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⑧1体の着ぐるみを2人で回す 残暑厳しい9月下旬ごろ、初めての経験をした。 1体の着ぐるみを2人で回すというものだ。 着ぐるみ経験者ならわかると思うが、着ぐるみの着回しは人によってはただの嫌悪感でしかないと思う。着ぐるみの内側は汗でグッショリと濡れているのが普通のもの。そんな他人の汗を含んだ着ぐるみを、誰が好き好んで着るのであろうか。 まぁ、着ぐるみフェチを発動している人なら、汗やニオイフェチも併発していることが多くて、ある意味ご褒美的な環境と感じる人もいると思う。 後になって思いかえすと、非常にフェチでヌけるシチュなこともあるけれども、現場では基本的に汗でベトベトの着ぐるみを着ることは全く以て不快でしかなかった。 そんなことで、仕事として1体の着ぐるみを2人で回すことになったわけだけども、 ・・・ その相手が着ぐるみ初体験の女性だったことで、この話は未だにしっかりと印象づいて記憶に刻まれている。 現場に入った私が今日演じてほしいといわれたのは、バルーン系の着ぐるみ。表面はモコモコとした起毛のものでおおわれている。 一応ふかもこ着ぐるみの位置づけだろうか。否、それをふかもこ着ぐるみと認めてしまうと、全国1万人のふかもこ着ぐるみフェチに刺されてしまうものだ。 バルーン系というのは昔からそれなりにナインナップがあるものの、その耐久性やかわいらしくない様子で不評であった。しかし、最近ではデザイン性の飛躍や熱中症のリスク低減が目覚ましくあるため、こぞってクライアントはバルーン系の着ぐるみを選択するようになってきている。 そりゃそうだ、雇ったバイトを熱中症で病院送りにしてしまっては、相当に大変なことに陥ってしまうのは目に見えている。リスク低減化できるバルーン系に走るのは理にかなっているのだ。 それはそうとおいておいて、実はこの時、初めてバルーン系の着ぐるみを着ることになったわけで。バルーン系着ぐるみの中がどうなっている構造なのかを知る良い機会になった。結果的には、やはり着ぐるみとしては息苦しさや暑さがかなり少なく、厳密には蒸し暑くて汗は大量にかいてしまうものの、通常の着ぐるみに比べたら、その量は1/10とったところだろうか。 そんな着ぐるみが今日の衣装とのことで担当者から話を受けたが、先ほどから隣にいる、少しぽっちゃりなこの女性は誰なのだろうか・・・?アテンドなのだろうか。 話を聞くとどうやら大学1年生でこの春から大学生とのこと、アテンドについて色々教えようとしたところ・・・その女子学生からなかなか衝撃の言葉を受け取った。 「いや・・・私も今日着ぐるみ担当で呼ばれてきました。」 ・・・なるほど、もう一体別のキャラクターと一緒に出て・・・ 「はい、〇〇くんです担当。」 ・・・ん?〇〇くんって私が担当じゃないですか!? え? ここでもしやと思ったが、そのもしやであった。 〇〇くんの着ぐるみを、着ぐるみ初体験の女性と着まわしながら登場してほしいとのこと。 交互に着回して登場するパターン、似たような経験で1度着た着ぐるみを纏わなくてはいけない事案があった。 以前に、他人の汗でびしょびしょになったウル〇ラマンを着なければならないことがあった。ショーで活躍したUマンは、そのまま握手会やサイン会に出なければならないのが通例。しかし、その日は暑さも慣れていない3月の中でも夏日を思わせるほどの、季節外れの温かさだった。 ショーを終えてすぐのUマンは軽い熱中症に加えて過呼吸の症状があり、すぐさまUスーツを脱がしてアイシング+呼吸の整えを実施。幸い、Uマンを演じていた方は大事には至らなかった。 しかし、外を見るとすでにグリのために集まったお客の長蛇の列。できればキャンセルしたくないとのクライアントの声。そこで私に白羽の矢が立った。その日、私は怪獣として参戦しており、ショー後の役目は列整理に回る予定だったが、急遽Uマンに変身して臨時で握手会に参加することになった。 汗でびしょびしょに濡れたUマンのスーツ。