小説 辺境女騎士の末路 囚われてポニーガールに堕つ 中編 (Pixiv Fanbox)
Published:
2023-03-03 09:00:00
Imported:
2023-04
Content
中編 強制排泄と矯正快楽
「そろそろ、放尿させてやろうと思ってな」
ひとりで檻に入ってきたガブリエラが、薄く嗤って9の娘から木桶を受け取った。
「これを跨いでしゃがめ」
そして、うずくまって苦悶するニーナの前に桶を置き、指さして命じる。
つまり、その桶の中に、放尿させるということだ。
「外にこぼさずうまくできたら、褒美をやるぞ」
だがそう言われても、おいそれとはできない。
女性にとって、排泄はもっとも秘しておきたいもの。
高貴な身分の婦人は排泄の後始末を使用人にさせるが、あいにくニーナはそうではない。
女騎士のなかには貴族階級出身者もいるが、彼女らはたいてい王都の近衛騎士団に配属される。地方に配属される場合は、一軍を率いる経験を積むためとして、騎士団長の地位で赴任する。
ニーナのように一介の辺境騎士になるのは、ほとんど親も辺境騎士の家に生まれ、赴任地たる辺境で騎士教育を受けた者だ。
辺境は王国防衛の最前線でもあるだけに、辺境騎士の家の子は王都の貴族騎士以上に、徹底的に騎士精神を叩き込まれる。
ニーナは排泄に対する羞恥心を持ったまま、騎士の誇りと恥の意識は強くなっている。
それは、圧倒的な力を持つガブリエラに命じられたからといって、変わるものではない。
おまけに、フェステールの魔法剣士は、捕らえたニーナに残酷な処置を施し、奴隷に貶めた張本人なのだ。
(で、でも……)
もはや、背に腹は代えられない状況だった。
排泄したいのにできない苦痛もそうだが、これ以上出せないと、膀胱が破裂する可能性があった。
そうなると、排泄の恥だなどと言っていられない。排泄以上の痴態を晒してしまうし、この状況で負傷してしまえば、恥をしのんでガブリエラに治療を請わなくてはならない。
なんとしても、その事態だけは避けなくてはならない。
そう判断して――心の奥底では、そのことを言いわけにして――脚に力を入れる。
先ほどのようにバランスを崩さないよう、慎重に立ち上がる。
すると、ガブリエラが嬉しそうに目を細めた。
「さすがだな、15号。馬のブーツを履かされて、すぐに立つことができるとは……ポニー調教に入るのが楽しみだ」
馬のブーツ。それが、履かされた異形のブーツの名称なのか。
ポニー調教。すなわち仔馬の調教。それは、いったいどんな内容なのか。
訊ねたいことは数あれど、轡を噛まされた口では、声は言葉にならない。
そもそも、今は気に留めていられる余裕がない。
「くッ……」
屈辱にうめき、不安定な足を運ぶ。
「ぅう……」
羞恥に頬を染めながら、置かれた木桶を跨ぐ。
「く、ぅ……」
唇を割り裂く轡を噛みしめ、ゆっくりと腰を下ろす。
そこで、ガブリエラがニーナの股間に手を伸ばした。
「う(ひ)ッ……」
反射的に払いのけようとして、厳重拘束の身では叶わなかった。
しゃがんだままバランスを崩しかけて、ガブリエラに肩を抱くように支えられた。
「ぁ……」
そのことで、身体をピクンと震わせたときである。
カチリ。
股間で、小さな金属音が聞こえた。
直後、激しい水流が桶の底を叩く音。
同時に、パンパンだった膀胱が、少しずつ楽になっていく。
「ぉえあ(これは)……!?」
小水の排泄が行なわれているのだ。
一瞬考えて、そうと理解する。
しかし、尿道を大量の小水が通過している感覚はなかった。
我慢に我慢を重ねたうえで排泄したときの、ある種の爽快感もなかった。
「膀胱に到達するまで、尿道深く挿入。密封固定した管の先端、ベルトから露出させた部分に、弁を取りつけてある。それを解放すれば、いついかなるときでも放尿させられる。逆に解放しないかぎり、絶対に排泄できない……」
元女騎士のとまどいを感じとったのか、ガブリエラがニーナを見下ろして告げた。
「くくく、尿はすべて管を通過するから、放尿の実感はないだろう? これが、奴隷の排泄だ。おまえは……いや、おまえにかぎらず私の奴隷は、自らの意思にかかわらず、こうして排泄させられることになる」
「ぅおんあ(そんな)……」
そう言われニーナが愕然とするなか、9の娘が檻に招き入れられた。
