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※The English version is also below.

※한국어판도 밑에 있어요.


「ようやく、ですのね」


 わたくしは王宮内の地下牢獄へと続く階段を降りているところでした。

 理由は簡単、レイと面会するためです。

 彼女は今現在、ユー様に関する一連の出来事の関係者ということで取り調べを受けていて、わたくしはようやく面会を許されたのです。


 牢獄へと続く階段は数メートル置きに灯された頼りない灯りしかなく、薄暗く足下もおぼつきません。

 わたくしは案内の者に続いてゆっくりとそこを降りていきます。

 普段大抵のことには動じないレイも、流石にこんな場所に閉じ込められていれば気が滅入っていることでしょう。


「着きました、クレア様」

「ありがとう。外してちょうだい」

「はっ……その……」

「何ですの?」

「ドル様によろしくお伝え下さい。レイ=テイラーに手荒なことは一切していない、と」

「!」


 案内の兵士は敬礼をすると下がっていきました。

 ……何ですのよ。

 お父様、しっかり手を回して下さっていたんですのね。


 わたくしが牢へと近づくと、レイはすぐに気がついたようでした。

 想像していたよりもずっと元気そうです。

 わたくしはほっとしたのを押し隠しつつレイに声をかけることにしました。


「思ったよりも顔色がいいですわね」

「クレア様が来て下さいましたからね」


 一週間ぶりに会った挨拶がこれです。

 こんな状況にあっても、レイはレイということのようです。

 たった七日間しか離れていないのに、もっととても長い時間引き離されていたような気がします。

 久しぶりに会うレイは心なしか嬉しそうに見えました。


「牢屋暮らしはどうでしたの?」

「お陰様で、それほど酷い目には遭いませんでした」


 レイ曰く、取り調べはそれほど苛烈なものにはならなかったということです。

 牢に入れられ行動の自由こそなくなったものの、拷問などは一切なく、聴取はもっぱら言葉による聴き取りだけだったようです。

 これはユー様を初めとする関係者が全て口裏を合わせていたことが大きいでしょう。

 ユー様は自分が全て指示したと言っていますし、リリィ枢機卿やわたくしもそのように証言しました。

 ロッド様やセイン様も同じです。

 なにより、理由は分からないのですが、ロセイユ陛下が味方してくれていて、王宮内のほとんどがレイの味方となっているのでした。


 これならすぐにでも釈放されそうですわね、などと、わたくしが油断していると、


「まあ、食事に毒を盛られたりはしましたけどね」

「は!?」


 耳を疑うような発言が飛び出しました。

 レイによれば、リーシェ王妃の一派による報復だろうとのこと。

 今回の件で一番ダメージが大きかったのはリーシェ様です。

 悲願だったユー様の王位継承をまるまる潰されたのですから、彼女が受けた傷は大きいどころではないかも知れません。

 報復の一つや二つしたくもなろうというものでしょう。

 そのこと自体に驚きはなかったのですが、まさか毒を盛るまでしていたなんて。

 幸い、レイは用心して全ての食べ物を検分して、解毒魔法をかけていたらしく、難を逃れたとのことです。

 解毒に使う魔法杖もお父様の口利きだったとか。

 お父様、流石ですわ。


「よく無事でしたわね……」

「美咲のおかげです」


 レイがよく分からないことを言い出しました。

 ミサキというのは確か、レイの初恋の話に出て来た鼻持ちならない女性のことではなかったでしょうか。

 レイは彼女と和解したとは言っていましたが。

 ミサキが抱える性別違和の悩みについて心の底から嘆いたレイを思うと、その和解は本物ではあったのでしょう。

 ですが、確かミサキは自ら命を絶ったはず。


「ミサキの……? どういうことですの?」

「夢を見たんです」


 牢に入れられたその日の夜、ミサキが枕元に立ったのだ、とレイは言いました。


『相変わらず、度しがたいお人好しね、アンタは』


 そんな彼女らしい憎まれ口を叩きながら。


『でも、よくやったわ。少しすっとした。同じ悩みを持つ子を救ってくれてありがとう』


 枕元のミサキはそうやって不器用に笑ったそうな。


『間抜け面してんじゃないわよ。食事には気を付けなさい』


 それだけ言うと、レイが何か返事をする間もなく、彼女は消えてしまったのだといいます。

 不思議な話です。


「そんなことがあるんですのね」

「まあ、私の願望が作り出した幻なんでしょうけれどね」


 幻だとは言いながらも、レイは嬉しそうでした。


「にしても……だから言ったじゃないですの。危険だって」

「ホントですねー」


 今回のレイの悪巧みに当たって、一番反対したのは他でもないこのわたくしです。

 ミサキの件をだしにされて結局説得されてしまいましたが、最後まで納得はしませんでした。

 下手をすれば王宮を敵に回すことになるのです。

 王侯貴族の世界の恐ろしさを、肌で知っているわたくしが反対するのは当然のことでした。


「ここにいると、外のことが全然分からないんですよ。その後どうなりました?」

「概ねあなたの思惑通りですわ」


 わたくしはレイに奉納舞の後起きたことを説明しました。