顔の部分は硬質のFRPなので拭けばそれなりに汗やニオイをそこまで感じないが、ボディに加えて手袋ブーツは、傾けば溜まった汗が滴ってくるほどの量の汗。他人の汗を全身に浴びながらヒンヤリとした着ぐるみを着るのはあまりにも不快だった。 着た瞬間から汗だくのようにびしょびしょであり、ポーズを決めるときに勢いよく腕を振りかざすと、汗がビシャっと飛び散る。 登場と同時に汗が滴るUマンを見て、親御さんは明らかに苦笑いと憐みの眼差し、子供は握手と同時に手がべたべたで気持ち悪くて不快この上ないといった具合。幸いサイン会は別のUマンが対応することになったので、私は握手だけだったが…頑張って辛酸を舐めながら変身したのにもかかわらず、この仕打ちとはなんとも理不尽な仕事なのだと痛感した、そんなUマンの着回し体験の記憶。 そんな思い出があるせいか、着ぐるみの着回しと聞いてネガティブに思わざるを得なかった。 女性の着た着ぐるみの中に入る。これをフェチと捉えるのは、仕事中ではなんともそんな気分にならないから勿体ない。家に帰ってじっくりと思い出して・・・ということはするものの、その場で興奮することはめったにない。 まず、〇〇くんの着ぐるみを着ることになったわけだが、初めにどちらかが着ることになるわけで、この場合は彼女を先に行かせてあげた。 彼女曰く、着ぐるみは初めて、そして着ぐるみ自体に嫌悪感はなく、むしろ楽しみで仕方なかったとのこと。汗かいてしまうしごめんなさいと初めに社交辞令のような挨拶をかわし、いざ着替えることになった。 〇〇君は、登場のスケジュールに合わせて登場するのだが、この日の登場回数は8回となかなか過密スケジュール。 バルーン系の着ぐるみのキモはバッテリーだ。背負ったバッテリーが電池切れしてしまうと、ファンが止まってしぼんでしまう。よく動画サイトに萎んでみすぼらしい感じとなったバルーン系の着ぐるみがよくUPされているが、もはやあの状態は事故なので必ず避けなくてはいけない。 バッテリーの消費スピードは著しく速い。何度も過充電を繰り返しているためか、あまり電池持ちはよくない。そのためか、バッテリーは予備を含めて8個あって、しっかり全て満タンになるように充電を施した。 1回の出陣で2個バッテリーを使うが、20分ほど稼働するだけで、2個のバッテリー両方とも半分以下の電力になってしまう。 バッテリーの交換・対応は非常に重要になる。 初めてバルーン系の着ぐるみの内部を見る。 本当に風船の中に入るような印象。視界の部分は頭から結構離れていて、一般的な着ぐるみよりもあまりよく見えない。 足部分はサンダルがあって面ファスナーで留めるタイプだ。 さて、着ぐるみ初体験の彼女を着ぐるみの中に閉じ込める。とはいっても、ふかもこ着ぐるみの中に閉じ込めるよりもなんだかキャンプで使うテントの中に人を入れるような感じがする。 半袖短パンになった彼女は、足のサンダル部分を履き、そして背中にバッテリーを背負い、内部の配線とダクト?のようなものを装着し、そして頭に布を被せた。 次にバッテリー部の電源をONにして、ファンが駆動することを確認したのちに、ファスナーを閉じた。 ファスナーは外からわからないように、上からマジックテープで隠すような仕様だ。腕部分には木の棒のようなものが入っていて、ヒョコヒョコと可愛らしく短い腕が動くようになっている。 充分に着ぐるみが丸みを帯びて膨らんだ。 ということで今から20分のグリーティングを行う。 足元に気を付けながら誘導し、〇〇君をお客さんの前に立たせた。 意外と初めてにしては動きが上手な彼女。どうやら事前にディズニーやUSJのキャラクターの動きを見て学習してきたようだ。 バルーン系は動きがかなり制約されるうえに、機敏に動いたところであまりかわいらしさを反映できない。ゆっくりとした動きでも十分に可愛さが発揮できるため、中の人の技量が無くても即戦力になると思う。クライアントが好むのも納得である。 そんなわけで、20分のグリーティングを終えて、控室に戻した〇〇君。 