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⑨着ぐるみ大好きなアテンドに出会う これは恐らく、の話。おそらくだが、ほぼ間違いないと思っている。 アテンドの女性が着ぐるみフェチだったであろう話。 それなりに現場をこなし、それなりに着ぐるみの中の人を経験し、そこそこ演技に慣れてきた今日この頃。マスコット着ぐるみとして出演する機会も多くあり、それなりに充実した着ぐるみライフを送っていた。 そんな中、とある着ぐるみの現場があった。 GWの蒸し暑い現場。GWのクセに30度近くまで上昇し、灼熱なGWとなったある日。 私は住宅展示場のピンクのウサギさんを演じることになった。 ウサギさんといえばかわいらしいキャラクターのように思えるが、着ぐるみは汎用のもので、決してかわいいとは言えないもの。つくりも極めてチープで、上を向けばあご紐丸出しで、さらに私は身長も大きいことがあって、しゃがむとくるぶしが露出してしまうくらいの短さだった。 着ぐるみを着られなくはないが、超ピッタリで若干威圧感のあるウサギさん。そんな着ぐるみを着た状態で、来場者に手を振ってにぎやかしをするといった、よくある着ぐるみバイトの典型のような現場だった。 そこに着ぐるみアテンドとしてどこからか派遣されてきたのだろう、女性の方が付き人となって私を支えてくれた。 年齢は私と同じくらいの20代前半で、大学生といったところだろうか。そこそこぽっちゃりとしていて、若干オタクチックというか、物静かそうな女性であった。 その子と一緒に仕事スタート。 ということで、私はウサギさんに変身するのだが、着替える場所がまさかの用意されていない状態だった。 担当者もその場で考える始末。無いため外で着替えてくれともいわれる状況で、さすがにそれはNG、やめてほしいと強くいったところ、ムスっとして機嫌悪そうにモデルハウス内の脱衣所で着替えてもよいこととなった。 そんな場所でピンク色のモコモコなウサギさんに変身し、アテンドの彼女のもとへ向かった。 「わぁ~可愛い・・・!」 彼女からそんな言葉が聞こえてきた。 中身は知られている恥ずかしさはあるものの、全力で可愛い動きをした。 すると、次の瞬間、衝撃が起こった。。 着ぐるみに覆われて、少し汗ばみ始めている腕に向かって、彼女の手がズズズっと侵入してきたのだ。着ぐるみと腕の間の空間に入り込んでくる彼女の手。思わずバっと彼女の手を振り払った。 ・・・いったい何が起こったのだろうか・・・。 着ぐるみは言葉を発してはいけない。鉄板の原則だが、お客さんが現れていないことを私は確認すると、彼女に向かって 「すみません、えっと何かありましたか・・・?」 と、当たり障りのないような言葉でなぜそんなことをしたのか尋ねてみた。 「ごめんなさい🙏ちょっと気になって」 そんなことを言う彼女。話を聞くと…前々から着ぐるみに興味があって、着ぐるみの中の構造とか、着ぐるみの内側もモコモコしているのかとか、暑い暑いとは聞くけどどれほど暑いのか等々、彼女は着ぐるみの中が気になって仕方なかったのだ。 話を聞くとこんなエピソードがあったそうだ。 彼女はどうしても着ぐるみというものがどんなものなのか、どんな世界なのか、どういった感じになるのかぜひ体感してみて演じてみたいと昔からずーっと強く思っていたそうだ。 けれども、どうやって着ぐるみを着る機会なんてあるのか…。インターネットで彼女はひたすら求人情報を探しまくったそうだ。それが彼女にとって最大の近道になると思ったようで、かなり細かく求人情報をあさったそうだ。 そして今回、念願の着ぐるみ募集という文字を単発ネットの求人情報で発見して応募して・・・見事彼女は着ぐるみ担当として採用されたのだった。 しかし、、、彼女には着ぐるみ経験が無かった。別にそれでもヨシと思っていた担当者だったが、なぜか直前で経験のあった私にシフトを回したようで。そのせいで、せっかく彼女が念願の着ぐるみの中を経験できると思っていたそのワクワクを私が奪ってしまったということだったのだ。 このアルバイトのつい数日前までとても楽しみにしていたのに・・・・ せっかくの着ぐるみの機会を奪ってしまったせいで、着ぐるみの私に相当嫉妬している様子だった。 