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 前前々回の妃愛アフターが5000字、前々回の華乃アフターが7000文字になったのであすみアフターこそは短めにするよ!って言ってたら8500字超えてました。

 どうしてこうなった。


【鎌倉詩桜】 評価:★★★★☆

 本作の被害者枠、大人の陰謀に巻き込まれただけ、ルートを攻略するかしないかで大きく印象が変わるけど第一印象が最悪過ぎて攻略しない人多発の不遇ヒロイン。

 ここまで書けば聞こえは良いけど本人も陰謀パートでは普通にノリノリだったから同情するかはまた別問題。


 自分は詩桜ルートをネタバラシルートとも呼んでいて、そのネタバラシ詳細については妃愛アフターのレビューを読んでもらえると幸い。

 簡単に言えば妃愛のマネージャーが妃愛の進級のために詩桜先輩に生徒会長の退任を迫って、最初は突っぱねた詩桜先輩がマネージャー評の主人公が気に入らないからって敢えて陰謀に加担する、って話。


 前作詩桜ルートでは主人公が自分と恩人のために無償の奉仕を申し出てくれたり、自発的に生徒会に取り組む姿から恋に落ちて隠し事をしている後ろめたさから色々と精神的な弱さを見せてくれたりするので必見。

 アレを見ると見ないでは詩桜先輩への評価が大きく変わります。

 というのもこの詩桜先輩、前作体験版では悪印象を持っていた主人公に対して組み伏せ背中を踏みつけ罵るという、それはそれは不愉快なキャラクターでした。

 15年ぐらい前なら普通にいたヒロインでも、昨今では全く見かけなくなった理不尽系ヒロインの姿にハミクリ購入を断念したプレイヤーが多数いたとか……。

 実際、自分も共通ルートをプレイしたときは自分から生徒会放り投げたくせに偉そうだし悪びれないしそのくせ無理難題を吹っかけてきて笑ってる、クソムカつく女だな……って珍しく苛立った覚えがある。


 でもね、攻略したら印象が真逆になるんですよ。

 自分から秘密を明かせないジレンマやみんなが仲良く生徒会活動をしているのに自分自身に科したルールのせいで手伝えずに感じる疎外感、更に主人公が他のヒロインと仲良くするときに見せる嫉妬や部外者は出て行けと主人公に拒絶されたときの想い、そしてすべてを明かしたときの主人公に対する愛だとか後悔だとかそういう色々な感情。

 あんなにあった悪印象が全部なくなってよし、許そう!ってなったね。


 まあまあまあ、そんな面倒くさくて小難しいヒロインである詩桜先輩。

 そんな彼女の本編は前作で文化祭前に交通事故に遭った主人公がまだ松葉杖をついている11月から始まる。

 自宅である高層マンションに主人公を招いた詩桜先輩なのだが。ここに来るだけで息も絶え絶えの主人公を前に、

 この過保護っぷりである。


 前作では部外者にも関わらず他校を相手に勝手に文化祭で驚くような出し物をしてやろうと主人公の意思を無視して勝手に約束したり、主人公が大変であればあるだけ笑顔が増えて厳しい言葉しか投げてこなかった詩桜先輩が、この甘さ。

 主人公が行きそうな場所にはすべて手すりをつけようとか平気で言い出すし、先輩に触れられるから要らないですよと断る主人公に対して真顔で「触れたければ好きなだけ堪能するといい」と言い返すデレっぷり。

 本当にこの人、前評判でボロクソに叩かれてた人と同一人物ですかー!?


 そして話題は詩桜先輩のイメージの話に。

 完璧超人過ぎて人間らしい生活から遠い印象を持たれていた詩桜先輩だが、その生活ぶりは意外と普通で、毎日掃除機をガーガー言わせるし床の雑巾がけもするしトイレだってブラシで擦る。