背中のファスナーを開けると、むあっとした蒸れた熱気が私に向かってきた。 「着ぐるみ、すっごく楽しいですね!!」 ファスナーから出てきて開口一番に着ぐるみの楽しさを訴えてきた彼女。Tシャツは少し汗ばんで変色していたし、額には結構汗がにじんでいた。しかし、ふかもこ着ぐるみのような滝汗はかいていなくて、さすがバルーン系の着ぐるみだと思わせてくれる。 おつかれさま、と声を掛けながらすべての着ぐるみを脱がした。着付けもお手軽感がすごいし、なにより中の人の負荷があまりにも低いことに驚いた。普通だったら、着ぐるみ含めて1回のグリだけでも汗でびっしょりになるところ、そこまでぐっしょり濡れている状況ではなかったからだ。 さてさて、と。 バッテリーの電源を切り、そのまま〇〇君を休憩させるとはいかず、すぐさま私が登場することになった。 少し湿ったバッテリーの装具を身に着けて、新しいバッテリーをに交換していざ私が〇〇君に変身する番だ。 サンダルを身に着け、配線類を装着してもらい、着ぐるみの中に埋入していった。 ・・・やっぱり若干汗臭い。着ぐるみに染み付いた匂いに加えて、先ほどの彼女のものだろうか。興奮するものでもなく、こればかりは仕方なく耐えるしかない。 女性特有の、シャンプーの香りがしたが、脇汗のようなにおい、ワキガなのか?と思わせるほどの匂いに少し戸惑ってしまった。 ただ、腕を動かす木の棒が少しだけ湿っている程度で、中がびしょびしょになって気持ち悪い思いは一切なかった。 初めてのバルーン系の着ぐるみ。ファンの電源を入れてもらい、ファスナーを閉めてもらった。今思えば、このバルーン系の着ぐるみは自分では脱げない代物だ。空気がしぼんでしまうと脱出できないと思うとなかなか興奮する。が、着こんでいる最中にアソコを大きくすることもなく、淡々と仕事をこなすようにしていた。 徐々にエアーがたまり、着ぐるみが丸っこく膨らんで完成した。・・・やはりエアーを張るということで気圧の差、加圧側に居ることを感じる。耳の鼓膜が若干圧迫される。 バッテリーが若干熱を帯びるためか、これが結構暑さを引き起こすようだ。外から封入される空気は中で循環はしないものの、若干の涼しさを感じる。 ということで、〇〇君の完成だ。 さっそく外に出てグリーティング開始だ。 先ほど中に入っていた彼女よりも明らかに身長が高い〇〇君、周りからは結構なツッコミが入った。 ただ、私が入った方がかなり機敏に動いて周りを賑やかして・・・・のはずだったが、機敏に動こうとしても、着ぐるみ自体の追従性が不足して、あまりきれいな動きにならない。モッサリしたような動きで精いっぱいといったところだった。 それでも、手を必死に動かしながら写真対応や触れ合い等をこなしていった。 普通の着ぐるみに比べて非常に快適。しかし、汗はかくもので、中は蒸し暑く、ポタポタと汗が滴る。 そんな状態であっても、中で汗をぬぐうことができることもバルーン系の着ぐるみならではの特権か。目に汗が入ることもなく、鼻の頭に汗の雫が乗ってこそばゆいこともなく、熱中症のリスクも格段に低いように感じた。 さて、グリーティングの時間も終わり、次に彼女に着ぐるみを渡す時間が来たようだ。 汗をそれなりにかいてしまった後に、中に入る彼女はどんな気持ちで着ぐるみの中に入ったのだろうか・・・。男の汗臭い感じが着ぐるみの中で充満しているはずで、不快に思わないわけはないと思う。。 帰ってきてすぐに私の背負っていたバッテリーのリュックを背負い、そこそこ慣れてきたのだろうか、スムーズに着付けを行い、そのままグリーティングに出発した。 10分後、彼女が中に入った〇〇君の様子が幾らかおかしい感じがしてきた。空気が張っていない状態になっているのだ・・・。 彼女が登場してから13分後くらいだろうか、明らかに〇〇君が急にしぼみ始めた・・・。 この場面を見たときに、しまった・・・と思い返した。 バッテリーの交換を忘れてしまったのだ・・・! 私の背負ったバッテリーのままだった。フル充電してあるはずだが、やはり電池が弱まっているためだろうか、あまり蓄えがなかったようだ・・・。 