そして新しい桶を鉄格子の天井に吊るし、その底に親指ほどの太さの管をつなぐと、小水入りの桶を手にして再び檻を出ていく。
「たか、おまえが強制的に排泄させられるのは、小水だけではない」
そこで、ガブリエラが唇の端を吊り上げ、ニーナの尻を撫でた。
「眠らせて捕らえ、そのまま奴隷の処置を施すあいだ、まる2日…… 小水のほうは眠っているあいだにも抜いてやったていたが、こっちのほうはずいぶん溜まっているんじゃないのか?」
そのいやらしい手つきと不穏な言葉に、怖気が走る。
とはいえ、ガブリエラの言葉は、的を得ていた。
フェステール族侵入を知らせる一報が騎士団に入った日の朝、ふつうに排泄して以来、ニーナは大きいほうを排泄していない。
そのあいだ、食事は摂っていないにせよ、溜まっていることは間違いない。極限状況のストレスのなか、便意を感じていなかっただけだ。
「ぁ、あぇお(やめろ)……」
喋れない口でそう言ったのは、それを自覚していたら。
「あぇえ(やめて)……」
なおも懇願めいて中止を請うたのは、これからなにをさせられるのか予見したせい。
とはいえ、言葉にならない声が、ガブリエラに聞き届けられるはずがない。
いや、もし聞き届けられていたとしても、受け入れられはしないだろう。
「奴隷の排泄のさせかたを、みっちりと叩き込んでやる」
ガブリエラは、もとよりそのつもりなのだから。
「なにをされるのか、わかっているようだな……泣き喚いてもいいぞ。ぶざまに抗ってもいいぞ。そのへんの小娘のようにな」
そのうえそう言われ、反抗する気を削がれてしまう。
「う(く)ッ……」
逆らっても無駄と、逆らうとかえってみじめと思わせられ、くるおしくうめいたところで、ガブリエラが桶の底につながれた菅を手に取った。
そして、しゃがみ込んだままのニーナの肩を押さえながら、その先端の金具をお尻の栓に接続する。
カチリ、と金属音が聞こえ、わずかな振動が肛門に伝わった直後である。
「……ッ!?」
なんの前触れもなく、お尻の中に水が流れ込んできた。
「ぃうッ!?」
はじめ短く悲鳴をあげたのは、流れ込む水に驚いたから。
とはいえ、冷たくはない。小水排泄にかかる時間を計算して、あらかじめ湯を入れてきたのだろう。少し冷めた今は、注入される水の温度は体温と大差ない。
そのため、当初はそれほどの苦痛を覚えなかった。
しかし、水が注ぎ込まれるにつれ、苦しさを感じ始めた。
「水は落差を利用して、流れ込んでくる。座ったままより、立ったほうが楽かもしれんぞ」
そう言われ、不安定なブーツを履かされた足で、ヨロヨロと立ち上がる。
とはいえ、桶の位置は檻の天井近く。まだ落差はあるから、いくぶん勢いが弱くなっただけで、水流が止まるわけではない。
そして、勢いが弱くなるということは、注入時間が長くなるということ。苦しみが長引くということである。
水が注ぎ込まれることで、お腹が内側から膨れる。
膨れたお腹が、きつく締め込まれたベルトに食い込む。
苦しい、苦しい。
だが、水流は止まらない。
つらい、つらい。
しかしガブリエラは、接続金具の水栓を閉じようとしない。
(もしかして……)
桶の水が尽きるまで、注入を続けるつもりなのか。
貧弱な体型の9が桶を天井まで持ち上げられたくらいだから、満タンというわけではないのだろう。
だが、仮に半分ほどだったとしても、人のお腹に注入していい量とは思えない。
いや、すでに流れ込んだぶんだけでも、限界に近いはずだ。
そう思えるほどの、耐えがたい苦痛。
苦しい、苦しい。苦しすぎる。
つらい、つらい。つらすぎる。
ガブリエラに言われたように、そのへんの小娘のように泣き喚きたい。
ニーナがそんな不埒な考えに囚われるほど、苦痛が極限に達した頃、ようやく水栓が閉められた。
そのタイミングを見計らい檻に入ってきた9の娘が、新たに蓋つきの桶を持ってくる。
その桶は、おそらく排泄用だ。
すぐにでも、そこに出したい。
でも、恥ずかしくて出したくない。そんな屈辱的な行為はしたくない。
苦痛がもたらす欲求、乙女の恥じらいと騎士の誇り。
ニーナのなかで葛藤が始まるが、そもそも彼女には決定権はなかった。
『いついかなるときでも放尿させられる。逆に解放しないかぎり、絶対に排泄できない』
強制的に放尿させられたときの、ガブリエラの言葉。
それは、大きいほうの排泄でも同じなのだ。