 ハウスキーパーを雇って生活の面倒事はすべて他人に任せて悠々自適に生きていると思っていた主人公は驚く。

 あぁ、この人以外と普通の人間なんだな、と。


 更に詩桜先輩は自分の作家としての寿命について語る。

 曰く、自分は特別文章力が評価されて売れているのではなく、美人学生作家として売り出されているから、「美人」「学生」の間が賞味期限だ、と。

 そこから詩桜先輩の交友関係や創作話になるのだが……、前作ではあまりこういう詩桜先輩のクリエイティブ要素については深掘りされていなかったので素直に興味深かった。

 先輩は華乃と違って自分のことや創作話を大っぴらに語らない人だから、アフターストーリーでそういうところに補完が入るのはヒロインのイメージが広がるから良いね。


 で、OP明け。

 かわいい。

 交通事故で介護が必要になった主人公のため、詩桜先輩は妃愛のサポートも兼ねて和泉家へ居候をして毎日昼夜を問わずに甲斐甲斐しくお世話をしてくれています。

 それこそ着替えから入浴、果ては尿瓶も……。

 でも全く嫌な顔ひとつしないし不満も漏らさない。

 いや、唯一先輩が不満を漏らすときがあります。それがこれ。

 何だお前は、何なんだ!

 介護を恥ずかしがって断る主人公に対して支えるのにかこつけて抱きしめたいとかもっと甘えろとかさぁ!

 めっちゃ優しいじゃん!

 前作の厳しかった、体験版でプレイヤーから叩かれまくった詩桜先輩どこいったんだよ!!!


 そして和泉家の食卓風景に。

 すっかり馴染んだ詩桜先輩と頑張って家族として迎え入れようとする妃愛が健気で尊い。

 人間不信で家族に対して並々ならぬ強い感情を持っている妃愛がここまで他人に家族として心を開こうとしてるのはこの詩桜ルートだけです。

 他だとどうしてもお兄ちゃんの彼女さん、という扱いで割り切ってるからね。


 学園パートでは主人公のクラスメイトとどうして主人公を名前で呼ばずに「キミ」や「彼」と呼ぶのかと問われ……、

 この返しである。

 完璧超人系年上ヒロインが人前で好きな人の名前を呼ぶの恥ずかしいやつ!

 王道だけど王道だからこそ良い!

 前作では詩桜先輩の可愛らしい部分っていうのがあまり深掘りされていなくて、生徒会メンバー以外と関わることも少なかったんだけどこういう風に交流するのって主人公と付き合ったことによる変化を感じられてとても良いね。

 他人に興味のなかった人が主人公に影響を受けて自分を変える……、好き。


 そして生徒会パートでは今年の文化祭は主人公が交通事故に遭ってしまったため来年リベンジをしようとハリキリます。


 そう、この人わざと留年します。


 主人公が交通事故に遭ったから、主人公が主体で動く生徒会のリベンジのために、わざと留年します。

 まあ、正確には主人公のためというより、「他校相手に主人公が文化祭で目に物見せる」と勝手に啖呵を切ったにも関わらず、その文化祭では交通事故に遭った主人公の代わりに文化祭を指揮してしまったから、来年こそは主人公をサポートをして成功させようという、自分で蒔いた種を回収するためなんですけど。


 なんていうか前作では傍若無人なキャラだった詩桜先輩が嫌いになれない理由は、こういう自分の言葉に責任を持ってそれが自分を苦しめるとしても絶対遵守しようとする責任感の強さかなぁ、と思う。

 そのせいで主人公と仲違いしたり生徒会の手伝いが出来ずにつらい思いをしたんですけどね。


 で、今年の文化祭は主人公の書いた脚本で妃愛が朗読劇をしたから大盛りあがりになってしまったけど、じゃあ来年はどうやってそれを越えようかという話に。

 考えた末に行き着いた結論は、無理に大げさな出し物をするのではなく、あくまでも生徒会として見せる相手は他校のライバルお嬢様【聖莉々子】だから無理に話題性のあることしなくてもいいんじゃないか?と。

 結局、プロ作家である先輩が脚本を担当する紙芝居を作って、それを周辺施設でボランティアとして読み聞かせて、文化祭では朗読とその成果を発表することに。

 今回は詩桜先輩が最初から協力的でトントン拍子に話が進行するせいで主人公が完全に置物になっていて心のなかでイジケルんだけど、後から出しゃばり過ぎたか相談に来る先輩がいじらしくて可愛いのよ。

 主人公の隣にいるために協調性のない自分から変わろうとしてるのがすごく健気で好き。

 主人公は詩桜先輩と一緒にいるために勉強を頑張ったり生徒会活動を頑張ったりと、自立できる人間として成長したけどその詩桜先輩も主人公に影響を受けているのがなんとも良い関係性。