私は着ぐるみの中がいかに暑いか、今このときも中で蒸れていて今すぐ脱いで楽になりたいとうさぎの格好のまま話をしていた。 今ちょうどこのときはお客さんもおらず、ウサギとアテンドしかいない、なんともシュールな時間だった。 やっぱり彼女は着ぐるみについて諦めきれていない様子。例えばアルバイトで探すのも良いし趣味で着ぐるみを持つことも提案した。その当時は着ぐるみといえば自作の工房からの選択肢は少なく、自ら作るかプロの着ぐるみ会社に発注するかの選択肢しかなかった。そのことも彼女に教えてあげると聞き入ってとても参考にするような素振りだった。 ここまで着ぐるみが好きならいっそ着ぐるみ業務を代わってあげたいとも思ったが…既にウサギさんは汗だくで、裏地がベットリと体に張り付くぐらい湿っていた。 そんな状況でも、一応彼女に聞いてみた。汗でびっしょりになっている状況も踏まえながら。 「着ぐるみってホントに毛布みたいに暑くて、中は汗でびっしょりなんだけども、それでも着てみたいってことは流石に無いですよね?笑笑」 私は半笑い気味にウサギの着ぐるみに見を包みながら、着ぐるみの生み出す暑さとか息苦しさを語って、そして冗談交じりでこの着ぐるみ着てみないかと提案した。 流石にこんな状態なのだから着るのは嫌と諦めてくれるだろうと思っていた…。 そう、このありがちな小説の展開のような回答が返ってきた。 そのまさかの状況に私は少し引いたし、なんなら私の汗のニオイも染み付き始めていて……そんな中でもぜひ着てみたいと、彼女はホントに食い気味に返答してきた。コレは盛っているわけではなくホントに食い気味だったのを今でも鮮明に覚えている。 着ぐるみを彼女に着せてあげる。それもかなり汗でしっとりと湿っているウサギの着ぐるみを。 本当に良いのか10回近く確認したと思う。 着ぐるみが好きで好きで仕方ないので本当に経験してみたい、と真剣に私に言ってきたのだ。 そして、、、時はお昼休み。 担当者もハウス関係者も手薄になるであろうこの時間帯。この時間を狙って・・・モデルハウス内の脱衣所に彼女を呼んだ。 仮に関係者に彼女を見られたとしても、着付けを手伝ってもらうと言い訳ができるから、まぁ問題なしだと踏んでいた。 事前に、着ぐるみの中はすごく湿っていておまけに私のニオイがあることを注意しておいた。中に入るときはそれなりに服を脱ぐ必要があることも伝えた。 それでも彼女はOKをしていた。なんという着ぐるみへの執着…。すごいの一言だ。 こうして脱衣所に彼女を呼んだ。道中は誰にも見られず、更衣室に私以外の人が入っているだなんて誰も知らない。 彼女に部屋のロックをかけてとお願いし、私はウサギの手の部分を脱ぐと、次に頭のあご紐をパチンと外して頭を取った。 髪やバラクラバがびしょびしょになっている様子を彼女は結構ジっと観察しているように見ているのが分かった。私は非常に恥ずかしそうにしていたと思う。 「すごい・・・汗ですね・・・」 小声で彼女はそういった。GWには似つかわしくないほどの猛暑日。そんな気温でもこもこの毛布を身にまとっているんだから仕方ない。 私は足を脱ぎ、手際よくボディも脱いでいく。 スポーツインナーがびしょびしょに濡れていて、着ぐるみの裏地が汗で変色していた。おまけに男特有でムワっとした汗のニオイがあったと思う。 モデルハウス内の脱衣所で着ぐるみのマスクオフを生で見られる私。正直、恥ずかしい以外の感情は無かったと思う。何も興奮もしないし、ただただ、汗の匂いや汗で湿ってしまった髪がベッタリしている様子をまじまじと見られていることに猛烈に恥ずかしい感情が支配していたと思う。 彼女には着ぐるみの中がとても汗で湿っているので、そのまま着てしまうとシャツやチノパンが濡れてしまうと伝えた。 すると、、、 彼女は下着とブラで着てもよいかと聞いてきた。 え………!!!? 別に構わないと伝えたが……。凄く中はベチャついて不快かもしれないと伝えたが、それでも構わないと言っていた。 ……とんでもなく着ぐるみへの思い入れが強い子だ。 こうして下着姿に躊躇なく脱いでいった。別に恥ずかしさなんて微塵もないけど?と言わんばかりに堂々としたふるまい。逆に私のほうがうろたえていた。 そんなうろたえを悟られないように平常心を演じて淡々と着付けていく。 