【第一話】縫いぐるみセラピー【新連載】 (Pixiv Fanbox)
Published:
2021-01-18 15:32:08
Edited:
2021-01-19 03:54:13
Imported:
2023-06
Content
このご時世、癒しが間違いなく必要だ。
日本のGDPは過去最悪、経済を廻すサラリーマンは活力が見いだせずにダラダラと会社と自宅の往復を繰り返す日々。しかし安くはならない税金。
人々は様々な癒しを求めている。
人々の趣向は千差万別、星の数だけ癒しの種類がある。そんな中で、皆はアニマルセラピーを知っているだろうか?
アニマルセラピーとは、可愛らしい動物を通じて癒しを得ることによって、ストレスを軽減させたり、自信を持たせたりすることによって、精神的な健康の回復を促すものである。
可愛らしい動物に限らず、最近ではロボットを組み込んだ縫いぐるみやVRなども注目されており、癒し産業の発展には目を見張るものがある。世の中に癒しを求める声が強いこともあるのだろう。非常に目覚ましく発展している分野と言える。
・・・っと硬い話はこのくらいにしておいてもいいかな。
俺は杉谷卓也(すぎたにたくや)、今年で30歳の独身だ。まぁよく同僚にはスギタクって呼ばれている。
しがない町工場に務めてるせいで30歳になっても独身だ。そもそも出会いも無ければお金もないしどうしようもない。
まぁただ、結婚しなくても満足できる趣味を持っているから、そこまで結婚願望は無い。
俺の趣味、もちろん家族には極秘で明かしたことは無い。親しい友達にも、だ。
唯一明かしているのは、SNSで知り合った共通の趣味仲間くらいか。この趣味は、特に今の日本じゃ市民権を得ているわけでもないし、大の大人がなんでこんなことやっているのか?とみられるのが恥ずかしくて、誰にも言えない。
その趣味は、着ぐるみだ。
インターネットで着ぐるみと検索すると、マスコット系や自作を中心としたケモノ系、ドール系等があるが、俺の場合は、マスコット系やケモノ系に興味がある。
体がふわふわした毛布のような毛皮に覆われて、体型はずんぐりで何とも可愛らしい風貌の着ぐるみが大好きで仕方がない。
自分で着ぐるみの中に入って楽しむことも好きだし、着ぐるみを外から眺めていることも好き。ただまぁ、、、着ぐるみの中の空間に性的な興奮を覚えるというか・・・何と言ったらいいかよくわからないところも多いのだけれども、簡単に言うと、着ぐるみフェチでもある。
可愛らしい外観なのに、着ぐるみの中は暑くて苦しくて、おまけに蒸れる空間。一度着たら、中々脱ぐことを許されず、お客さんの前で元気にパフォーマンスをしなければならない存在。そんな着ぐるみの中に、誰にも認知されることも無く元気よく魂を注ぐ誰かがいるはずであり、そんな存在に、、、なんというか性的な興奮を覚えてしまう。
特に、大型テーマパークやマスコットショー等で活躍する着ぐるみたちを見ると、グッとくるものがある。この着ぐるみたちは、首と胴体が繋がっていたり、手足が一体型になっていたりして気密性が非常に高いものが多い。人間とはかなり遠い生き物を完璧に作り上げるために、中の人はとんでもなく苦しくて大変な思いをしているのだ。そのせいで、着ぐるみのファーが汗で湿っていたり、苦しそうに肩で息をしていたりする場面をネットで見ることもあるが、それを見ると非常に堪らない気持ちになる。間違いなく大変な思いをしながら着ぐるみの中で必死に演技をしている、その誰かに興奮してしまう。
あぁ…このマスコット、脇と首周りのファーが汗でびっしょりだ・・・。
こんな大変な着ぐるみの中にもしも自分が入っていたら・・・。
そんなシチュエーションを夜な夜なネットサーフィンして見つけては、オカズにしている。
炎天下で働くマスコット・着ぐるみたちの写真や動画を見ながらオカズにしていることを、共通の趣味を持っていない誰かに言えるはずが無い。言ったところでどう説明すれば良いのかも分からない。
閑話休題。
俺が着ぐるみ好きだということは良く分かったと思うが、着ぐるみで癒してもらえるか?という問いに対しては、少し方向性が違う様に感じるため、答えはNoと回答してしまいそうになる。
癒される以前に、着ぐるみを見てしまうと、中の人が羨ましくて仕方なくなってしまい、嫉妬してしまう。マスコットのグリーティングを目にすると、確かに楽しい気分になるけども、そのあとに嫉妬心がどうしても湧いてきてしまう。
着ぐるみの中に入って苦しくて大変な思いをしている誰かが羨ましい。そんな感情のせいで、着ぐるみで癒されるということは無いと思っている。
・・・
いや、今は、思っていた、と言った方が良いか。
ついこの前、俺は自分でも何故このコンテンツに触れたのか良く分からないが、とにかく癒されたことは間違いない。癒されるし満足できるし、明日がツライ仕事でも活力が湧いてくるように感じている。それ以降ドはまりしたのも事実。
縫いぐるみセラピー
そんなコンテンツだった。
その縫いぐるみセラピーについて少し説明しようと思う。なぜかって?それは後できちんと説明する。
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初夏の夜。寝苦しい位に蒸し暑くて、でもオカズ探しに余念がない23時のPC前。
“縫いぐるみセラピー” なんだこれ・・・?
