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 金属製の黒白様々な機材たちが眩い照明を反射し、鈍く、あるいは煌々と輝くスポーツジムの中で、黄色い声が響いている。

それは、室内のやや奥まった場所から聞こえていた。

背の高いスミスマシンを若い男女がずらりと取り囲み、口々に驚嘆の声を出す。

言葉には「すごい」、「素敵」といった、輪の中心にいるだろう人物を褒めそやすものから、「400キロ」という信じられないほどの重量まで様々だ。

その対象は恐らく、この優良会員のみが使える場所、「プライベートトレーニングエリア」内で最も名の知れた人物だった。


「ふっ……はぁ……」


 だが、そうしたある種姦しいとすら言える輪の外、入口付近の離れた場所で、普段会社員として働く中田悠馬は一人、黙々とスクワットマシンを利用している。

少しだけ、やや甲高い音へ耳を傾けながら。




 彼がこのジムに通い始めたのは、三か月ほど前、転職に伴うテレワークの増加で運動不足が気になり始めたからだった。

いくつかの器具を買っても続かなかったトレーニングは、ここへ通うようになってからは継続することが出来ている。

また近頃は、身体を鍛えることへの楽しみも見出していた。


 ただ、そうした継続や高いモチベーションの維持には、いくつかの理由がある。

一つは、このジムが家からかなり近い事。

そしてもう一つ、最も大きな理由は、サービスのいいここ「プライベートトレーニングエリア」を使えていることだ。


「日頃熱心にトレーニングをしているため」、「他の会員とのトラブルも全くないため」と説明され使用を許されたこの場所は、ただ機材が充実しているだけではない。

利用する人数に対してスペースは広々としているし、優良会員と定められた人には個人用のロッカーが与えられている。

予備のウェア等を入れておくと、気が向いた時準備せずとも、来ればすぐさまやりたい運動を始めることが出来るのだ。

もちろんそれだけではなく、鍵をかけて入ることのできる少し広いシャワールームや、無料で提供されるプロテイン、スポーツドリンクなど枚挙に暇がない。


 さらにこうした好条件にも関わらず、追加料金は一切発生していなかった。

通常の会員だった頃と何も支払うものが変化していないのに、ただこちらだけ多くのものを享受できている。

そうしたお得感に押されて、悠馬は今日まで足しげく通うに至っていた。




「ふぅ」


 やがて日課としているトレーニングを終え、彼は一角にあるベンチで休憩を入れる。

全身には、心地よさすらある疲労感が広がっていた。

先ほど受付で貰ったスポーツドリンクを飲むとよく冷えており、熱を持っていた身体が内側から冷えていく。


「ん?」


 すると、スペース奥にあった人だかりの隙間から、その中心で仰向けに寝そべりベンチプレスを行う人物の姿が見えた。

彼女は橘涼と言うらしい。


 履いている黒いハーフパンツからは、かなりぴったりとしたグレーのスポーツタイツを着用した脚が地面へ伸びている。

目立つのは膝小僧の向こうに見える、隆起した太ももの筋肉だ。

まるで一般的なそれに正面、両脇と何かくっつけたかのように張り出しており、布越しだというのにとにかく太くて力強い。

普通よりは筋肉質でありつつもしなやかなふくらはぎや脛に比べると一目瞭然だった。


 そして、今まさにバーベルを上げている腕。

スポーツ用のブラジャーを着用しているのか全て露出した二の腕には、力こぶと上腕三頭筋がそれぞれ肥大化したため作り出す間の溝がある。

やや焼けた小麦色の肌のせいか、その陰影はやたら強調された。

大きな段差は小指の第一関節から先ぐらいなら飲み込んでしまえそうだ。

加えて表面がかなり滑らかで、仄かに浮かんだ汗と相まって美しく、色香すら醸し出す。


 対して前腕には血管や筋が少し浮き出し、細かな凹凸も合わさっていた。

ともすれば女体のようにすべすべ且つメリハリがついていた二の腕とは違い、いかにも男性的だ。

いかつく、オスを感じさせる。


 さらにそうした肉体が押し上げる白く煌めく棒の両端には、見たことも大きさの重りがいくつもつけられていた。

先ほど聞こえてきた言葉から察するに、400キロはあるのだろう。


 しかもそうした人間離れした重量であるというのに、彼女の肉体に震えは一切無い。

さながら熟練のトレーニーが、何ら荷重していないバーベルを上げているかのようだ。

動作は軽く、正確無比に真っすぐ上を目指す。


「……」


 最早人の域を超えていると言っていい姿に、恐怖は無くただただ見惚れてしまう。

男性よりも筋肉がつきやすいふたなりとはいえ、あそこまで鍛え上げられた肉体はそうそう見ない。

いったいどれほどの時間と労力をつぎ込んだのだろうか。

数か月トレーニングを行い、人の身体に対して少し敏感になった悠馬はそう思った。


「あ……」


 そうしてやや熱を帯びた視線を送り続けていると、ベンチプレスを終え、予想通りスポーツ用のブラジャーをつけた上半身を起こす涼に気づかなかった。

人からの目線に気づきこちらを向いた彼女と、目が合う。


 あれほど雄々しく逞しい筋肉美を持っているというのに、その顔はただ美しいの一言だった。

輪郭が一切のたるみ無くすっきりとしていて、鼻や口といった各パーツも小さい。

しかし目はかなり大きく、少し吊り上がってハッキリしたまぶたと、純日本人ではないのか碧い瞳が茶色っぽい肌に映えている。

それらは、感情の乏しい表情をしていた。


 全体から感じるのは力というよりも、しなやかで折れてしまいそうなほどのかわいらしさだ。

頭を覆う細くて繊細な黒いストレートロングの髪が、そうした印象を助長する。


「あっ」