肛門にねじ込まれた栓の弁をガブリエラに解放してもらわないと、どんなに苦しくてもニーナは排泄できないのだ。
逆に排泄したくなくても、強制的に排泄させられるのだ。
「もう、わかっているようだな……」
苦悶するニーナに、ガブリエラが告げる。
「おまえは、排泄の自由すらない奴隷。生殺与奪の全権を私に握られた、私の所有物。この世の最底辺の存在」
その言葉をニーナの精神に刷り込み、あらためて命じた。
「脚を開き、尻を突き出せ」
そうしてニーナにはしたない姿勢を強要すると、9の娘に目配せ。
応じて娘が桶の蓋を外し、ニーナの尻にあてがった。
カチリ。
そこで、弁が開かれる。
腹の中の圧力に押され、猛烈な勢いで液体が放出される。
それを9の娘が、構えた桶で受け止める。
「ぅいぁあ(いやあ)ぁあッ!」
ニーナを叫ばせたのは騎士の誇りか、いや、乙女の恥じらいか。
「ぃあぃえ(見ないで)えッ!」
とはいえ、言葉にならない憐れでみじめな懇願が、聞き入れられるわけがない。
始まった排泄を自らの意思で止められないのは、小水のときと同じ。
排泄している実感がないのも、そのときと一緒。
『これが、奴隷の排泄だ。おまえは……いや、おまえにかぎらず私の奴隷は、自らの意思にかかわらず、こうして排泄させられることになる』
その言葉を思い出させられながら、大量の水の放出か終わってからは、水分を含んでドロドロになった固形物。
それも尽きたところで、9の娘が桶をお尻から離した。
ガブリエラの手で、お尻の栓の弁が締められる。
蓋をした桶を檻から運び出した9の娘が、天井に吊られていた桶に残っていた水をニーナのお尻にかけ、床の干草を拾って拭いた。
それから拭くことに使用した干草を空いた桶に入れ、蓋つきの桶も取り上げると、9の娘はガブリエラに一礼して立ち去った。
その姿を見送ったあと、がっくりと膝を落として放心したように呆然とするニーナの顔を覗き込み、ガブリエラが唇の端を吊り上げた。
「さて、きちんと排泄できた15号には、約束どおりご褒美をあげなきゃいけないねぇ」
それまでの武人らしい口調に、妖艶な雰囲気を混ぜて告げられた言葉は、ニーナに対する奴隷調教開始の宣言だった。
ガブリエラは繰り返される戦いのなかで、常に最前線で奮闘するニーナを見初めた。
この愛らしくも凛々しい女騎士がほしい。奴隷の身分に堕とし、わがものにしたい。その思いは、日増しに強くなっていった。
同時に、どうすればニーナを思いどおりの奴隷にできるかを思案した。
騎士は、特に辺境女騎士ニーナ・クレストは、強靭な肉体と優れた剣技を持っている。
だから、剣の戦いで決着をつけようとせず、剣圧に押されるふりをしてあらかじめしかけておいた魔法のトラップに誘導した。
またニーナは、肉体のみならず、精神も強靭である。
彼女の情報を収集し、実際に剣を交え、そう確信したガブリエラは、調教においても一計を案じた。
まず、魔法刻印以外の奴隷の処置を眠らせているあいだに終え、目覚めたところでわが身の状態を自覚させ心を折る。
さらに、覚醒したところで最後の処置、魔法刻印を施し、もう戻れないと絶望させる。
ふつうの娘なら、これで奴隷堕ちを受け入れる。以後は、調教を甘んじて受けるようになる。もっとも従順で、今はほかの奴隷の世話を任せている9号もそうだった。
だが、ニーナの騎士精神は、それだけでは砕けない。
そう判断したガブリエラは、しばらく放置したあと、9号にニーナを責めさせた。
それで力ない者に責められるくるおしさ、騎士が平民に責められる屈辱を味わわせると同時に、水を大量に飲ませて下ごしらえをした。
そして、ギリギリまで我慢させての強制放尿の羞恥屈辱責め。さらに、浣腸からの強制排泄。
まだ完全ではないだろうが、奴隷調教を施せる程度には精神を砕いた。
そこからが、ニーナ以前に14人の女奴隷を調教してきた、ガブリエラの真骨頂である。
奴隷調教の基本は、飴と鞭。
苦しくつらい『鞭』を与えつつ、甘美なる『飴』の甘さを教え込む。
そのために、ガブリエラは床の干草に膝をついたニーナを背中から抱きしめ、魔法の呪文を詠唱した。
妖艶な空気をまとったガブリエラがフェステール語でつぶやいた直後、彼女の両手に燐光の魔法陣が生まれた。
魔法だ。
腕に奴隷の刻印を彫られたときのように、ガブリエラが魔法が発動させたのだ。
