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pixiv側へ掲載した「呪いの着ぐるみ人形」の続き話です。

果たして美羽ちゃんは兎月お姉ちゃんと出会えるのでしょうか?


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「美羽(みわ)のお姉さんって高校1年生の兎月(うづき)さんだっけ? 結局見つからないままなんだよねー?」

「うん……お姉ちゃん、あたしが4年生の秋頃からずっと行方不明のままだよ」


 あたしには嘗て、高校1年生のお姉ちゃんが居ました。

 でもお姉ちゃんは約2年半前、ルンルンランドのルンちゃんが復帰した日から行方不明です。


「あのね、美紀(みき)ちゃん。あたし、お姉ちゃんの居場所に心当たりがあるの」

「え、美羽、それ本当なのー?」

「うん。でもこんな事言ったらきっと皆にバカにされそう」

「大丈夫、私は美羽の言う事なら何を言ってもバカになんてしないよー」

「うん、ありがとう。あたしも、美紀ちゃんを信じてるから。だから美紀ちゃんになら話してもいいかなってね」


 あたしはルンルンランドのルンちゃんの事を、お友達の美紀ちゃんに話しました。


「お姉ちゃんが行方不明になった日って、ルンちゃんが復帰した日なの」

「ルンちゃんって、今都市伝説で話題になってるルンルンランドの?」

「うん。それであたし、ルンちゃんが復帰した日にルンちゃんに会いに行ったの」


 そう、ルンちゃんと触れ合った時の忘れもしない温もり……あれは間違いなく……。


「お姉ちゃんだった。ルンちゃんが、お姉ちゃんだったの。絶対間違いないよ。姉妹だもの、あたしには分かるもん」

「え、ちょっと待って。何を言っているのか良く話が見えないんだけど……」

「あたし、ルンちゃんに抱っこしてもらったんだ。それでルンちゃんに触れ合った時、ルンちゃんからお姉ちゃんの温もりを感じたの」

「えっとつまり、ルンちゃんの中の人がお姉さんだったのかもしれない、と言う事?」

「かもしれないじゃなくて、絶対にお姉ちゃんだった。絶対に」


 きっとお姉ちゃんは今もルンルンランドに居て、ルンちゃんをやっているんだ。

 だから行方不明になったお姉ちゃんはルンルンランドに居るんだ、と。

 あたしはずっとそう確信していたのです。


「そういえば真夜中のルンちゃんの都市伝説、ルンちゃんから女子高生のような声を聴いたって話があったよね」

「きっとお姉ちゃんの声だよ。ルンちゃんじゃなくて、お姉ちゃん自身の声。お姉ちゃん、一体何があったんだろう……」

「じゃあ美羽はお姉さんがずっとルンちゃんを続けてる、と言いたいんだねー?」

「うん。あたし、いつかまたルンルンランドへ行って確かめたいと思ってたんだ」

「でも本当にルンちゃんがお姉さんなら、何で戻って来ないのだろうねー? 事件なのかルンちゃんの呪いなのか……」


 お姉ちゃんが復帰したルンちゃんの中の人をしていた、この前提がもし正しかったとすれば。

 その直前にルンちゃんの中に入っていた人は、熱中症で死亡しているのです。

 その後のルンちゃんをお姉ちゃんが引き継いだとすると、確かに事件性があっても呪いがあっても何ら不思議ではないのです。


「よし、行こう。美羽、お姉ちゃんの行方を確かめに行こうよー」

「美紀ちゃん、協力してくれるの?」

「当たり前でしょー、大事なお友達の為だもんー」

「ありがとう美紀ちゃん。じゃあいつ頃にしようか?」

「明日ってちょうど土曜日だよね。明日の夜中はどうかなー?」

「え、日中じゃなくて夜中に行くの……?」

「都市伝説だと夜中のルンちゃんから女子高生の声がしたんだよねー。多分、日中に行っても無駄だと思うんだー。人も多いだろうし」


 あたし達はまだ中学1年生で、夜中の外出なんて……でも、お姉ちゃんの行方を辿る為ならば。