 まず、ユー様は修道院へ送られました。

 既に述べた通り、王宮は事実と異なる説明をしており、名目上は病気療養のためということになっています。

 ですが、事はもう王宮の手を離れていると言っていいでしょう。

 ユー様が自由の身になるのも、きっとそう遠い先の話ではありません。


「ユー様から言づてを預かっていますわ。『ありがとう。このお礼はいつか必ず』だそうですわ」

「そうですか。身体のことはどうなりました?」

「やはり少し騒ぎになりましたわね。事情を知るものは、満月の夜の一時的なものと思っていたようですもの」


 奉納舞の時にユー様の身体が女性化していたのは、あの日が満月だったからというだけではなかったのです。

 月の涙を使って異性病を完治させていたからなのでした。

 月の涙を持ち出すには、枢機卿以上の身分の者二人以上が許可を出す必要がありましたが、リリィ枢機卿とユー様ご自身の二人に協力して貰ったので問題はありませんでした。

 リリィ様も取り調べを受けましたが、ユー様の頼みで断れなかったと説明しています。

 これもレイの計画に基づくユー様の指示です。


「リリィ様も身分のある方ですから、王室もそう簡単に罰することは出来ないようですわね」

「ミシャはどうしてます?」

「ご両親を説得中ですわ」


 ミシャは学院を辞めてユー様のいる修道院に行きたいようですが、さすがに実家に止められています。

 ミシャは究めて優秀な学生です。

 ユール家とすればその将来に期待していたわけですから、それをなげうって修道院に入ってしまうのは惜しいと考えているのでしょう。

 もっとも、ユール家には優秀な跡継ぎが他にもいますから、娘の好きにさせたらどうか、と母親はミシャの味方をしてくれているようです。

 修道院のユー様から「側にいて欲しい」と請われていることも大きいでしょう。


「ご両親も、これまでミシャには散々苦労を掛けていたようですから、あまり強く出られないみたいですわよ」

「そうですか」


 わたくしの見る限り、ミシャはずっとユー様を慕っていました。

 ミシャの悲願が叶うのも時間の問題でしょう。


「クレア様はどうでした?」

「わたくしは特に何も。せいぜい使用人が捕らえられて、ばつが悪い思いをしているくらいですわ」


 などと強がっていますが、この七日間は想像以上に堪えました。

 レイが酷い目に遭わされていないかと気が気ではありませんでした。

 まだ率直にそう口にしたことはありませんが、わたくしにとってレイの存在がこんなに大きくなっていたのか、と自分でも驚くほどです。

 お母様の時の二の舞にならなくて、本当に良かったですわ。


「それだけですか? 寂しいとか恋しいとかは?」

「どれだけ自信家ですの、あなたは」


 内心を見透かされたようなことを言われて動揺したのを押し隠しながら、わたくしは悪態をつきました。

 レイは「分かっていますよ」とばかりにニヤニヤ笑っています。

 ホント性格の悪いこと。


「ドル様は何か仰ってました?」

「それが何も」


 わたくしは首を傾げました。


「てっきり、レイをクビにされるかと思っていたのですけれど、そんな話もありませんし……。あなた、一体お父様のどんな弱みを握っていますの?」

「そんなんじゃないですよ。ただドル様の器が大きいだけです」


 などとレイは言っていますが、二人の間には絶対に何かあります。

 レイもお父様も何も話してくれないので、わたくしは仲間はずれにされたようで少し寂しい気持ちになります。

 いつか話してくれるのでしょうか。


 などとしばらく話し込んでいると、牢番がやって来ました。


「クレア様。申し訳ございませんが、取り調べの時間です」

「これ以上何を取り調べるといいますの? このものはユー様に命じられただけともう分かったでしょう」


 言外に早く解放なさいと滲ませたのですが、返ってきたのは意外な答えでした。


「それが……。ロセイユ陛下自ら取り調べをなさるということで……」

「陛下が?」


 どういうことでしょう。

 てっきり、ロセイユ陛下はレイの味方だと思っていたのですが。


「とにかく、今日はお帰り下さい」

「仕方ありませんわね。また来ますわ」


 わたくしは後ろ髪を引かれる思いで牢を後にしました。


 ◆◇◆◇◆


 その夜、寮の部屋で。


「と言うわけで、リーシェ様に宣戦布告されましたので受けて立とうと思います」

「料理に毒くらいじゃせいぜい警告だよー。杖が持ち込まれてるの、リーシェ様が知らないわけないじゃないのさー」

「ですが、わたくしのレイにあんなことを!」

「どうどう。落ち着いてー」


 でも、そんな怒りも長くは続きませんでした。

 わたくしはこの時予想もしていなかったのです。

 レイが王立学院籍を剥奪され、陛下の特務官に任命されることになるなんて。



*Translation below was made possible with the help of Sephallia. Thank you so much Sephallia.


67. At the Underground Prison


“At last.”