 あとこのやり取り好き。

 この後ふたりでエッチするんだけど……、実は主人公が家でエッチするのは妃愛ルートか詩桜アフターしか存在しません

 というのも最後のヒロイン、竜閑天梨のときに語られるんだけど家でそういうことをするのは妃愛がいるし家族に対する申し訳無さとか色んな感情があって避けているらしい。

 でも詩桜先輩とは自宅でするのは彼女を完全に家族として受け入れているから、と思うとそういうシーンにも意図があるんだなぁと思ったり。

 まあエッチしてるだけなんですけどね。

 これからはシャワーをひとりで浴びると言う主人公に真面目にお説教するシーン。すき

 あと妃愛が詩桜先輩を「お姉」って呼んでるの、家族って感じですき。


 進級した主人公たち、詩桜先輩は同級生に。

 主人公の学力がすごく上がることに対して他ヒロインが勉強を教えてもらうかと盛り上がるのだが、

 これ実は嫉妬してます。

 特に詩桜先輩は華乃に対して強い対抗心を抱いており、というのも前作で主人公と仲違いしたとき恋人の自分を差し置いて華乃の肩を持ち生徒会から追い出された経緯があります。

 そのせいで全編通して何かと華乃に対して嫉妬心を燃やしており、主人公と華乃が仲良さそうにしていると後になってそのことを追求されます。

 余裕そうに見えるヒロインが実はめっちゃ嫉妬深いの、すき。


 それから詩桜先輩が勉強や運動と、自分を高めるために努力を欠かさない人だということが描かれる。

 詩桜アフターではこういう前作で描ききれなかった詩桜先輩の魅力が全面的に押し出されて描かれているので、読めば読むほど詩桜先輩について理解が深まり好きになっていきます。


 おそらく前作では陰謀パートの舞台装置としてシナリオ上憎まれ役に仕立て上げられた詩桜先輩を、このアフターストーリーで全部挽回してやるぜー!っていう制作陣の熱い想いが伝わってくる。


 体験版で前評判が悪い?人気投票が低い?

 これでも喰らえー!<詩桜アフター

 プレイヤーは【鎌倉詩桜】がすきになった


 みたいな。

 実際、【鎌倉詩桜】というキャラクターはシナリオに振り回された不遇なヒロインだから救済されてとても嬉しい。

 いくら先輩の元の性格が悪いとは言っても、有名人を進級させるために学園に便宜図りたいから生徒会辞めとか言われたら自分だったらキレるし、マネージャーの印象操作で主人公の悪評吹き込まれてキツく当たってたらその主人公が堕落したのは自分の推し声優がそう仕向けたからで本人の根底は至って真人間とか。

 なんていうか全てに振り回されていて可哀想……。


 それからなんやかんやあって将来的にはふたりで暮らしたほうが良いんじゃないか?と提案する主人公。主に性活のために。 

 しかし詩桜先輩は……、

 理解のある彼女、好き過ぎる。


 詩桜ルートの何が良いって、事故に遭った主人公を前に妃愛が自分の抱える闇を吐露してそれを詩桜先輩が受け止め、だったらみんなで一緒に暮らそうと言ってくれることなんですよね。

 しかも主人公と詩桜先輩の恋愛の障害になるのではと気にしている妃愛に対して、自分が図々しくすることで遠慮しなくてもいいんだ、と思わせようと気を回してくれるところも理解がありすぎる。

 他ルートでは心に闇を抱えながら過ごす妃愛が、兄が交通事故に遭ったとはいえ救済されているのがとても良い。

 個人的な好みはあすみルートだけど、【ハミダシクリエイティブ】という作品で見たとき一番好きなルートは、この詩桜ルート。


 それにしてもこの詩桜先輩、実は卒業したら主人公とすぐに結婚しようと考えています。

 何なら子供を授かってもいいとさえ考えている。

 妃愛も結婚に関しては割と前向きで住民票を和泉家に移してもいいと考えているし、将来を見据えて家庭のルールを詩桜先輩に教えてあげています。

 主人公はまだ結婚は早いと考えているけど……、この調子だと卒業して向こうの両親に会ったらすぐ結婚するんだろうなぁ……。

 それはそうと、人一倍こだわりの強い詩桜先輩が自分の好きなお茶の銘柄を我慢して和泉家のお茶を飲んでいたり、好きな食べ物を遠慮したり、妃愛の教えを素直に聞いているのは何ていうかすごい健気で泣ける。

