂れ下がった金玉が軽く唇へくっ付いた。

滑らかな袋の感触と、想像以上の重みが粘膜から伝わってくる。

加えて、活発な生産による蠢きと、ごぽごぽという音も。

正直なところ、不快極まりなかった。


「んっ……♡♡」


 だが同時に、玉裏側の濃く煮詰まった匂いが漂ってくると肉体が少し反応してしまう。

何せ蒸れたオス臭だけでなく、近くにある女性器からの甘酸っぱい臭気も混ざっていたからだ。

暗くて見えづらいが、愛液が滲んだ清楚な秘所からの香りはやたら惹きつけられる。

どうやら星華は、男女どちらのフェロモンも同じように強力らしかった。


「百合ちゃん、おいで♡♡♡」


「は~い♡♡♡」


 そんな中、先ほどまで傍らに居たメイドがベッドへ上がり、胸のあたりを跨いでくる。


「ぐひひっ♡♡♡ちゅっ♡♡♡」


「んむっ♡♡♡せいかひゃま♡♡♡んぅっ♡♡♡」


 そして、二人はキスをし始めたようだった。

しかも、舌を絡ませ合う卑猥なものを。

周囲には尻穴弄りとはまた別の粘っこい水音が鳴りだす。

さらに、可憐な声による早くも蕩けた喘ぎまで聞こえた。

他人同士の交わりだというにも関わらず、単純ないやらしさに否応なく本能は昂っていく。


「むふ~っ♡♡♡百合ちゃんのよだれうっま♡♡♡もっと飲ませてね♡♡♡」


「ひゃいっ♡♡♡わらひのっ♡♡♡んっ!♡♡♡んはぁ~っ……♡♡♡」


 節操のない事に、口付けは時を追うごとにどんどん熱烈となっているようだった。

オスがメスの唇から口腔粘膜までを貪り、唾液と共に啜り、飲み干すのが、見ずとも耳に届く響きだけで手に取るように分かる。

そこに容赦や躊躇いと言ったものは全く感じられない。

まるで物を相手にしているみたく無遠慮だ。


 だというのに、メスの側は一切不快そうでなかった。

むしろいちいち上擦った音を周囲に木霊させ、自らが味わっている悦びを曝け出す。

また肉体も震わせているのか、少しの揺れが伝わってくる。


「ふあっ……♡♡」


 そんな中宗介へは、先ほどよりも太い新たな異物が挿入されていた。

より強まった圧迫感がさらなる快楽を生み、じっくりと括約筋が拡張されていく。

しかし器具は相変わらず冷たく、加えて前立腺へも当たらないよう進んでいくため、絶頂へ至るほどではない。


 すると、キスだけで大きな嬌声を出す百合と呼ばれた少女の事が気になった。

どれほど経験を積まされれば、あそこまで気持ちよくなれるのだろうか。

健康的な性欲を持ち、先ほどメスイキを味わわされた彼は、そう思ってしまった。


「それじゃ、おっぱいも触っちゃうね♡♡♡んむっ♡♡♡」


「ひゃぁぁっ♡♡♡♡だめっ♡♡♡せいかしゃまっ♡♡♡♡おっぱいだめぇっ♡♡♡」


「ぐふふっ♡♡♡何が駄目なのかな~?♡♡♡そんなに身体びくびくさせて……♡♡♡んむっ♡♡♡今潮吹いたりしちゃ駄目だよ?♡♡♡宗介くんにかかっちゃうからね♡♡♡」


「そんなのっ♡♡♡♡あぁあっ♡♡♡♡」


 その矢先、彼女のより甘ったるい嬌声が地下室中に反響する。

どうやら胸も愛撫され始めたようで、ベッドの振動はまた強く激しくなった。