I was descending the stairwell in the royal palace that led to its underground prison. The reason was simple: I was here to visit Rei. She was detained for her involvement in the recent chain of events surrounding Yuu-sama, and I had finally received permission for a visitation.


The stairwell that led to the prison was only poorly lit by shabby torches spread several meters apart. On top of that, the footing was poor as well. I very carefully followed the guard guiding me as we continued down. I was sure that even Rei, who normally never let anything get to her, would feel depressed locked up in a place like this.


“We’re here, Claire-sama.”

“Thank you. Let us meet alone.”

“Of course… Uhm…”

“What is it?”

“We have made sure not to treat her roughly, I ask that you please relay that to Dor-sama on my behalf.”

“!”


The soldier who had escorted me here gave a brief salute and left… Really, so my father had actually taken precautions after all.


When I approached her cell, Rei noticed me immediately. She seemed to be doing much better than I had imagined. Cautious to try and hide my relief, I called out to Rei.


“You seem to be doing much better than I expected.”

“Well that’s because Claire-sama came to visit me.”


That was our first exchange after an entire week. I suppose even in a situation like this, Rei was still Rei. Even though seven days couldn’t really be considered a long time, I felt as though we had been pulled apart for much longer. Despite her circumstances, Rei really did appear happy.


“How have things been in the prison?”

“They haven’t done anything horrible, much thanks to you.”


According to Rei, they did not do anything extreme during their interrogation. While she had been throne into a cell, limiting her freedoms, they had not tortured her, and the interrogation was only an exchange of words. This was largely thanks to Yuu-sama and everyone else ensuring their testimonies lined up. Yuu-sama claimed that she had orchestrated everything, Cardinal Lily, I, and even Rodd-sama and Sein-sama had testified the same. Above that, though I could not claim to know the reason, King Rousseau also seemed to have taken our side, meaning that most of the palace was on Rei’s side as well.


Given all that, I was almost sure that she’d be released soon, but perhaps I was too naive.


“Well, they did try to poison my food though.”

“Huh!?”