可愛らしい縫いぐるみさんと一緒に癒されてみませんか・・・?
今日も着ぐるみをオカズにするために、某SNS巡りをしていたところ、こんな広告が目に留まった。最近はめっきりと見なくなったホップアップ機能の広告だ。
ブラウザに通常は拒絶されるホップアップ広告。・・・ウィルスとかスパイウェアとかか?
めんどくせぇな。と思い、バツボタンをクリックしようとした。
が、その前に広告の中身が結構ツボであった。モフモフした縫いぐるみとお話したり、触れ合ったりして・・・癒される・・・?
へぇ、そんなコンテンツがあるのか。確かに広告に載っているのは可愛らしい縫いぐるみ・・・・・っていうよりも着ぐるみじゃないか・・・?
んー、でも変なアダルト広告かもしれないな。
俺は恐る恐る、広告をクリックして中に入った。
“縫いぐるみさんとお話して癒されよう♪”
“会員限定の完全個室!”
“ワンドリンクの15分〇〇円から、初回30分無料で・・・”
・・・んー。
要約すると、縫いぐるみさん(多分着ぐるみだと思うけども)と一緒にドリンク飲んでゲームしたりお話したりする、いわゆる個室グリーティングのようなもののようだ。
でも、なんだかまるでキャバクラのような感じがすごくする。明らかに如何わしい店じゃ・・・?
しかも、おかしなことに、この店の住所や名前をググっても一切情報が出てこない。ますますアヤシイし、何か個人情報を抜き取る新手の詐欺じゃないか・・・?
と訝しく思っているものの、ホームページに載っている着ぐるみがとにかく可愛くてドストライクだった。
載っていたのは、細身であるが少し肉付きがあって、セクシーでもあり可愛らしくもあるネコのキャラクターだった。
フェチ目線で見ると、首と胴体が一体化していて、おまけに足と手も一体になっている。しかも、ゾクッとしたのは、胴体と首のファスナーに鍵らしきモノが付けられていたのが写っていた。ホントに鍵なのかどうか、画像だけでは確証が持てなかったけども、これが本当なら間違いなく何度もオカズにできるレベル。
そんな妄想も含めつつ、今日のオカズはこのホームページに載っているネコの着ぐるみに決めた。
・・・
実際にこのキャラに会ってみたい気もするなぁ・・・
お、アクセス見ると意外と遠く無くて、ココから4駅行って乗り換えて3駅行ったところか。1時間くらいか。今週の土曜日はどうせ予定も無いしと思って、俺は、そのアクセス先に向かってみることにした。
――土曜日
今日も蒸し暑い。30度で湿度が80%を超えるような昼下がり。暑すぎて人通りが少ないのか、それとも元々こんなものなのか良く分からない駅前。初めて降りた駅だけども、駅の周りには何もない印象。物珍しいといえばモノレールが走っているくらいか。
駅から歩いて15分。誰も人通りの無い場所にある薄汚れた雑居ビルが、この縫いぐるみセラピーのお店の入っている場所らしい。
ビルの入り口付近についた。
しかし、案内も無ければ、看板も出ていない。
・・・ますますアヤシイ。ホームページの情報だと、ビルの3Fにお店があるらしいけども、それらしい様子が全く感じられない。
・・・んー、来て損したな。
こんな場所に店があるわけがない。あったとしても詐欺か宗教勧誘か何かだろう。
と自分を言い聞かせるようにして、近くのラーメン屋に行って帰るか・・・と思いつつスマホを取り出して、ラーメン屋を検索しようとしたときに、ふとビルのポストに目をやった。
3Fに“縫いぐるみセラピー”と確かに書いてあった!