 たぶん【ハミダシクリエイティブ】で一番乙女なヒロインは誰か、と問われればこの傍若無人でクールな完璧超人の【鎌倉詩桜】ではないかと思う。


 ※ここから不満パート※

 で、色々日常パートが繰り広げられて詩桜先輩が釣りに出かけて妃愛とふたりになった主人公は、今後も妃愛をあのマネージャーに預けても大丈夫だろうか、と悩む。

 最初は介護期間のお礼を言いたいなど遠回しに攻め、会話の流れから自分や家庭を任せるなんてあの人のこと信用してるんだ?と尋ねる。

 すると返ってきたのがこの答え。

 どうやら子役をしていた芸能事務所から声優事務所へ移籍するときにひと騒動あったらしく、違約金や5年間の活動停止を条件に移籍を認めてもらい、マネージャーが5年は長すぎるからと1年1億で妃愛の時間を買ったらしい。

 で、なぜそこまでマネージャーが尽くしてくれるのかと言うと……、

 とのこと。

 それぐらい妃愛に信頼されてるなら安心だなーと脳天気なことを言う主人公だがそこに妃愛の「でもマネージャーが人生を懸けてるのは【小泉妃愛】だからね」という一言が。

 もうやばいよ、このマネージャー。

 しかも物語が始まる前、陰謀パートではヒロイン全員の素行調査をした上で詩桜先輩に共犯を持ちかけているので手に負えません。

 何より手に負えないのはこの主人公。

 何が安心した、だよ。

 はぁ~~~~~~????????


 何が今後もうちの妹をよろしくお願いします、だよ。

 普通の神経をしていたら裏で自分を生徒会長にして妹の単位を稼ごうとする大人、それも身の回りの人間全員探偵に素行調査されてましたとか、そんなの許せるわけねぇだろ!

 人間として尊敬できないけど妃愛のマネージメントに関しては信頼できなるなぁってどこが!?

 報い受けてるとかどこが!?

 いやいやいやいやいやいや、これでマネージャーの掘り下げとか救済が完了したとか本気で思ってるの?

 確かに妃愛ルートで掘り下げされたからネタバラシルートだともっと詳細の何かがあるんだろうなぁ、と思ってたら特大の爆弾投げられた気分だよ。

 なんていうか、文章のすべてがマネージャーにとって都合のいいもので構成されていてこれに納得する主人公に違和感がすごい。

 書き手が問題に決着をつけるために無理やりキャラクターに納得させてるかのよう。


 そもそも、このマネージャーが大切にしているのは自分にとっての希望の光である役者や声優の【小泉妃愛】であって、【和泉妃愛やその周囲の人間】に対しては【小泉妃愛】が万全に活動できるかどうか、と思っている節がある。

 もちろん、妃愛のプライベートや休みを気遣ったりしてくれるけどそれはあくまで【小泉妃愛】が100%のパフォーマンスを発揮するため。

 主人公が事故に遭ったときは彼の私生活のサポートをしてくれたけど、それもあくまで【小泉妃愛】の活動に支障が出るから。

 妃愛にとって大事なのは仕事でもマネージャーでもなく、家族だから仕事で兄の介護が出来なくなるならその日にでも声優を引退する。 

 だからこの物語の根幹にあるネタバラシ【和泉妃愛が学園を卒業できるように現生徒会長である鎌倉詩桜の代わりに妃愛の兄である主人公を生徒会長に据えて、妃愛を生徒会入りさせて学園へ便宜を図ってもらおう】とか平気で画策するし、声優活動よりも兄を優先する妃愛が声優を辞めないように主人公に何度も色仕掛けをしたり、平然と悪事に手を染める。


 この子を守るためなら自分は汚れてもいいとか言ってるけども、そもそもそういう汚れた芸能界を見て絶望したくせに自分がその側面に落ちてるし、守るためとか言ってるけど結局のところ自分が【小泉妃愛】っていう光を見続けたいっていう自己満足が理由であって、そこに【和泉妃愛やその周囲の人間】なんて存在しないんだよ。