For a moment I doubt my ears. According to Rei, it was likely done by someone from Queen Lishe’s faction. The party that had taken the most damage from recent events was no doubt Lishe-sama. Her dearest wish was for Yuu-sama to take the throne, but with that possibility crushed before her eyes… I suppose it was only natural that she might seek revenge in one way or another. So while I wasn’t surprised that she tried something, I was surprised that she would stoop as low as poison. Fortunately, Rei had kept her guard up and used her magic to analyze and treat any food before consuming it. She told me that she only had the wand to do so due to my father’s negotiations. Just as I’d expect from him!


“You did well to protect yourself…”

“It was all thanks to Misaki.”


Rei said something that didn’t seem to make sense. Wasn’t Misaki that unbearable wretch that Rei had mentioned when she talked about her first love? I suppose Rei had said that they had made up… Considering how much Rei grieved over Misaki’s gender dysphoria, perhaps they truly had. But if I recall correctly, Misaki had already ended her own life.


“Thanks to Misaki…? What do you mean?”

“I saw her in a dream.”


Rei told me that on the night she had been imprisoned, Misaki visited her in her dreams.


『As always, you’re an irredeemable pushover, huh.』


It seemed just like her to mix in the insults.


『That said… You did well. Felt good seeing that. Thank you for saving someone with a similar problem.』


With that, the Misaki who appeared in Rei’s dream gave a clumsy smile.


『Enough with that dumb look on your face. Hey, be careful with the food.』


According to Rei, after saying all that, without giving Rei the chance to respond, she disappeared. What a strange phenomena.


“So things like that really happen.”

“Well, it could’ve just been an illusion that came from my latent desires.”


In spite of what she said, Rei’s happiness was apparent.


“That aside… This is exactly what I was trying to tell you. This was too dangerous.”

“Really was, wasn’t it~”


The one who had been most against Rei’s schemes this time was none other than I. In the end, hearing about what happened to Misaki persuaded me, but I opposed everything to the very last second. In the worst case we would have made the entire palace our enemy. As I knew just how terrifying that reality would be in an aristocracy, it was only obvious that I would stand against the idea.


“Being in here like this I have no idea what’s going on outside. What happened after?”

“It all happened more or less just as you thought it would.”


I explained what happened in the aftermath of the Offering Dance. First, Yuu-sama was sent to live at a monastery. As already stated, the palace tried to cover things up by presenting an alternate reality stating that Yuu-sama was sent there to be treated. Despite their attempts, it was clear the situation had fallen out of the palace’s hands. I didn’t think that we were too far off from a time where Yuu-sama could once again live freely.


“I have a message for you from Yuu-sama.『Thank you, I’ll make sure to thank you when I get the chance.』That’s what she said.”

“I see. So? What about the situation surrounding her body?”

“Perhaps to be expected, that did cause a bit of a stir. I mean, the people aware of her situation thought that it had just been a temporary lapse caused by the full moon.”


Yuu-sama had not returned to her female body during the Offering Dance only due to the full moon. It was because we had treated the opposite sex disease with the Tears of the Moon. Normally we would have needed two members of the church of rank of Cardinal or greater to access the Tears of the Moon, but because we had Lily-sama and Yuu-sama cooperating with us there were no problems there. They had investigated Lily-sama as well, but she simply explained that she couldn’t deny a request from Yuu-sama. This had also been one of Yuu-sama’s instructions.


“Lily-sama herself stands high on the social ladder so I don’t believe it will be easy for the palace to take punitive action.”

“How about Misha?”

“She’s in the middle of convincing her parents.”


It appeared that MIsha wanted to quit the academy and follow Yuu-sama to the same monastery, but of course, her parents were against the idea. Misha was an outstanding student at the academy. From House Yule’s perspective, they wanted to entrust their future to her, so they must have felt that having her abandon her studies to enter a monastery would be a waste. That said, House Yule had other capable heirs as well so Misha’s mother had taken her side saying, “Can’t we allow our daughter to live as she pleases?” I believe the fact that Yuu-sama herself had said, “I want her by my side.” was a large factor as well.


“Up until now, Misha’s parents had put her through a lot of hardship, so it was difficult for them to take a firm stance.”

“That makes sense.”