さらに滴った愛液が、胸元を濡らしてくる。

粘度の高い汁は、かなり温かい。


 同様に星華が分泌するオスの汁も、金玉を伝い顎裏や喉元まで垂れてくる。

温度はメス汁よりも高く、加えて粘っこさもそうで、まるで生物としての格の違いを見せつけているかのようだった。

となれば当然香りも濃密さを増しており、肉体が強制的に発情させられていく。


「あぁっ♡♡♡だめっ♡♡♡イくっ♡♡♡イきますっ……♡♡♡♡」


「……♡♡♡いいよぉ♡♡♡最後にキスしてあげるからたっぷりイきなさい♡♡♡んっ♡♡♡」


「っ♡♡♡んん゛っ♡♡♡♡――♡♡♡♡♡」


 そうしていると、百合は愛撫が始まってから一分も経っていないというのに容易く絶頂した。

しかも、主から言われたことに反して情けなく潮を、腰が痙攣しているのか宗介の上半身に広く撒き散らしながら。

周囲に、女の匂いが混ざる。

最初こそ多少抵抗するようだったものの、聞こえる声は先ほど話していた通り濁っており、イかされる悦びを深く深く堪能しているようだった。


「はーっ……♡♡♡はーっ……♡♡♡せいかさまぁ……♡♡♡すきぃ……♡♡♡」


「うん♡♡♡私も好きだよ♡♡♡」


「ふぅっ……♡♡♡ふぅっ……♡♡♡」


 痴態を聞かされ続けた結果、全身の火照りはかなりひどい。

だというのに相変わらず気持ちよさは足りず、どこかもどかしさを感じる。

正直なところ、あのメイドが羨ましく思った。

それが絶頂出来る事についてか、はたまた、短時間で簡単に絶頂させられてしまうこと、そう開発されたことについてかは定かではない。

ただ実際、同じようになりたくて肉体の節々が疼くのは確かだった。


「さてと、じゃあ私は宗介くんの事を調教するから退いてくれるかな?♡♡♡」


「はいっ……♡♡♡んふぅっ……♡♡♡もちろんです……♡♡♡」


 星華の、あれほど熱烈に交わったにも関わらず気遣いの無い言葉でも、百合は甘く答えすぐベッドから降りていく。


「それじゃ宗介くん♡♡♡そろそろイきたいでしょ?♡♡♡たっぷり待たせちゃった分、たっぷり気持ちよくしてあげるからねぇ♡♡♡」


「んむっ……ふーっ……」


「ぐひっ♡♡♡否定してもさっきから金玉に熱~い息かかってたから分かってるよ♡♡♡焦らしてごめんね?♡♡♡」


「っ♡♡」


 続いて図星を指され、首を振って否定するものの、既に行っていた事実を隠すことは出来なかった。


「春乃ちゃん♡♡♡次のやつ貸して?♡♡♡」


「はい」


「ねぇ宗介くん♡♡♡」


 すると、再び名前を呼ばれる。


「次はコレをお尻に入れようと思ってるんだけど、どうかな♡♡♡」


「っ♡♡♡」


 そして、目前へややゴム臭がする明るい肌色の、男性器を模した物体が差し出された。

しかも、差し出してきた当人のモノよりは恐らく多少小さいが、だとしても一般的なサイズよりもずっと大きい物体が。

造形はかなりこだわって作られており、カリ首の窪みから、その少し根元側でめくれあがった包皮が作る膨らみとシワ、血管で全体的にデコボコした表面など相当にリアルだった。