ぉお・・・本当にあるのか。。。
・・・縫いぐるみセラピーって、そのまま会社名なのか・・・?
どうしよう。まぁ店の前まで行くぐらいだったら、折角ここまで来たんだし・・・。
もう一度ビルの入り口付近まで来て、そして恐るおそる、3Fまで階段で登っていった。
・・・ふぅ・・・。
ついに店の前まで来てしまった。店前の扉には、確かに縫いぐるみセラピーの看板と、あの猫キャラの絵が描かれていていた。営業している感じがしてきた。
ええい、ココまで来たらもう中に入ってみるしかないじゃないか・・・!
心臓が高鳴る。
ドアノブに手をかけた。そして、ゆっくりと捻って、ドアを開けた。
カランカラン・・・
まるで喫茶店のような鐘が鳴った。
「いらっしゃいませ、ご予約のお客様でしょうか?」
玄関には、こぢんまりとした受付のようなカウンターがあり、そこにはスーツを着た男が立っていた。身長高く、さわやかイケメンといった具合の男。30歳くらいだろうか・・・。
緊張が限界を迎え、俺はあたふたしまくっていたと思う。
「あ、いや、その、ホームページを見まして、すみません、予約してなくて・・・。」
間違いなく変な奴だと思われたと思う。
「お客様は初めてでいらっしゃるようですね。当該施設は完全予約制となっております。申し訳ございませんが、縫いぐるみに空きが無ければ本日はお引き取り頂くことになります。ご了承くださいませ。では、少々お待ちください。」
そう男が言ってきた。
「そ、そうですよね。すみません。本日は大丈夫ですので、また出直してきま・・・」
「・・・そうですか。あ、いや、確認しましたところ、丁度縫いぐるみが空いておりましたので、今からならご案内できます。如何なさいましょうか。」
・・・おぉ・・・なんたる僥倖。
「あ、はい。じゃあ、お願いしてもいいです?」
「かしこまりました。お時間ですが、30分のみとなりますが宜しいでしょうか。次の予約が控えておりますので。あと、初回ですので、今回の30分は無料となります。ワンオーダー制となっていますので、後ほどお品物をオーダーください。それでは、まずコチラに記入ください。」
そう男が言うと、俺にタブレットでお客様情報を入れてほしい、とのこと。
タブレットに個人情報と好みの縫いぐるみのタイプを心理テストのような形式で答えていった。あと、ワンオーダー制ということで、ジンジャーエールを注文した。
また、縫いぐるみに対する注意事項も読んだ。
・縫いぐるみの嫌がることは禁止
・縫いぐるみを破損させる行為は禁止
まぁここら辺は当然かな。
・この店内で起こり得た情報の一切を口外禁止
・・・おぉ厳しいね。
特に違和感なく読み進めていくと、男が俺を部屋に案内してくれた。
「それでは、この部屋に入りましたらお時間スタートします。ごゆっくりお楽しみくださいませ。」
俺はドキドキしながらドアノブに手をかけ、部屋の中に入った。
縫いぐるみセラピーの始まりだ。
部屋に入ってみると、そこは、、、
何の変哲もない、1Kの普通の部屋といった具合。机とソファとベッドがあって、窓は無い。別に可愛らしくも雰囲気も盛り上げない白地の壁紙。清潔感はあるものの、なんだか殺風景だし、引っ越ししてきたばかりの部屋のような印象を受けた。
・・・え?
ただ、その空間には、明らかな違和感があった。
ベッドが置いてあるんだけども、そこに、布団を口付近まで深くまで被って寝ている“縫いぐるみ”が居たのだ。違和感の正体と言わなくても分かるような存在。
大きな薄ピンク色をした耳、クリクリとした目は緑色と青色のオッドアイ。ネコだろうか・・・?あぁ!あのホームページに載っていたネコの着ぐるみだ・・・!
