【第一話】伝説のスーツアクター (Pixiv Fanbox)
Published:
2021-11-14 15:08:32
Imported:
2023-06
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伝説のスーツアクター
彼が来ると、倒産寸前の遊園地や動物園がたちまち復活していく。
そんな彼を、皆がこういう
“伝説のスーツアクター”と。
スーツアクターとは何か?
簡単に言うと、着ぐるみの中の人だ。キャラクターショーやゆるキャラの中に入って命を吹き込む人たちのことを指す。
着ぐるみは構造上暑くてとても蒸れる上に視界が悪い。そんな中でキャラクターの演技をするためには、特別な技能が必要になってくる。着ぐるみをまるで生きているかのように演じることは一見簡単そうに見えて難しい。
その技能職がスーツアクターというわけだ。
スーツアクターは単にキャリアだけではなく、才能/運動神経といった要素も多く含まれてくる。アクション系のキャラクターを演じるときはそれらの要素が大きく左右してくる。
だが、彼はアクション系のスーツアクターというより、動物系を専門とするスーツアクターである。動物系の着ぐるみでキビキビとした動きをするから伝説と呼ばれているのか?そうではない。動物として演技を徹底するのであって、目立ったアクションは無い。
しかし、彼の演技力は凄まじいと言わざるを得ない。その才能は抜きん出ているといっても過言ではない。
そして指導も……指導したアクターが演じる着ぐるみたちは、まるで本物のぬいぐるみのようになる…と言われている。
一体、どう云った指導なのだろうか。そして、どんな演技力なのだろうか。気になる。
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「よ、よろしくおねがいします!」
着ぐるみのキャラ役に抜擢されたのは19歳の華奢で身長が150センチの女の子。野村さんというらしい。
風が吹けば倒れてしまうのではないかと思うくらい華奢で、ホントにこの子が着ぐるみの中の人として活躍できるのか、誰しもが疑問に思ったことだろう。
ここは東京の西の方にある動物園。目立った動物もいなければ、人気の動物もおらず、はたまた人気のアトラクションや設備もなく・・・。
国からの補助金で細々と経営が出来ている、ぎりぎり経営の動物園だ。
そんなぎりぎりの動物園だから、目玉となる、起爆剤となる“何か”が欲しいと経営層は頭を悩ませていた。
そんな中で案として挙がったのは、キャラクター案、いわゆる着ぐるみキャラである。
昨今のゆるキャラブームにうまく便乗できないかと考えた案であるものの、世間ではゆるキャラブームは明らかに下火で、そこまでの起爆剤になるものかと、斬新な発想ではないことは誰しもわかっていた。
着ぐるみ自体も本格的なものを作るとなると、ゆうに100万円を超えてくる。経営ぎりぎりの動物園にとって、100万円はかなりの大金だ。
1体作るだけでもなかなかの金額になってしまう。なので、キャラクターは何体もいる設定だが、着ぐるみ自体は1体だけに絞って運用しよう、となった。
そこで完成したのが、招き猫をベースにした着ぐるみ。
招き猫と言えば千客万来の効果もあり、丁度この動物園には超希少価値の高いオスのミケネコが飼育されている事実もあって、このキャラが選ばれたそうだ。噂によると、どこかの神社でもこのキャラクターが使われているそうで、その神社では常に人だかりができているほどのものらしい。
このミケネコの着ぐるみ、ずんぐりとした体形に可愛らしいクリクリとした目、モフモフとした尻尾とボディ、間違いなく人気が出そうなキャラクターだ。
と、着ぐるみの準備は何とかなりそうになった。次の課題としては、、、
その着ぐるみを着て演技をするスタッフをどうにかGETしなくてはいけない、着ぐるみのスタッフを準備する必要があった。
持ち回りのスタッフで回した方が良いのか?