From my perspective, it was clear that Misha had long held affections for Yuu-sama. I felt that it was only a matter of time before Misha’s desires were fulfilled.


“Then, what about you, Claire-sama?”

“Nothing of note happened to me. At the most you could say that my maid was taken from my side… It was a bit of an inconvenience.”


I put on airs, but in truth these last seven days had been more taxing than I had ever imagined they would be. I was in a constant state of worry that something terrible may have happened to Rei, I just couldn’t contain myself. I still couldn’t voice these feelings, but it really surprised me just how important Rei had become. From the bottom of my heart, I felt relieved that this had not become a repeat of what had happened with my mother.


“Is that all? Didn’t you miss me or feel lonely?”

“Just how much confidence do you have in yourself?”


It was as though she had seen straight through my facade. While trying to hide the inner turmoil, I lashed back harshly. In response, Rei had a wide grin as if to say that she knew all along. Really, she had such a twisted personality.


“Has Dor-sama said anything?”

“He hasn’t.”


Thinking about it, I tilt my head to one side.


“I was sure that he would fire you or at least take some sort of punitive action, but I’ve heard nothing of it… Rei, just what dirt do you have on my father?”

“It’s nothing like that, really. Dor-sama simply has a very big and accepting heart.”


Or so Rei claimed, but I knew that there had to be something the two were hiding. Neither Rei nor father would tell me anything about it, so I felt a little left out. I could only wonder if they’d let me in on their secret one day.


We continued to talk, but then the prison guard came by.


“Claire-sama. I beg your pardon, but it is time for us to continue our investigation.”

“Just what is left to investigate? Isn’t it already clear that she was only acting under Yuu-sama’s orders?”


Within my words I implicitly demanded for Rei’s prompt release, but the response I received surprised me.


“Well uhm… King Rousseau will be inquiring directly…”

“HIs Majesty will be?”


I couldn’t help but wonder what this was about. I had assumed that King Rousseau was on Rei’s side, but…


“At any rate, this ends your visitation for today.”

“I suppose there’s no helping it. I’ll come again.”


I very reluctantly left Rei’s cell.


 ◆◇◆◇◆


That night, back at the dorms.


“So, basically, Lishe-sama has declared war! I think I’ll accept the challenge and strike back.”

“Poisoning someone’s food is at worst a warning~ Rei was allowed to bring a wand in with her, there’s no way that Lishe-sama wasn’t aware of that~”

“Even so! To think that she’d try to do something like that to my Rei!”

“Woah there, woah, calm down a little~”


In the end, my anger did not last very long. There was no way that I could have predicted what was about to happen. I never would have expected that His Majesty would expel Rei from the Royal Academy and appoint her as a Special Official who reported directly to him.



*아래의 번역은 "와타오시 번역"의 협력으로 실현되었습니다.고마워요, "와타오시 번역"


67. 지하 감옥에서


“드디어 이때가 됐네요.”


저는 왕궁 안에 있는 지하 뇌옥으로 이어지는 계단을 내려가는 중이었습니다.

이유야 간단합니다. 레이를 만나기 위해서입니다.

레이는 현재 유 님이 연루된 일련의 사건들과 관련이 있는 인물로서 조사를 받는 중이라, 저는 이제야 간신히 면회 허가를 받았습니다.


뇌옥으로 연결된 계단은 몇 미터 간격으로 설치된 불빛 말고는 아무런 조명도 없어서 발밑이 잘 보이지 않았습니다.

저는 안내인 뒤를 천천히 따라가면서 조심스럽게 발걸음을 옮겼습니다.


평소 어지간한 일에는 눈도 꿈쩍 안 하는 레이라도 이런 우중충한 장소에 갇혀 있으면 아무래도 심적으로 많이 불안하겠죠.


“다 왔습니다, 클레어 님.”

“고마워요. 그럼 잠시 자리를 비켜주세요.”

“넵…… 그리고…….”

“뭔가요?”

“도르 님께 말씀을 전해주십시오. 레이 테일러한테 위해가 가는 일은 일절 없었다고요.”

“!”


안내를 해준 병사는 경례를 하고서 자리를 떠났습니다.