「うん、分かった。美紀ちゃんさえ大丈夫ならばあたし、夜中でいいよ」

「じゃあ明日の夜中11時頃、ルンルンランドの正面入り口前でいいかなー?」

「分かった。夜中の11時ね」


 こうしてあたしは美紀ちゃんと約束をして、夜中のルンルンランドへ行ってみる事になりました。



 そして当日の土曜日を迎えました。

 時間は深夜11時の5分前、あたしはルンルンランドの入り口で美紀ちゃんを待っていました。

 入り口から見えるルンルンランドの園内は、昼間の明るさとは打って変わって何だか不気味に見えました。


「お姉ちゃん……本当に、まだここに居るのかな」


 昼間の明るさからは想像も付かないような暗さで、ついついあたしは怖くなってしまいます。

 こんなに怖くなるような所に、本当にお姉ちゃんは居るのかな……。

 でもルンちゃんがお姉ちゃんだと言う事は絶対に間違いない、これだけは確信しているのです。


「美羽、お待たせー」

「美紀ちゃん、本当に来てくれたんだね」

「当然だよー。ただ、家族に内緒で抜け出すのにちょっと手間取ったけどね」

「そっか、何だかごめんね」

「いいよいいよー。美羽は簡単に抜け出せたの?」

「うん、ちょっと訳は話せないけど簡単にね」

「美羽、何かあったの……?」


 実はお姉ちゃんが行方不明になって以来、お母さんは精神を病んでしまいました。

 それが理由でお父さんとも別居中で、今のあたしはお母さんと二人暮らしなの。

 それでお母さんはここ最近、毎日金曜の夜から土曜の朝まで検査の為に定期入院しているのです。


 でもこんな事、いくらお友達でも話しづらいよね。

 お母さんは定期入院で家に居ないから、それで夜中でも簡単に抜け出す事はできました。

 そして今お母さんがこんな状態だからこそ、お姉ちゃんに帰って来てもらって元気になってほしいのです。


 それが叶ってお父さんとの仲も戻ると良いのだけれど……。


「美羽? 大丈夫?」

「あ、ごめんね。ちょっと考え事してて」

「さっき訳は話せないけど、って言ってたよね。何があったのか気になるけど、私は美羽が話したくないなら無理には訊かないからね」

「うん、ありがとう」

「でも私、美羽の事を心配してるんだから。もし力になれそうな事があったら、遠慮なく言ってねー?」


 あたしは優しくしてくれた美紀ちゃんに対して、ニコっとした顔で答えました。


「ありがとう、美紀ちゃん。今はお姉ちゃんの事で協力してくれるだけで感謝だよ」


 美紀ちゃんもコクッと頷いた後、あたし達はいよいよ行動を開始しました。



「と、勢いで来たまではいいものの……どうしよう?」


 ルンルンランドの正面入り口ゲートは、外部から人が入れないように閉ざされています。

 外周を見ても他に園内へ忍び込めそうな所はありません。

 営業外の時間なので当然、関係者以外は普通に出入りする事ができません。


「美紀ちゃん、何か良さそうな方法でもある?」

「うーん、私は何も思い付かないよー」

「じゃあ何で夜中に来てみようって言ったの?」

「都市伝説の真相だけでも分かれば、と思ってねー。美羽ならルンちゃんが現れた時、お姉さんかどうか分かるだろうから」

「じゃあ最初から園内へ入る予定はなかったの? 確かに普通に考えればそうだよね。こんな夜中に入れるわけが……」


 と、思って園内の探索は諦め掛けたのだけれど……。


『カチッ!』


 突然正面入り口ゲートの方から音がしたのです。


「ねえ美紀ちゃん、さっきの音って間違いないよね?」

「うん、園内へ入る時にゲートが動く音だよね?」

「と言う事はもしかして……今ならゲート、通れるのかな?」


 何故急にゲートの動く音がしたのかは分かりません。

 しかし音がした以上、ゲートが動いて通れるようになっているのは間違いないのです。


「もしかしてお姉ちゃんが……呼んでるの?」