人員確保も中々難しい経営状況下、暑くて大変な着ぐるみを社員のシフトでどうにか回すしかないか…と思っていた社員は多かっただろうが、どういうわけか、専任のスタッフにするとの経営方針があった。
但し、専任のスタッフは1名のみ。シフト制であるなら最低でも2人は確保しないといけないのだが、こちらもどういうわけか1名のみと強く決定されていた。
そんなこんなもありつつも、実際に着ぐるみの中の人として募集をかけて、応募の集まった約50人を厳選して、華奢な彼女の野村さんが選ばれたということだ。
それにしても、着ぐるみの中の人ってこんなにも人気のある職種なんだと、動物園のスタッフは皆驚いていた。まぁ給与がかなり高いことが主要因であろうが、中の人になりたい願望の人は世の中に一定数いるようだ。
そもそもであるが、
なんで彼女、野村さんが選ばれたの?と疑問に思う人は結構いた。
野村さんは役者志望で、少しでも演技力を磨きたいのと、お金をどうしてもすぐに必要だからということで、この募集に応募したそうな。
実際に彼女の演技力はといえば…まぁひどいものだった。
着ぐるみを身に着けていない状態でのダンスやグリーティングの動きを確認した。
うーむ・・・素人の方がよっぽど上手なんじゃないかと思うくらいに素人感があった。劇団に本当に所属しているのだろうか、と疑いたくなるレベルだった。
まだミケネコの着ぐるみが動物園には届いていないため、汎用のライオンの着ぐるみを着て演技してもらった。
野村さん自体がかなり小柄ゆえに、着ぐるみ自体もそれなりに小さくなって、まるで縫いぐるみのような感じに、可愛いと言葉を思わず漏らしてしまうほどの見栄えだった。
初めての着ぐるみ着用なのだろうか?足元がおぼつかない。
最初の5分くらいは、スキップしたりしゃがんだりして、疑似的なグリーティングの演技を頑張っていたのだが…
5分を過ぎると
明らかに疲労の色を隠しきれず、棒立ち時間も長くなり、息も絶えたえでギブアップしてしまった。
頭を脱がせると、大粒の汗とともにぐったりと真っ赤な顔の野村さんが出てきた。
以上で着ぐるみ演技の確認を終了したわけなのだが・・・彼女をクビにしてでもいいから、もっと別の人を雇った方が良いのでは?と思わず私は提案したくなった。
半端ではない暑さと酸欠で思うように演技出来ないのは仕方ないのかもしれないが、着ぐるみ役者はそれらを我慢して演じなければならない。
彼女のような演技であっても、閑散としている動物園だったら許されてしまうかもしれない。別に何ら問題なく成立してしまうだろう。
とも思った社員はいるはずで、別にまぁこのままでも、可愛らしい着ぐるみの姿があるから何とかなるだろう、そう思ったミケネコ着ぐるみお披露目会1か月前の出来事であった。
が、どうだろう?この演技力にさすがに上層部から物言いが入ったそうで、短い間だったが野村さんはクビになるだろうな、と誰しもが思っていた。
野村さんはどうやらクビにはならないらしいのだが、演技力を磨いて一人前の着ぐるみ演者になるために、コーチが付きっ切りでつくとのことになった。
まぁこのご時世、人を雇ってしまうと簡単には辞めさせられないから仕方ない落としどころの処置だったのだろう。
野村さんのコーチとして雇われた人、そこで登場したのが、伝説のスーツアクターと呼ばれている彼だった。
名前は聞いていないから分からない。後になって聞いた話だけども、どうやら、ミケネコの着ぐるみの準備や着ぐるみスタッフの専任化、そして野村さんの採用を全て裏で動かしていたそうな噂が立っている。
あの彼女を採用した張本人が彼?!一体どういう魂胆があってのことなのだろうか。
まずは着ぐるみ着用してからの演技。どんな厳しい指導が待ち受けているのだろうか……。
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一週間後、ミケネコのデビューまであと3週間。ようやくミケネコの着ぐるみが動物園に到着した。
構想の通り、非常にモフモフとしていて、実物で見ると非常に可愛らしさに拍車がかかっていた。
試しに着ぐるみを手に取ってみた。
ズシっとしていて非常に重い。
それもそのはず。なんとこの着ぐるみ、手足や頭も一体型の構造をとっている。モフモフ度がかなり高くて、汎用着ぐるみなんかよりも密閉度が極めて高い。
あの汎用の着ぐるみですら満足に演技できなかったのに・・・野村さんは5分も持たないんじゃないだろうか。
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3週間後……。
ミケネコ着ぐるみのデビューの日。
お披露目会と広告を出しておいたおかげか、今までにないくらいに混雑した動物園になっていた。
動物園にいるオスのミケネコをモチーフにしたキャラクター。
イベントステージ前には、お披露目会のセレモニーが開かれていて、それを囲うようにたくさんの人たちでにぎわっていた。
―カウントダウンを始めます~♪3,2,1,ではどうぞ~!!