 一瞬また釘付けになってしまったが、不躾にじろじろ見ていた気まずさからすぐ頭ごと逸らす。

そしてどうにも居心地の悪さを覚え、また、そろそろ切り上げようと思っていたこともあり立ち上がった。

そのまま悠馬はトレーニングスペースの外へ出る扉を開き、シャワールームへと向かう。

聞こえ始めた低くやや感情の薄い声を聴きながら。


「……♡♡」


 その声の主は周囲と軽い会話を交わしつつも、そそくさと退散する彼の背中を、粘っこい目つきでじっと追っていた。





 六畳ほどの個室に備え付けられた洗面台で、裸になった自身の上半身を確認する悠馬。

近頃はトレーニングの成果が出つつあり、ややぽっこりとだらしなかった下腹がなだらかになってきていた。

また体幹もしっかりしてきたからか、腰痛に悩まされることも以前よりずっと少ない。

見栄えがよく、実用的でもある筋肉に喜びを覚え、これからも努力しようと心から思う。

そうして引き締まり始めた肉体に満足すると、服を全て脱いで部屋の隅へと向かった。


 そこには、ガラス張りとなっているシャワーブースがある。

当然透明な壁は外から丸見えだが、プライバシーの守られた個室なら関係無い。

むしろ開放感があって、彼は好みだった。


「~♪」


 周囲に咎める人が居ないのをいいことに、上機嫌な鼻歌を歌いつつ、縦長のプルハンドルへ手をかける。


「へ?」


 その時後ろで、閉めていたドアの鍵が音を立てた。

明らかな開錠音であり、くつろいでいた心が一気に緊張していく。

すぐ全身で、入口の方へ振り返った。

そのままいつも開ける時重たい、防音の聴いているだろう扉を凝視する。


 ジムのスタッフであれば、驚かせないためノックをするとか声をかけるなりしてから鍵を開けるはずだ。

また優良会員のスペースはどこも受付を一度経由して入って来なければならず、不審者であるならば何か騒ぎが起きているはず。

というかそもそも、鍵が開いたのがおかしい。

もちろん緊急時開けるためか外側に鍵穴がついているが、残りの可能性である一会員が、マスターキーか何かを持っているはずもないだろう。


「っ!」


 逡巡する悠馬を尻目に、鉤型のドアノブが回転する。

そしてやたら重苦しい悲鳴のような音を鳴らして、ドアはゆっくりと開いていく。


「え?あの……」


 やがて姿を現したのは、紛れもなく橘涼だった。

先ほど見たスポブラに短パン、スポーツタイツを着た肉体は、ドア枠を少し屈んで通り、ごく自然な動きで部屋の中に入ってくる。


 一応の知った顔に安堵していると、彼女の後ろでドアは再び閉じ、続けてガチャリと音を立てた。


 こうして近くで見るとかなり威圧感がある。

身長は男性の平均である悠馬が見上げるほどだ。

2メートルほどはあるだろうか。

日常生活では殆ど見ることの無い高さに、正確な数値は推測できない。


 さらに肩幅も筋肉が膨らんで広く、彼よりもいくらか大きかった。

力を入れずリラックスした状態で下ろされていても、ふっくらした出っ張りが見て取れる。


 だが、そんな雄々しい肢体の中で強く女性を感じさせる胸。

運動中動かないようしっかりと固定する下着に、乳房はみっちり詰まっている。

そのため太さのあるアンダーと、バストトップとの差は少なくとも10センチほどはあった。

しかもそうした支えが無くとも十分形を維持できそうなほどに、浮き出た鎖骨の少し下は大胸筋によってハリのある丸みを帯びている。


 そこで、多くの人から慕われている彼女ならありえないのだろうが、もし襲われてしまえば成す術は無い事を悟った。

体格も、筋力も違いすぎる。

加えて、ふたなりのそれは男女が持つものよりもずっと質がいいと聞いたことがあった。

であれば自分など、赤子も同然だろう。


「橘、さん?」


「……」


 ずっと無言でいるのを訝しみ、こちらから声をかけた。

しかし返答は無く、相変わらずろくに感情の読み取れない顔で見つめてくるだけ。


 そんな中、少し混乱していた頭は当然のことに思い至る。

それは、スタッフでもない普通の会員である涼が、なぜこの個室の鍵を開けられたのかと言う事だ。

疑問は疑念へと変化し、危機感を覚える。


 というかそもそも自分は今、全裸なのだ。

そうした人の姿を見て、眉一つ動かさない彼女の目的は、一体何なのだろうか。

入る部屋を間違えたなどという理由では、絶対にない。


「……♡♡」


「あ、あの」


 困惑していると、巨体はこちらへ歩み始める。

狭い個室の中で、彼我の距離は一気に近づいていく。


「わっ」


 そして、悠馬は背中へと逞しい腕を回され、そのまま抱きかかえられた。

すぐに足が地面とつかなくなり、突然の事への驚きと浮遊感で思考が停止する。

隙が出来た身体は痛くないぐらいの力で締め上げられ、強力無比な肉体へ密着し固定されていく。

するとやがて、涼は左腕だけで彼を支えた。


「んむっ――」


 続けて空いた右手が後頭部へと触れ、気づけば正面にあった、想像以上に布が少ないスポブラで寄せて上げられた深く長い谷間へと、顔が押し込まれる。

最初に味わうのは、柔らかく異物を受け容れつつも、弾力によって押し返し滑らかな乳肌で甘く歓迎する感触だった。

中の筋肉だけでなくその見た目、表面にも相当気を使っているのだろう。

まるでシルクのように、接触し擦れ合うだけで幸せな心地を与えてくる。

それが、男性が求めてやまない女性の双丘であるとなればなおさらだ。

加えて滲んだ汗が吸い付きを強くした。


「っ♡♡♡」


 さらに忘れていた呼吸を再開すれば、当然匂いも吸ってしまう。

「そこ」へ漂うのは、常に皮膚と皮膚がくっつきあっているのだからただでさえ日頃蒸れ、筋肉量から来る高い体温でより蒸れ、運動して上がった代謝で蒸れに蒸れた湿っぽい香りだ。

