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 導琉《ドール》学院は、昨年度まで私立の名門女子校だった。  『だった』というのは、学院が今年度から共学化されたからである。  ただし、今年の新入生のなかに、男子の姿はない。  たったひとり、合格した男子がいたはずなのに、入学式には姿を現わさなかった。  合格したものの、入学手続きはしなかったのだろうか。いや、ただひとりの男子合格者は、手続きを済ませた。  では手続きはしたものの、他校にも合格したなどの理由で、入学を辞退したのか。いや、彼は入学辞退などしなかった。  記録上、たしかに導琉学院に男子の新入生は存在する。  では、彼はどこにいるのか――。 「うふふ……」  男子学院生の行方を知っているかのように、自らを象った実物大人形を眺めながら、風紀委員長・橘夏菜子様が目を細められた。  導琉学院において、風紀委員会は絶大な権力を誇っている。  広大な敷地の一角に、専用の風紀委員会棟を所有しているのが、その証。  その風紀委員会棟の1階、壁一面がガラス張りの明るいサロンには、当代の風紀委員長の像が置かれるとが伝統となっている。  その伝統にのっとり、夏菜子様はご自身の実物大人形を設置された。  女子しては長身の夏菜子様。  彼女の実物大人形の中には、男子でも小柄な者なら、閉じ込めておくことも可能だろう。  もっとも、現実にはそんなことはありえないだろうが――。

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