司会者の合図とともに舞台に登場した1匹のミケネコ。
黄色い声援とともに、非常にキビキビと可愛らしい動きをするマスコット。
・・・本当に演じているのは野村さんなのか・・・?
目を疑いたくなるような演技力。モーションはディ〇ニーランドのキャラクターたちとほぼ同等かそれ以上に、まるで生き物かのように振舞う様子が目の前にあった。
スゴイ…すごすぎる・・・!
お披露目を終えた後、ミケネコは舞台から降りて、そのままグリーティングに向かった。
式の時間は20分ほどあったが、ずっと出ずっぱりの状態。そこから裏に引っ込むことなくグリーティングが始まったのだ。
1か月ほど前の野村さんからでは想像もできないほどの躍進ぶりだ。着ぐるみを10分も切ればギブアップまでしていた彼女が、どうしてここまで演技できるのだろうか…。
それにこのミケネコ着ぐるみは通常よりも重くてモフモフで、おまけに全てが一体型である。これまでの彼女だったら5分でギブアップしていたに違いない。
どういうことなのだろうか。一体何があったのだろうか。
やはり、あの伝説のスーツアクターのお陰によるものなのだろうか。どんな特訓をしたのだろうか・・・疑問は尽きない。
・・・
結局、なんと1時間近くグリーティングを終えて楽屋に戻っていった。お披露目ステージを含めると1時間半くらい、着ぐるみの中に入っていたことになる。
そんなに長時間着ぐるみを着続けられるなんて、実際にはありえないハズだ。。。いや、中に扇風機のようなギミックがあれば多少は暑さや息苦しさを緩和させることが出来る。
ミケネコの着ぐるみをよくよく見ていなかったが、中にはそんな構造があるのだろうか。
そして、今、野村さんの状態は大丈夫、、、なのだろうか・・・?
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(少し遡った、お披露目会の3週間前)
「よ、よ、宜しくお願いします!!」
―この子が指導する子か・・・。と言っても、俺が選別したんだけどね。
俺は秋津って言うんだが、まぁ自己紹介は不要か。
それなりに場数を踏んで着ぐるみアクターとしても、着ぐるみのコンサルティングとしても実力がついてきている。本当は着ぐるみの中でもっと楽しみたいところだが、ね。
MT社が“伝説のスーツアクター”なんて大層な誇大広告を打ち上げたせいで、俺はそのコンサルティング業務に忙殺されている。
彼女は野村さんという、一応役者志望で着ぐるみに挑戦して演技力を今よりももっと磨きたいとのこと。
うん、結論から言おう。彼女は着ぐるみフェチだと思う。そう思って私は彼女を採用しようと決めた。
どうして着ぐるみフェチかって?
面接のときに、「着ぐるみの中はとても苦しいし暑くて大変だ」「着ぐるみの中の人と呼ばれる気分はどう感じる?」この質問の時に、かなり目が泳いでいたこと、明らかに動揺していて体温の上昇が見受けられたこと。この質問で若干興奮状態になっているように判断したことで、彼女を選んだというわけだ。
着ぐるみの中の人に、着ぐるみフェチである必要性ってあるのかって?