……뭐냐고요.

아버님도 참, 빈틈없이 손을 써두셨던 거네요.


제가 창살을 향해 다가가자 레이는 바로 인기척을 깨달았나 봅니다.

상상했던 것보다 훨씬 더 멀쩡해보였습니다.

솟구치는 안도감을 내색하지 않도록 감추면서 레이한테 말을 걸었습니다.


“생각했던 것 이상으로 안색이 괜찮아 보이네요.”

“클레어 님이 직접 와주신 덕분이에요.”


일주일 만에 하는 인사가 저겁니다.

이런 상황에 처해도 레이는 역시나 레이인가 봅니다.

떨어져 있던 기간이 겨우 7일밖에 안 되는데도 훨씬 더 오랫동안 만나지 못했던 것 같은 느낌이 듭니다.

제 기분 탓인지 오랜만에 만나는 레이는 매우 기뻐하는 기색이었습니다.


“감옥 생활은 어땠나요?”

“걱정해 주신 덕분에 그렇게까지 심한 꼴을 당하지는 않았습니다.”


레이 말로는 취조를 받긴 했어도 그다지 가혹하지는 않았다고 합니다.

감옥에 갇혀 있느라 자유롭게 행동할 수는 없었지만 고문 같은 건 전혀 없었고, 시종일관 문답 형식의 사정청취 뿐이었다고 합니다.

이건 유 님을 비롯한 관련자 전원이 사전에 말을 맞춰 뒀던 게 컸겠죠.

유 님은 모든 일들은 자기가 직접 지시한 거라고 주장했을 테고, 릴리 추기경이나 저도 똑같이 증언했습니다.

로드 님과 세인 님도 마찬가지입니다.

무엇보다도 정확한 이유까진 모르겠지만 로세이유 폐하가 우리를 편들어주신 덕분에 왕궁 내의 인물 대부분이 레이의 아군인 상황입니다.


이러면 금방 석방되겠네요, 하고 제가 속으로 긴장을 풀고 있었더니,


“뭐, 식사에 독이 들어있기는 했지만요.”

“뭐라고요?!”


귀를 의심할 수밖에 없는 말이 들렸습니다.

레이가 설명하기를 리세 왕비 일파가 벌인 복수일 거라고 합니다.

이번 사건으로 가장 큰 타격을 입은 사람은 리세 님입니다.

가장 큰 소원이었던 유 님의 왕위 계승이 그야말로 박살이 나버렸으니 리세 님이 받은 상처의 크기는 감히 상상하기 힘들 정도일지도 모릅니다.

그야 당연히 복수하고 싶을 만도 하죠.

그러니 뭔가 행동에 나섰다는 것 자체야 그리 놀랍지 않지만 설마 식사에 독을 탈 줄이야.

다행히도 레이는 용의주도하게 모든 식사를 검사한 뒤 해독마법을 걸어서 화를 피했다고 합니다.


“잘도 무사했군요…….”

“미사키 덕분입니다.”


레이가 영문 모를 소리를 꺼냈습니다.

미사키라면 분명 레이가 얘기해준 첫사랑 이야기 때 들었던 심술궂고 얄미운 여성의 이름 아니었나요.

레이는 나중에 잘 화해했다고 말하긴 했지만요.

미사키가 품고 있던 성별위화감의 고민을 진심으로 안타까워하던 레이의 모습을 보면 정말로 화해한 게 맞겠죠.

그건 그렇고 미사키는 스스로 목숨을 끊었다고 들었는데.


“미사키……? 그게 무슨 말이에요?”

“꿈을 꿨어요.”


감옥에 갇혔던 날 밤에 미사키가 머리맡에 서 있었다고 합니다.


『참 너는 여전히 구제할 길이 없을 정도로 사람이 좋네.』


변함없는 밉살스러운 어조로,


『하지만 잘했어. 조금 후련해졌어. 나랑 같은 고민을 품은 아이를 구해줘서 고마워.』


레이 앞에 나타난 미사키는 그 말과 함께 어색하게 웃었다고 합니다.