 まるであたし達は誰かに招かれたかのように、ゲートを潜って真夜中の園内へ入り込みました。



「外なのにお化け屋敷みたいー」

「美紀ちゃん、怖い事言わないでよ……」


 あたしも外から様子を見た時は不気味に思ったし、できるだけ考えないようにしていました。

 美紀ちゃんと一緒だから大丈夫、って。

 でも改めて見渡すと……園内は薄暗くて不気味で、本当にお化けでも出そうな程の怖さです。


「ごめん美羽。でも美羽、何だか震えてるような感じだったから……少しでも何か言った方がいいかなってー」

「え……うん、ごめんね」


 あたし、自分でも気付かないうちに震えてたんだ。

 美紀ちゃんはそんなあたしに対して、気を遣ってくれたみたいだね。


「いいよいいよー。さ、お姉さんを捜そうー」

「お姉ちゃんがルンちゃんだとすると、恐らく居そうな所ってあの場所だよね」

「うんー、私もあのエリアだと思うよー」


 あたしがあの時、ルンちゃんと触れ合ったぴょんぴょんエリア。

 間違いなくあの時のルンちゃんからは、お姉ちゃんの温もりを感じたんだ。

 当時のあたしは不思議に思ってたけど、中の人の存在を知って以来疑問は解消しました。


『ガタッ!』

「ひぃっ!?」

「わっ、びっくりしたねー」


 急に何処からともなく物音が聞こえて、ついつい驚いてしまいました。


「美羽、落ち着いてー。風でゴミ箱が動いた音みたいだよー」

「あ、本当だ……」


 良く見るとあたしのすぐ近くにはゴミ箱がありました。

 薄気味悪い園内だし、少しの物音でもビックリしてしまいます。


「~~~♪」

「あれ、今度は何の音だろう……また風のイタズラかな?」

「美羽、何だか誰かの声がするみたいだよー。それにここ、もうぴょんぴょんエリアが目の前だよー」


 周りの暗さで気付かなかったけど、良く見ると確かにぴょんぴょんエリアの目前まで来ていました。


『バキバキッ!』

「ぴぎゃぁー!?」

「あ、美羽……大丈夫? じゃ、なさそうだねー……」


 急な音にビックリしてしまい、あたしの股間からは黄色い液体が僅かにポタポタと……。

 うぅっ、中学生にもなっておしっこをちびっちゃうなんて……。


「何処かで木の枝が折れたみたいだねー? 美羽、おトイレ行こー? おしっこ、拭いちゃわないと」

「分かってるけど、恥ずかしいから言わないで……」


 あたしは美紀ちゃんに手を引かれ、園内のトイレへと向かいました。



 その筈だったんだけど……何故か、気付けばぴょんぴょんエリア内から出られませんでした。

 あたし自身も自分で何を言っているのか分かりません、でも事実なのです。

 美紀ちゃんはあたしの手なんか掴んでないのに、あたしが一緒に居ると思い込んでるかのようにどんどんと行ってしまって……。


「待って、美紀ちゃん。待って……」


 あたしが声をあげても、何故か美紀ちゃんは気付いてくれないようです。

 美紀ちゃんはまるで見えないあたしと一緒に居るような様子で、しまいには姿が見えなくなってしまいました。

 もうどうする事もできず、あたしはその場でへこたれてしまいました。


「どうしよう、美紀ちゃん行っちゃった……それにおもらししちゃって、股間も気持ち悪いし……」

「どうしたの? 何か困っているのかな?」

「わっ!? だ、誰!? って……ルンちゃん?」


 すると、あたしの目の前にルンちゃんが現れたのです。

 ルンちゃんは暗い園内の中にも関わらず、あたしの目には姿がはっきりと映っていました。

 それにルンちゃんのこの声、絶対に忘れもしないこの声は……。


「お姉ちゃん! お姉ちゃんだよね!? 無事だったんだね!?」


 間違いなくルンちゃんから聴こえた声は、お姉ちゃんの声そのものでした。


「お姉ちゃん? 君はお姉ちゃんとはぐれて迷子になっちゃったのかな?」

「え、お姉ちゃん何言ってるの? あたし、美羽だよ。兎月お姉ちゃんの妹の美羽」