ある程度の空気は入っているものの、明らかに中の人の頭が外から見てもわかるくらいくっきりと、まるでテントから頭が突き破ってくるかのような具合に突っ張っていた。 急いで控室に〇〇君を誘導して戻した。 明らかに私の注意不足によるミス。。。中に入っていた彼女にもクライアントにもひたすら謝った。 が、しぼんで可愛らしいハプニングだったと笑ってもらったおかげか、注意も受けることなく事なきを得た。 中に入っていた彼女の方はというと、急にしぼんで中でびっくりとしていたようだが、持ち前の明るさで全然大したことないといった具合であった。ただ、少し焦ってしまったのだろうか、さきほどよりも結構な汗をかいているように見えた。 よかったと安堵したが、ミスはミス。クライアントによっては懲罰モノであるので、ミス無き様に注意を払うように心がけることにした。 さて、もう一度バッテリーを背負って、〇〇君を出陣させた。 ・・・中の汗臭さ、湿気具合はかなりUPしている。。。不快であるものの、今思い返すと十分なオカズになるものだ・・・。 ・・・という具合で、若干のハプニングがあったものの、着まわしながらバルーン着ぐるみを体験したわけで、非常に良い経験になったことは言うまでもない。 男女が交互で着ぐるみの中に入る状況だが、この時限りでこの後は一切そういった経験をしたことがない。男同士で着まわす事例はいくつかあったが・・・非常に貴重な体験をしたと思っておいてよいだろう。そんな思い出深い出来事であった。 ⑨着ぐるみ大好きなアテンドに出会う これは恐らく、の話。おそらくだが、ほぼ間違いないと思っている。 アテンドの女性が着ぐるみフェチだったであろう話。 それなりに現場をこなし、それなりに着ぐるみの中の人を経験し、そこそこ演技に慣れてきた今日この頃。マスコット着ぐるみとして出演する機会も多くあり、それなりに充実した着ぐるみライフを送っていた。 そんな中、とある着ぐるみの現場があった。 GWの蒸し暑い現場。GWのクセに30度近くまで上昇し、灼熱なGWとなったある日。 私は住宅展示場のピンクのウサギさんを演じることになった。 ウサギさんといえばかわいらしいキャラクターのように思えるが、着ぐるみは汎用のもので、決してかわいいとは言えないもの。つくりも極めてチープで、上を向けばあご紐丸出しで、さらに私は身長も大きいことがあって、しゃがむとくるぶしが露出してしまうくらいの短さだった。 着ぐるみを着られなくはないが、超ピッタリで若干威圧感のあるウサギさん。そんな着ぐるみを着た状態で、来場者に手を振ってにぎやかしをするといった、よくある着ぐるみバイトの典型のような現場だった。 そこに着ぐるみアテンドとしてどこからか派遣されてきたのだろう、女性の方が付き人となって私を支えてくれた。 年齢は私と同じくらいの20代前半で、大学生といったところだろうか。そこそこぽっちゃりとしていて、若干オタクチックというか、物静かそうな女性であった。 その子と一緒に仕事スタート。 ということで、私はウサギさんに変身するのだが、着替える場所がまさかの用意されていない状態だった。 担当者もその場で考える始末。無いため外で着替えてくれともいわれる状況で、さすがにそれはNG、やめてほしいと強くいったところ、ムスっとして機嫌悪そうにモデルハウス内の脱衣所で着替えてもよいこととなった。 そんな場所でピンク色のモコモコなウサギさんに変身し、アテンドの彼女のもとへ向かった。 「わぁ~可愛い・・・!」 彼女からそんな言葉が聞こえてきた。 中身は知られている恥ずかしさはあるものの、全力で可愛い動きをした。 すると、次の瞬間、衝撃が起こった。。 着ぐるみに覆われて、少し汗ばみ始めている腕に向かって、彼女の手がズズズっと侵入してきたのだ。着ぐるみと腕の間の空間に入り込んでくる彼女の手。思わずバっと彼女の手を振り払った。 ・・・いったい何が起こったのだろうか・・・。 続く

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