 だからこのマネージャーの深掘りとかただただ不愉快になってヘイトが溜まるだけで何の解決にもなってない。

 ネタバラシルートだから触れなきゃいけないんだろうけど、こういう話を見せられるなら触れられないほうがよっぽどマシだった。

 この詩桜アフターは詩桜先輩の新たな一面が見れたり共犯者のひとりであるミリ先生の従姉妹である和泉家への想いとか、前作のネタバラシパートで株を下げてしまったキャラクターの補完が行われていて好感度爆上がりしたのに逆に下落していくマネージャー半端ないよ。


 主人公が妃愛に対してマネージャーの悪事を誤魔化したのは余計な心配を掛けたくないとか今後の声優活動のためとかそういう考えだろうけど、それって問題をひた隠しにして表面化しないように先送りにしただけで、いつか似たような何かがあれば根本の変わらないマネージャーはまた周囲を犠牲にしてでも【小泉妃愛】を守ろうとするぞ。

 そうなったら不信感を抱いて一番大変な思いをするのは妃愛なんだし、本当に妃愛が大切なら意味の分からない納得なんかせずに一度関係者全員集めて本音で話し合って解決案なり妥協案なり模索しろ~~~~。

 詩桜先輩もミリ先生もマネージャーに嫌悪感があってクソな大人って言うぐらいなんだから、ちゃんと事後処理していけ~~~????

 マネージャー、有能って言葉は何しても良いっていう免罪符にはならないんだからな~~~~。


 で、これ以上マネージャーに関してなにかあるのかって問われると今後一切マジで何もないです。

 最後まで出て来ないしアメリルートで何かあるわけでもなく、本当にこれで終わり。

 妃愛アフターでは悪びれず最後に色仕掛けして退場、詩桜アフターでは主人公が勝手に納得して終了。

 別にざまぁとか報いとかそういうの好きじゃないから痛い目見ろなんて思わないけど、主人公が巨乳センシティブマネージャーに色気で洗脳されたかのように全肯定納得してるのがあまりにもご都合主義を感じて苛立ってしまった。

 別に本人が目の前にいようがいなかろうが、主人公が思い切り不満をぶち撒けて最後に「でも妃愛のためにマネージャー続けてもらうしかないから個人的な恨みはここで終わり!」って言えば、それだけでプレイヤーは溜飲が下がってある程度納得するのに。

 不満を溜めに溜め込んでそのまま消化しないのが決着として一番良くないんだけど……、ヘイト管理下手か。


 とまあ、長文お気持ちがありつつも物語は続く。

 詩桜先輩は朝から花嫁修業として和泉家の味噌汁の味を再現しようと頑張る。

 人間不信でミリ先生以外は親戚含めて家族と認めない妃愛が先輩に和泉家の味を伝授しようとしてるのが微笑ましいし、完全に家族として心を許している姿はなんていうか感慨深い。

 他のルートじゃこうはいかないんだよなぁ。


 で、一年前から準備してたこともあってスケジュールに余裕を持って文化祭用の紙芝居が完成する。

 去年の文化祭はどのルートでもスケジュールがカツカツで生徒会の出し物は前日や当日まで完成しないのが常だったのに、流石詩桜先輩が指揮を取るだけはある。


 文化祭当日は悪役令嬢のような他校のライバル生徒、【聖莉々子】がやって来た。

 てっきり主人公が目に物見せてくれる出し物をすると思っていたら詩桜先輩が脚本を務めた紙芝居で、それは主人公の成果ではないでしょう!?とキレ始める。

 他ルートだと結構聞き分けの良い人なのに何故かこの詩桜ルートではちょっと莉々子さんは意固地なところがある。たぶん先輩への対抗心かな?

 それに対して詩桜先輩が彼は運営に集中してくれていただけだ、それにその理屈なら去年は自分が運営をして脚本は彼が担当していたんだから、と反論。

 ぐぎぎぎぎ、って歯ぎしりしながらとりあえず劇を見て判断します!ってことに。

 他ルートだと落ち着いた莉々子さんがこうも感情を見せるのは新たな一面を見れて嬉しい。でも専用ルートはない


 で、人を食べる鬼が最後に人を食べたことを後悔するって紙芝居を披露したは良いけどやっぱり詩桜先輩の手柄だから主人公を認めない!って言う莉々子さん。

 他ルートでもヒロインがイラスト描いたり歌歌って主人公は傍観してるだけなのにめっちゃべた褒めしてたやん!