「君のお姉ちゃんは兎月ちゃんって言うんだね? じゃあ私、兎月ちゃんを捜すの手伝ってあげるね」

「ちょっとお姉ちゃん、ふざけないで。お姉ちゃんを捜す為にあたし、夜中にここまでやって来たんだよ……」

「夜中に捜しに来るなんて、よっぽどお姉ちゃん想いのいい子なんだね」


 声は間違いなくお姉ちゃんなのに、全然話が噛み合いません。

 目の前に居るルンちゃんはお姉ちゃんなのに、お姉ちゃんではないようで……。


「お姉ちゃん、一体どうしたの? 何があったの?」

「私はルンちゃんだよ。ルンルンランドの案内人で、皆を楽しませるのが私の役目なんだよ」

「お姉ちゃん、ふざけてないで着ぐるみ脱いで? 頭、取れるんでしょ?」

「着ぐるみ? 何を言ってるの? 私は私、ルンちゃんだよ?」

「だから一体どうしちゃって……え!?」


 あたしはルンちゃんを見て、ある異変に気付いてしまいました。

 ルンちゃんは着ぐるみの筈、筈なのに……着ぐるみじゃないのです。

 あたし自身も自分で何を言っているのか分かりません、でも事実なのです。


「どうしたの? 大丈夫かな?」

「ルンちゃん、その体……顔と胴体、繋がってるよね……」

「え、何を言ってるのか良く分からないよ」


 着ぐるみならば頭が被り物なので、絶対に胴体と頭が繋がっているなんて事はありません。

 でもあたしの目の前に居るルンちゃんは、どう見ても頭と胴体が繋がっているのです。


「ねえルンちゃん、あたしを抱っこできる?」

「うん、いいよ。おいでー」


 あたしは股間が気持ち悪い事さえも忘れて、ルンちゃんに抱っこをしてもらいました。

 すると……凄く不思議な感触を覚えたのです。

 ルンちゃんからは着ぐるみのような独特の分厚さを感じられず、まるでルンちゃんそのものが生きているかのような感じで……。


 でも、あたしを抱いてくれたルンちゃんからは……間違いなく、兎月お姉ちゃんの温もりを感じました。


「嘘、本当にルンちゃんの呪いなの……? お姉ちゃん、ルンちゃんになっちゃったの……?」

「美羽ちゃん、お姉ちゃんの兎月ちゃんを捜そうよ」

「う、うん……」


 あたしはルンちゃんに手を引かれて歩き出したけれど……きっと、お姉ちゃんは絶対に見つからない。

 だってあたしの手を引いてくれているルンちゃんが、間違いなくお姉ちゃんなのだから。



 ルンちゃんと暫く園内を回っていると、不思議と気持ちも落ち着いてきました。

 こんなに薄暗くて怖い雰囲気なのに、やっぱりルンちゃんがお姉ちゃんだからなのかな?


「ルンちゃん、ありがとう。あたし、もうそろそろ帰るよ」

「え、帰っちゃうの?」

「うん、お姉ちゃんはもう見つからないって分かったから……」


 お姉ちゃんはきっとこれからもずっと、ルンちゃんとしてここで生き続けるんだ。

 どうしてこうなったのかは分からない、本当にルンちゃんの呪いなのかもしれない。

 でもお姉ちゃんはきちんと生きていた、そしてちゃんとここに居た、その事が分かっただけでもあたしにとっては十分だよ。


「美羽ちゃん、諦めちゃダメだよ。お姉ちゃん、絶対にこの園内に居るんだよね?」

「そうだけど……」


 そうなんだけど……でも、今のお姉ちゃんはもう完全にルンちゃんだもん。

 何を言っても通じない、もうあたしの知っている兎月お姉ちゃんじゃないんだ……。


「今この園内に居るのはね、私と仲間だけなんだよ。だから私と一緒に居れば、きっとお姉ちゃんは見つかるよ」

「そう言われても……そういえばあたし、美紀ちゃんとはぐれちゃったんだ」

「美紀ちゃん? 美羽ちゃんのお友達さんかな?」

「うん、一緒に来たんだけどはぐれちゃって……」

「おかしいね、この園内には間違いなく今は私と仲間しか居ない筈だけど」


 ルンちゃんが言っている仲間って、一体誰の事だろう?

 マスコットキャラクターはルンちゃんしか居ないし、ここの従業員さんの事なの?


