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 ゾルゲブルグ帝国は、武をもって覇権を確立せんとする国である。  もともとは大陸中央部の戦闘部族のひとつにすぎなかったが、周囲の同類を戦いで従え、有力豪族へと成長。その後も戦いを繰り返し、ついには帝政を敷き大陸最大の版図を獲得した。  その戦いのなかで、捕虜として捕らえた敵兵を、戦利品として帝都の街角に晒す習わしが生まれた。  それは、捕虜であれば身分の違いなく、辱めを与えたうえで拘束して晒すというもの。  帝国の勢力が拡大するとともに戦いも大規模化、捕虜の数も膨大になってからは、さすがに一兵卒まで晒すことはなくなったが、捕虜晒しの風習は脈々と続いている。  帝国が常に戦いの中にあることと相まって、それはもはや、市民にとって日常の風景。街角に捕虜が晒されていても、気に留める者は少ない。かく言う私も、昨日まではそうだった。  しかし、この日は違った。  長く帝国と戦ってきた歴史と伝統あるトラウトハイト王国がついに陥落。囚われ、帝都に連行されてきた近衛騎士団の面々が、晒されるのだ。  なかでも目玉は、王女付き近衛騎士、白銀の騎士とも称されるアーデル・エメルデ。その武と美貌でもって周辺の国々にも知られた、ハーフエルフの女騎士である。  とはいえ、彼女がどこで晒されるのかは、帝国軍中枢部の者しか知らない。  もともとの身分に関わらず、戦いに敗れ囚われたら、等しくただの捕虜。街角に無数にある粗末な晒し台に晒すとが、帝国の伝統なのだ。いかに高名な女騎士であっても、特別扱いはされない。  この場所が有力と睨み、晒し台のひとつが常設されている中央庁舎通りにいるが、本当にここで彼女が晒されるのかどうかはわからない。  もし、晒し場がここでなかったら――。  諦めの気持ち半分、晒し台の前に佇んでいると、ひとりの女捕虜が引かれてきた。  兜のせいで顔は確認できないが、件の女騎士に違いない。  白銀の騎士という二つ名の由来となった甲冑は、体央を覆う部分が剥ぎ取られ、女体の肝心な部分が曝け出されていた。  そのうえで上半身をぶ厚い革帯でギチギチに縛りあげられ、脚は鉄靴《サバトン》の上から嵌められた鉄枷を、重そうな鎖で繋がれている。  そして、残酷なのは股間の拘束。上半身を縛《いまし》めるものと同じ革帯が、女騎士の女陰の割れめに埋まるほどきつく、食い込まされていた。  だがそれは、彼女に施された処置のなかで、もっとも残酷なものではない。  それ以上に凄惨な状態にあるのは、麗しき女騎士の胸だ。  たわわに実った果実のような乳房の先端に、コリコリにしこって屹立した状態を強制するように取りつけられた乳首ピアス。その奴隷の装具は、互いに鎖でつながれている。  そして無惨にも、女騎士は乳首ピアスの鎖を引かれて連行されているのだ。  彼女の苦痛たるや、いかばかりか。その屈辱は、高貴な女性として耐え難いものだろう。  誇り高き女騎士が、それでも舌を噛み切っての自決という道を選べないのは、兜の下で口も拘束されているから。  その証拠に、刑吏に乳首ピアスの鎖を引かれる彼女の苦悶は、意味不明なうめき声にしかなっていない。  みじめきわまりない状態に貶められた女騎士が、晒し台の上に引き上げられる。  鋼鉄の首輪と腕の拘束に絡められた鉄棒を鎖で吊られ、その場から動けなくされる。  そこで、兜も剥ぎ取られ、大陸の隅々にまで知られたハーフエルフの美貌が明らかになった。  言葉を奪う口枷を嵌められ、涎を垂れ流していても、その美しさは損なわれるものではなかった。  いや、無惨な口枷を嵌められているからこそ、みじめな境遇に堕とされているからこそ、彼女の麗しさは輝いているように思えた。 「これより、敵兵に対する帝都市民による鞭打ち罰を行なう!」  女騎士の拘束を終えた刑吏が、よく通る声で叫んだ。  それもまた、晒し刑の伝統。帝国と帝国臣民に敵対するという大罪を犯した者は、皇帝と帝国が執行する刑のみならず、市民の手による罰も受けなければならない。 「帝国市民よ、この重犯罪者に鞭を振るいたい者はおるか!?」  その刑吏の言葉に、私は熱に浮かされたように手を挙げていた。

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