鼻が刺激されるほど酸味があるのに、同時に気道へ絡みついてくるような甘ったるさのある妖しい臭気は、一気に脳を眩ませていく。

しかもふたなりは、他の性別よりもフェロモンがかなり強いらしい。

そのことを証明するみたく下半身へ強制的に血液が流入し、ペニスが熱く肥大化していくのが分かった。

数日禁欲したかのように、理性までも蕩かされていく。


「んっ!♡♡ふっ!♡♡」


 ただやたら急速な発情に本能はけたたましい警笛を上げ、思考力を取り戻させた。

咄嗟に、全身を暴れさせて肉の牢獄と言っていい彼女の肢体から脱出を試みる。


「ふふっ♡♡♡」


 しかし、拘束は何か器具でも使ったみたいに固い。

先ほど恐れていた通り、抵抗はまるで意味を為していなかった。

また、淫香によって少しずつ身体の力は抜けていく。

聞こえてくる笑い声には余裕すらあり、人を嬲る愉悦も思わせた。


「ふーっ♡♡」


「なっ♡♡んむっ♡♡これっ♡♡」


 そうして密着状態で全身を捩っていれば、次第に大きくなり、太もも辺りへ擦れるようになっていく涼の勃起。

締め付けているスポーツタイツを、真左へと掘り進んでいく。

その途中行われる脈動はあまりにも激しく、振動が伝わってくるほどだ。

しかも硬さも、先ほどから背中をきつく抱く筋肉よりもずっと硬くなる。

彼女が持つ本当の力の象徴は、そこであるかのように。


「うっ……♡♡♡はぁっ♡♡♡」


 すると不思議なことに、同性の性器が当たっている状況で悠馬は仄かな興奮を覚えていた。

彼は同性愛者ではないというのにだ。

その硬度や巨大さ、猛りを感じるごとに、どこか肉体の奥から知らない疼きが芽生えていく。

さらにそんな気持ちは、匂いを嗅げば嗅ぐほど膨らむ。


「ふぅっ♡♡♡ふぅっ♡♡♡」


「いっぱい嗅いでくださいね……♡♡♡」


 相変わらず谷間は蠱惑的だ。

呼気も相まって湿り気はどんどん増していき、結果漂ういやらしい体臭も濃密なものとなる。

加えて先ほどから何か磯臭い香りも混ざっており、甘酸っぱさにそれが重なればもっと自分から吸いたくなってしまう。

結果いくらかあるエグ味すら、癖になってしまいそうだった。

鼻腔が、好い匂いの定義を強制的に塗り替えられる。


 初めて間近で聞く感情の薄い、ただ確かな興奮が読み取れる低い声と相まって、暗いはずの視界はクラクラと揺らめく。


「あっ……♡♡」


 やがて、後頭部を押さえつけていた手が離れていたことに気づいたのは、腰砕けとなった身体が地面に降ろされた時だった。

気づけば無理矢理味わわされていたはずのものを、自ら積極的に味わっていたのだ。


「っ♡♡」


 その事実が恐ろしくなり、ぼんやりする頭に鞭を打ち、すぐさまドアを探してそちらの方向へ逃げ出そうとする。

だが、力なくへたり込んだ状態から上手く動くことは出来なかった。

それでもどうにか四つん這いになり出口を目指す。

外へ出れば、きっと誰かに助けてもらえるはずだ。

ただ、速度はあまりに遅い。


 悠馬が一縷の望みで必死に移動する中、聴覚は衣擦れの音をとらえていた。


「んぁ?♡♡」


「ふふ♡♡♡」


 そして彼の目の前に、逞しい下半身が立ちはだかる。

地面を踏みしめる小麦色の裸足は、彼女の全身に反して起伏が少ない。

サイズこそ平均より大きめに思えるものの、印象はしっかりと手入れした女性のそれだった。

表面はきめの細かな肌に覆われて艶めき、形の整ったかわいらしい指が真っすぐ伸びている。

また爪には黒のジェルネイルが施されて、色っぽい煌めきを生んだ。


 足首を越えると灰色のスポーツタイツが覆い、はっきりとした筋肉の凹凸が出始める。

ただ直立していたとしてもその存在感は強く、踏みつけられればどかすことすら出来ない事が想起された。

特に太腿の正面で盛り上がる大腿四頭筋を見るとそう思ってしまう。


「へっ♡♡♡」


 そうやって相対する相手の様子を探ろうと視線を上げていると、ハーフパンツは脱ぎ去られており、当然「ソレ」は目に入った。

ぴっちりと下半身のラインを出す布の中で、涼の股間から左へ向かって生え、長く太く、さらに高い膨らみを作りだす明らかにチンポであろう陰影が。

しかも広い腰のシルエットを越え、少し先端が外側へ飛び出している。

30センチほどはあるだろうか。

その先端、亀頭があるのだろう部分は、広い範囲が濡れて黒くなっていた。


 流石に細かな形状までは出ていないものの、とにかく中間部分がぶ厚いことは分かる。

まさしく鍛え上げられた腕や脚を思わせるような、中太りした物体だ。

そんなオスがメスを屈服させ、支配し、自らのモノとするためのカタチに、しかし男性であるはずの悠馬は見惚れていた。


「ふあ……♡♡♡っ!」


 そうして惚ける彼に、逞しい肉体のふたなりは近づいてしゃがみ、腋の下へ手を入れて上体を起こさせてくる。

気づけば、助けがあれば起き上がれるほど全身には力が戻っていた。

だが続けて再び直立した彼女から後頭部を両手で押さえられると、急所を掴まれて抵抗する気は萎びていく。


「っ♡♡♡」


 正面を向いた視界に入るのは、肉棒より少し下、脚と脚の間にある股間の丸々とした膨らみだ。

よほど一つ一つが大きいのか、さながら乳房みたく間には浅めの谷間が、下端部には二つの山がある。

というか実際膨らんだ部分は巨大で、中にそれぞれ握り拳でも入っているようだった。

とはいえ涼の手は今どちらも触れてきており、そこにあるのが金玉であることは認めざるを得ない。

ただそれにしては、本当だと信じられないほどやたら大きすぎた。


 きっと、一度の射精で大量の白濁液を出し、加えてそれを何度も繰り返せるよう蓄えているのだろう。

想像すれば、何故だか下腹部が熱くなった。


「んむっ♡♡♡」


 そして、どうにも心惹かれてしまうそこへ、頭は胸の時と同じようにみっちり押し付けられる。

顔面全体は生殖器に覆われ、唇はスポーツタイツ越しとはいえ熱くキスをした。