「あ、ほら見て。私の仲間が来たよ」

「ルンちゃん、その子どうしたのー?」

「この子ね、美羽ちゃんって言うんだ。ここへお姉ちゃんを捜しに来たんだよ」


 もう1人一回り小さいうさぎの着ぐるみみたいな子がやってきたんだけど……あたし、こんなキャラクター初めて見る。

 でも良く見るとこの子も、ルンちゃんみたいに着ぐるみと言うより……一見着ぐるみに見えるけど、着ぐるみじゃない。


「美羽って言うんだ? お姉さんを捜してるんだねー? じゃあ私も手伝うねー」

「うん、ありがとう。ラビちゃん」

「え、この声……」


 ルンちゃんがラビちゃんと呼んだ、着ぐるみみたいなうさぎの女の子。

 この子からは間違いなく、あたしの良く知っている声が聴こえたのです。


「美紀……ちゃん、なの?」

「私、ラビちゃんだよ。ルンちゃんの仲間なんだー。お姉さんを捜してるなら、一緒に捜せばきっとすぐに見つかるよー」


 何で? どうして?

 一体どうして美紀ちゃんまでもが着ぐるみ風マスコットに……。

 目の前に突き付けられた事実をはっきりと認識した途端、あたしは恐ろしくなってしまって……。


『チョロロロ……』

「ああっ、ああっ……」


 思わず股間が緩んでしまい、またおしっこをちびってしまいました……。


「あららー、ルンちゃん、この子おもらししちゃったよー」

「本当だ。そういえば私と会った時も少し股間が濡れてたみたい。もじもじしてたものね」

「おトイレ連れて行かないとねー」

「うん、さあ美羽ちゃん、お姉ちゃんを捜す前に一旦おトイレへ行こうね」

「やっ、やだっ……」


 あたしは怖くなってしまい、今すぐにでも園内から逃げ出したかったです。

 でも足がすくんでしまい、そのままルンちゃんに引っ張られるようにトイレへと連れられてしまいました……。



「さあ美羽ちゃん、ラビちゃんとおトイレへ行っておいで」


 あたしはルンちゃんに背中を押されて、嘗て美紀ちゃんだったラビちゃんにトイレへ引っ張られました。


「やめて、あたし……帰りたい」

「大丈夫だよ、美羽。私が着いているから安心してねー」


 ラビちゃんにそう言われると……何だかあたしは少し落ち着きました。

 姿形は変わってしまったけど、間違いなくラビちゃんは美紀ちゃんなんだ。

 ラビちゃんは美紀ちゃん……うん、そう思えば安心できそうです。


「そこの個室で綺麗にしてきてねー」

「う、うん……」


 あたしはラビちゃんに促されて個室へ入ると、その中は凄く真っ暗で……何も見えませんでした。


「どうしよう、これじゃあ処理のしようがないよ……それに真っ暗だし、やっぱり怖い」


 こんな暗い空間で独りぼっちだなんて。

 もう処理なんてしなくていいから、こんな所からはやっぱり早く出て……。


『ガチャガチャ』

「あれ、ドアが開かない……カギが掛かってる?」


 え、嘘、何で開かないの?

 どうして……どうして開かないの?

 あたし、もしかしてこの個室に閉じ込められちゃったの!?


「やだ、怖い……助けて、助けて、お姉ちゃん!」

「大丈夫?」

「お姉ちゃん……」


 あたしの声を聴き付けたみたいで、個室の外からはお姉ちゃんの声が聴こえました。


「お姉ちゃん、ドア開かないの……」

「え、そうなの?」

『ガチャ』

「普通に開くね?」

「え、あれ……」


 一体何だったのだろう?

 良く分からないけれど……とりあえず出られたし、一安心だね。


「じゃあランちゃん、今日はもう園内へ帰ろうか」

「え、ランちゃんって?」


 あたしが手を洗おうとして真っ直ぐを向くと、そこには……。


「え……あたしも、うさぎ!?」

「何言ってるの? ランちゃん、私の妹だよね。ルンルンランドの案内人、ルンちゃんの妹のランちゃん」

「え、あたしは……あたしは……うん、そうだった。ルンちゃんはあたしのお姉ちゃんだもん」

「仲間のラビちゃんも外で待ってるよ。早く手を洗って帰ろうね」

「うん、お姉ちゃん」


 あたしはお姉ちゃんのルンちゃんと一緒、これからもずっとずっと一緒だよ。

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