 やっぱり詩桜先輩に振り回されてきた恨みがここに募っているみたい。

 しかし先輩がこの物語は彼や生徒会と関わったことで変化した自分自身をモデルにしている、と言う。

 だからこれは私を変えてくれた彼の功績であり、生徒会の出し物としてふさわしいよ、と。

 ここかわいい。

 ぐぎぎ、って言いながら負けを認める莉々子さん相手にしてやったり顔の先輩。

 この捨て台詞好き過ぎる。


 ちなみに莉々子さんは作家としての詩桜先輩の大ファンなんだよね。

 本人はペンネームしか知らなくて詩桜先輩がその作家さんであると気づいてなかったんだけど、今回文化祭の場で教えられてすごく複雑な気分みたい。

 しかも詩桜先輩はSNSで熱心に感想を送ってくれる莉々子さんを生徒会活動で知り合う前から一方的に認知していて、当時は恋人にしたいと思うぐらい気に入っていたらしい。(まあSNSでレスバしてる姿を見て幻想が打ち砕かれたんだけど)


 だからね、しおりりはありまぁす!!!!!!


 まあ、そんな感じで無事に文化祭が終わって最後は卒業式。

 一度は自ら留年したものの無事に主人公たちと卒業出来た詩桜先輩。

 そして話は主人公の卒業ボタンになって……、

 第2ボタンは先輩のもので第3はしれっと顔を出してきたアメリのものに、第1は遠慮せずあすみが。

 このときのあすみがすごい強かで好き。


 そんなこんなで詩桜先輩と主人公は爽やかに卒業式を終えて、輝かしい未来へ向かうエンド。


【総評】

 【ハミダシクリエイティブ】のグランドエンドはどれ?と聞かれたら自分は個人的に詩桜ルートを答えます。

 というのもこのルートではネタバラシによる詩桜先輩やミリ先生への救済、妃愛に対しての救済、主人公の覚醒、それらすべてが行われているからです。

 確かに和泉家の真の救済という意味では妃愛ルートが相応しいのですが、あれは一生ふたりで一緒にいようという究極に自己完結を求めた形であり、【ハミダシクリエイティブ】という物語として一番完成されているのは詩桜ルートになるのかな、と。

 言ってみれば妃愛ルートがトゥルーエンドで詩桜ルートがグランドエンドみたいな。


 前作の補完や先輩やミリ先生の掘り下げ、そして家族としての妃愛の新たな一面など全体的に纏まりが良くて素晴らしいアフターストーリーでした。

 しかしマネージャーに対するヘイト管理の杜撰さから星を1つ下げる結果に。

 いやぁ、妃愛アフターみたいな軽く触れる程度だったらともかく、今回はそこそこ内容があった上にネタバラシルートでこういう補完をされると流石にちょっと下げざるを得ないなぁ、と。


 あと、超どうでもいい話なんだけど物語途中で生徒会に相談へ来る女生徒がいて、その娘はどうやら夏休み中に毛染めをして肌を焼いたら先生に注意を受けたらしい。

 曰く、髪の毛を黒くして肌も戻してこいと。

 そう、エロゲやラノベによくある髪の毛がカラフルな世界観で「髪の毛黒くしろ」ってやつ。

 古来から二次元の髪色は設定上黒だけど見栄えのためにイラストではカラフルにしている派閥とか、その世界に於いてはそれがデフォルトなんだよ派閥とか色々あるけども、作品内でそういう繊細な部分に触れて一瞬我に返されるのはやめてほしいなーと思った。

 別に自分は可愛ければ何色でもいいと思ってるけど、こちとらヒロインの髪色ピンクとかオレンジとか水色で、なんなら主人公黒髪なのに妹は金髪だぞ!

 せめて肌焼いて髪の毛はチョモランマにしたとかなら世界観を損なわないんだけど……、って超どうでもいいことが気になった。

 あ、これは別に点数に影響ないです。


 それにしてもアフターストーリーの詩桜先輩は超かわいい。

 今作で一番株が上がったのは誰かと問われれば、自分なら間違いなく詩桜先輩と答えるだろう。

 うんうん、先輩はやれば出来る子だと思ってたよ。

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