とにかく、この子を起こさないと何も始まらないんじゃないか・・・。意を決して、俺は話しかけてみようとした。
「あ、あの・・・」
目はぱっちりと見開いているけども、動く気配が無い。お腹の動きに合わせて、掛布団が上下している様子は分かるけども。
暫く見ていても動き出す気配はない。布団の中に手を入れて、肩を揺すってみた。
・・・布団の中、かなり熱い・・・。縫いぐるみ、いや、着ぐるみもかなり熱くてびっくりした。おまけに少し湿っぽい感じもしたんだけども、気のせいだったかな・・・。
あ、ビクンって着ぐるみが動いた・・・!と思ったら、結構な勢いでベッドからガバっと起き上がった。思わず俺はうわぁあ!っと情けない声で驚いてしまった。その拍子にベッドの横に座り込んだ。
『にゃあ~ぁ!っとお客さん?・・・んしょっと・・・』
・・・スゴイ。着ぐるみの声に合わせて、誰かが声を当てているんだろうか・・・?自然にその着ぐるみから声が発せられているように感じる。中の人から声を出しているような、籠っている感じは全くしない。着ぐるみの口は全く動いてはいないけども。
それにしても、動きがいちいち可愛らしい。ネコのような演技をしているんだろうけども、ネコっぽいニャンニャンした動きで物凄くゾクゾクとした。
ピンク色の猫の着ぐるみ。上下白色のテカテカしたパジャマのようなものを着ている。手や足はクリーム色っぽい白色だろうか?
マスコットやケモノ系の着ぐるみとは違っていて、全身がストレッチファーのようなぴっちりしたボアで覆われていて、とてもスラっとしている。ちょっとお腹やお尻、太もも辺りがムチっとしているけども。
お尻からはスラっと長いピンク色の尻尾もあった。モフモフとして可愛らしい。あと、それなりに胸も大きくある感じがする・・・。
・・・
やっぱりホームページで見た通りかも!手と足は一体型で・・・胴体と首も一体になっている!・・・なんてフェチいんだ・・・
しかも・・・本当にそうだったのか!?背中のファスナーの持ち手部分に何やら南京錠っぽいようなものがついている感じがする・・・。
んー、一瞬チラっとしか見えなかったから、未だ確証が持てないけども。
・・・
可愛らしい縫いぐるみさん。着ぐるみ。きっと、着ぐるみなんでしょ?なんて問いをしたら、中に人はいないだの、私は縫いぐるみだのと、着ぐるみならではのお約束ワードが飛び交うと思う。ココは縫いぐるみとして接しておくべきかな。それにしても、どう声をかけたらいいのか、きっかけに困るなぁ・・・。
そう迷いながら、きょろきょろと全身を舐めまわすように見ていたものだから、明らかに変人だと思われていたと思う。。
『んもう、何かリアクションとかお話とかしてくださいよ~!えっと、スギタニタクヤくんでいいかしら?』
向こう側から俺に声をかけてきてくれた。
「え・・・あ。はい。初めまして。杉谷卓也、スギタクと申します。よろしくお願いします。」
『スギタクくんね~♪スギタクって呼んでもいいかしら?』
「あ、はい。全然いいですよ。」
『にゃはは~♪やったぁ♪それじゃあ、今日はよろしくね、スギタク♪まぁ床に座ってないで、ソファにでも座ってくださいにゃ♪』
そんなドギマギした自己紹介が終わったタイミングで、オーダーしたジンジャーエールとちょっとしたお菓子を先ほどの受付の男が持ってきた。
『さぁ~、私のことは置いておいて、飲んで食べちゃってください♪』
「は、はい。」
俺は緊張してドリンクなんて水のような味にしか感じなかった。そして、どこに視線を落とせばいいのか。。。胸付近から上を直視できていない。。。
『そんなに緊張しなくても大丈夫よ。あ、そうだ、お初のお客様でしたね!まずは自己紹介っと♪』
猫の着ぐるみはパジャマ姿のままベッドの上から移動して、俺のソファの前までやって来た。
『ようこそぉ~!縫いぐるみセラピーへ。私の名前はリノって言います!ヨロシクですにゃ☆スギタクは私とこの部屋で時間まで一緒に過ごすの♪悩み事や世間話をお話してくれてもOKだし、一緒にゲームをしたり、お勉強するのだってOK!でも、おさわりはダメなんだからね!ソコ注意してね~♪にゃぁ~ん☆』
たまにネコっぽい語尾を付けてきたり、にゃんにゃんポーズを交えたり、、、あざとい。あざとすぎる。でも、無茶苦茶可愛いじゃないか・・・!