その魔法で、今度はなにをしようというのか。
ニーナは恐ろしくて震える。
「ぃ、いあ(いや)……」
震えながら、弱々しく拒絶の言葉を口にする。
囚われる前のニーナなら、恐怖に震えることはなかっただろう。
囚われてすぐの頃なら、恐ろしくても毅然としていようと思っただろう。
でも、今はもう違う。
消せない魔法刻印で、9の娘による水責めで、さらに見られながら大小の強制排泄をさせられたことで、強靭だったニーナの精神は砕かれていた。
そして、砕かれたニーナ精神を自分好みのものに――ありていに言えば、奴隷の精神に、奴隷根性に――作り変えるべく、ガブリエラが両手の魔法陣を近づける。
その手がまず触れたのは、左右の乳首ピアスをつなぐ鎖。
その刹那、両の乳首にほのかな熱を感じた。
(な、なにコレ?)
一瞬とまどったあと、もう一方の手が股間ベルトに触れた。
「ぁ、あぃお(なにを)……?」
されるのか。
思わず言葉にならない声で問うとしまったところで、ガブリエラが耳元でささやいた。
「なにをするって?」
ニーナの声を聞き取って答えたわけではない。このようなとき、調教初期の奴隷がどういう反応を示すか、経験豊富なガブリエラは知っているのだ。
とはいえ、ニーナにはそのことがわからない。
そもそも、極限状態に置かれた彼女に、そこまで考えるゆとりはない。
「言っただろう? ご褒美をあげるんだよ」
加えて、続いてささやかれた言葉だ。
(ご褒美? ご褒美って……?)
そのことのほうが気になって、ニーナは些細な疑問を忘れてしまう。
「これが、おまえへのご褒美だよ」
直後、乳首と股間に痺れるような感覚。
(ぁいおぇ(なにコレ)? ぁいおぇ(なにコレ)ぇ……ッ!?」
さらにとまどったところで、ズクンときた。
「あ、ぁあ、ぁああ……ッ!」
猛烈な快感が駆け抜け、轡の隙間から涎を噴き出して喘ぐ。
「ぁああッ、あっああッ!」
噴き出した涎が顎を伝って胸に落ちても、気に留める余裕もなく。
ガブリエラの神経系魔法――敏感なところの快楽神経を直接刺激する魔法――で、オンナの肉を昂ぶらされる。
「あッ、あッ、あぁあッ!」
鎖からピアスを経て、乳首の肉に内側から性感の波動を送られて。
「ああッ、ぁ、あっあッ!」
股間ベルトから、膣内に挿入された異物に、悦びの神経を刺激されて。
性に未体験だった元女騎士の奴隷は、一直線に高められる。
(ダメ、ダメッ、騎士たる者が、敵の手で……ッ)
ほんのわずかに残っていた騎士の誇りで、自制しようとしたのはわずかのあいだ。
「あッ、ぃ、ぁあああッ!」
残りカスのような騎士精神は、圧倒的な快感に、あっけなく飲み込まれてしまう。
飲み込まれ、押し流されてしまう。
乳首の快感が、乳房全体に広がる。
膣内のみならず、肛門を占拠する異物にも、尿道の管にも、性感の波動が伝わり快感を生む。
それは、肛門周辺にも性感帯が存在するからである。尿道のすぐ近くに、快楽神経を集めて作られた小さな豆、陰核の根っこが存在するせいである。
とはいえ、ニーナはそのことを知らない。
知らないまま、尿道や肛門にも快感が生まれていることを自覚する。
それら股間の快感が一体となり、乳首の快感とひとつになって、脳に流れ込む。
流れ込んで、昨日まで処女だった元女騎士を蕩けさせる。
「あッ、あッ、ぁああッ!」
ニーナがあっけなく蕩けてしまったのは、流れ込む快感が圧倒的だったことだけが理由ではない。
性的なものいっさいを遠ざけて生きてきたニーナは、快楽に慣れていないのだ。
慣れていないため、耐性がないのだ。
それに耐える方法も、受け流す術も知らないまま、ニーナは快楽に翻弄される。
「ああッ、あッ、あぅああッ!」
蕩けさせられ、酔わされて、前後不覚に陥って喘ぐ。
ガブリエラが与えるのは、ほかの感覚が混じっていない純粋な快感。
それがもたらす、大きすぎる快楽。
乳首、気持ちいい。
女の子の穴、気持ちいい。
尿道も、肛門も、気持ちいい。
そこに生まれ続ける、混じりけのない快感。襲いくる、圧倒的な快楽。
憐れでみじめなニーナは、それに抗えない。抗おうとすることすらできない。
そこで、ひときわ大きい快楽の奔流に襲われた。
「あぅ、ぅあぁあアああッ!」
飲み込まれ、押し流され、あられもなく喘ぐ。
「あ、ぃ、あァああああッ!」
喘ぎながら、一瞬で飛ばされる。
どこへ?