 まずその感触が伝わってくる。

直接当たる布は柔らかく、対して中にある物体はやや弾力があった。

先ほど味わった胸ほどではないにせよ、密着すると弱い力で跳ね返される。

中間へ差し込まれた鼻が、呼吸を阻害しない程度に抱きしめられていく。

さらに脈動もしており、今なお新鮮な精子が製造されていることを理解した。

自分へ向けて、ぶちまけられるために。


「ふぅっ♡♡――うぁっ♡♡♡」


 また、些細な抵抗として息を止めていたが当然長くは続かない。

一度空気を吸うと、入ってくるのは我慢汁や精液からくるオス臭だ。

先ほどうっすら漂ってきた磯臭い香りの正体は、ここから発されたものだと分かる。

ただ、発生源から直接漂うものは離れた場所よりずっときつい。

嗅覚が、煮詰めたような強烈な臭気で犯され、嬲られ、蕩かされていく。


 しかもそれだけではなく、甘酸っぱいフェロモンも相当出ていた。

恐らく胸同様閉じた空間にあるため蒸れやすいのだろう。

そうして熟成され、また混ざり合った彼女の湿っぽい匂いは、肉体を否応なく恍惚とさせる。


「ふーっ♡♡♡ふーっ♡♡♡」


「チンポのことで頭いっぱいにしちゃいましょうね……♡♡♡」


 すると自然に、呼吸は酸素を取り入れるためではなく、淫香を味わうためのものへと変化していく。

吸って吐いての繰り返しは、ごく短く浅くなった。


 再びどうにか逃れようと涼の太腿へ手をつくが、大腿筋の指さえ食い込まない硬さを感じると抵抗に意味は無い気がしてくる。

元から勝てないのだと、諦めようとしてしまう。

逃がすまいと後頭部へかかってくる力も恐ろしい。

頭が潰されてしまうんじゃないかと思うほどだ。


 本能的な畏怖から、せっかく心地好いのだからこのまま金玉とチンポの匂いを嗅いでいようか、という後ろ向きな考えが浮かぶ。

相変わらず抑揚と感情の薄い、ただ激しい昂りの滲んだ声に、身を任せてしまいたくなる。


「ふふっ♡♡♡そうですよ……♡♡♡そのまま嗅いでいれば凄く気持ちよくなれますからね……♡♡♡」


「ふぅっ……♡♡♡ふぅっ……♡♡♡」


 少しすると悠馬は腕の力を抜き、この瞬間だけはされるがままになることを選んだ。

後に来るとも分からない隙のため、体力を温存しているのだと自分に言い訳をしながら。


 しかし人を支配しメスにするためのフェロモンは、それを決して許さない。

時間がたつにつれ全身はくにゃくにゃになり、頭の中はチンポの事でいっぱいになっていく。

なぜ抵抗を辞めたのか、それどころか何故抵抗していたのかということすら、記憶から消えていく。

そして代わりに、身体の下の方、後ろ側に存在する穴をひどく疼かせる。


「はい、おしまいです♡♡♡」


「あっ……」


 結果布越しの睾丸袋が離れていくと、強烈な寂しさがこみ上げ、切なげな声が出た。

また密着しながら匂いを嗅ぎたくて、間近にある涼の膨らんだ股間、身体の外側へと伸びる棒状のシルエットを見つめてしまう。


「……♡♡♡」


「っ♡♡♡」


 すると、棒状のシルエットは狭いスポーツタイツの中で蠢き始めた。

少しずつ膨張しつつ、脱するみたく真横を向いていた先端が上を向いていく。

擦れて気持ちいいのか、その速度は徐々に増す。


「ふぅっ♡♡♡」


「ひっ♡♡♡」


 そしてチンポは、一人でに彼女のへそ下ぐらいまでを包む運動着から顔を出した。

続けて竿部分も這い出てきて、真っすぐ天を衝くようにそそり立っていく。

元々、涼のソレにとって着圧の布程度大した障害にならないのだろう。

やがて、根本で生地を押し上げ、左右に突っ張らせながら、肉棒は「勃起」した。


 40センチほどはあるだろうか。

先ほどまでは、まだまだ本調子などではなかったらしい。


 全くもって世の男性が携える性器とは異なるが、特筆すべきはほぼ黒色というほどに淫水焼けした幹の異様さだった。

さながら持ち主の筋肉みたく何本もの血管が表面でのたくり、脈動している。

加えて一本一本は太く、赤ん坊の指じみていた。

いくつもの青筋に飾られた姿は怒張しているという言葉が相応しく、今からアレを、恐らく尻穴に挿入されるのだろうと思うと恐ろしい。


 しかも、涼の筋肉らしいのは幹自体の太さも相まってだ。

力こぶでもあるように、中ほどが大きく膨らんでいる。

底面に出っ張った尿道と相まって、鍛え抜かれて肥大化した筋肉により、いくつかの塊がついたように見える脚かとも思えた。


 そこに比べれば紫紺の亀頭は細めではあるものの、とはいえそれでも一般的な逸物よりはずっと大きかった。

鶏卵ほどは明らかにある。


 きっと全体は相当に重たいのだろう。

さらに巨大な金玉も根本についている。

だというのにふたなりチンポは一切しならず、それどころか反り返ってすらいた。


「……しょ」


「ふあ……♡♡♡」


 そのまま彼女はタイツを乱雑に脱ぐと、どこかへと放り投げる。

露わになる日焼けした太腿はそれまでの外観通り、隆々とハリのある筋肉が浮き上がり、汗によりしっとりと光を照り返す。

見るからにぷりぷりした厚みのある姿は「おいしそう」とすら思うが、しかし実際どれだけ硬いかは先ほど触れた悠馬がよく知っていた。

十中八九、鋭い前歯すら通らないだろう。


 さらに周囲へは服との間で閉じ込められ、濃くなっていた体臭が広がった。

それほど広くない個室に、桃色、あるいは粘ついた紫のいやらしい霧が立ち込めていくようだ。

涼のフェロモンから、どこへ行こうとも逃げられなくなる。

とはいえそもそも全身にはもう殆ど力が入らない。


「ふふ♡♡♡もう抵抗する気も無くなっちゃいましたか?♡♡♡」


「っ♡♡♡」


 落ち着き払った声で発されるからかう言葉に多少理性は戻るが、だからといってこの状況から脱する手立てが浮かぶわけでもなかった。

彼女がここへ入ってきた時点で、自分がこのシャワールームに入った時点で、恐らくこうなることは確定していたのだ。