加えて硬さも申し分ないようで、全体は仄かにしなっている程度だ。

おまけにしっかりとカリも高い。


 正直なところ、本当にこんなモノが入ってしまうのかと考えるほどの太さだった。

5、6センチはあるだろう。

しかし実際に入ってしまったとすれば、あるいは星華のを挿入することも不可能でないと分かる。

形状も少なからず似ているのだから猶更だ。


「ぐふふっ♡♡♡すごいでしょ♡♡♡コレでイっちゃったら、いよいよ男の子じゃなくて、おまんこにチンポ入れられてイったメス……♡♡♡になっちゃうよ♡♡♡」


「んぅっ……」


「じゃあ春乃ちゃん、お願いね?♡♡♡」


「畏まりました」


「ふぁっ……♡♡」


 やがてディルドは退き、これまで肛門に入れられていた物が抜けていく。

その滑らかな擦れ具合に、一体凹凸の多いあれが挿入されたらどうなってしまうのか、恐怖と、うっすらした期待が内心で膨らんでいた。


「んっ……♡♡」


 少しして異物は全て出ていく。

どうやら尻穴はすぐ閉じきらずぽっかりと口を開き、次を待ち望みでもしているようだった。

またやたらに火照っており、撫でていく空気が冷たく感じる。


「あっ♡♡♡」


 そんな貪欲とも淫乱とも取れる潤滑液でグチョグチョの秘所へ突きつけられる、偽物とはいえ巨大なチンポ。


「んぁぁっ……♡♡」


 ソレは、間髪入れずに押し込まれてきた。

先端部分は苦も無く内部へと侵入する。


「ふあっ♡♡♡」


 しかし最も太いカリの部分に差し掛かると、圧迫感は一気に増した。

括約筋の抵抗が増えて、摩擦が激しくなり快楽も強くなる。

排泄のための場所を無理矢理拡げられ呼吸が途切れ途切れとなるが、同時に相当気持ちいい。

加えて引き摺られた水分が淫猥な音を響かせていく。


「っ♡♡♡ぁ……♡♡♡」


 思わず柔らかなシーツを握り、縋ってしまう心地だった。

アナルから異物を入れられることに、不本意ながら慣れつつあったはずだが、今回は何かが違う。

形状を模しただけであるはずで、血も通わずそもそも人の身体の一部では無いはずだ。

だというのに、全身は不思議な緊張をしていた。

まるで、生娘が処女を失うときのように。


「ぐひひっ♡♡♡玉裏、宗介くんの息で熱いな~♡♡♡そんなに興奮してるなら、もっと金玉くっつけてあげよっか♡♡♡」


「んむっ♡♡♡」


 そこへ星華が軽く腰を落とし、唇と睾丸袋がより密着すると、興奮はやけに昂っていく。

なぜなら「中身」の、精子たちの活発すぎる蠢きがもっと鮮明に感じられるようになったからだ。

うぞうぞと、放出する時を待ち内部で泳ぎ回る様子が想起され、下腹部が疼く。

自分のモノよりもずっと巨大なディルドを挿入され、オスとしての敗北を味わわされたことで、どうやら肉体は少しずつ「メス」へと変化しつつあるようだった。


「あ♡♡♡また息荒くなったね?♡♡♡やっぱりチンポと金玉が好きになっちゃったのかな~♡♡♡あんなに男らしかった宗介くんも、もう立派なメスだねぇ♡♡♡」


「んーっ!」


 認めたくなくて、呻き声をあげる。


「んんんっ♡♡♡」


「ほら♡♡♡私が言った通り♡♡♡どれだけ嫌がってても、チンポ入れられたら悦んじゃう♡♡♡」


 すると反抗を咎めるように、ニセモノチンポのえらが穴を熱烈に舐りながら一息でナカへと入りきった。

瞬間襲い来た甘みを表すみたく、口が塞がれているとはいえ大きな喘ぎが喉から鳴り響いた。

四肢も同時に跳ね、肩や股間の辺りが窄まる。


「ん~♡♡♡喘ぎ声で金玉揺れてもっと重たくなってくるよ~♡♡♡ありがとね、宗介くん♡♡♡」


「むふーっ……♡♡♡んぁっ♡♡♡むふーっ……♡♡♡」


 さらにそうして失った酸素を取り戻そうと深く呼吸すれば、鼻息で温められて汗をかき、蒸れに蒸れて発生した金玉の濃いフェロモンを嗅がされてしまう。

我慢汁の鼻につんと来る青臭さと、酸味のある愛液の匂いが、精液臭と混じり凄まじく性とその官能を意識させてくる。

淫香は体内に渦巻く熱を劣情へと変え、絶頂の二文字を近づけていく。


「っぅ♡♡♡」


 そこへ間髪入れずに、チンポが弱点たる前立腺へと直行し、先端で突き潰した。

動作自体の乱暴さに反して、頭のてっぺんから爪先までを多幸感が満たし、気持ちよくなることを強制される。

長きにわたって発情させられていた身体は持ち主の意思に逆らって、ようやく訪れた性感帯を愛撫される快楽にいたく感動していた。

心までも侵食せんばかりに、嬉しいという思いを広げる。


「あ♡♡♡チンポ奥まで入ってきて気持ちよくなっちゃった?♡♡♡じゃあ一緒に乳首も弄ってあげるね♡♡♡」


「んむっ♡♡♡」


 加えて「オス」は追い打ちをかけるみたく、二本の指先で乳首のすぐ横を引っ掻いていく。

ただ告げられた言葉とは違い、突起に触れることは無い。

再び行われる焦らしに、そこは苛立ちを表現するみたくいきり立つ。


「んぉっ♡♡♡っ♡♡♡ぁっ♡♡♡ふぅっ♡♡♡」


 しかも当てつけのように、尻穴はカリが這い出して強烈に責められ、激しい法悦を食らう。

何度も、何度も。

さながら実際に性行為をしている時みたく。


