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 卒業式の日、風紀委員長が、長く学校をサボっていたヤンキー娘を連れてきた。  超マジメな風紀委員長は、不真面目きわまりないヤンキー娘と幼なじみである。委員長のお祖父さんが営む武術の道場で、一緒に稽古をしていたそうだ。  それがいつからか、ヤンキー娘は道を踏み外してしまった。  一説には、武術で風紀委員長にまったく敵わなかったからグレたと言われているが、ほんとうのところはわからない。  武術のことに詳しくない私には、10センチ以上背が低い風紀委員長が、長身のヤンキー娘より強いとは思えないからだ。  ともあれ、委員長はヤンキー娘のことを、ずっと気にかけていたのだろう。  放課後や休みの日、ふたりで会っているところを見た者もいる。ヤンキー娘が一緒に卒業できるよう、なにくれと取り計らっていたとも聞く。  そして今日、卒業式に、ヤンキー娘を連れてきた。  腕をつかまれたヤンキー娘が素直に従っているのは、おそらく武術で言うことを聞かされているのではない。  私が知るかぎり、風紀委員長はそんなタイプじゃない。そもそも、彼女がヤンキー娘より強いという噂も信じていない。  ヤンキー娘が風紀委員長にしたがっているのは、その思いやりにほだされたからだろう。  少しばかり困惑しているように見えるのは、自分とは真逆の風紀委員長と、腕を組むような体勢が恥ずかしいのか。  そんなようすを視線を合わせないように眺めていると、ふたりが私の前を通過するとき、かすかにモーターが唸る音が聞こえた気がした。

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Comments

どすどす

第三者による語りが、この二人のいきさつを想像させてくれます。ヤンキー娘がポケットに入れている手にも秘密がありそうですね。

masamibdsm

ありがとうございます。 (心の声:ヤンキーらしいポーズってことだけでポケットに手を入れさせたことは黙っておこう……)