『얼빠진 표정 짓지 말라고. 식사에는 주의를 기울이도록 해.』


그 말만 남기고서 뭐라 대답할 틈도 주지 않고 사라졌다나요.

신기한 이야기입니다.


“그런 일이 다 있네요.”

“뭐, 제 마음의 열망이 만들어낸 환상일지도 모르지만요.”


말로는 환상일지도 모른다고 하면서도 레이는 기뻐하는 표정이었습니다.


“그렇다고는 해도…… 그래서 제가 말했잖아요, 위험하다고.”

“정말 그러네요—.”


이번에 레이가 꾸민 계획을 실행하기 전에 가장 크게 반대한 사람은 다른 누구도 아닌 바로 저입니다.

미사키 얘기를 꺼내면서 설득하는 말에 결국 마지못해 찬성했지만 마지막까지 납득하지 못했습니다.

자칫하면 왕궁을 적으로 돌리게 될지도 모르니까요.

귀족 세계의 무서움을 누구보다 잘 아는 저로서는 당연히 반대할 일입니다.


“여기 있으면 바깥 상황을 전혀 알 수 없어요. 그 후에 어떻게 됐나요?”

“대체로 당신이 짐작했던 대로예요.”


저는 레이한테 봉납무 후에 일어난 일들을 설명했습니다.

먼저 유 님은 수도원으로 보내졌습니다.

앞서 말했다시피 왕궁은 사실을 감추고 다른 해명을 내놓은 상태라, 명목상으로는 병의 치료와 요양을 위해 수도원에 간걸로 되어있습니다.

하지만 이미 사태는 왕궁이 수습할 수 있는 단계를 넘어섰다고 해도 과언이 아니겠죠.

유 님이 자유의 몸이 되는 것도 그러 먼 미래가 아닐 겁니다.


“유 님께 전언을 받아왔어요. 『고마워, 이 일에 대한 보답은 언젠가 반드시』라고 했어요.”

“그렇습니까. 유 님의 신체에 대해선 어떻게 되었나요?”

“역시나 작은 소동이 일어났죠. 사정을 알고 있는 사람들은 만월의 밤에 의한 일시적인 현상일 뿐이었다고 생각하고 있었던 모양이니까.”


봉납무 때 유 님의 몸이 여성으로 돌아왔던 건 그날이 마침 보름달이 뜨는 밤이었기 때문에 그랬던 게 아니었습니다.

진즉에 달의 눈물을 써서 이성병을 완치했기 때문이었습니다.

달의 눈물을 가지고 나오기 위해선 추기경 이상의 신분을 가진 사람 두 명 이상이 허가를 내려야 하지만 릴리 추기경과 유 님이 협력해준 덕분에 문제없이 해결됐습니다.

릴리 님도 사건 이후 취조를 받았지만 유 님의 간절한 부탁을 뿌리칠 수 없었다고 해명했습니다.

그것도 다 레이의 계획을 토대로 사전에 유 님이 내린 지시입니다.


“릴리 님도 높은 신분을 가진 분이니만큼 왕실에서도 그렇게 쉽게 처벌할 수는 없는 모양이에요.”

“미샤는 어떻게 됐나요?”

“부모님을 설득 중이에요.”


미샤는 학교를 그만두고 유 님이 계신 수도원으로 가고 싶은 모양인데 가문에서 만류하고 있습니다.

미샤는 아주 우수하고 뛰어난 학생입니다.

가문에서는 미샤의 장래에 많은 시대를 걸고 있었을 테니까 학업을 팽개치고 수도원에 들어가는 건 너무 아깝다고 생각하는 거겠죠.

사실 유르 가문에는 비단 미샤가 아니더라도 우수한 후계자가 있으니 딸이 원하는 대로 하게 해주자고 미샤의 어머니가 편을 들어주고 있다고 합니다.

수도원에 있는 유 님이 직접 “내 곁에 있어줘”라고 말한 것도 큰 이유겠죠.


“부모님도 지금까지 미샤한테 잔뜩 고생을 시켰던 모양이라 그다지 강하게 나가지는 못하는 것 같아요.”

“그런가요.”