「橘涼」とはそれぐらい理不尽な存在であることを、ものの数十分でまざまざと見せつけられた。


「じゃあそろそろセックス、しましょうか……♡♡私もそろそろ、射精したくなってきましたし……♡♡♡」


「ひっ……♡♡♡」


 「セックス」とは、一般的な男女が行うものとは違うと容易に理解できる。

それを裏付けるように涼は胸の間から、端にノッチ加工が入った数センチ四方のビニールを取り出す。

何度か見たことがあるその正方形の包装は、明らかにコンドームだった。

ただ、それにしてはかなり大きい。


 しかし、そうした規格外のサイズは彼女にとって普通なのだろう。

何の衒いもなく封を切り、中身を取り出し、手慣れた様子でチンポへ装着していく。

するとグロテスクな肉の柱は、半透明でややけばけばしい蛍光ピンクに包まれていった。

形状と色合いはちぐはぐになるが、そうした馬鹿馬鹿しさがかえって異質さを強調する。

ふたなりの雄性器には、常識など通用しないのだ。


「~♪♡♡」


 そして涼は上機嫌そうにうっすら鼻歌を歌いながら、個室内にある備品置き場らしき引き出しを開け、とある容器を取り出す。

続けて中にある液体、ローションを自らの股間へとまぶし、右手で塗りたくっていった。

ゴム付きの竿はヌチョつき、濡れることの無い秘所への挿入準備を整えていく。


「うぁ……♡♡♡」


 いよいよ犯されるのが秒読みなのだと分かると、どうにも肛門が疼いた。

未だ指すら入れたことの無い処女穴は、まるで慣れ、Gスポットやポルチオといった一際敏感でいやらしい場所を開発されたメスの淫唇みたくひくつく。

まるで、味わった経験のない快楽を期待するように。


 気づけば「オス」は悠馬の背後へと回り、両脚の裏に腕を回してくる。


「しょっ……♡♡♡」


「ふあっ♡♡」


 そのまま彼は地面から遠く離れた場所へと、尻とその間にある穴を肉棒へ差し出すような、いわゆるフルネルソンの体勢で抱え上げられた。

顔の横、少し下に膝がきており、無様な格好を強制されているというのに身動きはまるで取ることが出来ない。

さらに、400キロのベンチプレスを軽々と持ち上げる彼女だ。

人の身体を持ち上げているというのに安定感は凄まじく、疲労によって解放される可能性など微塵も感じられない。

きっとこうなってしまえば、あとはされるがまま終わるのを待つしかないのだろう。


 また、硬い筋肉で拘束された他の場所と違い、背中は柔らかい乳房で受け止められていた。

うっすらと肩甲骨の下辺りに、勃起した乳首の感触がある。

加えて濃く甘酸っぱい体臭も鼻先をくすぐった。


「それじゃ、ちょっと解してあげますね……♡♡♡」


「わっ♡♡♡」


 急なことに驚いていれば、脚は中央へと寄せられ、今度は左腕だけで抱えられる。


「っ……♡♡♡ふぅっ……♡♡♡」


 するとそうして空いた右手、その内の中指らしき太さの潤滑液で濡れたものが、アナルへするりと挿入された。

括約筋から、表面は多少硬くも脂肪がついてもっちりした触れ心地が伝わってくる。

普段閉じきっているはずのそこは多少緩んでいたようだが、それでも襲い来る初めての圧迫感に思わず息が詰まった。

ただ同時に、どこから来るのか分からない幸せな気持ちよさも芽生えている。


「ぁ……♡♡♡」


 間髪入れずに出し入れされるとそんな幸せは全身へ広がり、身体の芯や内側が温まっていく。

頭は涼の匂いを嗅がされた時の興奮といったものとはまた違った、ぬるま湯につかっているかのような陶酔をしていた。

狭い部屋中に、己の尻から出ているとは信じがたい淫猥な水音が響いている。

犯されて鳴っているというのに、愛液という発情によって分泌されるものではないのに、強姦され股を濡らす女の子のような恥ずかしい気持ちになってしまう。


「んぅっ♡♡♡」


「ふふっ♡♡♡指、増えちゃいましたね……?♡♡♡」


 しかもやがては肛門へ侵入する指が増え、異物感が増した。

粘音は大きくなり、幸福も、恥ずかしさも比例して増加する。

だが、苦しくはならない。


「ほら、また……♡♡♡」


「はっ♡♡♡はひっ♡♡♡」


 それは、人差し指から小指までが恐らく全て挿入されたとしても変わらなかった。

あるのは広く肉体の下にある穴を拡げられ、満たされる悦びだけだ。

呼吸は上気して浅くなり、四肢はぐったりとして与えられるものを享受していく。

男としての尊厳を辱められることすら、意識を甘ったるくする。

やはり苦しみは無い。


「よし……♡♡♡」


「んぉっ♡♡♡うあ……」


 そしてしばらく抽送が続き、アナルが責めから解放された時、感じるのは寂しさだった。

火照りきった秘所を撫ぜていく空気はやたら冷たくて、落胆を隠せない。


「あっ♡♡♡やめっ♡♡♡」


 そんな彼の膝裏が再び両腕で抱えられ、脚は左右へ開かれていく。

恥ずかしくて拒否の言葉が出るものの、抵抗はそれだけだ。

骨抜きにされてしまった四肢は、向こうにあるのだろうモノへ期待してしまっている身体は、動いてくれない。

とはいえその意思など、端から無いのかもしれないが。


「っ♡♡♡♡」


 そうしてメスになりつつある者へ見せつけられるチンポ。

涼はきっと、「今からこれでお前を犯してやるぞ」と言いたいのだろう。

彼女が腰の向きを変えたことでソレは、悠馬の股座の向こう側から腹へ向かって伸びてきて、そそり立ち反り返っている。


 尻のぶんハンデをつけられているはずだが、その巨大さはペニスと比べるべくもなかった。

太さも長さも三倍近く違い、ともすれば同じ器官だとは思えない。

似通っているのは棒状であることぐらいで、カタチには多くの差異が挙げられる。

のたくった血管によって表面は歪で、尿道の隆起も相まって全体はいくつかのパーツに分かたれているかのようだ。

角度によっては、ペニスが容易く隠されてしまう。