「うぁー…冷たいよぉ…」 「ぅぁ………」 先程まで男性が着ていて湿った着ぐるみを、下着姿できていく女性。 足もつけて…非常にご満悦な様子だ。 可愛らしい丸いフサフサの尻尾やもふもふになったボディ。見渡す限り幸せといった具合だ。 最後にウサギの頭を被せる。 その前に、彼女はウサギの頭の中をまじまじと観察していた。 目から除く視界、頭にフィットさせる部分、外見はモフモフと可愛らしいにもかかわらず、中は簡素で、まるで舞台の裏側と言える感じに殺風景。 少し汗の匂いもあるこの頭の中を覗き込んで、一体彼女は何を想っているのだろうか。 昔のように重たいわけではなくウレタンで作られているため軽い。意外な軽さに彼女は驚きつつ、きちんと頭をおさめてあごひもをカチっとしたら……完成だ。 目の前にある三面鏡を眺めて、色んなポーズを決めるウサギさん。 ぴょんぴょん跳ねたり、感動の声を上げたり、本当に嬉しそうだ…。 私は携帯で写真を何枚も撮ってあげた。ぎこちないながらも動きが非常にキビキビしていて、女性特有の可愛らしいポージングはお手の物といった具合。 時間にして7~8分くらいだっただろうか。 大量に撮った写メとムービーをあとで彼女に送る約束をして、彼女の着ぐるみ体験が終わった。 着ぐるみを彼女から脱がせていく。まずは頭だ。あご紐をパチンと外して頭を取ると、うっすら汗ばんで、髪の毛がぼさぼさになってしまっていた。 ふつうはバラクラバやタオルを頭に被せて着ぐるみの中に入るものだが、ちょうど私も予備を持ち合わせていなかったためそのまま着ぐるみの頭を付けてもらった。そのためか、彼女の髪は乱れ放題になっていた。 「はぁ~!着ぐるみってやっぱりすごく楽しいですね!」 彼女は脱ぐや否やハツラツとしていた。夢がかなった嬉しさを爆発させているかのように、素敵な笑顔だったのを今でもしっかりと覚えている。 次に、ボディを脱がせていく。初めてとあって、一人で着ぐるみを脱ぐことが難しそうだったので私が手伝ってあげた。 たった数分だったためか、ボディがヒンヤリと湿っていたためか分からないが、彼女は特に汗をかいて火照っている様子ではなかった。 流石にブラとパンツのままの彼女を見るわけにはいかないので、私は後ろを向いて着替えるように指示した。 ステキ体験を終えた彼女はなんだか物足りなさそうといった具合だ。 出来ることなら変わってウサギを演じてもらいたいがそうはいかない。与えられた仕事を変わるわけにはいかないところがあった・・・・。 着替え終わった彼女は…ブラが濡れて湿っていたためか、着たシャツがブラの部分だけわずかに汗で染みができてしまっている。Yシャツの下にTシャツかキャミソールか何かを着ているはずなのだが…きっとウサギの着ぐるみに染み付いた汗が移ってしまった違いない。 もうしばらくすると担当者が戻ってくるかもしれないし、2人でいつまでも脱衣所にいるのはおかしな話だ。なので、着替えて早々に彼女を脱衣所から出して持ち場に行くように促した。 私はというと・・・昼休憩なので外に食べに行くでも良いのだが、この更衣室に残ることにした。 内側から鍵を閉め、先ほどまで彼女が来ていたウサギを目の当たりにする。 そのウサギの着ぐるみを身に着けていく私。女性特有の匂いがする。 着ぐるみを絶対に汚してはいけないので、きちんとアソコにゴムを装着することを忘れない。 ボディを着て頭を被って…そのまま自らのアソコを刺激し始めた。改めて自分はなんて変態なんだろうかという背徳感と、着ぐるみの中の息苦しさ、先ほどまで女性が着ていた着ぐるみに興奮してモノの数分で果ててしまった。 着ぐるみの中でイクことは衣装の汚れにもつながるので絶対厳禁。そんな背徳感もあってすぐに果ててしまった。 その後、午後になるとモデルハウス前に沢山の来場者やお子様が多く訪れてきたため、午前中のように彼女とたわいもない話で盛り上がることできず、せっせと業務をこなす1人の人間と1匹のウサギ。 暑い中で何度も休憩を挟みながら、ウサギの毛皮までしっとりとしてしまうほど過酷なグリーティングをつづけた。 手袋や袖が汗でびっしょりになったウサギさんに対して、子供たちは容赦なく指摘してくる。 「うわぁ!このウサギ湿ってる!きもちわりぃ!」 小学生相手だとこんな具合だが、幼稚園児やそれより小さなお子様には非常に楽しいグリであった。 