あぁ、大いにある。着ぐるみフェチであるかそうでないかで着ぐるみの中の人として成長する速度が桁違いであるし、何よりも着ぐるみフェチ特有の“嫉妬心”をうまく利用することで、素晴らしいアクター/アクトレスに必ず成ることが出来る。
前置きはこのくらいに、さて、彼女をどうするか、だな。
演技力は最低ランク、着ぐるみフェチかもしれないが、暑さと息苦しさの耐久性が絶望的に低い・・・。これは一気に強めの訓練をして体に叩き込むしかないかなぁ。
スキーやスノボでも、一度山頂に連れて降りてこいと言えば、四苦八苦しながらなんとか地上まで降りてくるものであるので、それに近い訓練といえるだろう。
・・・よし。
「さて、野村さん。初めまして。私は秋津と申しまして、巷では伝説のスーツアクターなんて呼ばれていますが、そこまで大した者じゃない。君にもしっかりと私のやり方を教えれば、伝説級のスーツアクトレスにきっとなれる。頑張ってレッスンについてきてくださいね。よろしくお願いします。」
「は、はい!よろしくお願いします!!」
ということで、レッスンスタート、だ。
「まずはこのラバースーツを着てきてくれないかな」
私が彼女に渡したのは、MT社で使用されているインナーである。暑くなると中の人を刺激してクーリング機能を発揮させるアレである。
「は、はい!」
従順で無垢な彼女はそのラバースーツを何も疑問に思うことなく、そのままの服の上から着ようとしていた。
「ちょ、ちょっとまって!さすがにこのままは着れないでしょ(笑)全裸で着てくれないかな」
「全裸ですか・・・!?」
かなり赤面した様子の野村さん。いくら何でも純粋すぎるだろ。。。
「えっと、じゃあ私は後ろを向いているから。着方に困ったら質問しなさい。」
「は、はい!ありがとうございます!頑張ります・・・!」
やれやれ、なんというか、世間を全く知らないお嬢様のような、田舎者のような、そんな感じのする子だなと感じた。
「えっと、まずどうやって中に入ればいいんです?」
「背中にチャックがあるだろ?まずはそれを開けて。中は少しひんやりしてヌルッとしているけども、潤滑油だから気にしないでくれ」
「はい!」
と、ピチピチ、ヌルヌルと音を立てながら野村さんはどうやらラバースーツをちゃんと言いつけ通りに着込んでいっているようだった。
「ひ、いぃ!ひやぁう!!」
やっぱりか、というくらいに予測していた反応だが、きちんと事前に説明しておくべきだったかな。
そう、クーリング機能を発現させるために必要なのは、中の人が絶頂を迎えること。中の人が女性であるなら、女性器にはディルドを模したモノと、クリトリス付近に極小のバイブが備わっていて、激しく中の人を刺激する。そんな機能や装備がこのラバースーツに備わっている。
なぜラバーである必要があるかって?
実は極秘の科学技術が使われていてね。体内から排出された水分が老廃物を除去の上もう一度皮膚から体内に入るこむように設計されたモノのようで。つまり、このラバースーツ上では汗をかいてもすぐに水分が体内に取り込まれるようなシステムになっているそうな。
長時間飲み物を飲まなくても脱水症状にならない優れもののスーツなのだ。
と、少し脱線したが、彼女がなぜ悲鳴を上げたかと言えば、スーツの内側に備わっているディルドが、おそらく彼女の股をつついたのだろう。
「秋津さん!股にあるコレ・・・なんですか・・・」
「あぁ、それは中の人の体調を管理するものなんだ・・。我慢して中に埋入しれくれないかな?」
「む、無理です・・・💦私こういう経験、したことが無くて・・・その・・・処女というか・・・未経験者なのです・・・💦」
え!!?
まさか、だった。そうか。まぁ19歳なら・・・いやいや未経験って本当か?あり得なくもないのか・・・。
ただ、自分の中にディルドを入れないことには生命維持に支障が出てしまう。
ここは意を決して自分の中に挿入してもらうしかないのだ。
「これはどうしようもないことなのだ。その中に挿入する棒は通常よりもかなり小ぶりで、しかもローションでしっかりとヌメり毛がある。挿入しても痛くないハズだ。」
そう私は言うと、素直に野村さんは従おうとしていた。
「んぁあぅ・・・いぃ・・・痛いよぉ・・・」
「んぅ・・・こ・・・んなの無理です・・・。いやですぅ・・・!1/3も入らないです・・・!」
「仕方ないですねぇ。女性スタッフにも実は来てもらっているので入ってきてもらいましょう。少し強引なやり方ですが・・・」
【第二話に続く】