 間近で、それも挿入後到達するだろう位置を教えられて、喉から生唾を飲み込んだ音が鳴る。

へその上辺りまで異物が入ってくるのは、どのような感覚なのだろうか。

発情しきった脳裏に、悩ましい嬌声を溢れさせ、絶頂に身を震わせる自分の姿が浮かぶ。

およそ信じたくない痴態は、しかし先ほどまで弄られていた尻穴とその快楽によって嫌な裏付けを持っていた。


「あっ……♡♡」


 少しすると竿比べは終わり、肉体が軽々と持ち上げられていく。

大の大人がこうやって手も足も出ず、まるで赤子みたく扱われていることに、羞恥と恐怖を覚える。


「ふあっ……♡♡♡」


 だが同時に犯されることを待ち焦がれてもいると、アナルはコンドーム越しの亀頭と出逢った。

瞬間火傷したのではないかというほどに、激しい熱が伝わってくる。

ゴム膜で隔てられ、また常温で保存されていたローションがかかっているというのにだ。

あの桁外れのサイズ故、ただ完全に勃起するだけでも相当な運動が必要なのだろう。

当たっているとバイブレーションさながらに振動しているのが分かる。

結果生まれた微細な摩擦は、括約筋を蕩かし緩ませていた。


「それでは、入れますね……♡♡♡」


「んんんっ♡♡♡」


 すると、少しずつ肉マラは体内へとめり込み始める。

全体から見ればやや細かった先端であっても、明らかに指四本よりは大きい。

強烈な異物感と圧迫感が下腹部から広がって、肺の空気を押し出させていく。

しかしそんな無理矢理の吐息は、声帯を通ると甘い声へ変換された。

同時に粘液が引き摺られるぬちぬちという音も奏でられる。


「んぃっ♡♡♡」


 しかもそうした強制的な尻穴拡げはまだまだ序の口に過ぎない。

挿入が進むにつれて、根本へ進むにつれてチンポはどんどんと肥え太っていく。

本来排泄のため使う場所へ外からモノを入れられ、次第に息が詰まるような心地は増していくが、しかし同様に快楽も増えていた。


「はっ♡♡♡はっ♡♡♡ぁっ♡♡♡」


 やがてカリらしき膨らみを越え、多少痩せた亀頭と竿の境目へと到達するものの、すぐ直径は膨らむ。

涼の肉棒と行う性交に、恐らく休憩できる時間など無いのだ。


 加えてこうした不安定な体勢にも関わらず、ほぼ一定の速度で悠馬の肉体は下ろされ続けている。

だというのに、背後からは一切乱れた息遣いが聞こえてこない。

それは、彼女の体力がほぼ無尽蔵、もしくはこの程度では殆ど疲れないことを暗示していた。


 さらには精力も、金玉の大きさに比例して相当強いかもしれないと思い至る。

と言うか、ふたなりのそれは男性と比べて数倍から数十倍だと聞いたことがある。


 もしそうだった場合、開始時点ですらこれほどまで追い込まれているというのに、セックスが終わった時一体自分はどうなってしまうのだろうか。

明確に予想できる何か人としての破滅が、多少個室内で濃くなった甘い体臭と相まって背筋をぞくぞくと震わせた。


「あっ♡♡♡♡」


「ふふ♡♡♡」


 そうして発情を深めていると、デカマラがひどく気持ちいい場所に当たる。


「あぁぁあぁっ♡♡♡♡」


 デカマラは続けてそのまま「気持ちいい場所」を、情け容赦無く正確に圧し潰し、ぐりぐりと嬲った。

それによって強烈な幸せが広がっていく。

大きな喘ぎ声が、狭い部屋を外にも聞こえてしまいそうなほど木霊していった。

全身は小刻みな痙攣を繰り返し、手足にはぐっと力が入っていく。


 恐らくそこが噂に聞く前立腺なのだろう、と惚けた頭は他人事のように理解した。

そんな風に意識が自分の外側へ置き去られてしまうほど、圧迫による感覚は激しい。

心地好さに支配され、全てが言う事を聞いてくれなかった。


「んあぁっ♡♡♡♡」


 肉槌はしばらく虐めを続けると、腸内から這い出していく。


「はひッ♡♡♡♡んぐぅぅぅっ♡♡♡♡」


 そして再挿入され、真っすぐ前立腺へ向かい、先ほどと殆ど同じように中身を搾り出すが如く再び食い込む。

抜けて行く時もそうだったが、性感は明らかに一度目よりも大きい。

身体が急速に開発されているのだ。

恐らくたっぷり吸わされた媚香のせいだが、考えた所で最早意味は無かった。

強制的に押し寄せ、覆い尽くしてくる快楽に、抵抗することなどできない。

一つ出来ることがあるとすれば、ただ身を委ねることだけだった。


「んぃっ♡♡♡♡……っ♡♡♡あ゛っ♡♡♡♡はふっ……♡♡♡」


 チンポによる前立腺潰しは、正確に何度も何度も繰り返し行われる。

その度に与えられるものは強くなっていく。

すると声は徐々にはしたなく濁ったものとなり、ペニスからは半透明な白濁汁が漏れ出した。


「……♡♡♡」


 次第に一切の余裕を失っていく悠馬と異なり、どれだけ時間が経とうとも涼の拘束は緩まず、動きが精彩を欠くことも無い。

変わったものとすれば度々上機嫌らしき小さな笑い声が聞こえるようになったぐらいで、相変わらず息遣いまでも落ち着いたままだ。


「はへっ……?♡♡♡グっ♡♡♡♡これなにかっ……♡♡♡お゛っ♡♡♡♡クるぅ……♡♡♡んぉ゛っ♡♡♡♡」


 ピストンは数分ほど続いただろうか。

やがて、腹の底からひどく幸せなトロけが突っ張るように膨らみ始め、全身へと広がってきていた。

未知のものだったがそれはあまりにも甘ったるく嬉しく、さらに優しくて、意識や思考といったものは自然とその感覚に集中する。

力任せに無理矢理犯されているという状況のはずだが、どうにも溺れ、浸ってしまう。


「ふふ♡♡♡そのまま身を任せてください……♡♡♡」


「ん゛んっ♡♡♡♡だめっ……♡♡♡あぁああぁっ♡♡♡」


 そんな陶酔しきった頭に、低い声はするりと入り込んだ。

身体は言われたことに従って脱力し、少しずつ満ちていく多幸感を受け容れる。

一瞬拒否しなければという考えが浮かぶものの、Gスポットを今までより優しく雄大なチン先で捏ね回されるとすぐさま消えていく。


「はぁっ……♡♡♡ふああぁぁっ♡♡♡♡ふぅっ……♡♡♡クるぅぅっ♡♡♡♡」