そして業務終了後、私は彼女のメールアドレスを聞いて今日撮った写真を送るように案内した。特に下心は一切なく、今後もメールを続けたい・・・とは不思議に思わなかった。どことなく、彼女の着ぐるみに対する本気具合を目の当たりにして、自分が置かれている、この着ぐるみを着ることができる環境をもっとありがたく思わないといけないし、もっともっと自分にとって演じたいキャラを追求しても良いんじゃないかと思うようになった。 そんなことを気づかせてくれた彼女に少しばから敬意を表したいなと思った次第だ。 結局、彼女とは写真や動画をプレゼントしたやり取り以来、一切何も取り合わなかった。 彼女は今どうしているのだろうか。彼女こそ着ぐるみの中の人として飛躍できる人材なのにと思った、そんなGWの着ぐるみのお仕事だった。 ⑩シルバ〇アのキャラクターに変身する この身長とこの体格なので、しかしあまり練習には参加しない癖がついていたせいで、ほとんど怪獣や戦隊の雑魚キャラ向けになる。本当はもっと可愛らしくてモフモフしたキャラクターを演じたいと何度思ったことだろうか。 今日も全身タイツを着た雑魚キャラ役+列整理でハウジングセンターを訪れていた。 ヒーローや戦隊をやりたいわけではない。その結果、最近は練習もあまり身が入らずに方向性をどうしていくべきか思案に暮れていた。その分、配役は少し練習すれば難なく登場出来るようなキャラばかり。 メルヘン系にも参加させてほしい旨をマネージャーに伝えた。しかし、やはり身長がものすごくネックであること、あまり練習に顔を出さないことを理由に即時OKは出せないと言われてしまった。分かりきっていたことだったが………それなりにがっかりした。 数日後。 相当ガッカリした態度を可哀想と思ったのだろうか。 かんたんなショー付きのグリーティングイベントがショッピングセンターで催されるとのことで、私がキャスティングされた。 配役はシルバ○アファ○リーのキツネさんだった。 レア役。確かにショコラウサギさんばかりでキツネの子はめったに見ない。 スケジュールを確認すると…その日は大学のサークルの合宿とちょうど重なっていた。当然、サークルの合宿をキャンセルして、このシフトに入ることにした。 催しまで一ヶ月以上開いていたけども、集合練習は無く、貸し出されたdvdでダンスを会得した。アイアイと大きな栗の木の下でとアルプス一万尺のダンスは幼稚園児向けで物凄く簡単だ。立ち位置、他のキャラとの移動さえ覚えれば大丈夫なものだった。 キャラとしては、ウサギさんとリスさんと、そして私キツネさんで森のお遊戯会が開催されることとなった。ステージイベント2回でその後に行われる握手会&グリーティング2回、1回フリーのグリーティング1回が演目とのことだ。中々密ではないスケジュールなので、比較的楽な部類のイベントであった。 そして、当日。 集まったのは全員男の3人。一人は40歳位だろうか?とても老けた小柄の男だった。もうひとりは小柄で小太りの若い男性だった。ちょうど私と同じく学生だったようだが、かなりメルヘン系の歴は長いようだった。男三人が楽屋に介している状態。 楽屋での光景・・・なんともシュールと言わざるを得なかった。 この仕事をしているとよくわかるのだが、着ぐるみとのギャップが大きすぎると途端に恥ずかしい感情が湧き上がってくる。 あまりにもメルヘンで可愛らしいキャラクターを前にして存在しているのはむさ苦しい男たち。それも決してカッコイイとは言えない3人・・・。 何とも言えない哀愁漂う楽屋。こればかりは本当にお客さんたちに見せられない光景だなとひどく感じるばかり。メルヘン系はまさにそのギャップが計り知れない現場なんだ・・・とも改めて痛感した次第だった。夢いっぱいで着ぐるみ役者目指した子だったら一発で興覚めしそうだ。 この3人とイベント取り仕切る人と一緒に、今日演技する場所を下見した。 ステージとその立ち位置、登場の仕方やはけ方を確認していく。 私はこの時間が非常に嫌いでならない。イベント会社の人たちとステージ付近にいるという状況。明らかに周囲からはショーで演じる人、着ぐるみの中の人として見られる場合が多くあるため、、、一刻も早くこの場から立ち去りたいという恥ずかしさでいっぱいになる。 幸いここはショッピングセンター。