제가 보기에 미샤는 줄곧 유 님을 연모하고 있었습니다.

미샤의 염원이 이루어지는 것도 시간문제겠네요.


“클레어 님은 어떠셨나요?”

“저는 딱히 아무것도요. 기껏해야 메이드가 체포당해서 심기가 불편한 정도예요.”


아무렇지도 않은 양 말했지만 지난 일주일은 상상이상으로 견디기 힘들었습니다.

레이가 혹시 고초를 겪고 있지는 않을까 싶어서 마음은 좌불안석이었습니다.

아직까지 속마음을 솔직히 입으로 말한 적은 없지만 레이의 존재가 저에게 있어서 이만큼이나 커졌다는 건 스스로도 깜짝 놀랄 정도입니다.

어머님이 돌아가셨을 때의 전철을 똑같이 밟지 않아서 정말로 다행이에요.


“그것뿐인가요? 제가 없어서 외롭다든가, 그립다든가.”

“도대체 그 근거 없는 자신감은 뭔가요, 당신.”


제 속내를 꿰뚫어본 것처럼 던지는 말에 동요하는 속마음을 숨기면서 퉁명스레 말했습니다.

레이는 말 안 해도 다 안다는 듯이 싱글벙글이에요.

정말 성격도 짓궂다니깐.


“도르 님은 따로 하신 말씀이 있나요?”

“아무 말도요.”


저는 고개를 갸웃했습니다.


“저는 레이를 해고하라는 말을 들을 게 분명하다고 생각했는데 그런 말씀도 없었고……. 당신은 대체 아버님의 어떤 약점을 쥐고 있는 건가요?”

“그런 거 아니라니깐요. 그저 도르 님의 도량이 넓어서 그런 거예요.”


레이는 그렇게 말하지만 두 사람 사이에는 틀림없이 뭔가 있습니다.

아버님도 그렇고 레이도 저한테는 아무것도 말해주지 않아서 저만 따돌리는 기분이라 조금 서운한 마음이 듭니다.

언젠가는 얘기해주는 걸까요.


잠시 그렇게 얘기에 열중하고 있었더니 간수가 다가왔습니다.


“클레어 님, 정말 죄송하지만 취조 시간입니다.”

“이 이상 뭘 취조하겠다는 거죠? 이 자는 유 님한테 명령을 받았을 뿐이라는 걸 알게 됐잖아요.”

그러니까 빨리 석방하라는 뜻을 내비치고 있었는데 의외의 대답이 돌아왔습니다.


“그것이…… 로세이유 폐하께서 직접 취조를 하시겠다고 하셔서…….”

“폐하께서?”


무슨 일일까요.

로세이유 폐하는 분명 레이의 편일 거라고 생각했는데요.


“어쨌든 오늘은 그만 돌아가 주십시오.”

“어쩔 수 없군요. 또 올게요.”


저는 떨쳐낼 수 없는 찜찜한 기분을 느끼며 감옥을 나왔습니다.


◆◇◆◇◆


그날 밤, 기숙사 방에서.


“지금 설명한 대로 리세 님한테 선전포고를 당했으니 얼마든지 상대해줄 생각이에요.”

“요리에 독을 넣은 정도야 경고에 불과하다고—. 감옥 안에 마법지팡이를 들고 들어갔던 걸 리세 님이 몰랐을 리가 없잖아—.”

“그래도 감히 저의 레이한테 그런 짓을!”

“자자. 진정해—.”


하지만 제 분노는 그리 길게 가지 않았습니다.

저는 이 순간까지 예상조차 하지 못했던 겁니다.

레이가 왕립학교에서 제적당하고 폐하의 특무관으로 임명될 줄이야.

Comments

Anonymous

クレア様の「わたくしのレイ」ってセリフにいつもニヤニヤしちまう… 今日も更新ありがとうございます! 誤字があったんですが、書いてもいいのかな?えっと、内心が内申になってました。

Anonymous

今日も更新ありがとうございます! つい恋が始まったね(ニヤニヤ)

inori-0

誤字のご指摘ありがとうございました。 修正させていただきます。