「あ、はい!リノさん、今日はよろしくお願いします。」
『もう~!スギタクは固いよぉ~♪リノでいいにゃ♪』
「じゃぁ・・・リノ、、、今日はよろしくね!」
『そうそう!ヨロシクね、スギタク~♪』
「あ、あの、リノって縫いぐるみ・・・でいいんだよね?」
『にゃは!私が人間に見えるかしら?猫の縫いぐるみさんですよ~♪ホラ見てみて♪全身モフモフだよ?』
そう言うと、俺の前で一回転クルっと回転して、4本指で肉球の付いた手をグーパーしながら見せてきた。
・・・ドキドキが止まらない。手汗が尋常じゃない。
「すっごく可愛いっていうか、本当に縫いぐるみ・・・みたいだなって思って・・・」
『ありがと~スギタク!でも私は、本当に縫いぐるみさんなんだからね♪着ぐるみみたいに中に人が入っていて暑くて大変な思いをしている、なんてことは無いのですにゃ~♪』
「・・・」
なんだか見透かされたようなストレートパンチを食らったかのような顔をしたと思う。キョトン顔をしながら、その言葉にゾワゾワとしていた。
着ぐるみじゃなくて縫いぐるみ。そんなはずがないことぐらい、小学生だって分かる。そこをあえて縫いぐるみと言ってくるその言動に、グッとくるものがあった。
そういえば、こんなにも長く着ぐるみと触れあるのは初めてだ。そのせいでゾワゾワしたりドキドキしたりしているのもあるだろうな・・。
『ヨシっと、ちょっとパジャマから着替えるから・・・ちょっと待っててにゃ!』
リノはそう言うと、いきなりパジャマのズボンと上着を脱ぎだして、下着姿になった。
モフモフとしたストレッチファーの上から、パンツとブラをしている。
パンツの後ろから出ている尻尾、ブラに包まれているモフモフした胸、なんともセクシーだ。おまけに、パンツが若干食い込んでいる。ムチっとしたお腹や太もも、お尻が何ともエロい。お腹は手足と同じく、白色に近いクリーム色で、おへそもあった。
・・・あと・・・お腹の動きが物凄く早い。暑くて大変なのかな。やっぱり着ぐるみだし、苦しくて暑いんだろうか・・・。しかも、時折ヒクって腰を動かしてたり、太ももをスリスリとしたりしているの、なんだろ・・・。何かのクセなのかな?
『もう~!!あんまりジロジロと見ないでよね・・・』
一瞬ビクっとする俺。そりゃそうだよな。着ぐるみに興味津々と言わんばかりの行動しかしていない俺、ちょっと引かれたかな。
『・・・えっと、スギタク、悪いんだけど脱いだパジャマを部屋の隅のカゴに入れてくれるかな~。ゴメンにゃ💦』
そう言いながら、クローゼットに行ってロングスカートとTシャツに着替えるリノ。
まぁいいか。俺は先ほどまでリノの着ていたパジャマ類を部屋の隅にあるカゴに入れようとした。
・・・え?
明らかに手に感じる違和感。ドキドキが更に強くなったと思う。
そのパジャマがすっごく火照って熱かったのはすごく良く覚えている。
おまけに、じんわりと湿っていた。特に、上着の背中や脇付近。
俺は平静を装っていたけども、物凄く興奮していたことは間違いなかった。
緊張して勃たない状況だったのはせめてもの救いだったかもしれないが・・・。
何を思ったか、俺はハっと気付いたときにはもう言葉を発していた。変な恥ずかしさがこみあげてくる。何を聞いているんだ俺は、という具合に。
「えっと、リノ。大丈夫・・・?その、あの、大変だったら休憩してもいいんですよ・・・。」
『なんでそんなこと思っちゃうのかな~?』
案の定、変な質問に対して返してきたリノ。ええい、ここはもう正直に話すしかない!そう思って次の言葉を発した。
「あの、少しパジャマがその、湿っていて、しかも結構火照っているなって。だから大変なんじゃないかなって・・・。」
『にゃははっ♪縫いぐるみだけども、わたしだってスギタクと同じで体温あるし、汗だって少しかいちゃうわよ~♪』
縫いぐるみだったらそんなに熱は持たないし、汗なんて湿っぽくなるはずないよ!っと突っ込みたかったけども、あくまで世界観を保たなくては・・・と空気を読もうとした。
が、その空気は読む必要が無かったのかもしれなかった。
『でもでも、もし、わたしの中に人が入っているんだとしたら、こんなにもふかふかでモフモフな縫いぐるみさんなんだから、すーーっごく中は暑くて苦しいくて大変なんじゃないかな~♪』
そうリノは言うと、いきなり俺の手のひらを掴んできた。そして、リノは俺の手のひらを、モフモフとしたリノの右胸の上くらいに導いてきた。おさわり禁止じゃなかったのか・・・?