わからない。
わからないが――。
「ア、あッ……あ、あぃあ(なにか)……ッ!?」
来た。
いや、ニーナのほうがたどり着いたと言うべきか。
厳重に拘束され、ガブリエラに背中から抱きすくめられているはずの身体が、フワフワと宙に浮いているような。浮きながら、際限なく落ちていくような。それでいて、どこまでも昇っているような。
かつて味わったことのない、未体験の奇妙な感覚のなか、頭のなかに白い光が生まれた。
その光が、ニーナを飲み込む。
もう、なにもわからない。
わからないことすらわからない。
そんな状態で覚えるのは、身も心も満たされた感じ。不思議な幸福感。
ほかに代えがたい幸せに包まれながら、ニーナは――。
「ア……ア、あァあぁああアッ!」
ひときわ高く喘ぎ、拘束され抱きすくめられた身をガクガクと震わせ、やがてガックリと身体から力を抜いた。
「気持ちよかったかい?」
ときおりピクンと痙攣する身体を後ろから抱いたまま、ガブリエラが耳元でささやく。
気持ちよかった。
悔しいが、それは認めざるをえない。
「今のが絶頂だ。オンナの身で味わえる、史上の悦びだ。これが、今日からおまえのご褒美になる」
その話は、聞いたことがあった。
ニーナ自身に経験はないが、騎士修行中、耳年増な同輩が交わす噂話を耳にしたことがある。
それを、自分が味わうことになるなんて。しかも、憎き敵の手で。
いや、奇妙なことに、ガブリエラに対する憎悪は、はじめの頃より薄くなっていた。
こうして抱かれていても、強い嫌悪感は覚えない。
(どうして……)
憎しみが薄れたのか。
それは、人の精神が、そうなるようできているからである。
激しい怒りや憎悪は、精神にとって大いなるストレスになる。
大きいストレスが過負荷にならないよう、激しい怒りは数分間しか持続しない。憎悪は長続きするが、ピークの状態が維持されるわけではない。
さらにニーナは絶望し、心を折られ、粉々に砕かれていた。
そのため、ガブリエラに反抗する気力を失なっていたのである。
加えて、修行時代の同輩の噂話を思い出したことだ。
それは、好きな人と肉体関係を持ったときのこととして語られていた。そして、ニーナが持っていた絶頂に関する知識は、その噂話によるものだけだった。
そのため、性に対して未経験だった元女騎士は、絶頂とは好きな人と肉体関係を持ったときに到達するものという印象を抱いていた。
もちろん、ガブリエラを好きになったわけではない。なるわけがない。
だがもともと持っていた知識は、抱いていた印象は、人の思考に影響を与える。
(もしかして、私は……)
変わり始めているのかもしれない。
騎士から奴隷へ。精神を作り変えられているのかもしれない。
(だからこそ……)
主人たるガブリエラへの憎悪が薄れているのだ。9の娘が、彼女のことを自然に『ご主人さま』と呼ぶように。
好きにはならないまでも、憎悪が薄れているから、ガブリエラの淫なる魔法で絶頂させられたのだ。
絶頂直後の恍惚のなかで、ニーナはそう考えてしまった。
心の防御壁が低く弱くなった状態で思ったことは、容易に精神に刷り込まれることを知らずに。
強制排泄で心を徹底的に砕かれ、砕かれた心を快楽で矯正されつつあることに気づかずに。