人通りはかなり多く、ステージの隅でコソコソしているだけでは演者とは認識されにくい。 例えば、ハウジングセンターのように、人通りも多くなく、明らかに大きいお友達がショー目当てで来ている場合はそうはいかない。むしろ、リハの様子を撮影されてネットにUPされるなんて“被害”もあるので、私はこの時間が得意になれない・・・。 着ぐるみを身に着けていない状態で演技するのも苦手だ。自分にあるスイッチを押せないので、演技が全く捗らない。まぁここが出来ないからがゆえに、プロとしての自覚に欠けるんだろうなと自分でもわかる・・・。 着ぐるみを着ていない状態でもしっかりとリハが出来る人たち、本当に尊敬する。 本番20分前。 会場の下見を終えて楽屋に戻ってきた私はスポーツインナーとバラクラバに身を包んで、キツネさんの抜け殻の前に立った。 シルバ〇アのショーブツは頭こそFRP仕様で重量があるものの、ボディ自体は中々シンプルで軽量化されている。全身ファーの着ぐるみを着て、その上から衣装を着るような通常のスタイルではなく、衣装の部分はファーが無くて暑さが緩和される構造となっている。 着ぐるみフェチな私にとっては少し物足らない構造でもあった。。。 暑さはマイルドなのだが、やっぱり一番問題となっていたのが身長。どうしてもしゃがむと足首部分が見えてしまう。モフモフの部分は大体スネくらいまで覆われているものが多いのだが、この子は足首上くらいまでしかモフモフが無かった。 出来るだけしゃがまずに・・・とはいかないので、極力人目を避けながら、しゃがんでアプローチするように意識した。 着つけていくと色々と気が付くことがあった。 黄色のストライプシャツにネクタイをしたカッコ可愛いキツネさん。ズボンもファー部分は無い。シャツやズボンの下はファーのボディではなくメッシュで作られている。つまり……汗をブロックしてくれるものがないため、シャツ自身が汗をどうしても吸ってしまうことになる。手、腕、顔部分はフカモコ生地なのでそれなりに暑い。 そうなってくると・・・汗かきの私であるので…当然、衣装は汗で変色することになるんじゃ・・・。 一抹の不安を覚えるも時間が差し迫っている中で、懸念ばかり考えていられない。 着ぐるみ準備というのは時間があっという間に過ぎ去ってしまうもので、着ぐるみ登場の時間となった。 私はショッピングセンターの一角に作られたステージの上に登場して、司会進行のお姉さんに誘導されながら、メルヘンな曲を元気いっぱいに踊った。 普通のふかもこな着ぐるみと比べると幾分か暑くなくて楽。しかし、着ぐるみには変わりなく、汗びっしょりになるのは必然だった。 15分くらいしてステージにはけた。その後、すぐにステージ脇で握手会があるため、着ぐるみを脱ぐことなく演技を続けていく必要があった。 暑くても脱げないので、椅子に座って呼吸を整える。 そこでスタッフに言われたことがあった。 「キツネさん・・・汗すごいですね・・・大丈夫ですか・・・?」 え?どういうことか・・・と尋ねると、背中の衣装が変色しているとのことだった。 ほかに見渡すと、脇や膝部分も若干の変色が見受けられた。 …これは恥ずかしい。中に人が入っている。中の人が汗をかいて必死に動物を演じている。 そんな風にとらえられてしまうと本当に恥ずかしい。人間が中で暑さに耐えながら演じているので幾分仕方がないところはあるのだが。。。 汗の変色ではやっぱりグリをしているといろいろな人に言われてしまう。これは何度も経験している。ウル〇ラマンが汗びっしょりでポタポタと汗が滴っている様子を見られて言われた経験も何度かある。。 なんといっても、親御さんからの「大丈夫ですか?」という心配が切なくなってくる。一気に現実に引き戻される感じがして、着ぐるみを演じていることに猛烈に恥ずかしさを覚えてしまう。出来るだけファンタジーな要素で過ごしたいというのが私の本音なのだが・・・。今回も例外なく、そのようなことを言われかねない、そんな状況に陥っていた。 しかし・・・その汗染みを乾かしたりカモフラージュさせたりする時間が無い…。 仕方なく私はそのままの状態で、次に行われるグリに参加した。 キツネさんもほかのウサギやリスのキャラと比べても大人気だ。 悪ガキから、足が見えているよとの指摘を何度も受けつつ、握手をこなしていく。 