 より気持ちよくなろうと彼は口で呼吸をし、上擦ったいやらしい吐息を出しながら頂点へ向けて肉体の芯から末端までを昂らす。

背中を預ける胸、奥にある胸板は厚く力強く、まるでゆりかごみたいだった。

結果もたらされる安心と落ち着きが、あらゆる障害を取り払ってメスアクメへと、「メス」へと堕としていく。

そして法悦が、限界へと到達した。


「イけ……♡♡♡」


「っ♡♡♡♡――♡♡♡♡♡」


 脳みその髄まで響くような言葉をきっかけとして、射精とは違う染み入るような絶頂が押し寄せてくる。

全身へこみ上げるような痙攣と共に、濃厚な幸せがどこからともなく噴き出し、あらゆるものを覆い尽くしていく。

ぐったりとしてまるで力が入らない四肢も、ぽわぽわとして一切纏まらない思考もただただ気持ちがいい。

知覚できる世界全てが薔薇色に染まって、深い感動すら覚える心地だった。


 あまりに満ち足りた気分は、与えてくれた相手への好意をおびただしく生む。

すると涼が殆ど強姦と言っていい手段で自分を犯した事など気にならなくなってくる。

ここへ導いてくれたのだから、と。

チンポで尻穴を、敏感で激しい快楽を得られるマンコにしてくれたのだから、と。


「はっ♡♡♡♡はーッ♡♡♡♡はーッ♡♡♡♡」


 思いは、アクメが終わりを告げてからも残っていた。

というかたった一度味わっただけだというのに、再びアレを得たくなってくる。

それほどまでに、初めてのメスイキは強烈だった。


「んぉ゛っ♡♡♡♡あ゛ぁっ……♡♡♡♡はいってグるぅっ……♡♡♡♡」


 そんな悠馬の内心を知ってか知らずか、今までずっと浅く、前立腺があるところまでしか入って来ていなかったデカマラは、いよいよ奥を目指して進み始める。

狭まった肉を先端で掻き分け、さらに入口は容赦の無い太竿で拡げながら。

血管がのたくり歪に膨らんだ竿は、ただ挿入しているだけだというのに複数の舌から舐り回されているような気にさせてくる。

それは肛門だけでなく、腸壁もそうだった。


 内側からの圧迫はより強く激しくなっていくが、絶頂とそこまでの道のりを覚えたナカはまた甘みを溜めていく。

当然のように苦しみなど無い。

あるのは最早、満たされて嬉しいという考えだけだ。

そうした肉体、精神双方の悦びは、頂点をぐっと低くする。


「んぅっ♡♡♡♡またぁっ……♡♡♡♡」


「ふふっ♡♡♡」


 結果まだ一分と経過していないだろうに、身体へはぞわぞわと予兆めいたものが迸っていく。

それほどまでに「初回」の好さが、記憶と身体に刻み付けられたのだろう。

実際、心の中で渦巻く期待感は凄まじい。

意識は体内と、侵入中のチンポが常に潰していく前立腺へと集中し、与えられるものを何倍にも増幅する。


 気づけば飲み忘れたよだれが、口の端から胸元へと垂れ、腹や股間へと滴っていた。

目を開けていてもそこに映るものへは全く意識が向かない。

外へ向くとすれば部屋中に響くやたらねちっこい粘音や、背中や足から伝わる激しい熱と滑らかでしっとりした肌の感触といった、興奮を助長するものぐらいだ。

先ほどまで理性を持っていたのが嘘のように、今の彼は自然と快楽を貪っていた。


「ほら、チンポでイけ……♡♡♡メスイキしろ……♡♡♡」


「あ゛っ……♡♡♡イぎゅぅっ……♡♡♡♡――♡♡♡♡♡」


 やがて、再び低い囁きによって脳が痺れ、甘ったるいアクメへと溺れていく。

ずん、と全身がどこか深い所へ沈殿し、法悦が詰まりに詰まった沼へと漬けられる。

しかも二度目で慣れたのか、それは先ほどよりも深く、肉の奥底、骨の髄まで沁み込むようだった。

このために生まれてきたのかもしれないというほどのしあわせを、射精などよりもずっと長く長く味わう。


「へっ♡♡♡♡へっ♡♡♡♡」


 ようやくそんな激しすぎる感覚から戻って来られた時、目からは大粒の涙が溢れ、脱力しきった顎からは舌が出っぱなしになっていた。

うっすらクリアになった頭が今ひどく無様な格好であることを理解するものの、まだまだ残る余韻で身体は気怠く動く気が起きない。


「んぅっ♡♡♡♡」


 そして、そんな風に絶頂を享受している最中に、挿入は終わったようだった。

やや柔らかさの残る尻は涼の股間と隙間なく密着し、へその少し上辺りが内側から膨らまされているのを感じる。

また、何より彼女の両手は悠馬の後頭部で固く組まれ、腕だけによる固定が完璧なものとなっていた。

こうなってしまえば捕らえている者が疲れるまで最早逃げだすことなどできそうもなく、さらに疲れるなどということはまず無いだろう。

できることと言えばあとはオナホみたく一方的に使用され、オスの汁を注ぎ込まれることだけだ。


「あっ♡♡♡」


 その「オス」が、何やら移動をし始めた。


「うあっ……♡♡♡♡」


 到達したのは、洗面台の前だ。

当然鏡に映し出される、自分の姿。


 まず、少し持ち上げられ見やすくなった結合部に目が行く。

アナルには蛍光ピンクの膜に覆われた直径6、7センチはあろうかという太い物体が入れられていた。

しかもその物体、チンポは根本数センチが未だ外にあり、ということは中ほどのもう少し太い場所が今はナカにあるのだ。

やや現実感が無いものの、伝わる熱やカタチが嘘ではないことをありありと証明する。


 さらにそんなチンポによって、感覚通りへそ辺りには確かにあると分かる丘が出来ていた。

やはりこちらも現実味にかけるが、実際に起きている事なのだということも嫌と言うほど理解できてしまう。

その他何か創作物で見る風に胴体と並ぶよう持ち上げられた両脚だって、やけに小さく見えてしまう自らの、興奮しているのに萎えたペニスだって、夢などでは決して無い。


「っ♡♡♡♡」


 ということは、こうして男としての尊厳を辱められ、排泄孔である尻穴を凌辱され、オスとして屈服させられているのに、緩みきった幸せそうな笑みを浮かべている無様な自分も現実なのだ。