「ぐひひっ♡♡♡乳首すっごい勃起してる♡♡♡これぎゅってしてあげたらどうなるかな?♡♡♡その瞬間にイっちゃうかもね?♡♡♡」


「んんっ♡♡♡」


 そうやって煽られもして募り続ける期待と不満は、凄まじい疼きとなった。

また、凶悪で巨大なむず痒さは詰め込まれ、圧縮され、小さな蕾をメスイキのスイッチとして仕立て上げていく。

深く甘ったるい、壮絶なメスイキのスイッチとして。


「じゃあ、今から10数えたらイこっか♡♡♡それまでたっぷり気持ちいいの溜めてあげるね♡♡♡」


「んーっ!♡♡♡」


「じゅ~う♡♡♡きゅ~う♡♡♡」


 そして、カウントダウンが始まった。

見えやすくなった終わりに向けて、肉体はやはり持ち主の意に反して準備を進めて行く。

指は、まだ周囲を責め続けている。


「は~ち♡♡♡な~な♡♡♡」


 少し時間が進んだとしてもそれは変わらない。

彼女の性格からして、これもまた焦らすためにやっているのではないかという疑念が湧く。


「ろ~く♡♡♡ご~お♡♡♡」


 だがすぐ引っ掻きは止まり、挟むように乳輪の外側から、恐らく突起を摘まみ上げようとゆっくり迫ってくる。

すると本当にしてもらえるのだと、希望は激しく膨らんでしまった。

敏感になりすぎて、血液が胸の頂点を巡っていくのさえ分かる。


「よ~ん♡♡♡さ~ん♡♡♡」


 そんな声と共に、下半身ではずっと尻穴が虐められていた。

相変わらず前立腺が圧迫され、肛門が舐られている。

当然気持ちいいのだが、しかし動きは少し遅く弱かった。

限界に達する直前で、快楽は留められている。


「に~い♡♡♡」


 そうして粘音が小さくなった地下室へ、数字を数える声はやたら響く。

耳は自然とそこへ傾き、聞いてしまう。

星華の思惑通り、星華の思った瞬間に絶頂しようとしてしまう。


「……い~~ち♡♡♡」


「~~っ♡♡♡」


 ようやくだと思った。

気づけば心までも、アクメを求めるみたく下がっていくカウントに集中している。

期待で、四肢全てにぎゅっと力が入った。


「……♡♡♡」


「うぁ……」


 だというのに、星華は意地悪くもリズムを空かす。

落胆が全身を覆い、緊張が解けていく。


「ぐひっ♡♡♡ぜろっ♡♡♡」


「あっ♡♡♡んぁっ♡♡♡♡っ♡♡♡♡――♡♡♡♡♡」


 そうやって宗介が油断した瞬間を、彼女は見逃さなかった。

乳首が上下から一気に抓られ、さらに先端が爪を立てて少し痛いくらいに引っ掻かれ続ける。

そして、同時に体内の弱点までもが潰され、捏ね回された。


 身体が爆発したのかと感じてしまうほどに、激しい幸福感が広がり、メスイキへと達する。

意識は真っ黒い、あるいは真っ白の空間へと沈み込み、快楽に浸されていく。

肉体も同様だ。

気怠くどこか深い場所へと落ち、ただただ気持ちよくなる。

そこに、それ以外の物は一ミリたりとも無い。


 彼はしばらくの間、まさしく天国へ招かれたかのような心地をただただ味わった。







「んぁ……♡♡♡」


「ぐひひっ最初よりだいぶ敏感になったねぇ♡♡♡それとも、私に触られるのが嬉しいのかな?♡♡♡」


「っ♡♡♡そんなことはっ……♡♡」


「ふぅ~ん♡♡♡」


 衝撃的な絶頂を終え余韻に浸ってしまう宗介を、ベッドの傍らに立った星華が見下ろし、身体を撫で回してくる。

相変わらずの怖気すら覚える粘着質な手つきだが、しかし確かに気持ちいい。

思わず声を出してしまったのもあって、これまで同様行った反論が事実だとは夢にも思われないだろう。


「じゃあ、今日は移動で疲れてるだろうしもう終わりにしよっか♡♡♡」


「……はい」


「明日はいよいよ私のチンポで死ぬほど気持ちよくしてあげるから、楽しみにしててね♡♡♡宗介くん♡♡♡」


「……嫌です」


 どうやらようやく休めることに安堵するものの、続く言葉でまだ明日があることを認識させられる。

一日でこれほどまで身体を調教されて、果たして耐えることが出来るのだろうか。

不安を滲ませながら返答する。


「ぐひひっ♡♡♡そんな暗い顔しないでよ♡♡♡ちゃ~んと気持ちよくして、自分から私に服従したくなっちゃうようにしてあげるからさ♡♡♡メイドたちみたいに、ね♡♡♡」


 だが、やたら確信に満ちた彼女はむしろ反抗心を再び燃え上がらせた。

鼻を明かしてやれたら、どれほど気分がいいだろうか、と。


「それじゃ、また明日ね♡♡♡」


 そうして心を持ち直した宗介を尻目に、星華は三人のメイドを伴って出口へと向かい、丁度訪れたエレベーターへ乗り込んでいった。


「ふぅ……」


 倒すべき相手が居なくなると、急激に緊張が解け、一気に疲れがやってくる。

散々触られ、汚された身体を洗いたかったが、その余裕はなさそうだった。

やってくる眠気に任せ、ベッドへと身を委ねると、彼はすぐに眠りへと落ちる。


 そんな宗介の寝姿は、地下室の中に設置された複数の監視カメラがしつこく捉えていた。

調教は、まだ続く。


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