暫くすると・・・子供というよりも親子で来られたお客さんから・・・ 「わぁ・・・手が濡れてる・・・」 「うわ!湿ってる・・・!」 との声が。。 薄いスムス手袋では汗を吸収しきれない。5本指のキャラであったので、軍手のように厚手のものをインナーで使うこともできず、薄い手袋で今回は過ごしていたが、それが甘かったようで。。。 そう、きつねさんの手は汗でびっしょりと湿っていたのだ。 おまけに汗染みも先ほどの休憩のときよりも広がっているに違いないと思い始めていた。直接見えてはいないものの、、、そんな風に感じた。 汗染みだらけのキツネさん。握手をすると手はびっしょり。 こんな状況だったためか、、、私は演技をするたびに恥ずかしさを今回ばかりはかなり激し目に抑え込んでいたと今でもしっかり覚えている。 “私は可愛いキツネさん…人間ではなく森の動物さん。可愛らしく可愛らしく・・・” 呪文のように自分に言い聞かせて、汗だらけで周りから人間扱いされるキツネくんを必死に演じていた。 親御さんからの「大丈夫ですか?」という直接的な問いは無いものの、、、苦笑い、湿っていることによる驚き、憐みのような視線・・・そういったものを私は中で感じ取っていた。 1回目のステージ&グリが終盤に差し迫ったころに、ヤバめの客が近寄ってきたのを一発で感じ取った。 握手したのちにハグしてきてこう言ってきた。 「とっても熱そうだね。汗凄いね。汗しょっぱいのかな?汗臭いのかな?」 ・・・たまにこういう客に会うのだが・・・ただただ毎回恐怖でしかない。 着ぐるみフェチなのか?というひとに抱きつかれたあげく、手に着いたのか?キツネくんの汗を手に付けたようにして、その汗を嗅いで満足したぞアピールをしてきた。 うわぁ・・・ 激しいドン引きをしている中で、私は早々にバイバイの手振りでその客を追っ払ったが・・・ その客は、次に執拗にリスさんを追いかけ回しはじめたのだ。どうやら中が女性と踏んだのか、かなり追いかけ回して何度も何度もハグを迫り、そのハグもかなりの長時間して離さない様子だった。中に入っているのは40代くらいの老けた小柄のオッサンであるという事実を知らないことは幸い何だろうか・・・。 その強烈なハグを見ながら、着ぐるみの持つ魔法を改めて実感していたところで、周囲にいるアテンドに叱られ指導され、どこかへと連れて行かれていった。 こういう客は本当に何をしでかすかわからない。演者にならヨシとしても、来場者のお子様に危害を加えかねないため、排除対象であるのは言うまでもない。 こういう輩にターゲットにされかねないので、汗染み・汗の湿り気を出来るだけ表に出したくないと思ってしまう。 こうして1回目のステージ&グリが終了。 2回目のステージ&グリも、フリーのグリも、その間に扇風機でガンガン乾燥させて、何とか汗染みを無くして登場するものの、回の終盤にはどうしても汗染みと湿り気のせいでお客さんから何度も冷ややかな視線を送られ続ける。そんなイベントだった。 最終的に、キツネさんの衣装にはくっきりと汗染みから生まれたであろう塩のスジが残ってしまっていた。 こういった着ぐるみの場合は、インナーをスポーツ系のピッチリしたものではなく、部集めの、それこそスウェットのようなインナーを準備すべきなんだなと痛感した回であった。メルヘン系は幸い、ずんぐりむっくりないで立ちなのが多い。インナーに注意を払うべしと学んだ回でもあった。 丁度このころから、ご当地キャラなるゆるキャラが増えつつある時代でもあったので、メルヘン系というより、ゆるきゃらの中の人として経験を積む機会を多くいただいた。 あの時、強くメルヘン系を経験させてほしいといったことが幸いだったかもしれないが、身長の兼ね合いもあって、ゆるキャラも演技幅は狭く、中々もどかしい日々を送ることにもなったことは言うまでもない。 ⑪舞台俳優としてデビュー 舞台に出ることになった。そう、舞台。1日だけではない。ゴールデンウイーク丸々全部潰れる1週間近い公演のものだ。 出る理由が人手不足というのだから、この業界やはり人が足らなくて必死なのだということを痛感する。 詳しく紹介していく。 つづく

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