モフモフと柔らかでプルっとした胸の感触。罪悪感と恥ずかしさが相まって、思わず手を引っ込めようとした。けども、グイっと結構強い力で、俺の手はリノの胸の上にそのまま押さえつけられた。
・・・先ほど感じた通り、物凄く体温が高いしおまけに湿っぽい・・・あ・・・心臓の鼓動が、、、異様なほど早い・・・。
まるで全力ダッシュをした後のような心臓の鼓動。着ぐるみの中がいかに過酷なのか容易に想像がついた。やっぱり苦しいのかな。
『なにか感じた?私は縫いぐるみさんだからよくわかんないんだけどね~♪』
「あの・・・とっても暖かくて、ふわふわしていて、あと、鼓動がすっごく早いなって・・・」
『へぇ~!スギタク、とっても鋭いんだね♪なんでだと思う??』
「えっと、中の人がすごく大変な思いをしていて・・・」
『だ~か~ら~!私の中には人なんか入っていないんですよー♪でもね・・・』
次々に繰り出されるリノからの言葉が色んな意味で衝撃で、その言葉だけでオカズにしちゃえるくらいのものだったと思う。
『中の人がいた場合ね、とっても大変な思いをしていると思うわ。暑くても苦しくても、簡単にこの着ぐるみから出られないしね♪どれだけ苦しくても、暑くても、リノちゃんはリノちゃんだから。酸欠になりそうなくらいクラクラしたって、暑くて汗いっぱいかいちゃって大変な思いしたって、わたしはそんなの気にしないわよね♪もしも、中の人がいたとしたら、泣き叫びたくなるくらい、外に出して、お願いします。助けてください!って懇願していると思うな~だってとっても苦しくて暑いはずだもん♪でも、わたしはリノ。だからそんなことは思わないんだけどね♪』
「そんな・・・でももし中の人がいたとしたら、今すぐ休憩したいって思ったりしてるのかな・・・?」
俺は平静を装って必死に言葉を振り絞って返してみた。
『中の人がいる場合だったらね、休憩したいってもんじゃなくて、今すぐマスクを引き剥がして新鮮な空気を吸いたいって思っていると思うよ~♪』
『ってか、さっきから変な質問ばかりしないでよ~!私は縫いぐるみさんなの!わかったかにゃ~?』
・・・やっぱりお約束のそのワードに落ち着くのね。
それにしても、先ほどからの中の人が、まるで今まさに苦しんで暑がっているような表現の数々って、一体・・・。本当に中の人がそんな感じの状況なのか・・?でもあの火照り具合とお腹の苦しそうな動き・・・。あながち間違っちゃいないのかも・・・。
興奮冷めあらぬ状況の中、リノは俺に話しかけてきた。
『ねぇねぇ!今日はココ初めてだったよね?なんか来てくれたきっかけってあったりする?』
「あ・・・えっと、ネットの広告で・・・。ホームページみて、リノが、そのとっても可愛くて・・・」
『わぁあ♪とーっても嬉しいよ♪ありがと~っタクヤ♪』
そう言うと、リノは照れたような動きをして、俺の下の名前を読んできた。思わずドキっとして赤面してしまったと思う。
すると、突然リノはソファに座っている俺に向かって、腕を掴んでギュっと抱き着いてきてくれた。
『本当に嬉しいわ♪私に会いに来てくれたお礼に、ちょっとだけギュってさせて♪』
可愛い。可愛すぎる。。。ふわっといい香りがする・・・。胸の谷間に俺の手が埋まっている・・・。ドキドキが止まらない。
でも、次の瞬間だった。
ギュっと抱き着かれて、腕がリノのお腹にグイっと押さえつけられていたと思うんだけども、手はリノの下腹部らへんだったかな。
その手に、何故か、ブーーンというバイブのような振動を感じた。
【つづく】