だらしなく口の端から顎へ向かって伸びる垂れたよだれの跡も、汗をかいててらつく額も、胸元で触れられてすらいないのに勃起しきった乳首も。


 だというのに見ていて感じるのは、強い嬉しさだった。

加えて恥じらいを覚えこそすれ、拒否や抵抗といった思いは殆ど湧いてこない。

少しあったとしても、体内を満たす異物が軽く擦れただけですぐ消えていく。

女の絶頂をさせられ「メス」になりつつある肉体と精神は、己の「メス」らしい痴態を、確かに悦んでいた。


「……♡♡♡♡」


 続けてそう変化させてくれた自分を抱えるオスへ視線を移す。

鏡越しにこちらへ視線を返してくる彼女の怜悧で理知的な顔を見ると、好意的な激しい情動が溢れ出した。

大きくてぎらぎらした瞳も、薄く小さな唇も、高くすっきりした鼻もすべてが愛おしい。

また三角筋によって盛り上がった広い肩に、抱きかかえてくれる小麦色の太い腕に発情し、膣穴がきゅんと疼く。

まるで恋する乙女のように。


「お゛っ♡♡♡♡」


 そうして大量に湧き出してくる気持ちを伝えるべくじっとりした目つきを送っていると、涼の腰は揺すられ、肉棒が暴れた。

ふたなりフェロモン以外の要因でも昂り、感度を上げていた腸肉は、たったそれだけでも思わず身体に力が入り、肺から空気が搾り出されるほどの快楽を伝えてくる。


「んぉ゛っ♡♡♡♡あ゛っ♡♡♡♡はひっ♡♡♡♡」


 そしてそのまま彼女は、しっかりと腕を使って固定した肉体を使い、チンポを荒々しく扱き始めた。

鍛え抜かれた逞しい下半身をしっかりと引き、高く突き上げ、それを何度も何度も衰え知らずの速度で繰り返す。

相手の事を微塵も考えたりしない、貪るような男性側本位のピストンだ。

結合部からはローションが粘ついた音を鳴らし、肌と肌は片方が宙に浮いているというのに衝撃が全く逃げず乾いた音を大きく鳴らす。


 だが、悠馬が味わっているのは純粋で凄まじい法悦だけだった。

性感帯が震わされ、潰され、摩擦されて一気にアクメまで押し上げられていく。

恋心を植え付けられた人からされているとなれば猶更だ。


「あぁ゛あぁぁっ♡♡♡♡イぎゅっ♡♡♡♡イぎましゅっ♡♡♡♡――゛♡♡♡♡♡」


 全身が痙攣し、著しい多幸感に見舞われる。

意識と身体がトロけ、あらゆるものを手放して湧き出すものに任せる。


「ふふっ♡♡♡そのままお尻締めててくださいね……♡♡♡私もそろそろイきますから……♡♡♡」


「っ♡♡♡♡ぁぃ……♡♡♡♡」


 ただそんな中で、聞こえてきた上気した、しかしやはり一切息の上がっていない声は脳に意味を伝えた。

いやらしくやわらかいひだひだのついた肉で、ふたなりマラが気持ちよくなれるようきつく熱烈に抱きしめていく。


「ふーっ♡♡♡」


「っぁ……♡♡♡♡」


 すると、後頭部辺りに火照った息を感じる。

さらに体内の物体が膨らみ、纏った血管をいきり立たせて脈動を増やす。

痙攣も同じように増え、底部の尿道から何か重たいものがこみ上げてくるのが、コンドーム越しでも分かった。


「ん~♡♡♡♡」


「ふあっ♡♡♡♡せーしっ♡♡♡♡――♡♡♡♡♡」


 やがて、チンポがひときわ大きく蠢くと共に、ゴムが火傷してしまいそうな熱を持った液体によって膨らみ始める。

その速度は異常であり、一瞬で水風船ほどまで肥大化したが、すぐさま行き場を無くして逆流しだした。

結果腸壁全体が半固形のような感触の白濁汁によって満遍なく舐られていく。

それは、無数の淫具に最大出力で責められているかのような心地だった。


 ピークから降り始めていた絶頂は再び上昇し、そして「前回」を優に超えた高く深い地点へとメスを導く。

味わうのは、身体の輪郭があやふやになり、世界へ溶けだしていく感覚だ。

周囲に充満していく濃密なイカ臭さがそれを助長し、知覚できるものが全て真っ白、もしくは真っ黒に塗り潰される。

彼の頭はそんな絶大な幸福によって、涼の都合のいいものへと変質していった。







「ふぅっ……」


 中田悠馬は、以前より相当足しげく通うようになったジムでトレーニングに精を出していた。

最初こそ健康維持のためだった運動も近頃はモチベーションが大きく高まり、最近では食事や、スキンケアなどの美容にまで気を配っている。

激しくて強い「目的」のあるトレーニングは、これまでよりもずっと愉しい。

今日も、いつも自分に課しているメニューより多くの回数、種目をこなしていた。


「~♪♡♡♡」


 そうして彼はもう切り上げようと思い、壁面に設置されている巨大な鏡と向き合い、日課となっている自分の身体の確認を行う。

そこに映るのは、オスを誘惑するために優れた、ただただいやらしい卑猥な肉体だ。


 腹は女性のように細くくびれており、引き締まって縦長となったへそからは自分でも興奮してしまうような色気が漂っている。

またへその下には適度な脂肪が乗り、指を食い込ませれば素直に形を変え、柔らかな感触が返ってきた。


 着ているスポーツ用ブラジャーに収められた胸は前より仄かに膨らみ、中では常に勃起状態の乳首が潜む。

散々弄られて大きくなってしまい、敏感にもなったそれは、運動すると擦れて気持ちいい。


 そして特に目を惹くのが下半身だ。

叩かれ、腰を打ち付けられ続けた尻はたっぷりと肉をつけ、着圧のスポーツタイツを履いているというのに身体からかなり出っ張っている。

加えて服の支えが無かったとしても、鍛えられた内部の筋肉によって垂れることなく上を向くほどハリがあった。

悠馬自身としても相当力を入れている部位は、普段使ってくれる人からの評判も良い。


「あっ♡♡♡」


 そんな風に自分のカラダへ見惚れていると、傍らへ近寄ってくる存在が居た。

橘涼だ。


 後から聞いた話だが、このプライベートトレーニングエリアは彼女のようなふたなりが抱きたい相手を選び、そしてサービスという餌で釣る罠なのだという。

元から自分は、メスにされるためこの場所へと招かれたのだ。

それを知った時、とても興奮したのを覚えている。

自分は、選んでもらえたのだと。


「んぅっ♡♡♡あっ♡♡♡もっと触ってぇ……♡♡♡」


「ふふ♡♡♡」


 涼は背後にぴったりくっついてくると、周囲の目もはばからず何の遠慮もなく尻を揉みしだき、スポブラへ手を突っ込んで乳首を弄ってくる。

というか今この時間には、彼女が一度抱き、メスへと堕とした人物しかいないのだ。

その中で自分を使いたいと思ってくれたことを嬉しく思いつつ、応じるようにこちらもタイツ越しのチンポをさすり、全身を寄せる。

漂ってくるフェロモンによって自然と、乳頭は先ほどより硬く張りつめ、尻穴がひくひくと挿入をねだってしまう。

手つきにも熱がこもっていく。


 肌の湿り具合や匂いの濃さから察するに、どうやら涼も今日のメニューを終え、さらに昂っているようだった。

悩まし気な声を出し、そうした劣情を煽る。


「んっ♡♡♡」


 するとやがて、きつく閉じられた尻たぶの間に指が侵入し、アナルを撫でてきた。

秘部を愛撫するのは、「セックスするぞ」というサインだ。

肉体の堪能を終え、出口へと向かう彼女を追いかけていく。


「今日も僕のこと、沢山使ってくださいね?♡♡♡」


「うん……♡♡♡」


 横に並び媚びると、肩を抱かれる。


 そうして涼に我が物として扱われる悠馬の、中にあるモノによってやや膨らんでいるが、決して膨らみはしない平坦な股間へ出来ていくシミは、決して汗のせいだけでは無かった。



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